ありふれた転生者は世界最良   作:瓶詰め蜂蜜

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最良とイジメ

 ハジメがシルヴィに弟子入りする事になってから一週間が経ったある日の事。

 シルヴィから渡された資料の読み込みに夢中になり、訓練開始の時間ギリギリに気付いたハジメは慌てて訓練施設へと向かう。

 訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。どうやら案外早く着いたようで、ハジメは胸を撫で下ろしつつ、自主練でもして待とうと考えて支給された西洋風の細身の剣を取り出した。と、その時、

 

ドンッ!

 

「うわっ!?」

 

 唐突に後ろから衝撃を受け、ハジメはたたらを踏んだ。なんとか転倒は免れたものの、手に持つ抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。顔をしかめつつ背後を振り返ったハジメは予想通りの面子がニヤニヤと自身を見ている姿を目の当たりにし、心底うんざりした表情をする。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

 彼らは檜山大介率いる小悪党四人組(ハジメ命名)である。訓練が始まってからというもの、ことあるごとにハジメにちょっかいをかけてくるのだ。ハジメが訓練を憂鬱に感じる半分の理由である。……もう半分は自分の無能っぷりをこれでもかと自覚させられるだからだが。

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

 ゲラゲラと笑いながらそう宣い、馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へハジメを連行していく檜山達。

 それにクラスメイト達は気がついたようだが見て見ぬふりをする。

 

「いや、一人でするから大丈夫だって。僕のことは放っておいてくれていいからさ」

 

 内心うんざりしつつも、ハジメはやんわりと断りを入れる。が、

 

「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 苛立ちを隠さずに脇腹を殴る檜山。ハジメは「ぐっ」と痛みに顔をしかめながら呻いた。

 この世界に来てから、檜山達は次第に暴力に躊躇いが無くなって来ていた。しかし無理も無い。多感な時期である思春期男子が、いきなり大きな力を得れば溺れるのは仕方ない事だろう。

 しかし、その矛先にされているハジメにとってはたまったものじゃないが。

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だ……ぞっと!」

「ぐぁ!?」

 

 檜山、中野、斎藤、近藤の四人がハジメを取り囲んだ。そして、ハジメの背中に衝撃が走る。背後から近藤が剣の鞘で殴ったのだ。悲鳴を上げ前のめりに倒れるハジメに、更に追撃が加わる。

 

「ほら、なに寝てんだよ? 焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――〝火球〟」

 

 今度は中野が火属性魔法〝火球〟を放った。倒れた直後であることと背中の痛みで直ぐに起き上がることができないハジメは、ゴロゴロと必死に転がりなんとか避ける。だがそれを見計らったように、今度は斎藤が魔法を放った。

 

「ここに風撃を望む――〝風球〟」

 

 魔力によって生み出された風の塊が、立ち上がりかけたハジメの腹部に直撃し、ハジメは仰向けに吹き飛ばされた。

 「オエッ」と胃液を吐きながら、ハジメは痛みに耐えれず蹲る。

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ~、マジやる気あんの?」

 

 そう言って、ニヤつきながら蹲るハジメの腹に蹴りを入れる檜山。ハジメは込み上げる嘔吐感を抑えるので精一杯でなにも反抗できなかった。

 その後もしばらく、稽古という名のリンチが続いた。その間、ハジメは痛みに耐えながらなぜ自分だけ弱いのかと悔しさに奥歯を噛み締める事しか出来なかった。

 本来なら敵わないまでも反撃くらいすべきかもしれない。しかし、小さい頃から、人と争う、誰かに敵意や悪意を持つということがどうにも苦手だったハジメは、誰かと喧嘩しそうになったときはいつも自分が折れていた。自分が我慢すれば話はそこで終わり。喧嘩するよりずっといい、そう思ってしまうのだ。

 そんなハジメを優しい人と言う人も居た。しかしヘタレだと誹る者も居た。

 どれほどの時間が経ったのだろうか。そろそろ痛みが耐え難くなってきた頃、突然、冷たい女性の声が響いた。

 

「何をやってるのでしょうか。貴方方は」

 

_____________________________

 

Side:シルヴィ

 

 メルドさんに現役冒険者として少し訓練を見てほしいと頼まれ訓練施設に向かう途中、苛めを見つけた。

 不快に思いながらも、最初は見過ごすつもりだったのだが、蹲っている苛められっ子の方に見覚えがあった。……というか、

 

(あれ、ハジメ君じゃん……)

 

 一切の抵抗もなく、まるで浦島太郎に出てくる海亀のように、一方的にボコられてる我が弟子の姿を見て、流石に無視することは出来ないと判断する。

 

「何をやってるのでしょうか。貴方方は」

 

 苛め現場に近付きながら声を掛ける。が、自分でも驚くぐらいに低く冷たい声が出た。

 苛めを見るのがとても不快だったからか?そう自問してみるがしっくりこない。

 なら何故……。と思ったが、意外とすんなり答えが分かった。

 

(ああ……。私は意外とハジメ君の事を弟子として気に入っていたみたいですね)

 

 その事実がストンと腑に落ちる。なら、この苛めっ子共に取るべき対応は……。

 

(私刑一択……だね☆)

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