次の展開が思い浮かぶまでの尺稼ぎ。
オリ主くんの過去を描写すれば、これからの行動にも多少は整合性を担保できるかなって…。
夕凪柚。200X年11月8日、シブヤの総合病院にて夕凪家次男として産まれる。丁度柚が熟れ始める時期であったため柚と名付けられた。
父には著名な音楽家である夕凪和希、母には世界を駆けるバレエダンサーである夕凪桜を持つ。音楽に造詣の深い両親の影響で、兄の夕凪
ある日、音楽コンクールに出場した兄の奏でる音楽に惹かれ、己も音楽の道を志すことになった。
「二位、か。よく頑張ったな、柚」
「……はい」
彼は音楽を愛していた。音楽もまた彼を好いていたが、彼の父や兄へ注がれる愛情ほどではなかった。
鍵盤を弾き、金管楽器を吹き、木管楽器を叩き。恵まれた環境と様々な経験は確かに実力を伸ばしていったが、どれも極めるには至らない。入賞、三位、二位のトロフィーが彼の部屋には並んでいるが、そこには一位のトロフィーのみが無かった。
どれだけ練習しても、後一歩がどうしても足りない。そこには残酷で絶対的な「才能」の壁があった。
彼の父は偉大であり威厳のある音楽家だったが、柚を叱責することは無かった。その優しさが苦しかった。
「見てよ父さん。これトロフィーね」
「おお!凄いじゃないか琢音。よぉく頑張ったな!」
「らくしょーだったさ」
また何かのコンテストで一位を獲った兄。嬉しそうに褒め称える父と、満更でも無さそうに頬を緩ませる兄の姿。その光景の温かさは柚の心を深く抉る。その時は決まって自室に篭り、泣きじゃくりながら自分の演奏を聴き直し改善点を洗い出す。心配そうに声を掛けてくれる母親に扉越しで気丈に振る舞うのだ。
何も一位でなければ意味がないというワケではない。そこには確かに積み重ねてきたものが残っている。それは柚もしっかり理解していることだ。
しかし感情はまた別。恵まれた環境に居ながらも一番手には届かない歯痒さは、彼の心を苛んでいく。
今でも日本が誇る音楽家として活躍する父。引退こそしたものの未だ最高峰と言わしめる演技力の母。そして次々と華々しい結果を残していく兄。偉大な家族に比べて自分はなんと木偶の坊だろうかと、自分で自分を責めるようになるのは時間の問題だった。
「夕凪さんのところの息子さん。弟の方、また入賞で終わったらしい」
「あの父親を持ちながらもその程度の番手に甘んじるとは。兄の方に大半の才能を吸われたか?」
「恵まれてるクセにね。環境に甘えて努力を怠ってるんじゃない」
コンクールの去り際、いつもそんな声が聞こえる。彼の努力を知る者がそれを聞けば、その発言をした者を永劫許すことはないだろう。しかし幼い彼にとってそれは全てが事実に感ぜられ、決して消えない呪いになる。
彼と同年代の子供たちは悔しさを滲ませながらも。「もっと時間があれば、もっとお金があれば」と言い訳をする。自分の心を守る。才能ではなく環境のせいにできる。しかし聡く恵まれた柚は、全部があると理解しているからそれができないのだ。自身の努力不足だと自分を責めることしかできない。
(そうだ、まだまだ努力が足りない。才能がない分僕は何度も何度も弾かなきゃいけない。僕は……俺は)
彼は音楽を愛している。彼が音楽を嫌いになることはない。しっかり勉学にも励むし、運動も熟す。友人と遊ぶ時間を削って音楽に熱を注ぎ込む。彼が音楽を嫌いになることはないが、しかし音楽は彼の心を少しずつ擦り減らしていった。
「なぁあ柚。ちょっと時間貸せよ」
「…なんだよ兄さん」
時は流れ、琢音は高校二年生になり柚も小学五年生にまでなった。
