アルバイトスタッフの電脳日常   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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この小説を見たな?これでお前とも縁ができた!


新劇・桃太郎

 

 昔々、母衣村と呼ばれる村に仲良しの老夫婦がいました。お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

 

 しかしこれは、明後日の方向に超解釈した笑いありの桃太郎御伽草子の始まりに過ぎなかった。

 

 

 

 

 「柴刈りも大変ぺこなぁ。焚き木を集めなきゃぺこ」

 

 ぺこら爺さんは、背負い籠にどんどん枯れ枝や雑木を入れた。

 

 「はぁ〜洗濯物洗うのも一苦労だわ〜!でも」

 

 マリン婆さんは、川の近くにある機械音がしている箱を眺めている。

 

 

 「この最新式ドラム洗濯機があれば、洗濯も楽チンね!し・か・も、脱臭と乾燥機能付きの最先端〜」 

 

 「おめえ!この室町時代に洗濯機なんか無いぺこだろうが!もっと真面目にやらんかい!」

 

 「アヒ〜ン!」

 

 

 マリン婆さんは、空中から小扉が出現し、勢いで参入してきたぺこら爺さんに尻を叩かれ、気持ち良さそうな声を上げた。ぺこらは、仕方ないとため息を吐きながら、小扉を閉め、柴刈りを再開した。

 

 マリン婆さんが大人しく川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がドンブラコ〜ドンブラコ〜と流れて来たではないか。

 

 

 「あらやだ、大きくて立派な桃ね。持ち主は居ないのかしら?」

 

 

 マリン婆さんは、キョロキョロと周囲を確認する。

 

 

 「大丈夫そうね。持っていきま⋯うっ!?」

 

 

 桃を持ち上げようとした瞬間、マリンの直感が警告を鳴らす。直後、腰に負担が掛かり、痛みが発生した。

 

 「お、重い!はうぁ!?こ、腰が!」

 

 ぎっくり腰になったマリンは、手を腰に押さえながら、その場でうつ伏せになる。

 

 

 

 「ふんふふ〜ん、あれは⋯マリンお婆さんと大きな桃?」

 

 現れたのは、村一番の怪力娘のかなた。

 

 

 「マリンお婆さん。どうしたの〜?また、腰痛めたの?」

 

 

 かなたの問いにマリンは、無言で頷く。仕方ないなとかなたは笑いながら、マリンと桃を担いで、マリン婆さんとぺこら爺さんの住まいへと歩いた。

 

 マリン婆さんは、かなたに礼を伝え、かなたは帰った。ぺこら爺さんが柴刈りから帰るとマリンは、ぺこら爺さんに突撃した。

 

 

 「コレは何だぺこ?げっ!」

 

 「ぺこらお爺さ〜ん!お帰りなさ〜い!マリンの熱い口付けを〜!」

 

 「マリンおめえ!やめっ!まだお天道様顔出してるんだぞ!?時間と場所と対象年齢を弁えろよ!」

 

 「あ〜ん!ぺこら爺さんのイケず〜」

 

 

 ぺこらは、マリンの頬を足蹴にして制止させたことで興奮状態のマリンも落ち着いた。息切れ状態のぺこらは、大きな桃を見て、感嘆した。

 

 

 「取り敢えず⋯このデカい桃をどうするぺこか」

 

 「手っ取り早く包丁で真っ二つにしちゃいましょう!」

 

 

 マリンは、出刃包丁を持ち出し、桃を目掛けて振りかざした。

 

 

 「フンヌッ!」

 

 

 包丁の刃が桃に当たると勝手に桃が割れ、なんと桃の中から小さな子供が生まれました。その様子を見たぺこらとマリンは、驚愕しながらも生まれた男の子を桃太郎と名付けた。

 

 桃太郎は、優しいお爺さんお婆さんの元で元気に健やかに育った。因みに、15年という長い年月でマリン婆さんは急激に老けた。

 

 15歳になった桃太郎は、囲炉裏近くでお爺さんお婆さんと真剣な顔で会話をしていた。

 

 

 「桃太郎や」

 

 「はい、お爺さん」

 

 「村中の者たちが隣村で起きた鬼が暴れている噂で恐れているぺこ。真相を確かめる為に鬼が住むとされる鬼ヶ島に向かってくれないぺこかね?村長には、話をつけてある。断っても構わないぺこよ」

 

 ぺこら爺さんは、母衣村の代表者であるYAGOO村長に鬼ヶ島調査を提案した。

 

 「分かりました!オレは鬼退治に行ってきます!」

 

 

 「このきび団子は、一粒食べれば半日分の空腹が満たされる団子じゃ。婆さん手作りじゃよ。ついでにコレを渡すペこ」

 

 

 「この物体は?」

 

 「ワシが昔拾った物ぺこだが、お前がこれからの旅に必要だと感じて持ってきたペこ」

 

 「桃太郎や、これだけは覚えておくれ。

 目に見える事や噂だけが真実とは限らない。必ず裏がある。鬼が暴れているのにも何かしらの事情があるのかもしれない。お前は優しい子だ。頑張っておくれ、そして、生きて帰ってくるんだよ」

 

 「はい、マリンお婆さん」

 

 

 出発の日、桃太郎は見送りに来たお爺さんとお婆さんに向けて、挨拶をする。村に住む鍛冶屋のカエラから貰った妖刀の脇差し『鬼削』を腰に差し、太刀『破邪』を腰に吊るして佩く。懐に短刀『骨喰・影打』そして、少しの路銀と一袋廿個入りのきび団子袋三袋と謎の黒眼鏡を渡された桃太郎は、意気揚々と鬼ヶ島に向かった。

