誰がマジカルゴリラじゃい!   作:社畜だったきなこ餅

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本作を読んでくれてる知り合いから言われた事があります。
「マジカルゴリラってギャグとコメディでごまかしてるけど、たまに隠しきれてない闇が噴き出るよね」って。

大変遺憾である。


31話 慟哭と咆哮

 

 

竜の巣の逆巻く大気の中心に鎮座する、巨城の跡地。

 

かつては荘厳で勇壮な姿を誇っていたであろうその場所は今やかつての面影はなく、竜王の根城であった玉座が如き広間もまた、壁面がひび割れ穴が空いた天井からは光が差し込んでいた。

 

そして、その場所に二つの人影がいた。

 

人影の一つはロンロンを攫った竜の雌、ウェルロス……彼女はマジカルウララ達と相対していた時からは想像もつかぬほどに、まるで長年引き裂かれていた想い人に再会できる年若い乙女のように高揚した表情を浮かべていた。

 

 

「ああ、竜王様。まもなく、まもなく貴方様に今一度お会いできます」

 

 

両手を広げ恍惚とした表情のまま呟くウェルロス、彼女の視線の先には成体の竜に見劣りしない程に大きな体をし、瞳を閉じている竜が横たわっていた。

 

眠りに就くその巨竜の周囲には怖気と嫌悪感を本能的に呼び起こさせるかのような、瘴気のような黒い霧が纏わりついている。

 

 

「偉大なる貴方様と違い、忌々しい姉のような鱗をしている事だけが心残りですが……貴方様、竜王様が蘇るのならそれも些細な事です」

 

 

ウェルロスは視線の先で眠る巨竜、かつてロンロンと呼ばれていた何も知らなかった無知な仔竜を哀れむような目で見ながら、ゆっくりと今までの事を夢想する。

 

ウェルロスにとって姉は昔から大事で尊敬していた。

否、忌々しい事に常に自分より先に行く女だった。

 

誰にでも分け隔てなく優しく、その優しさに落ちこぼれと言われたウェルロスもまた救われ。

否、ウェルロスだけは知っていた。自分に差し伸べられた言葉と手に姉の優越感が滲み出ていた事を。

 

 

「だからこそ私は、お姉様が竜王様の伴侶に選ばれた時誇らしかった……否!そんなことない!私はずっと姉を憎んでいた!!」

 

 

あと一歩で敬愛していた竜王に再会できる喜びから過去を想起し、両立する筈のない思考と感情にウェルロスは自身の頭を両手で押さえ、悲鳴交じりの絶叫を上げる。

 

自分が姉を愛していた筈がない、姉が竜王の卵を産んだことが誇らしかったはずがない。

憎かった!羨ましかった!許せなかった!そのはずなのに、心のどこかでソレは違うと叫ぶ自分がいる事に、ウェルロスは髪を振り乱しながら叫ぶ。

 

 

「違う違う違う違う!!私は!私はぁぁぁぁ!!」

 

 

半狂乱になりながら悶え苦しむウェルロス、何か致命的な間違いと行為を自身が犯そうとしていると必死に心のどこかが訴えかけ、それに対して反発する心という相反する感情のせめぎ合いに竜の乙女が狼狽する。

 

しかし、その時ウェルロスの周囲に眠りに就く巨竜の周囲に舞っている者と同じ黒い瘴気が沸き起こり、それらがもだえ苦しむウェルロスの体の中へ次々と入り込んでいく。

 

明らかに生命に対して害を為しそうなソレを受け入れたウェルロス、しかしその顔は先ほどまでと違い酷く落ち着いた表情を取り戻していた。

 

 

「ふぅ……ダメですね、竜王様の復活が近づくにつれて我を忘れる事が増えるなんて。これでは竜王様に失望されてしまいます」

 

 

半狂乱になり振り乱した事で乱れていた髪を軽く手で払い整えるとウェルロスは振り返り、玉座の魔に続く入口の方へ向き直る。

 

 

「ここから先は竜王様が新生するための場所、下等生物はお引き取りくださいませ」

 

 

振り返ったウェルロスの視線の先には3人と一つの人影、竜がひしめく竜の巣の道中を駆け抜け中央にまで突入を果たしたマジカルウララ達であった。

 

 

「あの、心の病気でしたら良い病院知ってますわよ?」

 

「藪から棒に失礼ですねこの下等生物、ですが私は今は機嫌が良いのです。外で暴れている連中も含め引き返すなら、命までは取りませんとも」

 

 

自分達が入口にまで到達したというのに尋常でない様子で取り乱し半狂乱になっていたかと思えば、変な靄を纏ったら急に冷静になったウェルロスの様子にマジカルウララは仇敵ながらドン引きと共に一つ忠告を送る。

 

ウェルロスはその言葉にコメカミをヒクつかせながら、しかし竜王の復活に水を差すわけにはいかないのでとっとと帰るよう言い放った。

 

 

「ねぇコンコンさん、あの黒い靄何?なんかすごくいやな感じなんだけど……」

 

「……わからぬ、一体アレは何だというのじゃ……?」

 

 