どうやらバンドを始めたらしい兄は、家を空けることが多くなった。バンド活動をしているのか、女の子を引っ掛けて遊んでいるのか。本当のところなんて興味はない。が、そんな兄が昼間に柚を訪ねるのは珍しいことだった。
ヘラヘラとしている憎たらしい顔を睨み付けながらギターを弾いていた手を止める。手招きをして兄の部屋に呼んだ。
「最近音楽ソフトを自作したんだよね。市販の音楽ソフトにゃ収録されてない音源も収録してさ」
「へぇ…。兄さんにしては手の込んだことすんじゃん」
「でもってさ。それ使ってデモ音源作ってみたんだよ。柚にはそれ聴いて改善点があれば指摘して欲しい」
兄の言い分に眉を顰める。何故自分が態々兄の作った音源を聴いてそれを指摘しなくてはならないのか。面倒臭さもあるがそれ以上に、才能のない自分が下手なことを言って兄の綺麗な音楽を崩してしまうのが嫌だった。
でも、と思い直す。柚に才能がないことなんて兄は分かりきっている筈。それなのに試聴を頼むということは、きっと何かの意図があるのだろう。そうに違いない。
深く溜息を吐いて、兄から手渡されたヘッドフォンを装着する。横から兄がマウスを操作して毒々しい見た目の音楽ファイルを再生した。
聴こえるのは典型的なJ-Pop。イントロがあって、AメロとBメロを経てサビで盛り上がる。従来の型に嵌った構成だが、至るところに細かな技術を感じさせる曲だった。このまま世に放てば十分ヒットすること間違いなしだろう。
聴き終えた柚はヘッドフォンを置いて、そんな風な感想を伝える。それを聞いた兄は目つきを鋭くして柚に迫った。
「んなくだらんおべんちゃら聞き飽きてんだよ。もっと素直に、お前が感じたこと全部話せ」
軽薄を絵に描いたような兄の凄んだ表情。柚は初めて見るそれに動揺しながらも、これまでに無い真剣さを感じ取った。
十分ヒットするという感想は嘘ではないことを断っておいてから、自分の感じた率直な感想を述べる。
「イントロがちょっとくどいかな。あくまでもこの曲の入りなんだから、もう少しあっさりした方が聴き入りやすい。あとは二サビ目のところは思い切ってBメロを省いてサビに行った方が気持ちいいかも。もう一つ、ここのコードの進行だけど…」
こうした方がもっと良くなるという自分の直観を素直に話す。自分なんかが偉そうに何を言っているのかと思いつつ、その言葉と真摯に向き合い受け入れ、時には反論しつつも実際にコードを弄って取り入れていく兄の姿に次第に楽しくなってくる。
こうした方がいい、ああした方がいい。ここは変えないで行くべきだ、拍を崩して変調するべきだと言い合って、更に洗練されていく音楽へと成長していく。その様があんまりに美しくて楽しくて。近頃忘れかけていた大事なことを思い出していくようだった。
音楽には総合的な才能が必要だ。これさえあればなんてものはない。でも、音楽を作る上で必要なものはある。それは「音楽を楽しむ心」だ。それを失ってしまうと心の潤いは失くなり空虚な音しか奏でられなくなる。
そんな大切なことを思い出した。
気付けば陽も落ちて月が浮かぶ時間になっていた。時計を見てみれば短針は7を指している。夢中になっている間に5時間以上は経っていたようだった。
「やっぱり、柚は耳が良いよな」
「耳?」
音を其々の楽器の階層毎に捉えていて、どこでどんな風にどの楽器が使われているのかが分かる人が居るらしい。柚は正にそれができる耳を持っていると言われて、本当にそうなのかと疑いそうになる。何の才能も持っていない筈の自分が本当にそんなものを持っているのか。…持っていても良いのか。そう考えて心が澱のように濁る。
「俺にはできないことだぜ。誇れよ、それはお前の立派な武器になる」