 

 

道中、三匹の犬に出会う。

 

 

「桃太郎さん桃太郎さん、鬼ヶ島に向かうという噂を聞きました。お供になりますから、お腰に付けたきび団子一つころねに下さいな。フワモコもほら」

 

 「〈お供になるので、きび団子下さい〉」

 

 「〈モココにも下さい〉」

 

 

 

 上目遣いで瞳をうるうると潤ませ、尻尾を振る犬達の姿に心を射抜かれた桃太郎は、きび団子を差し上げた。嬉しそうにきび団子を食べる姿に桃太郎は心が癒やされた。

 

 

「さあ、行くぞ!鬼ヶ島へ!」

 

 

 ころね、フワモコ姉妹をお供にした桃太郎は、次のお供を探しに向かった。

 

 

 「日本猿のノエルです!桃太郎さん桃太郎さん!お腰に付けたきび団子一つだんちょーに下さいな!」

 

 現れたのは、お猿のノエル。力自慢のお猿さんだ。

 

 「わ〜い!ありがとう」

 

 彼女は、きび団子を貰って嬉しそうに飛び跳ねる。それと連動して、ノエルの立派な大胸筋が激しく揺れる。眼前で目撃した桃太郎は、恥ずかしげに目を逸らした。ノエルは、桃太郎を見て小首を傾げた。

 

 犬と猿が仲間になり、桃太郎は再び鬼ヶ島に向かう。松の木がある道で一羽の鳥が木の上から現れた。

 

 

 「桃太郎さん、貴方のお噂はかねがね。私は雉の代理である鷹嶺ルイです」

 

 「雉じゃなくて鷹だ」

 

 「鷹です」

 

 「もしかして、きび団子が欲しいの?」

 

 「小腹が空いていたので、きび団子の匂いに釣られました」 

 

 「じゃあ、きび団子上げるからお供になってくれないか?」

 

 「その言葉を待っていました。私は鷹ですが、空からの偵察なら雉にも負けません」

 

 

 これで、犬・猿・鷹の三匹が揃いました。

 いざ、鬼ヶ島へ!

  

 いきなりだが、閑話に入る。

 

 鬼ヶ島へ向かっている時のことだった。

 ある日、山で温泉を見つけた桃太郎一行は、温泉に入った。

 

 「一緒に入りましょうよ〜」

 

 「洗っこしよ〜?」

 

 「い、いや!オレは不審な輩が来ないか見張っている!ゆっくりと身体を休められよ!」

 

 見張り役を務める桃太郎は、顔を少し赤らめながらぶっきらぼうに言い放った。

 

 「恥ずかしいのかな〜?桃太郎君なら見ても触っても構わないのに」

 

 「年頃の男子だでな」

 

 「案外可愛い所あるじゃない」

 

 「〈モコちゃん、温かいね〉」

 

 「〈ア゙〜イ〉」

 

 

 ルイ達は、入浴用の麻衣である湯帷子で入浴していた。ちなみに、裸で風呂に入るのは、江戸時代から始まったとする仮説がある。

 

 

 彼の心中では、お供として付いてきた者達の全員が女子であることから、異性に対する抑えられない感情を理性で必死に抑え込んでいた。桃太郎も現代の齢でいえば真っ当な思春期を迎える男子。悶々とした感情を押し殺しながら、立て掛けていた刀の鞘を掴んでいた。

 木の陰に身体を預けながら、女の園に飛び込んだ場合の末路を想像する。

 

 

 

 

 

 

 〜想像中〜

 

 「うっひょひょ〜い!いただきま〜す!」

 

 衣服を脱ぎ捨て、湯帷子に着替え直した桃太郎がお供達がいる温泉に飛び込もうとした場合。この様な結末が待っているだろう。

 

 『きゃああ!桃太郎さんのスケベ!』

 

 「あら〜〜!?」

 

 悲鳴を上げたお供達によって殴り飛ばされ、木の幹にぶつかり、信頼を失うことに。

 

 〜想像終了〜

 

 

 

 

 

 

 そんな末路を想像した桃太郎は、ゾゾーと寒気を感じて、身震いした。温泉内から見ていたノエルとルイは、イタズラを思いつき、二人して悪い笑みを浮かべ、計画を実行した。

 

 「少し身体が熱くなっ太郎だよ〜」

 

 「少し身体が火照ったわ〜。ねえ、桃太郎さん」

 

「「はい、ぽろり」」

 

 

 ノエルとルイは、ニヤニヤとしながら湯帷子の右衿と左衿に手を掛け、上半身を御開帳したことで大胸筋が露わになった。

 桃源郷を目撃した桃太郎は、顔を真っ赤にして鼻血を噴射しながら、後ろに倒れた。その様子を見たルイとノエルは、ハイタッチした。桃太郎、お供の色仕掛けに見事完敗。

 

 

 「お、おお〜」

 

 「〈艷やか〉」

 「〈色っぽい〉」

 

 その光景を見ていたころね達は、顔を赤らめながら感心していた。

 

 そんな珍騒動を終え、宿場町で室町幕府公認宿屋の兜屋を見つけた一行は、宿泊することにした。宿飯を頂き、床についた。節約の為に大部屋で共寝の状態だ。桃太郎とお供の布団は少し離れていた。これは、桃太郎自身が決めた事であり、桃太郎が言うには、「お供の君達に手を出さない為」と説いたが、お供達は内心残念がった。

