誰がマジカルゴリラじゃい!   作:社畜だったきなこ餅

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この谷展開期間は割と四苦八苦して描いておりました(唐突な自白)


25話 残酷な真実

 

 

麗達がロンロンの出自についての話をさらに詳しく聞こうとした時に、孤児院の入口の方から響いた悲鳴。

 

その悲鳴の中に孤児院の弟分や妹分の声が混じっている事に気付いたロンロンは、麗達が動くよりも早く弾かれたように走り出していた。

 

一拍遅れる形にこそなるも麗達もロンロンを追いかける形で、悲鳴の出所へと駆け付ける。

そして、その場所で麗達が目の当たりにしたもの。

 

 

「王子様、お迎えに上がりましたよ」

 

「お迎えって割には随分と仰々しいのであるな」

 

 

それは、二階建ての家屋程の巨躯を誇る竜達を従えた竜の女性……ウェルロスの姿であった。

 

ウェルロスは酷薄な笑みを浮かべながらロンロンへ一礼と共に口上を述べ、ロンロンはウェルロスが抱え込むように首根っこを掴んでいる少年に気付くと声を荒げる。

 

 

「テンテン?! お前!我輩の弟分を放すのである!」

 

「まぁ王子様、そんな事言わないで下さいませ。こんな下等生物が貴方様の弟分なんて、お父様が悲しみますわ」

 

 

ロンロンは目を見開いて牙をむき出しにしながら叫び訴えるが、ウェルロスは聞き分けのない子が癇癪を起こすのを見るかのように首を横に振ると、その鋭い爪を兎耳の少年テンテンの頬へゆっくりと這わせて傷をつける。

 

 

「ろ、ロン兄ちゃん……たすけて……!」

 

 

幼い少年は自身の頬を切られる痛みに涙を目に浮かべながら、必死な声で頼り懐いていた兄貴分であるロンロンに救いを求める。

 

 

「おっと、そちらの魔法少女は動かないで下さいね? じゃないと私、びっくりして爪に力が入ってしまうかもしれません」

 

「ぐぅ、ぎぎぎぎぎ……!」

 

 

怒りの鉄拳を裂帛の気合と共に叩き込むべく飛び出そうとしていた麗こと、マジカルウララの様子にウェルロスは少年を盾にする仕草と共に言葉を放つ。

 

その言葉にマジカルウララは急制動と共に止まり、悔しそうに歯軋りしながらウェルロスを強く睨みつける。

 

ウェルロスの牽制は尻尾から何かを取り出そうとしていたコンコンにも向けられており、今この状況に置いて有効な手立てを打つ手段はほぼ皆無と言えた。

 

故にロンロンは必死に頭を回し、少しでも注意を逸らし情報を引き出す為にも言葉を紡ぐ。

 

 

「……いくつか質問があるのである、我輩をどうするつもりであるか?」

 

「何を言い出すかと思ったら……勿論、貴方様を竜の巣の新たな王として迎える為でございますとも」

 

「こんなやり方で連れていかれた我輩が、お前の思い通りに動くと本気で思っているのであるか?」

 

 

少しでも隙を作ろうと言葉を紡ぎ続けるロンロン、しかし彼の虚勢混じりの言葉にウェルロスは耐え切れなかったのか、まるでロンロンを嘲るかのように哄笑をあげた。

 

 

「アハハハハハハハ!なんて、なんて愚かで健気な仔竜なのでしょう!自身に付けられた刻印にも気づかないほどに、竜について無知であるのにこの私を出し抜こうなんて!」

 

 

先ほどまでの形だけでもロンロンを王子と呼び、僅かなりとも敬う姿勢を見せていた女の変貌にロンロンのみならず麗達もまた絶句する。

 

 

「お主、まさかロンロンの卵を預けた女性の姉妹か……?」

 

 

その中で、遅れてやってきた亀の院長は哄笑を上げ続けるウェルロスの顔に気付くと、その目を見開いて愕然とする。

 

 

「下等生物などに教えてやる義理などないですが、ええそうですとも。あの忌々しい姉と血が繋がっていたなどとは考えたくもありませんがねぇ!」

 

 

哄笑を止めたウェルロスは上機嫌そうに語りながら、自らの言葉で機嫌を急下降させたのかその目を吊り上げると傍に控えさせていた竜達に合図を送る。

 

その様子にコレはいかんと亀の院長、そしてコンコンが一歩前へ進み麗達と孤児院を守る為の結界を張った瞬間。

 