いつも背中を追っていた存在からそんな言葉を掛けられて、柚は思わず眦に涙を浮かべる。濃い霧で前が見えない深い森の中を彷徨っていた彼にとって、それは地獄に垂らされた蜘蛛の糸の如き光明だった。
積み重ねてきたものは無駄ではなかったのだと。初めて認められた気がしたのだ。
それからの柚はと言うと、兄と一緒に曲を制作することが多くなった。兄が曲の骨格を作ってきては柚も交えて議論を交わしながら音を磨き上げていく。その合間に作曲の基礎や技術を教わる。
自分にできない沢山のことが兄はできる。反対に、兄ができない少ないことが自分にはできる。互いに互いを補い合って良い音楽を作っていくことがとても楽しかった。インターネットの海に送り出した曲が何万回も再生された時には肩を組んで喜び合った。
勿論、その間にも様々なコンテストに挑戦することも忘れない。一度だけ、アマチュアのベースコンテストで一位に選ばれたが。それ以外は相も変わらずでやはり一位は獲れない。心無い言葉も聞こえてくる。少し前の柚なら深刻に捉えていたそれらも気にならなくなってきた。それ以上に音楽に対するワクワクが押し寄せてきている。
上手く乗りこなせないじゃじゃ馬な音楽をいつか乗りこなしてみせると、今までになかった闘争心が湧いてくるようだった。
「──音楽、辞めたって良いんだぞ」
ある日、父は突然そんなことを言ってきた。
父は…夕凪和希は優しい人である。だが、それ以上に間の悪い人でもあった。
まさか唐突にそんなことを言われると思っていなかった柚は、上手く回らない舌とカラカラに乾いた喉を何とか動かして何故そんなことを言うのかを尋ねた。
父は何かを躊躇っているような、憐れみを抱いているような。腹を括ったような表情をして重苦しく口を開く。
「私も、母さんも、そして琢音も。音楽の世界に身を置いてきた。そんな家庭に産まれたものだから、柚も音楽の道を望まずに歩み始めたんじゃないかと、そう思ってな」
「……何を言ってるんですか」
「幼い頃から柚はよく努力をしてきた。誰よりも楽器に触れ、真摯に向き合っていたと確信を持って言える。…それだけに一位を獲れない屈辱は並々ならぬものだったろう」
訥々と語る父は柚の顔を見ない。彼に寄り添っているように見えて、その実肝心な今を見落としている。
「周りからも散々なことを言われてきたのを私は知っている。それでも、私はお前を強い子だと思って敢えて何もしなかった。だが…それは間違いだったんじゃないかと最近思い始めたんだ。お前を追い詰めていただけなのではないかと。…私は知らなかった。お前が泣きながら自分の演奏を聴き直していたのを、母さんに聞くまで知らなかったんだ」
違う。的外れだ。何も分かっていない。そう言いたいのに喉は震えない。言葉が何も出てこない。
「私は、お前に音楽を嫌いになってほしくない。傷付きながら音楽をするくらいなら離れてほしいんだ。幸運なことにこの世界には色んなものがある。音楽よりももっと向いているものがあるかも知れん。…兎に角、私も母さんも、お前に傷ついてほしくない。大事にしたいんだよ、お前のことを」
なんでそんなことを言うんだろう。
なんで大人は子どもの気持ちを勝手に想像して分かった気になるんだろう。
なんで父さんは俺が音楽をしたいって気持ちを分かってくれないんだろう。
「俺は、俺は本当に音楽が好きで、辛いなんて思ったことなんてないよ。辛いこともあったし、傷ついたこともあったけど、全部引っくるめて音楽のこと好きなんだよ。音楽辞めたいなんて、1秒たりとも思ったことなんてないんだ…」
「もう良い。もう良いんだ柚」