 

 

 桃太郎一行が鬼ヶ島に向かう道中で様々な出会いがあった。桃太郎は、一人夜空を眺めながら回想に耽る。

 

 山道を行く先で山賊から逃げていた村娘達を助け、山賊退治をした。

 

  

 「やい!そこの小僧!女共を置いてさっさと失せやがれ!さもないと痛い目を見るぞ!」

 

 トマト頭の山賊が野太刀を肩に担ぎながら、桃太郎一行を挑発した。彼の風貌から見て、山賊頭であることが理解できる。

 

 

 「それは聞けないな。誰がお前等の言う事など聞くものか!」

  

 桃太郎の啖呵に堪忍袋の緒が切れた盗賊集団赤茄子盗賊頭の蕃茄。

 

 「生意気な⋯野郎共!殺っちまえ!」

 

 野盗達は、刀や槍を構え、襲い掛かる。

 桃太郎も脇差しを抜刀して正眼に構える。

 

 「刀を抜いたからには、死を覚悟しろ」

 

 「でやぁぁぁ!!」

 

 桃太郎は、左袈裟斬りで賊の一人を斬り伏せる。

 

 斬られた賊の身体から血飛沫が上がり、地面が鮮血で真っ赤に染まる。しかし、天の情けによるものか。桃太郎の服には血が一滴も付着しなかった。嫌な予感を感じたお供達の内、犬のころねとフワモコは、自分の目を手で覆い隠した。猿のノエルと鷹のルイは、匿っていた村娘の目を手で覆い、惨劇による心的外傷を与えないように視界を遮る。そして、二人は、フワモコ達や村娘達に耳打ちをして、この場から離れた。

 

 

 「こ、コイツ!躊躇いもなく斬りやがったぞ!?」

 

 「オレ達は、とある用事で急いでいる。邪魔をするならば容赦はしない。さあ、掛かって来い」

 

 

 挑発に乗った数人の山賊が桃太郎を目掛けて走り出す。桃太郎は、最初の一人の初撃を躱し、すれ違い様に一文字斬りで斬り付け、二人目の初撃を受け止め、威圧を放つ。奴さんが恐怖に歪んでいる間に、鳩尾に一撃を与え、蹴り飛ばす。そして、背後から迫る三人目の剣撃を背中に刀を回す事で防御。半回転して、逆袈裟斬りで斬り伏せた。屍と化した仲間を見た残りの山賊は、腰を抜かす者、恐怖で逃げ出す者が居た。しかし、桃太郎は戦意喪失した者を見逃した。

 

 圧倒的不利な状況に陥った山賊頭は、力強く唇を噛んだ。そして、生き残っている手下に向けて指示を出した。自らも逃走を開始した。

 

 「くっ!退却だ!退け!退けー!」

 

 「逃さぬ」

 

 桃太郎は、戦意が残っていた山賊の手下を斬り終え、残り一人となった山賊頭の首を刎ねる。

 山賊を全て退治し終えた事を確認し、ルイ達がいる場所へと向かった。フワモコの爪痕が目印としてある木を見つけ、全員揃った。

 

 

 「助けて頂きありがとうございます!来部村のそらと申します!」

 

 「同じく来部村ののどかです。山賊から助けて頂きありがとうございました!」

 

 娘達から礼を言われた桃太郎は、その後、来部村に頼み、土手で野盗の火葬をして弔った。

 

 「貴方は珍しい御方だ。敵である山賊すら弔うとは、何と慈悲深い⋯」

 

 「私は、相手が賊とはいえ命を奪った咎人です。だからこそ、罪滅ぼしの為に弔うだけのこと、それだけです」

 

 「確かに、貴方は人の命を奪ってしまったかもしれない。しかし、貴方やお側にいた方々がいなければ⋯我が村の娘達は生きていなかった。そう気に病むことはありません。貴方は理不尽な運命によって消えそうであった命を救ったのですから」

 

 「御老人⋯貴方のお言葉に幾らか救われました。かたじけなく存じます」

 

 来部村の長老の言葉に救われた桃太郎は、お供達と旅を続けた。

 

 来部村から出発した桃太郎一行は、次に道端で倒れていた絡繰娘を助けた。

 

 「お腹が空いて力が出ないよ〜」

 

 「握り飯ときび団子を食べなさい。麦飯で済まないが」

 

 「何処のどなたか存知上げませんが、ありがとうございます」

 

 「オレは桃太郎。鬼ヶ島を目指して旅をしている者達だ」

  

 「僕もお供に入れてください」

 

 絡繰娘のロボ子がお供になった。さらに、故郷の村から心配で様子を見に来た知り合いが来たりした。

 

 「心配になって来たよ。桃太郎」

 

 「かなたか。分かった。お供に加えよう」

 

 こうして、天音かなたが新たなお供として加入した。

 

 

 翌朝、雀の鳴き声で目を覚ます。いつの間にか寝落ちしていたらしい。部屋には誰もいなかった。どうやら、お供達は湯浴みに行ったようだ。桃太郎は、寝間着から和装に着替え、布団を畳んだ。

 

 一階に集合し、兜屋に宿泊代分の心付けを払い、町で少しだけ食糧や旅の必需品を調達した後、鬼ヶ島へと旅立つ。

 

