【オバマス】 クライ・アンドリヒは帰りたい 作:嘆きのラジオ
目が覚めるとそこは知らない魔物の巣だった
荘厳な雰囲気を漂わせたその空間は以前僕が皇帝陛下に謁見した玉座の間に似ていた
まぁあっちのほうが煌びやかであったし明るかったか
後を振り向くとまるで空間に罅が入ったかのような割れ目とその先に紫の次元空間が広がっていた
きっと僕はここから来たんだろうな〜と現実逃避めいた他人事な感想しか浮かんでこない
いつものことだが四方八方凶悪そうな魔物に囲まれていた
スケルトン型アンデッド
亡者の怨念が死後、肉体から離れることなく魔物として復活した姿、肉は腐り落ち骨のみが残り生者へ襲いかかる
レベル7宝物殿【疾病墓佃】で確認されたと噂されている幻影である
瞳のない、生気のない眼窩がこちらをジッと見据えているのが異様に恐ろしい
見つめる目がないのに見られている感覚とはこんな感じなのか
「なるほどなるほど」
どうしようもなさすぎて逆に笑えてくる
こんなこといくら危険な目にあっていた僕とはいえ始めての経験、、、というわけでもないな割とあるわ
こういうことがあるから危機感がないと言われるのだろう、て予想できるか!!!
慣れとは恐ろしいな最早僕の脳内は諦めムードである
右には骸骨モデルのアンデッド、左にも同じくアンデッド
そして正面には明らかにここのボスと思える他とは違い皇帝的な身なりをしたアンデッドがこちらを見据えていた
あれはやばい、大変やばい、危機感がない上、強さを測るメーターがぶっ壊れている僕でもわかる
だって何か黒いオーラ視えるし
あーもうゲロはきたい
明らかにあれは人が勝てる相手ではない、僕一人ではもちろん嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)がフルメンバーであっても勝機はないだろう
それほどまでに絶望的な隔絶とした人類との差があれにはあった
だが幸いにも僕は【完璧なる休暇】を着ている
絶望的な状況下ではあるが以前として僕は快適だ
不幸なのはうっかり見てしまったことだ、なんか相手もこちらを凝視している困った逸らすに逸らせん
何が地雷になるか分からない、なんか偉そうな格好してるしきっと生前は皇帝なり王様だったりしたのだろう
今襲われていないと言うことはもしかしたら目を逸らしたら不敬罪で処刑なんてこともあるかもしれない
結界指は全てチャージ済だがこんな状況下だ意味なんてないだろうし攻撃されたら数分の命だ
とはいえ一縷の望みにかけてルシアに込めて貰った魔法を使うというてもまぁ意味はないだろ
その他はともかくアレに効くとは思えない
視界が歪んだ後に持てるだけの宝具を持ってきてはいるが残念ながら攻撃性能を有した宝具を僕は殆ど持っていないのだ
あったとしても無理だけど
なら、やれることは一つだ
僕はなお死んだ魚のような目で眼前のアンデッドをみつめながら思う
生き残るためには僕にはこれしかないのだ
「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」
「!!?」
声を張り上げ僕はコンマ数秒で膝を曲げ額を床に叩きつけるが如く早くそしてかつ繊細に床に平伏す
そう土下座だ、僕が唯一誇れるスキル土下座
これはガークさんにも高レベル幻影(ファントム)にも通用するレベル8が行う生涯の中、最も早く美しい土下座だった
心なしかあのアンデッドが動揺したような気がした
一瞬よく考えたら口とか耳ないからコミュニケーションは無理じゃね?と無能なりに至極真っ当な思考が頭を過ったが
チャンス!僕はそう感じ誠心誠意謝罪を続ける
「不法侵入してすいませんでしたぁぁぁぁ!!!」
「どうか、どうかご容赦ください!!わざとではないんです!!!」
「急に視界が歪んだと思ったらここにいたんです!!」
「なんでもします!!!いえなんでもさせてください!!!」
怒涛の謝罪の嵐と降伏宣言、先にいるであろうボスは何も喋らないが心なしか周囲の視線が感心するかのような視線に変わっている気がする
「ふむ、どうやらこの人間上下関係が解っているようですね」
「当然だね」
「人間風情にしてはよく解っているでありんすね」