竜達の口から放たれた雷撃、吹雪、業火と命を消し飛ばすにはどれか一つでも事足りる殺意の吐息が放たれた。

 

その猛攻にコンコンと亀の院長は苦悶の声を漏らしながらも、何とか致死の吐息から麗達と孤児院を防衛する事に成功した、しかし。

 

 

「何と言う破壊力じゃ……」

 

「年は取りたくないものですなぁ」

 

 

マジカルウララと怪人の戦いの余波が市民等に及ばぬよう日頃から片手間に結界を張っているコンコンや、魔法の国の防衛隊に長年所属していた亀の院長ですら辛うじてしのぎ切れるほどに強力な吐息に二人は消耗を隠し切れないのか息を荒げる。

 

 

「ちょっとあなた?!ロンロンを連れ戻すと言いながら殺意マシマシの攻撃を指示するとか何を考えていますの!?」

 

 

コンコンと亀の院長の消耗、そしてロンロンに対して余りにも配慮が無さすぎる傍若無人な振る舞いをするウェルロスに対し、マジカルウララは憤然冷めやらぬと言った様子で叫ぶ。

 

しかし、マジカルウララの叫びに対してもウェルロスの態度は冷ややかなものでしかなかった。

 

 

「そこの哀れな仔竜の死体が残る程度には加減させましたよ?」

 

「死体って……自分が何を言っているのかわかっていますの!?」

 

 

余りにも酷薄過ぎるウェルロスの返答に対し、ロンロンが目を見開いて呆然とする中マジカルウララは最早咆哮と言っても差し支えない程に、怒りの叫びを上げる。

 

 

「何って……だって必要なのはそこの仔竜、『バハムート』たる器さえあれば良いですもの。命や魂など些細なものです」

 

「器じゃと、まさか、お主……?!」

 

ウェルロスは今も人質に取っている少年をどうでも良さそうに放り投げながら、もはやロンロンへの隔意も隠そうとすることなく言い放つ。

 

ウェルロスが言い放った器と言う言葉に、亀の院長は目を見開くと声を震えながら声を絞り出す。

 

 

「偉大なる竜王様、あの御方を復活させるための依り代でさえあればよいのです」

 

 

亀の院長の言葉に対してウェルロスは上機嫌そうに応じると、その無機質かつ冷ややかな光を目に宿した目をロンロンへ向ける。

 

 

「さぁ、一切合切殺し尽くされて死体となって運ばれるか。自らの意思で来るか選びなさいな、仔竜」

 

 

俯き無言で肩を震わせるロンロンに対し、最後通告のようにウェルロスは言い放つ。

 

否、実際その言葉は最後通告なのであろう。

 

 

「そんな言葉聞く必要ありませんわロンロン!」

 

「そうじゃ、間抜けめ!人質を放すなど片腹痛いわ!」

 

 

少年、テンテンが放り出された時から隙を伺っていたコンコンが掻っ攫う様に少年を救出した瞬間、カタパルトで発進する戦闘機のように飛び出しながらマジカルウララはロンロンへ呼びかける。

 

 

「この性悪女め、成敗してやりますわ! マジカルパァァァンチ!!」

 

「ふぅ、下等生物と言うのは度し難いものですね。やりなさい」

 

 

貯めに貯めた怒りが振り切れそうなマジカルウララは、最低限の手加減すら思考から放り出しながら全身全霊の鉄拳をウェルロスの澄ました顔面へ叩き込もうとする。

 

しかしウェルロスが嘆息すると同時に後ろに飛びのくと、彼女とマジカルウララの間に一匹の竜がその大きな腕を振り下ろし、とてつもない衝突音を辺り中に響かせる。

 

 

「あら驚きました、下等生物の身なのにドラゴンの一撃を拳一つで弾き飛ばすとは思いませんでしたね」

 

「そうやって余裕ぶるのも今の内ですわー!ぶちのめしてさしあげますわぁぁーーー!!」

 

 

その顔面をピカソの名画みたいにボッコボコにしてやりますわー!とマジカルウララはお嬢様どころか魔法少女としても甚だグレーゾーンな事を叫びながらウェルロスを猛追。

 

しかしウェルロスは軽やかに身をかわしながら次々とドラゴンをマジカルウララへ差し向ける。

 

 

「亀よ!救援は!?」

 

「……通信が遮断されております」

 

「なんじゃと……?!」

 

 

マジカルウララが八面六臂の大暴れをしている間に、魔法の国の救援を呼べるか亀の院長へ確認したコンコンであるも、返ってきた言葉に絶句すると慌てて空を見上げる。

 