 心付けを払っている時に兜屋の主人からこっそり、滋養強壮剤としてイモリの黒焼きを渡されたが、半笑いで受け取り、直ぐに懐に隠した。次いでに少しの銭を渡した。商魂逞しい主人だった。

 

 

 

 閑話休題、向こう岸に鬼ヶ島が見える浜地にやってきた桃太郎一行。彼らは、偶然見つけた奴隷商人が奴隷を運ぶ予定の船を少し借りて、その船で向かった。今頃、奴隷達は逃げ、奴隷商人は打ち首になっていることだろうが、桃太郎達には関係ない。

 

 

 鬼ヶ島の死角がある岩近くに停戦した桃太郎達は、鬼ヶ島に上陸。そして、潜入を開始する。スニーキングミッションを始めた桃太郎は、見張の鬼の背後に忍び寄り、口を塞いで首を締め上げた。ころねは、もう一体の鬼の首をゴキッとへし折る。

 扉の鍵を手に入れ、扉の鍵穴に差し込み、開錠。中に入ると、多数の鬼が牢屋に幽閉されていた。

 

 

 鬼と違う気配を察知した老鬼が侵入者に対して話し掛けた。

 

 

 「この島に人間が来るとは珍しい。何用かね?」

 

 

 「オレは桃太郎。鬼ヶ島の調査に来た。お前達は、何故牢獄に閉じ込められている?良ければ理由を話してくれないか?」

 

 

 牢屋越しには、老鬼、子供の鬼、子供鬼の親鬼、若い男女の鬼が居た。老鬼が代表して、事の顛末について話した。

 

 老鬼が云うに鬼ヶ島は、遥か昔に山を追われた一部の鬼族がコミュニティを形成し、静かに暮らしていた。その島を先代の頭首が治めていたが、彼の息子であった鬼岩坊が反乱を起こし、先代は討死。鬼岩坊は、頭首の座を簒奪した。そして、逆らう鬼や気に食わない鬼を牢屋に捕らえ、奴隷として略奪や重労働を強いていた。

 

 

 「外にいる鬼達の殆どが鬼岩坊の手下達です。独裁支配に逆らった結果、我々は牢屋に閉じ込められました」

 

 「⋯かなた。扉を頼む」

 

 「アイアイサー!ふんぬっ!」

 

 かなたは、木格子の門を粉砕し、檻がバラバラと崩れた。幽閉された鬼達は、脱出出来ると思い、脱獄しようとするが、桃太郎が出口を防いだ。

 

 「な、何の真似でこざいますか!?」

 

 「待て、その前に」

 

 彼は、鬼達を制止させると懐から大きな風呂敷包みを出した。結び目を開くと中には大量の握り飯が入っている。鬼達とお供は、妖術にしか見えない桃太郎の懐の衣嚢にギョッとした。

 

 「逃げる前に食え。飯を食わなければ動きたくても動けまい。一人二つまでだ」

 

 「充分でございやす!ありがとうごぜぇやす!ありがとうごぜぇやす!皆、全員に飯を行き渡らせろ」

 

 老鬼は、涙を流しながら、握り飯を皆の手元に回した。受け取った鬼達は、握り飯を口にする。久々のまともな食事にありつけたことに全員が涙をポロポロと流した。

 

 「美味ぇ、美味ぇよ!母ちゃん父ちゃん!」

 

 「そうねぇ、美味しいねぇ鬼太」

 

 「優しい人間がこの世には居るんだな!ありがてぇありがてぇ!」

 

 喜びを噛み締めて握り飯を食べる様子を見た桃太郎は、優しい笑みを浮かべた。

 

 「桃太郎御一行様方。一食の御恩、誠に有難く存じます。儂は鬼蔵と申します」

 

 老鬼は、鬼蔵と名乗った。続いて、若い鬼女が桃太郎の前に現れ、名乗った。

  

 「私は、鬼花と申します。桃太郎様にお願いがございます!どうか外にいる鬼娘を⋯百鬼あやめちゃんをお救い下さいまし!」

 

 桃太郎は、鬼花の懇願を見て、口を開いた。

 

 「⋯相分かった。かなた、ころね。二人は他の牢屋も解放し、囚われている鬼達を救出してくれ」

 

 「任せて!」

 

 「合点承知の助!」

 

 「して、そこの鬼花と申したか。百鬼あやめとやらの特徴を教えてくれないか?」

 

 「は、はい!百鬼あやめちゃんは―――」

 

 

 桃太郎は、百鬼あやめの情報を詳細に聞いて、携帯していた筆墨をそこら辺に落ちていた木片に書き込んだ。

 

 

 

 鬼ヶ島の砦の外にある柱の上で一人の少女が足をバタバタさせながら歌を歌っていた。清涼感ある美しい歌声は、鬼ヶ島の殺伐とした風景と釣り合ってないが、どこか惹かれるものがあった。

 彼女の名は、百鬼あやめ。元々はオオエヤマと呼ばれる山に住む鬼だったが、仲間と海に出た際、船が難波し、鬼ヶ島に辿り着いた過去を持つ。

 

 

 「ラララ〜。だ、誰!」

 

 あやめが足音を察知して振り向くと一人の少年が岩陰から現れた。その正体は、人間であった。

 

 「に、人間!?よ、余は悪い鬼じゃないよ!」

 

 「君が百鬼あやめ殿か?」

 

 「そ、そうだが、人間様は何故余の名を知っておるのだ?」

 

 「オレの名は、桃太郎。大きな声では言えぬが、この島の牢屋に閉じ込められていた鬼達から君の名を聞いた。それと」

 

