ロクでなし魔術講師と銀ノ魂(しろがねのたましい)   作:嫉妬憤怒強欲

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前回書いた作品『ロクでなし魔術講師とマダオ(まるでダメなおっさん)』を読み返したのですが、コメディと呼ぶには物足りないという感じがしました。それになんか出したキャラクターのキャラが薄いというか、1人称視点をもう少し深く掘り下げた方がいいのではという考えが頭に過り、思い切って書きました。


教科書は人に投げるモノじゃない

 魔導大国。

 僕等が住むアルザーノ帝国がそう呼ばれ出したのは遥か昔から。

 超自然的な力を発揮する魔術が存在する世界の、北セルフォード大陸の北西端に位置するこの国では、魔術の研究とそれを利用した魔導技術が主流となっている。

 魔術は偉大で神聖と尊ばれ、魔術を使って世界の真理を追求する者を人々は魔術師と讃えられる。

 当然魔術師を育成する教育機関がいくつか存在する。

 その中の一つ、帝国の南部のヨクシャー地方に位置する学術都市フェジテにある『アルザーノ帝国魔術学院』に僕は通っている。

 アルザーノ帝国が魔導大国としてその名を轟かせる基盤を作った名門校で、最先端の魔術を学べる最高峰の学び舎として近隣諸国にも有名で、帝国で高名な魔術師のほとんどがこの学院の卒業生とのこと。

 だから在校生達や講師達には学院に所属していること自体を誇りに思っており、その誇りを胸に日々魔術の研鑽に励んでいる。

 勿論僕、シン=フォーミュラも学院の一員として、常に清く正しい学院生活を送ってる………

 

「起きなさいシン!」

「わっ!!?」

 

………わけじゃなかった。

 

 

 

 耳元で鼓膜が破れるんじゃないかって程の大声で叫ばれ、無理矢理意識が浮上する。

 目を開けると、純銀を溶かし流したような銀髪のロングヘアと、やや吊り気味な翠玉色の瞳が特徴的な良く見知った美少女がしかめ面で僕を睨んでいた。

 

「やあシスティおはよう。なんか今日ご機嫌斜めだね。なんか相談に乗ろうか?」

 

 彼女の名前はシスティーナ=フィーベル。名門貴族フィーベル家のご令嬢で、僕と同じ教室で魔術を学ぶ学士だ。

 

 机に突っ伏して顔を素早く上げ、何事もなかった体を装うことにする。

 

「よかった。ちょうど私がご機嫌斜めの原因がすぐ目の前にいるわ」

 

 あー、やっぱり誤魔化すのは無理だったみたい。

 システィはすごく模範的で優秀生徒だ。ただその生真面目すぎる性格や、キツイ態度のせいか折角モテる顔立ちにも関わらず、男子生徒からの評価は低い。これでも入学当初と比べればマシな方だが、クラスの皆から聞いた話では『彼女にしたくない美女ランキング一位』を独走するとの事。

 

 ふっ、思わず笑っちゃうよね。

 

「今、なにか失礼なこと考えなかった?」

「エッ、キノセイダヨ」

 

 怖……

 なんでバレた?

 鋭い眼光のせいで、思わずカタコトになっちゃったよ。

 

「………まあいいわ。それより!貴方今居眠りしてたでしょ!」

「僕が居眠り?ハハッまさか。寝てるように見えたんだろうけど、目を閉じて精神を鎮めることでニュートラル状態を維持できるかの実験をしてたわけで決して…あっごめんなさい居眠りしてました。僕が悪かったです。反省してますのでその手に持っている辞書を振り下ろそうとするのやめてもらえませんか」

 

 流石に分厚い辞書はシャレにならない。起こすどころか、下手したら永遠の眠りについちゃうよ。

 

「まったく……この由緒あるアルザーノ魔術学院で居眠りなんて弛んでる証拠よ!貴方には学院の生徒としての自覚が――――」

 

 ガミガミとシスティの説教が続く中、

 

