ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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お ま た せ …… ♡
(大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
転職したり、一人暮らしを始めたりと私生活がバタバタしておりましたが、それらもようやく落ち着いたので、ぼちぼち更新を再開したいと思います。)

⚠挿絵あり




まだ名前のつかない関係の二人がいちばん萌えると知っているね? 前編

 

「……これで良い、のか?」

 

 和室の隅に置かれた全身鏡の前に立ち、身支度を整える可城丸秀朝。

 鏡面に映るのは、深い紺色の単衣に、落ち着いた渋い茶色の帯をきっちりと締めた自身の姿。あまり馴染みのないその装いに、どこか気恥ずかしさを覚えた彼は、すこし顔を顰めている。

 

「うーん、なんか物足りないな。かといって、小物は今身に着けてる物しかないし……あっ、男性死神協会から支給された腹巻きでもつけてくか?」

【君はどこぞの海賊狩りにでもなるつもりかい? そのままでも十分似合っているから、それ以上は必要ないさ】

 

 閃いたと言わんばかりに箪笥をあさりだした可城丸へ、具象化し側で見守っていた相即不離は、ため息混じりにそう諭す。

 

「そう? まあ、相即不離がそういうなら……」

【大体、和服で着合わせを失敗すること自体あまりないと思うよ】

「あー、確かに。無地の着物に派手すぎない帯を合わせれば、それなりに見栄えがするもんな〜」

 

【まあ、君は見目が良いから、もう少し派手な装いをしても良いと思うけれど】

「……それって、遠回しな自画自賛?」

【……そんなつもりはなかったけれど、確かにそう取られても仕方ないかもしれない】

 

 同じ顔を見合わせながら二人で苦笑しつつ、可城丸は相即不離をじろじろとみやり、首を傾げながら呟く。

 

「派手な色ねぇ……柳染の羽織でも買おうかな?」

【どうせなら、今日買ってくれば良いさ。……ところで、時間は大丈夫なのかい?】

「ん? うおっ、もうこんな時間じゃん! そろそろ出ないと」

 

 相即不離の指摘に、可城丸は急いで身支度を整えると、いそいそと部屋を出る。

 

「んじゃ〜相即不離、留守番頼んだわ」

【ああ、任されたよ。君は存分にでぇとを楽しんでくるといい】

 

 玄関口にて、突如放たれた「デート」という単語に、可城丸の心臓がドキリと跳ねる。一瞬で赤く染まる彼の顔を見た相即不離はニヤリと笑う。

 

「デ、デートじゃない!! あくまでこれは業務の一環で……、俺を思い上がらせるような事を軽々しく言うんじゃありません!」

【ハハハ、君はそう思っていても相手はどうか分からないよ?】

「~~~ッ、行ってくる!!」

【行ってらっしゃい】

 

 相即不離の笑い声を背に、玄関から駆け出した可城丸は「デートじゃない、これは仕事、これは仕事……!!」と自分に言い聞かせながら、目的地へと向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あっ、勇音副隊ちょ……う……」

 

 僅かに赤みを帯び始めた大樹の下で待ち人の姿を見つけた瞬間、可城丸は思わず言葉を失い、その場で硬直した。

 

 彼の視界に映ったのは、黄土色のインナーに淡い桃色の着物を纏った虎徹勇音の姿。

 普段の厳めしい隊服とは似ても似つかぬ、その柔らかで華やかな彼女の装いに、彼の思考は完全に停止したのだ。

 

 

「……!」

 

【挿絵表示】

 

 

 

 そんな可城丸に気がついたのだろう。

 勇音は一度ぱちりと大きく目を見開くと、次いで頬をほんのりと染めて、恥ずかしそうに小さく手を振った。その控えめで愛らしい仕草に、可城丸の体を縛っていた緊張が、ふっと解ける。

 

「す、すみません勇音副隊長、お待たせしてしまいましたか?」

 

 慌てて駆け寄ってきた可城丸に、勇音は柔らかく首を振る。

 

「いいえ、大丈夫ですよ。つい先程、着いたばかりですから」

「そうですか……それは、良かったです」

 

 安堵の息をつく可城丸の前で、勇音は優しく微笑み、艶やかな銀髪を細い指でそっと耳にかけた。それだけの仕草でさえ、妙に目を惹かれてしまい、可城丸の鼓動は不規則に跳ね始める。

 

「今日の服装……とても華やかですね……」

「えっ、あ……へ、変ですかね……?」

「まさか、とんでもない! すごくお似合いですよ! 本当に……とっても可愛いです!」

「か、かわ……」

 

 「可愛い」という言葉に、勇音の頬がさっと朱に染まる。しかし、それに気がついた可城丸(クソボケ)は慌てて訂正した。

 

「……はっ! す、すみません! これってセクハラですよね!? 不快な思いをさせてしまって……!」

「い、いえいえっ! せくはらが何かはよくわからないですけど、不愉快な気持ちにはなりませんでしたよ。……むしろ、その……」

 

 胸元でいじらしく指を絡めながら、勇音は言葉を続ける。

 

「嬉しい、ですから……」

「──そ、そうですか。それならよかったです……」

 

 胸を撫で下ろす可城丸を前に、勇音は小さく瞼を震わせると、──自分を奮い立たせるかのように、意を決して口を開いた。

 

「あの、ひ、秀朝さんも、すごく似合ってますよ……!」

「!? あっ、ありがとうございますっ!」

 

 ──役職ではなく名前で呼ばれた!

 その事実が、言葉の意味よりも先に、可城丸の胸へと突き刺さる。

 

「今日一日、よろしくお願いしますね。秀朝さん」

「は、はい! こちらこそ……よろしくお願いします、……勇音さん」

 

 重ねて呼ばれた名に、大きく跳ねあがった心臓を抑えながら、可城丸もお返しとばかりに役職名を外して、敬称だけを添えた彼女の名を呼ぶ。

 

「「……」」

 

 ほんの一瞬の沈黙。

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした後、すぐに、花がほころぶような、柔らかな笑みを浮かべる勇音。

 そのあまりにも眩しい笑顔に、可城丸の全身がじんと熱くなる。

 

(……今日一日、俺の心臓もつかな……)

 

 思わず見上げた空の眩しさに目を細めながら、可城丸は心の底からそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

蛇足

「死覇装じゃなくて私服で行け」

「いや、でもな海燕。勇音副隊長は業務の一環として食事の買い出しを卯ノ花隊長に指示されたから非番というより時間外労働か休日出勤って扱いになるわけで……」

「いや、買い出しも業務の一環とかそんなクソ真面目な御託は一旦おいて、とにかく私服で行け。いいか? 当日は、絶対に、私服で、行け」

「でも……」

「買い出し終わったあとは互いに暇なんだろ?」

「うん」

「なら私服で行けよ!! どうせその後二人で飯屋に行ったり個人的な買い物したりするんだから私服で行けよ!!」

「そ、そんなのもうデートじゃないか!!」

「チィッッッ」

「舌打ち!?」

 

 

 

 

 






オラァ!!!(後編に続く)

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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