誰がマジカルゴリラじゃい!   作:社畜だったきなこ餅

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実は今まで隠していたことがあります。
作者は実は、表向きはとぼけていたり闇を感じさせる気配がないトンチキがナマモノが。
実はとんでもない闇を抱えていたり、苦悩を内心に秘めていたと判明する展開が大好きです。


35話 再会との決別

 

時間は少しばかり、マジカルウララ達が駆けつける少し前にまで巻き戻る。

 

一度は意識を取り戻したものの瘴気に呑まれて暴走状態と言うに相応しい状態に先ほどまで陥っていたロンロンは、気が付けば廃墟とは程遠い荘厳な広間に佇んでいた。

 

 

「なんかもう、状況が目まぐるしく変わってついていけないのである……なんか我輩の体でっかいまんまであるし」

 

 

いつもとは比べ物にならないぐらい高い視点に戸惑いつつ、明らかに殺意に満ちた鉤爪が生えている自身の手を見下ろして大きな溜息を吐くロンロン。

 

 

「ゴリラ、じゃなくてウララとコンさん無事だといいのであるがなぁ」

 

 

とぼけた表情を浮かべつつ意識を奪われつつも、自身がやらかしていた凶行を覚えていたロンロンは鉛のように思い溜息を再度吐き出す。

 

しかしすぐに彼の表情は凍り付く。

 

 

「ぐ、ぐぉぉぉぉぉ……!」

 

 

ロンロンの目の前に瘴気が寄り集まり、やがてそれは漆黒の鱗に身を包んだ巨竜へと変化していくのを目の当たりにしたからである。

 

赤き鱗に全身を包んだ若き竜は、マジカルウララがいつもしていたように一足飛びにバックステップをして黒い巨竜から距離をとると、油断なくその竜の動向を見守る。

 

 

「から、だぁぁぁ……我が子よ……その体、我によこせェェェェェェェ!!」

 

「藪からスティックに何抜かしてやがるであるかー!」

 

 

ロンロンの目の前に現れた黒い巨竜は明らかに正気じゃない光を瞳に宿し、口からは涎を垂れ流しながらロンロンへと飛び掛かる。

 

その発言、行動に対してロンロンは驚愕しながら巨体に見合わぬ身軽さで慌ててその突進を躱す。

 

 

「第一息子とか知らんがな案件なのである!お前誰じゃいって話であるよ!」

 

「ぐぅぅ、るるるるゥゥゥゥ!」

 

「あかん!正気じゃないのである、瘴気だけに!」

 

 

びしぃ!と指を突き付けて心からの本音を叩きつけるロンロンであるも、肝心の黒い巨竜はまともに言葉を交わすどころか獣じみた唸り声を上げて再度襲い掛かる始末。

 

その様相に思わずボケるロンロンであるが、彼はふと思った。

 

そもそも全部コイツのせいなんじゃね?と。

 

そう思い至ったロンロンの行動は、たった一つであった。

 

 

「オルァァァァァ!!」

 

「グァァァァァ!?」

 

 

若き赤い竜ロンロン、迫りくる黒い巨竜に対しカウンターのような形でラリアットを敢行。

 

本来のロンロンの姿ならともかく、今のロンロンは黒い巨竜に負けない巨体……その巨体から放たれた怒りのラリアットは黒い巨竜を勢いよく吹き飛ばし、広間の壁へと叩きつけた。

 

 

「そもそもお前、ウララとコンさんに酷い事していたのである! 全力でぶっ飛ばしてやるのである!」

 

「ぐ、ぅぅぅぅゥゥ! 捨てられた息子の、分際デェェェェ!!」

 

「捨てたのはてめーなのである!」

 

 

翼をはためかせると同時に両足で踏み込み、爆発的な加速で迫りくる黒い巨竜に対してロンロン怒りのドラゴンヤクザキックで迎撃。

 

ロンロンの魂を込めたその怒りの一撃は黒い巨竜を吹き飛ばすと同時に、黒い巨竜の体を包んでいた瘴気の一部を散らしていく。

 

 

「ぐ、ぅぅぅぅ!我は!我はぁぁぁぁぁ!!息子よ!我ヲ殺せェェェェェ!」

 

 