「まぁまぁシスティ、落ち着きなよ」

 

 救いの天使が現れた。

 システィの横で聞いていたその少女は、友人であるシスティを落ち着かせるため、天使のような笑顔で微笑んだ。

 綿毛のように柔らかな金色の髪。青色の大きな瞳が特徴的なこれまた美少女。笑顔が素敵な彼女の名前はルミア=ティンジェル。システィのキツイ性格とは反対に、柔和で優しい雰囲気を醸し出す清楚さと整った顔立ちはまるで聖画に描かれた天使のように可憐だ。

 もうあれだね。出会って1秒でフォーリンラブしちゃうよ。

 実際学院では特に男子生徒の間で非常に高い人気を誇っている。容姿も性格もいいルミアを嫌う者は少なく、好意を持つ者が多い。学院内に非公式のファンクラブがあるとか。僕もその一人。

 ちなみに学院でしている女子の制服はかなりヤバい。

 なにがヤバいかって?

 魔力保有量を増やすためとかなんとかという理由で、へそ出し、太ももが見えるほど丈の短いプリーツスカート、ガーターベルトと身体のラインが出る衣装で、思春期真っ盛りの青少年達には刺激が強すぎるんだよ。 ホントに制服のデザイン考えた人は良い仕事したね。

 

 それをスタイル抜群のルミアが着たらどうなると思う?

 チェリーボーイズなら即目のやり場に困って、数秒で前屈みになっちゃうよ。

 

 それに対してシスティの方は……………うん。身体特徴は人それぞれだし、比べるなんて失礼だよね。

 

「……シン。今私のことバカにしなかった?」

「キノセイダヨ?」

 

 だからなんでバレるの?

 表面上はなにもないだとばかりに返答するけど、内心は冷や汗ものだ。

 

「きっとシン君も疲れてるんだと思うよ?」

「ほんとルミアは甘いのよ。そんなだからこいつはすぐつけあがるのよ」

 

 つけあがってるなんて人聞きの悪い。

 大天使様とお話しできるだけでちょっと気分が舞い上がってしまうだけなのに。

 え?他の男子からの嫉妬?そんなの一時の高揚感と比べたらなんということない。

 

「シン君も、もう授業自体は始まってるから気を付けないと」

「ははあ。以後気を付けます」

 

 いやもう彼女の前ではなかなか頭が上がらないよ。いろんな意味で。

 

「ん?あれ、今日くる先生まだ来てないの?」

「そうなのよ!もう一時限目の授業時間が半分も過ぎてるってのに!」

 

 僕らのクラス、二年次生二組の担当講師だったヒューイ先生が突然辞めちゃって、今日から新しくこのクラスの担任を務めることになった非常勤講師が来る筈なんだけど、授業開始時間になっても一向に姿を現さない。

 

 来るまでの間自習をしてたんだけど、昨日少し夜更かししたのが響いて居眠りしちゃったんだった。

 

「まったく……この由緒あるアルザーノ魔術学院の講師として就任初日から遅刻なんて良い度胸だわ。これは生徒を代表して一言いってあげないと」

 

 そんなだから説教女神なんて呼ばれるんだよ…

 

 これからシスティに説教されるであろう非常勤講師に同情の念を送っていると、教室の扉が乱暴に開かれた。

 

「チーっす、ガキ共さっさとテメーの席に着きやがれ」

「やっと来たわね!  あなた、一体どういうこと!? あなたにはこの学院の講師としての自覚は──」

 

 けだるそうな口調で入って来た人物が非常勤講師なのだろう。

 

 授業半ばまで遅れた講師に怒鳴るシスティが突然停止した。というか、教室全体の空気がガラリと変わったが正しいか。

 スーツの上に白衣、足元はサンダルというラフなスタイルの二十代後半のおっさんが、ポリポリと銀髪の天然パーマを掻きながら教壇に立つ。

 伊達眼鏡越しに僕らを見据えるその目は死んだ魚の様な目をしているには、あまりに…真っすぐだった。

 

 

 この学院の教鞭を執る姿とは正反対の存在に、全員の意思が瞬時に一致しただろうね。

 

 きっとこんな感じ。

 

"なんか変な人きたあ!!!"