 「⋯それと?」

 

 「その格好だと下着が見えているぞ?⋯黒か」

 

 「ひょわあ!?あわわわ!?」

 

 慌てて着物の裾を手で押さえたあやめは、バランスを崩した事で柱から落下するが咄嗟に桃太郎が姫様抱っこで抱き抱えた。

 

 

 「大丈夫か?驚かせて済まない」

 

 「い、いや、余を助けてくれてありがとう。だが、女の子の下着を覗くのは破廉恥だぞ!」

 

 「あ、ごめん」

 

 「良い余。謝ってくれたから許す!」 

 

 

 あやめはニカッと笑うが、桃太郎は別の事を考えていた。よく見れば、あやめの身体は傷だらけであり、元が上物であろう着物は砂と土で汚れていた。

 

 

 「身体や服がボロボロだな⋯飯も存分に食えていないようだ。きび団子食べるか?おっと」

 

 

 桃太郎がきび団子一袋を差し出すと、桃太郎の手からきび団子が消え、あやめはきび団子の袋を掴んでガツガツと食べていた。その様子から、幽閉されていた鬼同様に満足に食事を与えられていないことが窺えた。一心不乱にきび団子を食べたあやめは、喉を詰まらせるが、桃太郎が続けて差し出した水筒の水を飲んだことで事無きを得た。

 

 

 (鬼の食欲と胃袋は、きび団子三十個が丁度良いのか)

 

 

 桃太郎は、きび団子一袋を平らげた彼女の食欲に感心していた。

 

 「食べ物を分けてくれてありがとう。でも鬼ヶ島に人間様達が来ては行けない。アイツに見つかったら、人間様はオシマイだ余!⋯は!早く隠れて!」

 

 桃太郎は、言われた通りに岩に隠れた。段々と地響きが近付く。こっそり顔を出すとあやめの目の前には赤黒い色の大鬼が姿を現していた。

 

 何やら、あやめと大鬼が話し込んでいる。あやめが説得しているようだが、それを聞いていた大鬼は、青筋を立てて怒声を上げた。

 

 

 「この鬼岩坊様に逆らうとは!流れ着いた余所者である貴様を拾ってやった恩を忘れたか!同族の面汚しが!」

 

 「違う!余を助けてくれたのはお前ではなく、先代の鬼ヶ島頭首の鬼だ!余は、島の皆を酷い目に合わせているお前には絶対に屈しない!」

 

 「そうか、ならば――」

 

 鬼岩坊が地面に突き立てた金棒を引き抜き、振り上げる。あやめに向けて金棒を振り翳す間際、桃太郎は太刀を抜刀しながら瞬速の勢いで駆け出した。

 

 「――惨たらしく死ね!」

 

 今、あやめに金棒が降りかからんとする時、桃太郎は鬼岩坊とあやめの間に立ち、刃で金棒を受け止める。

 

 ガキィィン!

 

 

 金棒があやめに直撃せず、代わりに金属同士がぶつかり合う鈍い金属音が響いた。

 

 

 「に、人間様!?」

 

 「誰だ?テメェ」

 

 「オレは母衣村の桃太郎っだ!」

 

 通常、打撃武器である金棒を太刀で受け止めると物理の影響で太刀が折れてしまう為、不可能だが、カエラが鍛造した太刀は、神代鋼と呼ばれる鋼で精製された玉鋼を使用した代物だ。その為、折れずに良く斬れる性質を持つ。

 

 金棒と刃が拮抗し、火花を散らす。桃太郎は、鍔で押し上げ、鬼岩坊が怯んだ隙に体当たりで吹き飛ばす。岩壁に衝突した鬼岩坊は、壁跡から脱出した後、大きく息を吸い込み、応援を要請した。

 

 「野郎共!曲者だ!出合え出合え!」

 

 鬼岩坊の周囲に筋骨隆々な鬼の軍団が現れた。その数、およそ108体。

 あやめを背に太刀を抜刀する桃太郎。多勢に無勢と不利な状況だったが、お供達が駆け付けた。

 

 「行くぞ皆!」

 

 「うん!」

 

 「了解!」

 

 「準備万端よ」

 

 『〈バウバウ!!〉』

 

 戦闘の合図は、鬼岩坊の号令によって始まった。

 

 「掛かれー!」

 

 「お供達よ!オレに続けー!」 

 

 

 鬼ヶ島の中央で両陣営が激突した。

 

 

 桃太郎は、太刀『破邪』で手前の鬼を真向斬りで斬り伏せ、視界に入った次の鬼の頭を踏み台にして、跳躍する。空中で脇差しを抜刀する人間離れした特殊技能で、抜刀した脇差しで着地点にいた鬼を落下の勢いで斬り裂いた。お供も桃太郎に負けじと応戦する。

 

 

 「〈バウバ〜ウ!〉」

 

 「な、何なんだコイツはー!」

 

 「痛え痛え!噛むな!」

 

 「〈ヴヴヴゥ゙!〉」

 

 

 フワモコは、それぞれ鬼の腕や足に噛みつき、鋭利な爪で顔を引っ掻くなど錯乱させる。

 

 

 「絡繰め!ぶっ壊れやがれ!」

 

 「あわわわ!!こ、来ないでぇ!」

 

 ロボ子は、腕を変形させ、火球を放出する。地面に着弾した火球が爆発を起こし、鬼達は吹き飛んだ。

 

 

 「はあっ!」

 