それによって僅かに瞳に理性の光を取り戻した黒い巨竜はロンロンへ飛び掛かるのではなく、自身の頭を両手で抱え……再度自身を取り囲もうとする瘴気に対し、その体をよじり両腕を振り回しながら叫ぶ。

 

 

「我が子を殺そうとしただけでは飽き足らず!愛する妻をも傷つけた愚かな王を殺せぇ!お前には、その権利がある!!」

 

 

両の眼から血の涙を滝のように流し悶え狂う黒い巨竜……先代竜王の魂の慟哭に、ロンロンは全てを察した。

 

自分は確かに愛されていた、守られる筈であったと。

 

そして、その未来は悪意によって塗りつぶされ奪い去られたのだと。

 

 

「……我輩は、どうすれば……」

 

 

先ほどまでは燃え滾るような怒りが体を突き動かしていたロンロン、しかし父親と思しき黒い巨竜の叫びにロンロンは動きを止めてしまった。

 

父を想うなら介錯すべきだっただろう、母を想うなら直接的な仇であろう父親に惜別に鉄拳を叩き込むべきだったのだろう。

 

だが、それを決断する事は幼い竜であるロンロンには出来なかった。

 

 

「ぐぅ、ふぅ、ぐぁァァァ!逃げ、ニゲロ!ニゲテク、レェェ!」

 

 

そしてロンロンが立ちすくむ目の前で瘴気は竜王の体を包み込み……。

 

自我を喪失する直前まで我が子に逃げるよう訴えていた竜王は、理性の光を喪った瞳をぎらつかせながらロンロンへ飛び掛かる。

 

先ほどまでと異なり、戦意が衰えてしまったロンロンは迷いながらも自身に掴みかかろうとする黒い巨竜の両手を掴み、がっぷり四つに組み合う形で力比べに突入する。

 

 

「その体を寄越せェェェェェェェ!」

 

「名前と顔どころか声すら碌に知らんクソ親父にくれてやる体はないのであるー!!」

 

 

正気を喪い自身に咆哮する先代竜王に、ロンロンはやるせない感情と父親の心と魂を捻じ曲げる瘴気への怒りを胸に咆哮を上げる。

 

その時である。

 

 

「ロンロン!大丈夫ですの?!」

 

「ウララ!?危ないから下がっているのである!」

 

 

怪獣大決戦な取っ組み合いの最中、広間に響き渡った声にロンロンは力比べの姿勢のまま声がした方へ振り向き、一目散にこちらへかけてくるマジカルウララの姿に危ないから下がっていろと訴える。

 

しかしゴリラ、じゃなくてマジカルウララがそんな訴えで止まるワケがなく。

 

 

「おらっしゃぁぁぁ!ですわー!」

 

「グァァァァ!?」

 

 

駆け抜ける勢いのまま黒い巨竜の脛めがけ、水平飛行したのではないかと錯覚するほどの勢いで飛び蹴りを叩き込む。

 

ロンロンと力比べをする姿勢であった故に無防備だった足に痛撃を与えられた先代竜王は、苦痛の叫びを上げながら姿勢を崩した。

 

 

「隙ありぃ!なのである!」

 

 

そしてその隙を見逃すロンロンではなく、体勢を崩した先代竜王をそのまま抑え込みマウントポジションのような姿勢をとり、終わりを願っていた父親の想いに応えるべく右腕を高く振り上げる。

 

 

「そう、ダ。ソレで、イイ……」

 

 

マジカルウララ渾身の脛への一撃によって瘴気が一時的に散らされ、辛うじて正気をわずかながら取り戻した先代竜王は抵抗する事なく、瘴気にまた自分が蝕まれる前に止めを刺せと息子へ訴える。

 

 

「っ、~~~~~~~~!!」

 

 

その言葉にロンロンは目を見開き、しかしこれ以上苦しませるわけにはいかないと右腕を振り下ろそうとする、しかしその時である。

 

 

「ダメですわ!ロンロン!」

 

「でも、でも……!じゃあどうすればいいのであるかぁ!」

 

 

先ほどロンロンが叫んでいた言葉、そして竜の巣に赴く前に得た情報からマジカルウララは止めを刺そうとするロンロンに、そんな事してはいけないと訴える。

 