 

 

「えー今日から一ヶ月間、このクラスの副担任になったギンパチ先生です。短い間ですがよろしく、お願いします」

 

 すごい。こんなにやる気なさげの自己紹介初めて見たよ。

 

「先生!」

「ん?どォしたあ?そこの白髪娘」

「これは白髪じゃなくて銀髪です!あと私にはシスティーナ=フィーベルと言う名前があります!っと、そんなことより!先程の発言といいその格好!貴方にアルザーノ帝国魔術学院の名誉ある教員としての自覚があるんですか!?」

「あ?これは非常勤に講師用のローブくれねえから、代わりにそれっぽく見えるよう、保健体育の先生に習って白衣を着てるだけだ。伊達眼鏡も知的っぽく見せるためのものだ。見ればわかるだろ?」

「いや、わからなかったから聞いたんでしょうが!ていうかなんでそこで保健体育の先生をチョイス!?」

「保健体育なんて思春期迎えたガキなら皆自動的に100点取れてこっちは楽できるから決まってるねえか」

「動機が最低ね!?」

 

 いや、確かに保健体育は思春期を迎えれば誰だって自動的に修得しちゃうだろうけども。

 

「じゃあとりあえず朝のホームルーム始めんぞー……ていうかホームルームって何やんだっけ?あー…よくわかんねぇからとりあえずそこの銀髪娘、ギャーギャーやかましいから廊下に立っとけ」

「ええええ!?」

 

 なんかもう無茶苦茶だな。

 学院に所属する教授にも個性の濃い人がいるけど、目の前の死んだ魚の眼をしたモジャモジャも大概だな。

 

 特に突っ込み所が多過ぎてあのシスティが翻弄されるなんて……………なんか歴史的瞬間を目撃しちゃったような気がする。

 

「あーあーもういいよ。前置き無しでお前らの担任紹介するから」

「え?貴方が担任じゃないんですか?」

「さっき副担任だって言っただろ。駄目だぞー先生の話ちゃんと聞かないと」

 

 いや、皆あんたの格好がパンチ強すぎて全然頭に入ってないから。

 教室の空気なんてギンパチ先生はそれを華麗にスルーし、廊下の方へとドア越しに「おーいもう入っていいぞー」とやる気無さそうに言う。

 

 ということは扉の向こうに今度こそ僕らの新しい担任が――――。

 

――――。

 

――――――――。

 

――――――――――――。

 

 

 あれ?なんか、どれだけ待っても入ってくる気配がないんだけど。

 

「おかしいな。おーいそろそろ入ってこーい」

 

 ギンパチ先生が呼びかけても返事がないことに皆も困惑しだす。

 

 

「まさかあいつ……悪いちょっと確認してくるわ」

 

 ボソッと放たれた言葉と共に、扉を開けて廊下へと出るギンパチ先生。

 

『あっ、テメェやっぱ逃げようとしてたか!』

『ぎゃああああ!!ばれたぁ!?』

『待てやおらぁ!テメェが俺の追跡から逃れようなんて一万年と二千年早ェんだよ!』

『その数字意味わかんねえよ!』

 

 ガシャン!バキッドゴッ、と言う物音が廊下から響き渡る。

 廊下で一体何が起こってるのか気になるけど、ここにいる全員扉を開ける勇気が出ない。

 

 それからしばらくして、教室の扉が開いてギンパチ先生が顔を出した。

 

「悪いな待たせて。改めてお前らの担任を紹介するぞ。おら、さっさと入れボロ雑巾が」

「ちょっ、もう逃げねえからせめて自分で歩かせ…ぐぇ!?」

 

 ギンパチ先生に投げ込まれる形で、全身ずぶ濡れの黒髪の男の人が教室に入ってきた。

 うわッ、黒髪の人も死んだ魚の眼してる。

 というか、なんで濡れてるの?