 ルイは、腰に携えていた鞭を取り出し、靭やかに鞭を振るい、鬼の体に傷を与える。鮮やかな鞭捌きに鬼達は手も足も出なかった。

 

 「ぐわああ!?」

 

 「どわあああ!?」

 

 「あああ゙!アウチ!?女王様ー!」

 

 一部の鬼の中には鞭でしばかれて、新しい扉を開いた鬼もいた。

 

 

 一方で、かなたところねも警備巡回していた鬼岩坊の手下と戦っていた。

 

 「ふぬぬ!どっせい!」

 

 「「「ぐわあ!?」」」

 

 かなたは、自慢の怪力で大岩を持ち上げ、鬼岩坊配下の鬼共に投げ飛ばし、岩の下敷きにした。 

 

 「ゆびゆび〜悪い指はこの指かな〜?」

 

 「ぎゃあああ!痛い痛い痛い!?」

 

 ころねは、自慢のフィジカルで殴り飛ばし、組み伏せた鬼の指を折らない程度に曲げていた。

 

 

 桃太郎は、迫りくる鬼を千切っては投げ、千切っては投げ、ついに鬼岩坊の元に辿り着いた。

 

 

 「地下牢にいる奴等の檻を破壊したのはお前らか?のこのこと侵入してきた鼠共が」

 

 

 「そうだ。数多の村で鬼が暴れている為、鬼ヶ島へと調査に来たが、黒幕がいたからには話が早い。お前を退治する」

 

 「そうか!ならば掛かってこい!人間よ!」

 

 「余が援護するぞ!鬼火!」

 

 

 あやめが背後から鬼火を発現させ、鬼岩坊目掛けて放つ。直撃した鬼火と黒煙が目眩ましになったその隙に敵の皮膚に斬り込んだ。しかし、敵の頑丈な肉体は、桃太郎の斬撃を防ぐ。

 

 

 (奴の硬い皮膚と筋肉により、浅い傷を付けることしか出来ない!ならば)

 

 「我流・桃万斬!」

 

 桃太郎は、我流の技で鬼岩坊の胸板に深傷を負わせる事ができた。

 

 「ぬうっ!俺様の肉体に傷を付けるたぁ⋯親父以外は貴様が初めてだ。褒めてやるぜ桃太郎!だがな!」

 

 鬼岩坊は、胸板の流血を何とも思わず、桃太郎の首を剛腕で掴み上げた。

 

 

 「ぐ、ぐぁ!」

 

 「俺の強さの前にお前は俺を倒す事なんざ、不可能なんだよ!」

 

 

 桃太郎の首を一瞬離すと、彼の腹を足蹴にし、遠くまで蹴り飛ばした。吹き飛ばされた桃太郎は、ボロ小屋に衝突した影響で身体がボロボロになり、命が風前の灯火という危機的状態に陥った。

 

 「人間様!キャアッ!?」

 

 「隙を見せるとは余程死にたいらしいな?お望み通り殺してやろうか!」

 

 

 立ち止まったあやめを見逃す筈がない彼は、あやめの首を掴んで持ち上げた。少しずつ息苦しくなり、あやめは苦悶の声を上げる。彼女は、今まさに絶体絶命のピンチを迎えていた。

 

 

 一方その頃、桃太郎は蹴り飛ばされた小屋で太刀を杖代わりに身体を支えていた。

 

 「ハァ、ハァ、直ぐに行かねば、あやめが危ない! 

何だ?懐が光って?」

 

 光っている部分の懐を弄り、取り出すとお爺さんから貰った黒眼鏡が光を放っていた。光が収まると、知らぬ間に黒眼鏡を掛けていた。

 

 片手銃のドンブラスターとアバタロウギアが顕現。

 桃太郎は、この二つを見て、即座に使い方を理解した。

 

 「頭の中に⋯コレの使い方が流れ込んでくる。

 この歯車を筒の丸い型に嵌めればいいのか」

 

 アバタロウギアをドンブラスターの側面に嵌める。

 そして、大きな歯車を回す。

 

 〈ドンブラスター!〉

 

 次の瞬間、桃太郎は途切れ途切れに呟いた。

 

 「アバター、チェンジ」

 

 〈いよぉー!〉

 

 その時、軽快な音楽がドンブラスターから鳴りだす。脳が状況に対する理解を拒んだが、今の桃太郎にしてみれば、これが頼みの綱であった。

 

 〈ドン!〉〈ドン!〉〈ドン!〉〈どんぶらこー!〉

 

 

 〈アバタロウ!〉

 

 〈どんぶらこ!〉〈どんぶらこ!〉〈どんぶらこ!〉

 

 

 引き金を引くと巨大な赤い歯車が桃太郎の上下に現れ、桃のような淡い光が彼を包み込んだ。赤いメタリックスーツにサングラスのような面を付け、頭上に丁髷のようなドンまげが備わった愉快な戦士に変身した。

 

 

 「ワーハッハッハッー!」

 

 「なんだぁ〜?⋯は?」

 

 「げほっ!えほっ!⋯え?」

 

 愉快な笑い声に釣られて後ろを振り向いた鬼岩坊は、後ろの状況にあやめの首を掴んでいた手を緩め、あやめは何とか脱出に成功し、距離を置いた。

 天女に扮装した女性達と御輿を担ぐ褌姿の益荒男達が突如として現れた。

 

 「やあやあやあ、祭りだ祭りだ〜!

 袖振り合うも他生の縁、躓く石も縁の端くれ!

