アルバイトスタッフの電脳日常   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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かなり遅くなりましたが、2026年も『アルバイトスタッフの電脳日常』をよろしくお願いします。

今回は、節分回を二話構成の短編形式でお送りいたします。


ホロの節分

 短編その① 『福は内からの鬼も内!』

 二月三日、節分の日。古くは『追儺』と呼ばれ、疫病や災害の原因とされた邪鬼を追い払い、一年の健康を祈る魔除けの風習である。魔を滅するという語呂から豆を投げ、鬼の苦手な柊鰯を玄関に飾る。鬼という生き物は、人間にとっての穢れを体現化させた存在かもしれない。そんな行事に物申す者…いや、鬼が一人いた。

 「今日は節分!邪気を追い払い、一年の健康を祝う日だ!だが、余的に解せないことがある!何故、鬼が酷い思いをせねばならんのだ!」

 ホロライブに所属する鬼娘『百鬼あやめ』は、節分という行事に怒りの態度を見せる。それは、今日が彼女にとって厄日だからだ。

 「恵方巻を食べたり、地域によってはお菓子やお餅をばら撒くというイベントがある。余はそういうイベントなら歓迎するぞ。食べる事は大好きだからな」

 

 あやめは、桝に入った豆と鬼のお面を持ち、ポイっと放り投げる。

 「しかし、鬼にとっては苦痛だ。豆をぶつけられると痛いし、柊鰯とか地味な嫌がらせだろ!魚臭いし」

 「だから今日は、節分における鬼の地位向上を目指そうと思う!いざ、突撃―!」

 あやめは、金棒を肩に担ぎ、ホロライブ事務所へと向かった。ホロシティは、今日も愉快な一日になりそうだ。

 あやめが向かった事務所には、ReGLOOSのメンバーである音乃瀬奏、轟はじめ。ホロライブゲーマーズの白上フブキと大神ミオ。FLOW GLOWの水宮枢と虎金妃笑虎が集まり、節分を楽しんでいた。

 「がお~!鬼だぞ~」

 「悪い子はいねがー!」

 「いや、それは『なまはげ』」

 鬼役の笑虎とフブキは、某だっちゃの宇宙人みたいな虎柄の衣装を纏い、節分の鬼を演じていた。なまはげの台詞を披露したフブキの言い間違いをミオがツッコむ。

 「枢ちゃ~ん可愛いね~」

 「怖っ!きっも!鬼は外!鬼は外!」

 水宮は、鬼の笑虎に豆をぶつけるも効いていない。それどころか、水宮の反応に興奮する始末。笑虎は、頬を赤らめ、荒い息を吐きながら水宮を角の隅へと追い込む。

 「枢ちゃ~ん、お姉さんとイイ事しましょ~?」

 「うぎゃあああ!?」

 水宮枢、鬼の笑虎討伐失敗。彼女の敗因は、豆まきの相手が笑虎だったことだ。

 

 「鬼はーちょと!福はうち!」

 「鬼は―外!福はうち!」

 一方で、滑舌ふわふわな番長のはじめは、豆を投げた。それに続いて、奏もフブキに豆をぶつける。身体に当たるも、低威力な豆攻撃にフブキは笑いながら仁王立ちする。

 「ふっふっふ、その程度の攻撃で白上鬼を追い払おうなんざ百年早い…わ?」

 発砲音と共にフブキの横を何かが通り過ぎた。フブキのもみあげ数本が空中に舞い、床に落ちる。フブキは、ギギギと油の切れたブリキ玩具のように壁の方を向く。一粒の豆が壁に減り込んでいた。もしやと嫌な予感を感じ、二人がいる前方に目を向けた。