泣きじゃくりながら言う俺を、父さんは何を思ったのか…。抱きしめて背中を摩ってくる。もう良いんだ、なんて。笑っちゃうくらい自己満足の言葉を囁く。それはアンタ自身に向けた言葉だろうに。
もう放っておいてくれよ。アンタと話すことなんて何も無い。俺は音楽が好きだからやるんだ。それ以上でも以下でもない。だから勝手に俺の気持ちを想像して悦に浸ったんじゃねえよ。
アンタのこと尊敬してたってのに、今はもうアンタの顔見たくない。声も聞きたくない。一緒に居たくない。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
「はぁ…」
勘違いも甚だしい父親の抱擁から抜け出した柚は、自室で深い溜息を吐いた。溜息は幸せが逃げると言うが、荒ぶる気持ちを落ち着ける為には息を吸って吐くのはとても大切なことだと彼は思っている。
「…なんか弾こう」
それでも抜け落ちない苛立ちを紛らわす為に、柚は傍にあったギターに手を伸ばす。
上手くいかなくて落ち込んだ時。物に当たってしまいそうなほど苛立った時。いつも彼は音を奏でて感情のピークが去るのを待つ。決められたコードをなぞると、自然と気持ちも落ち着いていくものだ。
今日はバラードでも弾きたい気分。スマホで洋楽のバラードの譜面を検索して、いつものチェアに腰を据える。ピックを取り出して、チューニングをして、いざ弾かんと弦に手を掛けた。
「……なんだ?」
しかし、彼の指は動かない。小刻みに震えるだけで音を奏でられない。まるで自分の指が意思を持って拒否しているような。そんな感覚。
ギターだけではない。ピアノも弾けない、ドラムも叩けない、リコーダーすらも吹けない。それどころか、音楽というもの全て何もかもが、フィルターを掛けられたかの如く受け付けなくなった。
視界がボヤける。呼吸が荒くなる。思考が止まる。今まで当たり前に聴けていた音楽全般が、彼の耳にはただのザラついたノイズにしか聞こえなくなっていた。
頼りない彼を彼たらしめる御守りが。彼の少なくない人生を注ぎ込んだ「好き」が。何もないその手から全てが零れ落ちていく…。
「…俺が何したってんだよ。なんで、俺ばっかり、こんな…」
計り知れない悲しみの中、彼は譫言のように呟き続ける。
恵まれた少年の不幸な出来事は誰にも知られることはない。たった一瞬で全てが反転してしまった世界で、彼の苦悩に寄り添う人間は現れることはなかった。
数年後、救いたい彼女の音楽と出会うまでは。
☆
部活動に入り、生徒会に所属し、友達を作って、異性と甘酸っぱい時間を過ごす。ありふれた日常は愛おしいと思うのに、同時にぽっかりと穴が空いた寂しはずっと彼の中に棲んだまま。
音楽から離れてもう五年になる。離れると言うよりかは強制的に離されたとでも言うべきか。好きなものが確かにそこに在るのに触れられないもどかしさは誰にも分からない、分かって堪るかとと柚は思う。
「…いっそ死ねたら楽なんだろうけど」
呟いて、動画サイトをスクロールする。もどかしさを断つために死を選ぶには、まだこの世界に未練がある。
今この家には柚一人。他の家族は揃ってアメリカだ。
彼の心に寂しさはない。あの日からずっと、彼は家族を「血が繋がっただけの他人」だと思っている。何でも好きにしてくれれば良いと思っている。
とは言え、何か音が無いと落ち着かない。音楽だけは綺麗さっぱり聞こえないのだから尚更。
「…ん、何だコレ」
ふと、真っ暗なサムネイルが目に入る。動画時間の横に音符のマークが付いているので何かの曲みたいだ。
真っ暗なサムネイル。仮題としか書かれていない動画タイトル。どう見ても怪しいその動画を、柚は好奇心のままクリックする。これで架空請求が来ても親父の名前を借りれば良いだろうと思いながら。