マジカルウララのその言葉に自分だってこんな事したいわけがない、だけどもしないといけないと涙を流しながらロンロンは叫ぶ。

 

 

「わたくしはノーアイデアですわ!ですけども!時間稼ぎはできますわ!」

 

 

ロンロンの叫びに対してマジカルウララは力強くノープランであると叫びながらも、先代竜王を再度取り込もうとする瘴気に怒りのマジカルパンチラッシュを叩き込むことで、先代竜王が正気を喪わないよう時間稼ぎに徹する。

 

どうすればいい、どうしたらいいと必死にロンロンが頭を巡らせる中……ロンロンが精神世界限定と言えど自意識を取り戻すきっかけになり、そしてこの精神世界にマジカルウララ達を導いた竜の女性ウェルラスはゆっくりとロンロンに抑えつけられた先代竜王へ近付く。

 

 

「うぇ、ウェルラス殿?」

 

 

たおやかな笑みを浮かべながら、今ももがき苦しむ先代竜王に近づくウェルラスが放つ気配にコンコンは若干しり込みしながら問いかけるが、返事はなく。

 

やがて先代竜王の顔の横にまで近づいたウェルラスは、力いっぱいロンロンに抑えつけられた先代竜王の顔面に鉄拳を叩き込んだ。

 

 

「いい加減、正気に戻りなさい!」

 

「ぐっはぁーーーー!?」

 

「えーーーーーーー!?」

 

「まさかの鉄拳制裁ですわー?!」

 

 

まさかのウェルラスの暴挙に先代竜王を抑えつけていたロンロンは言うまでもなく、今も正気を鉄拳制裁し続けているマジカルウララまで驚愕の叫びを上げる始末である。

 

ちなみにコンコンは、まさかとは思ったがマジでやるとは……と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

だがしかし、その一撃は確かに効果があったのか先代竜王の体から瘴気の束が逃げるように這い出していき、やがて広間からその姿を消していく。

 

 

「ふぅ……ちょっと無理しすぎちゃいました」

 

「お主、体が?!」

 

「透けてますわー!大丈夫ですの?!」

 

 

先代竜王の体に巣食っていた瘴気を根こそぎ追い出すのに力をほぼ使い切ったのか、ウェルラスの体はゆっくりと透明度を増していた。

 

それと同時に先ほどまで先代竜王に負けない巨躯を誇っていたロンロンの体は煙と共に小さくなり、いつもの寸詰まりマスコット体型へと戻ってしまう。

 

 

「小さくなったのであるー!?」

 

「あの瘴気によって、貴方の体は強制的に成長させられてたもの。しょうがないわ」

 

 

おわー?!と呑気な叫び声を上げるロンロン……我が子の姿にウェルラスは優しく微笑みながら、そっとその小さな体を抱き上げると、壊れ物を扱うようにその頭を撫でる。

 

 

「ごめんね、貴方を抱いてあげられなくて……成長を見届けられなくて……」

 

 

抱き上げられきょとんとした表情を浮かべるロンロンに、ウェルラスは微笑みながらその目尻から涙を零しながら謝り続ける。

 

 

「……すまなかった我が息子よ、我は……貴様を守るどころか。害する事しか出来なかった」

 

 

そして倒れ伏していた黒い巨竜もまた、理性の光を宿したその瞳でウェルラスに抱き締められているロンロンを見下ろすと、ウェルラスごとロンロンを抱きしめるかのようにその大きな翼で包み込む。

 

 

「我輩は、愛されていたのであるか?」

 

 

現実とは異なる精神世界、それでも心の奥底で願い続けていた家族の温もりを確かに感じたロンロンが小さく呟くと、ウェルラスは言葉もなくひと際強くロンロンを抱きしめ……先代竜王もまた肯定するように、器用に翼を動かしてロンロンをあやすように撫でる。

 

 

「ぁ、ぁぁ………」

 

 

今まで歯を食いしばり、自分には両親がいないけどそれでも大丈夫だと言い聞かせて踏みとどまっていた、幼い竜は声にならない声で泣いた。

 

その姿にマジカルウララはもらい泣きをしつつも、やっと出会えた家族の団欒を壊さぬよう感極まって嗚咽を漏らしているコンコンを抱えて少しだけ距離を取るのであった。

 