 「ちぇっ、外れちゃった」

 「スイーパー奏の腕前をお披露目しちゃいますか」

 はじめと奏の二人は、サブマシンガン型のモデルガンを武装し、豆を装填していた。手に持って投げるほのぼのとした豆まきからバイオレンスな豆まきに様変わりする。

 「…こ~ん」

 圧倒的に不利な状況を悟ったフブキは、耳をペタリと閉じて尻尾を足に巻き、小さく鳴いた。哀れな子狐なり。だがしかし、後輩二人の選択はフブキにとって非情だった。

 「どわあああ!?鬼の目にも涙ならぬ狐の目にも涙じゃーい!」

 「待ちぇ待ちぇー」

 「ひゃっは~!鬼は消毒だ~!」

 サブマシンガンの銃口から豆を乱射する二人の攻撃から避けるフブキ。ミオは、立場が逆転した豆まきに苦笑する。その時、窓の向こうから怪しい人影が接近してくる。

 「節分の豆まきに物申す~!」

 「何事!?」

 あやめの窓からのダイナミック登場に吃驚したミオは、事務所の窓が破壊されたことに尻尾を立てる。あやめの搭乗よりも事務所の窓が割れたことに注目する始末。

 「余は、節分の豆まきに言いたいことがある!鬼をいじめて何が楽しい!鬼だって嫌だという感情があるのだ!」

 「あやめ先輩は豆が苦手なの?」

 「いきなり、豆を投げられて苛立たない者はいるか?」

 「柊いわちは、どうなんしゅか?」

 「あれ、魚臭いじゃん。普通に嫌だ余」

 水宮とはじめの質問に回答するあやめ。確かに嫌だと、全員の心は一つになる。鬼側の視点からすれば、勝手に疫病の原因にされ、大して痛くもない豆を鬱陶しいほどぶつけられる。そして、焼いた鰯に柊を刺した柊鰯は、純粋に魚臭くて気分を害するという理由であった。

 

 「邪険に扱われ、哀れな一日を過ごす鬼の恨み。今ここで晴らすべきかー!」

 あやめは、肩をわなわなと震わせる。そして、金棒片手に事務所のソファーや椅子を破壊して暴れまわる。暴走するあやめから逃げ回るフブキ達。このままでは、事務所が崩壊してしまうことに危機感を抱き、荒ぶるあやめを止めようとする。あやめが金棒を振り上げた瞬間、救いの女神が舞い降りた。

 「皆―うち特製の恵方巻食べようか~」

 『わーい!食べるー!』

 ミオ手作りの恵方巻を前に、あやめの暴走は収まる。恵方巻を食べるという目的に変わったことで、あやめの真の目的は有耶無耶となる。こうして、皆で仲良く恵方巻を食べたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短編その② 『秘密結社の節分』

 秘密結社holoXの地下アジトは、節分というイベントに浮き立っている。任務も収録もない平日、彼女達にとってはひと時の休日であった。

 「今日は節分でござるな~」

 「確か、年の数だけ豆を食べるんだよね」

 用心棒の侍・風真いろはは、カレンダーで二月三日の日付を見る。隣にいたholoXの技術担当・博衣こよりは、節分に行う福豆を説明した。そこに、恵方巻の準備をしていた幹部の鷹嶺ルイがやって来る。こよりといろはの二人は、ルイを見る。彼女は、誰か探している様子だった。

 「ねえ、二人とも。クロヱを見なかった?」

 「ルイねぇ。クロヱなら、まだ寝てると思うでござるよ」

 「昨日は夜中の三時までゲームやっていたよね」

 「…あんの自堕落シャチ」

 夜中まで起きては昼過ぎまで寝るという昼夜逆転の生活を送っている沙花叉クロヱに、ルイは呆れて溜息を吐く。近くのソファーでコーラを飲みながら、動画サイトを見ていたラプラスは、ルイに節分の行事について尋ねた。