「……何だ、これ…!」
果たしてその動画から放たれたのは、余りにも鮮烈過ぎる音楽。何年もの間聞こえなかったものが突如として聞こえてきた衝撃を噛み締める間も無く、感情の濁流とも言うべき音が次々と柚の鼓膜を震わす。
聴き終える頃には息切れをしていた。兎に角心に届いて欲しいという作曲者の意図がここまで近くに感ぜられたのは生まれて初めてだった。
「…まだまだ粗削りだけど、この音楽には何かがある。思考を置き去りにして心を只管に動かされるような、そんなスゴ味がある」
気付けばその音楽のコードを細かく音楽ソフトに入力し、彼なりのアレンジを加えていく。人生がガラリと変わるような予感と情動に身を任せて、あっという間に仕上げてしまった。
その時の楽しさは筆舌に尽くし難い。あの日あの時に失くしてしまった忘れ物を取りに、無邪気な子どもに帰るような心地良さがあった。
「作曲者は…K?捻りのない名前。でもそれが良いのかもな」
貴方の音楽活動に携わらせていただきたいという旨の文章と、アレンジを加えた音楽ファイルを添付して送信する。
外を見ればボンヤリと明るくなってきている。朝食を摂って、制服に着替えて、歯磨きもして…と考えている内に、柚はパタリとベッドに倒れ込み寝息を立て始めた。夕凪柚、人生初のサボタージュである。
これが彼とK、そして後に加わる仲間たちが交わる転機であった。
〜オマケ〜 バチャシン勢とのエリア会話集
・ニーゴミク
「そういやミクって普段何食べてるんだ?」
「特に、何も。偶にセカイに持ち込まれたカップラーメンくらい」
「カップラーメンか。悪く言うつもりはないけど、飽きちゃわないか」
「うーん…?」
「そんなミクに朗報だ。俺のイチオシの食べ物を今日は持って来てるんだ。あげるわあなたに」
「ありがとう。これは…?」
「サラダチキンのバータイプさ。バジル味にスモーク味、プレーンにチーズにガーリックもあるよ」
「オススメは何味…?」
「王道を征くバジルかな」
「ん…じゃあ、いただきます。……美味しい」
「だろ?他にも沢山あるからたんとお食べ」
「サラダチキン…好き」
「またサラダチキン好きを増やしてしまったかな」
「ねぇ〜ミク。カップラーメンの新味が出たからさ、また食べ比べしよーよ」
「…サラダチキンも食べたい」
「……サラダチキン?」
・ニーゴリン
「…39.6度って。こりゃ重症だな…。解熱剤飲まないと…」
「どこに入ってるか教えてくれたら取ってきてあげるけど」
「ダイニングのテーブルのビニル袋の中…。水も取ってきてくれたら嬉しい」
「了解。林檎剥こうと思うけど、食べれる?」
「うん…。や、どうだろう…。喉の調子も終わってるし…」
「摺り下ろしてゼリー状にしておく。それで良い?」
「ありがとう…。あ、この体調不良の感覚をメモしときたい…」
「さっさと寝て」
「なあリンちゃん。昨日俺の家に来た…訳ないよな…」
「…夢でも見たんじゃない。夢にまで私が出てくるって、どれだけ私のこと好きなの?」
「そうかな…。そうかも…」
・ニーゴレン
「自信を付けたい?」
「うん。柚なら何か効果的な方法を知ってるんじゃないかなと思って」
「そうだな。言動から入ってみるってのはどうだろう。ちょっと待てよ………はい、これ。このメモに書かれてる内容をハキハキとした声で言ってみてくれ」
「……これ、本当に言うの?」
「やってみるだけタダさ」
「う、う〜ん……。か、鏡合わせのように正確な音色で鏡音!洗レンされた歌声と書いてレン!鏡音レンを、どうぞよろしく!」