 共に踊れば繋がる縁!この世は楽園!

 悩みなんざ吹っ飛ばせ!

 笑え笑え!ハーハッハッハッハ!!」

 

 鉄馬に跨る赤い鎧の男は、大笑いしながら扇子をパタパタと仰いだ。そして、赤い鉄馬エンヤライドンを発進させ、アヤメの近くに降り立つ。

 

 「は?え?桃太郎⋯だよね?」

 

 「ハッハッハ!ん?今俺を見たな?これでお前とも縁が出来た!」

 

 「ひょあ!?近い近い!!」

 

 「おい⋯貴様、さっきの桃太郎か?」

 

 「俺は、桃太郎ではない!桃から生まれたァ!ドンモモタロウ!」

 

 

 桃太郎もといドンモモタロウは、大げさに見得を切った。性格が一変したことに戸惑うあやめと鬼岩坊。しかし、鬼岩坊は気迫の違いから金棒を構え直した。

 

 

 「小癪な!さっきと同じく半殺しにするまでだ!」

 

 「さあ、楽しもうぜ!いざ勝負!勝負!」

 

 ドンモモタロウは、ザングラソードを片手で持ち上げ、斬り掛かる。先程までと違い、鬼岩さに次々と傷を与える。金棒の横振りを上半身を反らす事で躱し、すかさず一文字斬りで斬り付ける。型に嵌まらない自由な剣術は、彼自身を表現しているかのようだった。

 

 

 「ハーハッハー!どうした?この程度か?」 

 

 「す、凄い」

 

 「ぐぬぅ!舐めるな!」

 

 (此奴、さっきより臀力や太刀筋が格段と上がってやがる!?不味いぞ!押し負けちまう!こうなっちまったら、やるしかねえか!)

 

 鬼岩坊は、ドンモモタロウの剣撃を弾き飛ばすと、身体の筋肉を肥大化させる。牙を大きく伸ばし、双角が鋭利な化物に強化した。

 

 「更にパワーアップしたようだが!例え姿が変わろうと!俺の歩みは誰にも止められない!あやめ!今だ!」

 

 「行く余!鬼火柱!」

 

 あやめは、炎を纏った刀を振るい、炎の壁を鬼岩坊の周囲に発生させる。灼熱の炎に囲まれた鬼岩坊は、その場で身動きが出来なかった。

 

 「今が好機だ余!桃太郎!」

 

 「ハッハッハー!さあ、大詰めと行こうか!」

 

 

 ドンモモタロウは、アバタロウギアを回転させる。

アバタロウギアがザングラソード内に転送されたことでザングラソードから軽快な音声が流れた。

 

 〈ヘイ! ヘイ!ヘイ!ヘイッ!カモォーン!

 アーバタロ斬♪アバタロ斬♪アーバタロ斬♪アバタロ斬♪〉

 

 「鬼灯突!」

 

 先鋒であやめが、妖刀羅刹と鬼神刀阿修羅で鬼岩坊を連続で突き、最後に双刀で乱れ斬る。次に、ドンモモタロウはザングラソードを構え、駆け出した。

 

 「ザングラソード・快桃乱麻!」

 

 ギアを三回回すと七色の光が発生し、ドンモモタロウは瞬速で間合いに入り、右袈裟斬り、左袈裟斬り、右薙ぎ、左薙ぎ、右逆袈裟斬り、左逆袈裟斬りの斬撃で斬り付ける。

  

 〈必殺奥義!アバ・タロ・斬!〉

 

 最後に、唐竹割りで必殺技の最後を飾る。

 

 「グアアアア!?」

 

 必殺技を受けた鬼岩坊は、身体がバチバチと火花を散らしながら倒れ込んだ。

 

 「馬鹿な、此処で俺様が負けるとは!!」

 

 鬼岩坊は、二人の攻撃によって大爆発を起こし、撃破された。

 

 

 ドンモモタロウの変身を解除した桃太郎は、鬼岩坊に近付く。通常形態に戻った鬼岩坊は、戦意喪失したのか先程とは違い、大人しく胡座をかいていた。桃太郎に気付いた鬼岩坊は、暴れたりせずに淡々と話し出した。

 

 「この戦い、俺の負けだ。人間の世界では、負ければ腹を切って自害だろ?自刃の正しい礼儀なんざ知らねえ、思い切り頸を刎ねろ」

 

 「敵ながら、見事な潔さだ。相分かった⋯オレが責任を持って介錯を果たそう」

 

 桃太郎が懐から取り出した短刀『骨喰・影打』を受け取り、鞘から刀を抜いた鬼岩坊。そして、用意された奉書紙で刃部分を包み、腹の前に構える。

 桃太郎は、彼の前に布を敷いた後、太刀『破邪』を抜刀し、八相の構えで斬首に備えた。

 

 「鬼として悪事の限りを尽くした俺様が、最期は敗れてこの世を去るとは⋯真に数奇な運命だ⋯いや、因果応報の報いか⋯」

 

 そう呟いたあと、自身の腹に勢い良く突き刺す。そして、力強く目を見開き一文字に斬り裂いた。

 

 「グウッ!⋯さあ、頸を刎ねい!」

 

 「御免!」

 