 「なあ、幹部。福豆は歳の数だけ食べるんだよな?」

 「そうですね。でも確か、総帥はエデンと同じ歳ですよね?」

 「吾輩、流石にそこまで喰いきれねえよ」

 「そもそも、ラプ殿の年齢分まで豆を確保できないでござるよ」

 「約四十六億粒の福豆が必要だね!」

 本来なら、年の数だけ食べる福豆も宇宙人であるラプラスの年齢からすれば在庫的にも金銭的にも負担がかかる。どうしたものかとラプラス以外の三人は考えた。

 「もう適当に十粒でいいんじゃないですか?」

 「おい、今見た目で決めたろ。吾輩は立派な大人のレディだぞ」

 適当な数を述べるルイに、ラプラスは憤慨する。どう見ても、見た目で豆の数が判断された。それが彼女の逆鱗に触れる。

 「夕飯前にお菓子を沢山食べ過ぎるラプ殿の何処が大人のレディでござるか~?」

 「食わず嫌いで野菜を残すんじゃないよ。野菜作った人が悲しむでしょ」

 「あれあれ~?良い子はおねんねの時間だよ~?」

 「ここぞとばかりに煽り散らかすのやめろ!」

 見た目に伴い中身も幼いラプラスの日頃の行いを指摘し、煽り散らかす侍と博士。あえて挑発に乗るラプラス。姉妹喧嘩のようなやり取りが彼女達の日常だ。

 「この薬を試す時が来たようだね!バイバイフヤシ~」

 こよりは、濁声で懐から一本の薬を取り出した。その薬には、『バイバイフヤシ』とシールが貼られている。

 「おぉ、某青狸の不思議な道具みたいでござるな」

 「というか、バイ〇インだな」

 「その台詞、著作権的にアウトです」

 いろはの濁した台詞をラプラスは遠慮なしに言い放つ。ルイは、冷静にツッコミを入れる。こよりは、用意した一袋分の福豆に『バイバイフヤシ』を噴霧する。五分後、福豆が倍に増えた。

 「デメリットとして、このまま時間が経つと地球がヤバい事になるから、頃合いを見て、『フエルトマール』を噴き掛けとくね」

 そして、三十袋分に到達したとき、『フエルトマール』を噴霧したことで増殖は止まる。ここからは、時間との勝負だった。こよりは、ラプラスを手術台の上に乗せ、手足を拘束具で拘束する。

 「は?」

 「さあ、年の分だけ食べるでござるよ」

 「一年健康でいられるように…ね!」

 「お、俺のこより。やめ…もが」

 こよりが発明した自動餌やり機によって、無理やり福豆を詰め込まれるラプラス。適宜、いろはが水分補給を取らせる。だが、豆の消費は虚しく、一向に減らない。そこでこよりは、自動餌やり機の作業スピードをマックスモードに変更させる。勢いよく放り込まれる福豆の圧力に、ラプラスは悲鳴を上げた。

 「もがあああああ!?」

 (ちくしょう、こうなったら自爆するしかねええええええ!!)

 自爆を決意したラプラスは、自らの体を犠牲にエネルギーを解放した。次第にラプラスの身体が白く光り、閃光が弾ける。三人の視界が白く染まり、爆発音がアジト中に響き渡る。爆発音と震動がクロヱの部屋まで伝わるも、彼女は一向に起床しなかった。

この爆発事故は、こより発明の防音システムにより、爆発音が外に漏れずに済んだのは別の話。

 翌朝、目を覚ましたクロヱは、重い足取りで廊下を歩き、リビングの惨状を見て目を点にする。

 「も、もがぁ」

 リビングでは、口いっぱいに山盛りの福豆を詰め込まれ、白眼を剥いたラプラス。ラプラスの自爆により、アフロ髪で煤だらけのルイ・いろは・こよりの三人が死屍累々の状態で横たわっていた。ソファーやクッションが散乱し、悲惨な状態だ。

 「何があったんだよ。でも皆寝てるし、もう一眠りしますかぁ。おやすみなさーい」

 皆が寝ていると勘違いしたクロヱは、風呂に入らず、また自分の部屋に戻り、惰眠を貪る。こうして、沙花叉の風呂キャンセルが六日目に更新された。

 

 

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