「……」
「どうされますか?アインズ様この人間は恭順する姿勢を示しておりますが」
「あ、、、あぁそうだな、おほん、まず一つ訂正しておこう、まず私達は君を害するつもりは無い、、、」
〜
ナザリック地下大墳墓玉座の間にてモモンガは来たる罅から現れる未曾有の脅威への対策と罅についての情報を得るためある実験を開始していた
「大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんアインズ様、実験の準備、万事整っております」
「危機的事態を想定し付近には各階層守護者、死の騎士で防備を固めております」
「うむ、準備は完璧に整っているようだな流石だデミウルゴス」
「勿体ないお言葉、過分な評価有難く」
「何が過分なものか、このナザリックがあるのも貴様やアルベドのような知恵者あってのものだ」
「知恵者など、モモンガ様をおいてそのようなことなど恐れ多い」
(いやいや、実際三国同盟の運営にナザリック周辺及び各国の罅の対応に監視、情報収集に加え入手難易度の高い魔石の収集、俺じゃとても手が回らない)
「ふ、謙遜は寄せ私は正当な評価をしているつもりだ過度な謙遜は嫌味だぞ?」
「はッ!大変失礼致しました、お誉めのお言葉有り難く頂戴致します」
「よい、それでは実験を開始せよ」
モモンガの号令により配下のアンデッドが罅に向かって魔石を投入する
魔石は罅に近づくと同時に消滅するかのように姿を消しそれと同時に罅が明滅する
ピシリと聞き慣れた音がし空間が開く
眩い閃光とともに罅の中から一人の男が落ちてきた
漆黒のしかし異様に目立つ黒いローブを纏う黒い髪に漆黒の瞳の青年、捉えどころのない顔、悪くいうならどこにでもいそうな一般的な容姿
両手両指には指輪やブレスレットを嵌めており
服装だけならどこかの成金か、ただの不審者といったような風姿といった感じだ
(しかし今回の召喚者はやけに落ち着いているな)
この実験も数度行っているがそのどれもがこちらの姿を視るや否狼狽してり敵意を向けて来るばかりが殆どであった
しかも今回はたった一人だ、常人であるならばこのような状況にいきなり陥ればいかなる朴念仁とてそれなりなリアクションをするものだ
少なくともモモンガ、鈴木悟として自身なら間違なく驚く
だがこの青年は冷静に周囲を見渡し何かに納得したかのように笑った
肝が据わっているのか、それとも慣れているのか、、、確かなのは彼がそう出来るほどの自信があの青年にはあるのだろう
こちらは配下の要望によりスキル絶望のオーラまで使用している
常人なら見ただけで呼吸が困難になり、高レベルNPCである階層守護者であっても多少なりとも動揺する
だが目の前の青年はどうか
こちらをみても尚その表情には全くの変化がない
漆黒の無機質な瞳がこちらをジッと見据えている
その表情は柔らかく意図が全く読めない、そうまるで今この場が親しみ慣れた快適な自宅にいるかのような
(要注意だな、マナエッセンス、ライフエッセンス、、、)
対象のHP,MPの総量を確認できるスキルを発動するがアインズの視界になんら変化はない
(やはり無理か)
あのような余裕な態度だ、情報遮断スキルは有していて当然なのだろうなとアインズは確信していた
(敵対行動は避けたかったが、危険性を明確にする利をとるか)
今までの転移者とは違う強い弱いの差はあれど全く解らないなんてことはなかった
そして肝心なのは青年は何かを理解しているような素振りだ
ここはナザリックの心臓部なだけあり得られる情報は多い、もちろん情報認識遮断スキルは使用してはいるがそれらを貫通するスキル『賢神の知恵』や希少課金アイテム『メダリオンコード』がある場合は別だ
ハッタリの可能性もあるがそのような楽観的思考に逃げるほどアインズは愚かではない
『絶望のオーラLevel3』
発動すれば混乱効果を及ぼすスキルだ
アイテムならともかく『賢神の知恵』が使えるクラスは耐性が弱い傾向にある
だが青年には以前と変化はない
変わらず快適そうに視える
ブラフかどうかも解らない毅然とするその態度は混乱させられる
故にこの後の青年の土下座はアインズにとっては思わず唖然としてしまうものだった