 太刀筋が鬼岩坊の首を一閃。首は瞬く間に紙を敷いた地面に落ち、首を失った胴体は、血飛沫を上げてバタリと倒れた。桃太郎は、鬼岩坊の泣き別れた首と胴を見て、手を合わせて黙祷する。あやめも桃太郎に倣い、手を合わせながら黙祷した。桃太郎は、敷いた布で丁寧に鬼岩坊の首を包む。そして、未だに激戦を繰り広げているお供達の元に急いだ。

 激戦による戦場の状態は、両陣営どちらも疲労困憊であった。桃太郎は急いで大声を上げた。

 

 「鬼岩坊の首は、ここにあるぞ!鬼岩坊は討ち取った!各々方、今すぐ停戦し、武器を納めよ!」

 

 桃太郎は、鬼岩坊の首を掲げ、辺り全体に見えるようにする。鬼岩坊の手下の鬼達は、親分が敗れたことを瞬時に理解して、武器を落とし、戦意喪失の意思を示す白旗を揚げた。

 幽閉された鬼達は、鬼ヶ島の終戦に歓声を上げた

 

 その夜、鬼ヶ島では宴が催された。中には降参した鬼達も参加している。許しを得た彼等は、心を入れ替え、罪滅ぼしとして鬼ヶ島の復興と発展に尽力するとのことらしい。

 宴会場の中央にある大篝火を囲んでどんちゃん騒ぎしている鬼達とフワモコの様子を少し遠くから眺めている桃太郎は、酒を呷り、ご馳走の肉を食べていた。

 

 そんな桃太郎の隣にすすすっと近づく者が一人。

 百鬼あやめである。あやめは、桃太郎の袖をクイクイと引っ張る。それに気付いた桃太郎は、あやめに話し掛ける。

 

 「どうした。あやめ?あやめも酒を飲んでご馳走を食べよう。無くなっちゃうぞ?」

 

 「あの⋯その⋯あうぅ」

 

 もじもじと指を動かし、歯切れの悪い返事をする彼女。一度、深呼吸すると口を開いた。

 

 「その、人間様!」

 

 「なんだい?」

 

 桃太郎は、優しい声色で相槌を打つ。

 

 「余も島の皆も助けてくれて、あの、その、ありがとう、わぁ!?」

 

 桃太郎は、あやめの頭に手をポンポンと置き、優しく撫でる。

  

 「君は優しい子だ。オレは君(のように心が強くて優しい子)が好きだ」

 

 「す、好――!?」

 

 言葉足らずの桃太郎の台詞に心臓がバクバクと跳ね上がるあやめ。この感情が何なのか彼女には分からないが、彼の顔を見るだけで胸が熱くなる。

 あやめの気持ちも露知らず、桃太郎は酒を盃に注ぎ足して呷っていた。

 

 意を決したあやめは、桃太郎に声を掛けた。

 

 「人間様!これは余からのお礼だ!チュッ」

 

 『あー!?』 

  

 あやめは、桃太郎の頬に口付けをした。それを目撃したお供達は、あやめに詰め寄る。

 

 「ちょいちょい君!桃太郎の頬に口付けするなんて!僕もまだしたことがないのに!」

 

 「〈鬼さんズルい!モココも桃太郎にペロペロする!〉」

 

 「〈モコちゃん先駆けはズルいよ!フワワもペロペロする〉」

 

 「あ、ちょ、フワモコやめ!だはは!く、くすぐったい!」

 

 桃太郎は、フワモコに両頬を舐められ、くすぐったそうにしていた。いつもの日常と変わらないその様子を眺めているお姉さん組の三人は苦笑いしていた。

 

 「ありゃりゃ~ライバルが増えちまっ太郎か〜」

 

 「本当にモテモテね。桃太郎は」

 

 「取り敢えず、一件落着だでな」

 

 鬼ヶ島に蔓延っていた巨大な危機が去り、平穏が訪れた。鬼ヶ島と村の英雄となった桃太郎と忠実なお供達の功績は、後世にまで語り継がれることになる。

 

 

 桃太郎は、鬼岩坊の独裁支配から解放された鬼ヶ島の鬼達との合意の元、村々が奪われた宝物と報酬として鬼岩坊が溜め込んだ宝物半分を持ち帰る。残り半分は、鬼ヶ島の発展費用と鬼達の生活資金として分けた。帰りにあやめが付いてきたが誰も気にしなかった。

 

 そして、お爺さん達と村長に調査結果を伝えた桃太郎は、仲介人として鬼界ヶ島と村の和平講和を図り、無事に締結されたことで村に平和が訪れた。この時、鬼ヶ島調査の道中で助けた娘達が桃太郎の元に訪れ、お供やあやめと桃太郎の嫁争いを繰り広げたのはまた別のお話。

 

 

 さらに数年後、お爺さんお婆さんの元から独立した桃太郎は、飢饉と疫病で貧しい生活を送っていた民に圧政を敷いていた幕府に対して、徳政令発布を要求する名目で自らを主導者として挙兵。見事、幕府に徳政令を施行させる目的を果たし遂げましたとさ。

 

 

めでたし、めでたし

 




 桃太郎役∶六道理央
   犬役∶戌神ころね
   〃 ∶フワワ・アビスガード
   〃 ∶モココ・アビスガード
   雉役∶鷹嶺ルイ
   猿役∶白銀ノエル
  鬼娘役∶百鬼あやめ
お爺さん役∶兎田ぺこら
お婆さん役∶宝鐘マリン
 幼馴染役∶天音かなた
  村娘役1∶ときのそら
  村娘役2∶春先のどか
ゲスト出演∶ロボ子




UA10000超えありがとうございます!これからも精進してまいります!

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