一面に広がる青空には、雲一つ浮かんでいなかった。

 

 

「やっとお気づきになりましたか、既にここは殺し間。そこの下等生物が幾ら強いと言えども、どこまで独りで戦えますかね?」

 

 

通算5匹目のドラゴンを鉄拳で地面に沈めたマジカルウララの様子に、戦力評価と警戒度を若干上げつつもウェルロスは自身の有利を一切疑う事無く嘲笑を浮かべる。

 

並の魔法少女では一匹でも勝てるか怪しい巨体を誇るドラゴン、それを立て続けに五匹も地面に沈めたマジカルウララは紛れもなく超ド級の戦力と言える。

 

しかし。

 

 

「まだまだ、こちらの戦力は無尽蔵。さぁどこまで頑張れますかね?」

 

「しゃらくせえですわーー!!」

 

 

マジカルウララには有効な遠距離攻撃がない、勿論マジカルウララもただのゴリラではない。

 

時折回避行動としてローリングをしながら地面に落ちている石を拾っては、ウェルロスへ投げつけているのだがその程度の一撃は簡単にいなされてしまい有効打となっていなかった。

 

そしてマジカルウララは度重なる巨竜達の猛攻により、コンコンや亀の院長の援護もあるとはいえ加速度的に損害を受けており身に纏う魔法少女衣装もまたボロボロにされてしまっている。

 

ロンロンはその光景と家族の姿を目に焼き付けると、その目に覚悟の光を宿しぽてぽてとゆっくりとした足取りでウェルロスへ向かって歩き始めた。

 

 

「ば、ばかたれ!ロン坊!とまれ、止まるんじゃ!!」

 

 

ロンロンのその行動に、彼が何をしようとしているか悟ったコンコンは悲鳴のような叫びを上げてロンロンを制止せんと声を張り上げる。

 

だがロンロンの決意は、固かった。

 

 

「もうやめてほしいのである、我輩はついていくから。攻撃をやめてほしいのである」

 

 

怯えとも違う何かを含んだ、震えるような声でロンロンはウェルロスへ告げた。

 

 

「ロンロン!? 何を考えていますの!?」

 

 

そのロンロンの言葉はドラゴン達と死闘を繰り広げていたマジカルウララの耳にも入り、彼の下へ駆けつけようとするがドラゴン達が幾重にもその行く手を阻む。

 

 

「とうとう自分の立場を理解しましたか」

 

「その代わり、最初で最後のお願いなのである。孤児院の皆とウララ達を見逃してほしいのである」

 

 

ロンロンが懇願するような声で必死に訴え、その哀れ過ぎる姿にウェルロスは愉悦を覚えて歪な笑みを浮かべた。

 

 

「ええ、いいでしょうとも」

 

「ダメですわロンロン!えぇい!このぉ!邪魔ですわぁぁぁ!!」

 

 

上機嫌そうに哄笑するウェルロスと対照的に、マジカルウララは立ち塞がるドラゴンを片っ端から殴り飛ばしながらロンロンの下へ駆けつけようと足掻く。

 

 

「ダメじゃ!行くなロンロン!……あぐぅっ?!」

 

「そうじゃ!お前がこれ以上苦しむ必要は……ぐはぁ!?」

 

ドラゴン達に阻まれたマジカルウララに代わり、コンコンと亀の院長がロンロンの決意の足取りを止めようと駆け寄る。

 

しかしその二名の必死の呼びかけと行動は、立ちはだかったドラゴンの尻尾の一撃で容易く吹き飛ばされてしまった。

 

 

「ウララ、コンさん、亀爺ちゃん、それと孤児院の皆」

 

 

口々に行くな、止まれと呼びかけてくれる仲間と同僚と家族の言葉にロンロンは決意が鈍りそうになりつつも、精いっぱいの笑顔を浮かべて振り返る。

 

 

「みんな今までありがとうなのである、そして」

 

「サヨナラ、なのである」

 

 

そう言い残し、ロンロンはウェルロスの手によって虚空に溶けるように連れ去られてしまった。

それと同時に先ほどまで暴れていたドラゴンや、マジカルウララの鉄拳によって地面に沈んだドラゴン達もまた虚空へと消えていく。

 

残されたのは激しい戦闘の痕跡と。

 

大事な仲間であり、家族を目の前で奪われた一人の魔法少女の慟哭であった。

 

 

 






【マスコット達による解説劇場~今回はお休み~】
『連れ去られたロンロンを取り戻す作戦を練る為、今回はお休みいたします』
そう書かれた看板が扉に提げられている。
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