「良いじゃん、良いじゃん!その調子」
「出力12000%、鏡音レン!いざ羽ばたかん!ハーッハッハッハ!」
「ふっ…ククッ…。めちゃくちゃ良いよ」
「…もしかしなくても揶揄ってるよね?」
「そんなこと…ふふっ、無い無い。俺は本気だよ。半分くらいは」
「ちょっと柚!マジメに考えてよ〜!?」
・ニーゴルカ
「口角は上げすぎない方が良いわ。刺々しい感じになっちゃうもの」
「上げすぎない。上げすぎない…」
「う〜ん。もう少し目元は柔らかく」
「目元…こうか?」
「そうそう、それで出来るだけ感情に蓋をして…」
「感情に蓋…。うん、これでどうだ」
「おお!そこだけは随分上手くいったわねぇ」
「なんか一言多いけど、どうもありがとう」
「それにしてもどうしたの急に。上手な笑顔ができるようになりたいなんて」
「いや、俺けっこー笑いのツボが浅いからさ。ポーカーフェイスができないんでいっそ笑顔のまま居れたら『強い』かなって」
「ふぅん?で、それを習得してどうするの?」
「分かんないか?今度こそアンタにババ抜きで勝つのさ!」
「ふふっ。無謀な男の子は嫌いじゃないわ」
「アンタに苦渋を舐めさてやる!」
「あの二人またやってる。飽きないのかな…ミク?」
「…ん、ごめん奏、聞いてなかった。なに?」
(…混ざりたいのかな)
・ニーゴMEIKO
「それで、冬の花火ってのもまた良い感じに映えてて…」
「花火…。そんなに綺麗なら一度は見てみたいわ」
「春の花火も、夏の花火も、秋の花火も。ニーゴの皆んなで見たいな」
「夏の印象が大きいけど、他の時期も普通にやるのね」
「夏の専売特許じゃないのさ。後は色んな屋台から漂う美味しい香りなんかも楽しんでほしい」
「それは難しいんじゃないかしら。視覚・聴覚なら問題ないけど、嗅覚となると実際セカイに用意でもしないと」
「え、初めからそのつもりだけど」
「うん?」
「やっぱり市販の花火じゃ物足りないから、そこは爆破の専門家の彼にお願いするとして。やっぱり問題は屋台の設営、それから調理を担ってくれる人材の確保だな。折角ならとびっきり満足のできるようなものを提供したいし…」
「………程々にしておきなさいよ」
・ニーゴKAITO
「KAITOからの俺の印象ってどんな感じなの?」
「…俺はお前。お前は俺。それだけだ」
「なんだそりゃ。ペルソナ?超17号?」
「お前のアイツらへの身を削るような献身は、心底理解し得んがな」
「献身って。そんなつもり一切ないんだけどな」
「じゃあなんだ。全部必要経費だと言いたいのか?お前が大切にしたい存在は、そこまでしなければ成り立たないのか?」
「違う違う。俺にできることを全部しておきたいだけだから。謂わばお節介。気にしなくて良い外野の声を聞いたり、妥協に妥協を重ねて没個性になったり。それで言い訳したり落ち込んだりする姿を見たくないだけ」
「フン…自己満足だとでも言いたそうだな。そこだけはやはり理解できない」
「裏を返せば、それ以外は理解できるってことになるけど」
「俺はお前の激情に呼応して来たんだ。分からないことの方が少ない」
「え?……え、そうなの!?」
オリ主くんにもそこそこ重たい過去がありますが、全体的に救いのあるキャラには仕立てているつもりです。熱異常だったニーゴがナンバーナインになるくらいには光属性でしょう。
ニーゴKAITOについてですが、個人的に「この4人からここまでの激情溢れるKAITOさんが生まれるもんなのか…?」という疑問があったので、急遽オリ主くんに呼応して来てもらったことにしました。要らないものは全部取っ払って進んでほしいという強い想いを持つ者同士、みたいな。