一方でマジカルウララとウェルロスが舌戦を繰り広げている間に、シューティングスターはいつでも攻撃を仕掛けられるよう心構えをしつつ、ウェルロスの体を包んだり今も中心に位置する巨竜を取り巻く黒い靄についてコンコンへ問い掛ける。

 

しかし、コンコンの記憶にも存在しないソレを説明する術はコンコンにもなく、小さく首を横に振るのみである。

 

だが、唯一黒い靄について知る人物がいた。

 

 

「アレは、まさか……いや、しかし」

 

「執事殿、心当たりがあるのかの?」

 

「……かつての仲間達と共に、命懸けで討滅した輩が身に纏っていた物。それに酷似しております、しかし何故ソレがここに……」

 

 

マスクの下で驚愕に目を見開きながら爺やは信じられないとばかりに呟く。

 

仲間達と共に死闘を繰り広げた悪の組織の大ボス、合体巨大ロボとかけがえのない仲間達の命と引き換えに討ち果たした大敵が身に纏っていた、瘴気と呼ぶにふさわしい黒い靄。

 

それと同じだとは思えないが、しかしあまりにも酷似しているそれに爺やはアレと同じだとしたら非常に危険だと小さく呟く。

 

緊張感が高まるコンコン達を他所に、今もマジカルウララとウェルロスの舌戦は続いており。

 

痺れを切らしたマジカルウララは、横たわり瞳を閉じているロンロンに酷似した色の鱗を持つ巨竜を指さしながら咆哮する。

 

 

「そもそもなんですの、そのでっかいドラゴン!ロンロンはどこにやりましたの!?」

 

「どこに? 何を仰いますか、貴方達の目の前にいる方がそうですよ?」

 

 

マジカルウララの叫びを鼻で笑ったウェルロスが言い放つと同時に、瞳を閉じていたロンロンだった巨竜がその瞳を開く。

 

その瞳は朗らかで呑気ですっとこどっこいだったロンロンの面影など感じられない、殺意と狂気に染まった色をしていた。

 

 

「少しだけ早いでしょうか、だけどそれも些細な事です」

 

 

巨竜がロンロンそのものだというウェルロスの言葉にたじろぐマジカルウララ達、そんな下等生物たちの様子を鼻で笑いながらウェルロスは両手を広げ、その背後でゆっくりとその身を起こす巨竜を背後にしながら恍惚とした表情で叫ぶ。

 

 

「さぁ刮目しなさい、バハムートの器で蘇った偉大なる竜王様の復活を!!」

 

 

ウェルロスが叫ぶと同時に巨竜は立ち上がり、ロンロンの小さな翼の面影を感じられない天空を覆い隠せると錯覚するほどの翼を広げ、大地と大気を激しく揺るがせる咆哮を上げた。

 

 

その咆哮は外敵に対する敵意と、声にならない苦痛に満ちていた。

 

 

 

 





【マスコットによる解説劇場~魔法少女シューティングスターについて~】
「コンコンと」
「ポンポンの」
「「マスコット解説劇場~」」

「と言うわけでコンちゃ~ん、今日は何を解説するの~?」
「なんか爆速で馴染よったなお主、ともあれ今日は今回の殴り込みにも同行してくれた魔法少女シューティングスターについて解説するのじゃよ」
「あの子か~、なんだかシンパシー感じちゃうんだよね~」
「多分あやつはお主を裏切り者と思うやもしれぬがな」
「コンちゃん酷いよ~」

「ともあれ、あやつ……シューティングスターは言ってみればマスコットの力が介在しない種類の魔法少女じゃな」
「道具型変身タイプだね~、でもその道具は何処から手に入れたの~?」
「なんでも幼い頃に助けた魔法の国の住人から受け取ったらしい、そやつが戦えない間代理で魔法少女をやったのが始まりらしいのう」
「そうだったんだ~、でも小学生の時からだよね~?凄い子だ~」
「うむ、色々と愉快な事がある娘じゃがその性根は真っすぐで善良な娘じゃて」

「その時使っていた変身アイテムは昔の決戦で大破したらしいが、改めてシューティングスター専用に拵えられたアイテムで強化され、今に至るらしいのう」
「凄いな~、誰かに訓練とか受けたの~?」
「特にないらしい、全て己の発想と才能だけで駆け抜けてきておるのう」
「マジカルウララちゃんとは別方向でぶっ壊れだね~」

「シューティングスターちゃんは~、持っている装備の様子からロングレンジスタイルと見たけど合ってる~?」
「うむ、高い適正からなる高速飛行による相手の翻弄からの針の穴を通すかのような遠距離砲撃を得意としておるのう」
「凄いね~、クロスレンジに踏み込まれた時の対策もばっちりでしょ~?」
「そのようじゃのう、散弾のような光球を発射する事による近接防御から高追尾魔法弾の射出、さらには広範囲を爆破可能な魔法までお手の物じゃ」
「一人で狙撃兵と護衛戦闘機と爆撃機をやってるんだね~」
「……そう言われるとアヤツまじで大概じゃのう、そりゃ後輩の魔法少女から崇拝じみた尊敬を向けられるわけじゃわい」
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