 

 

そして、その家族の抱擁を打ち切ったのは他でもないロンロンであった。

 

 

「ありがとうなのであるかーちゃん、そしてとーちゃん。我輩は大丈夫なのである、頑張れるのであるよ」

 

 

目を腫らしながらも、ゆっくりとその姿が空気に溶けるように薄くなっていく両親へ力強くロンロンは告げる。

 

息子の姿に何かをウェルラスと先代竜王は語り掛けようとするが、もはや言葉も届かないのか何も聞こえない。

 

 

「我輩が何かに終焉を告げる竜王だというのなら……我輩は全ての悲しみに終焉を告げる竜王になるのである」

 

 

そこにいたのは親の愛を求める幼い竜ではなく、自身の宿命を受け入れ前に進もうとする誇り高き竜王であった。

 

 

「だから、安心して見守っていてほしいのである」

 

 

両親の姿が消えていくと共に、ゆっくりと解けるように崩れていく精神世界の広間でロンロンはマジカルウララへ振り返る。

 

どこか健気で危なげな気配を身に纏ったロンロンの姿に、マジカルウララは心配そうに口を開く。

 

 

「本当に、大丈夫ですの?」

 

「心配かけてごめんなのである!さぁ行くのである!」

 

 

マジカルウララの言葉に対してロンロンは頷くと、その小さな体から発したとは思えない大きさの咆哮を上げてその体を、先ほどまで先代竜王と取っ組み合いしていた姿にまで巨大化させ魔法少女達にその背中に乗るよう促す。

 

 

「ロン坊、覚悟は決まったのじゃな」

 

「覚悟は決まってないのである、だけどもやるべきことは理解してるのである!」

 

「それだけ言えれば上等じゃて」

 

 

マジカルウララと共に巨大化したロンロンの背中に乗ったコンコンからの言葉に、ロンロンはいつものとぼけた調子で返しつつも、一人の覚悟を決めた戦士として返事をした。

 

その言葉にコンコンは瞑目して頷くと、それがお主の選んだ道ならば儂は何も言わぬと告げる。

 

 

「よっしゃぁですわ!逃げたくそったれの瘴気に引導渡しにいきますわよ!」

 

「合点承知の助なのであるー!」

 

 

自身の背中に跨った魔法少女の言葉に、ロンロンは翼を広げて大きく飛び上がると崩れ行く精神世界から飛び立っていく。

 

自分達家族の未来だけではなく、大事な仲間達や家族の未来をも奪おうとした諸悪の根源と決着をつける為に。

 

 

 

 






【マスコットによる解説劇場~終焉の力について~】
「ロンロンと」
「コンコンの」
「「マスコット解説劇場―」」

「と言うわけでやっと我輩カムバックなのである」
「二日か三日ぐらいしか離れておらなんだと言うのに、一か月近くロン坊が攫われていた気がする脳」
「気のせいなのである」

「しかし久方ぶりの復帰と言うが、何を解説するつもりじゃ?」
「今回は歴代バハムートの持っていた、終焉を告げる力について解説するのである」
「大丈夫かの?お主その力目覚めたばかりのようじゃが説明できるものなのかのう?」
「大丈夫なのである、何というかこう……がっちりと歯車がハマったというか、鳥が飛べて当然と言うかそんな感じの感覚なのである」

「ともあれ終焉の力であるが、ぶっちゃけコレ概念的なヤツなのである」
「身も蓋もないのー」
「そうとしか言いようないのであるよ、飢えに終焉を告げる力なら無限の豊穣を与え。争いに終焉を告げる力なら他者の闘争心に干渉する力を与える。そういう代物なのである」
「それはまた、恐ろしい力じゃのう」

「しかしそうなると、悲しみに終焉を告げるってなるとどうなるのかの?」
「そりゃ簡単なのであるよコンさん」
「随分とあっさり言うのう」
「悪い奴らに苦しめられている人がいるならそいつをぶっ飛ばし、寂しくて泣いている人がいるなら寄り添ってあげられる力、それが我輩が……我輩に与えられた終焉の力に願った力なのである」

「ロン坊……その道は地獄じゃぞ?」
「覚悟の上なのである、二度と我輩みたいな存在が産まれないのならばソレが一番なのである」
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