 

「あ、あ、あああ───貴方は───ッ!?」

 

 そんなことを考えていると同時に、システィはありえないものをみたとばかりに震える声でずぶ濡れの男を指さした。

 

「あ?なんだグレン、お前そこの銀髪娘と知り合いか?」

「……違います、知りません人違いです」

「人違いなわけないでしょ!?貴方みたいな男がそういてたまるものですかっ!」

 

 他人を装う男にシスティが喚き立てる。ルミアもその男を見て驚いている。どうやらこの二人は知り合いみたいだ。すごく気になる。

 

「俺はお前みたいな銀髪なんて知りません。『ゲイル・ブロウ』を撃ってきたなんて知りません」

「おもくそ知ってんじゃねえか。公園で居眠りしてるところを見つけた時からボロボロだったが、お前なにかやらかしたか?」

「ちょっ、なんで俺が加害者前提で聞いてくるんだ!?一年ぶりに再会した相手にそりゃねえだろ!」

「久しぶりだからって甘やかしてくれると思ったら大間違いなんだよ」

 

 これシスティとルミアに直接聞いた方が早そうだ。

 

「ルミアさんや、システィはあの人と知り合いなの??」

「う、うん。ちょっと…ね」

 

 ルミアは今朝の出来事を話してくれた。

 システィと二人で登校していると飛び出して来た男にシスティが魔術でぶっ飛ばし、その後ルミアにセクハラに近い行動を働いたという。

 

 へえ、そうかそうか。

 

死ぬ覚悟はできてんだろうな?あぁん?

 

 今日がアンタの命日でいいな非常勤講師?

 

野郎、ぶっ殺してやる

我らが神聖な天使の御体を汚そうとしたその罪、決して軽くはないぞ?

 

「ちょっ!?なんか男子どもが殺気だってんだけど!?ごめんなさい!もうしないので勘弁してください!」

 

 僕と話を聞いていたクラスの男子生徒達の殺気にびびったその男は、教壇の上で土下座をする。その姿に学院の講師としての威厳は微塵も感じられなかった。

 

「ぎ、ギン!お前も一緒に頭を下げて――――」

「血で床を汚すなよ」

「おいい!!?仲間を見捨てるなぁ!?」

 

 安心してくださいギンパチ先生。今なら血の一滴残さず消し炭にできる自信があります。

 

「も、もう皆やめなよ。私は気にしてないから。向こうも反省してるみたいだし」 

 

 天使の一声で、一同殺気を抑える。

 

「ルミアちゃんがそう言うなら…………」 

「けっ、命拾いしたなセクハラ野郎」 

「次やったら容赦しねえぞ」 

「なにこのクラスの男子ども!?無茶苦茶怖ぇんだけど!?」 

 

 これが僕らのクラスです。

 

「丸く収まったんなら自己紹介でもしろ。今までのやり取りでもう10分も時間無駄にしてんぞ。俺の家賃のためにもしっかり働けヒキニート。じゃ、俺は適当にやっとくからあとよろしく」

 

 それだけ言ったギンパチ先生は隅に座って、いつの間にか取り出した分厚い本を読み始めた。家賃の為?一体どういう関係なのこの2人?

 

「くっ……くっそーこのドS野郎が、後で覚えてろよ……えー、グレン=レーダスです。本日から一ヶ月という短い期間ですが、生徒諸君の勉学の手助けをするつもりです。短いですが――」

「挨拶はいいから、早く授業を始めてくれませんか?」

 

 苛立ちを隠そうともせず、システィは冷ややかに言い放つ。

 

「あー、でも、まぁ、そりゃそうだよな……かったるいけど始めるか……仕事だしな……」

 

 すると、先ほどまでの取り繕った口調はどこへやら。たちまち素が出てきたグレン先生は、チョークを拾いってスタイリッシュ(無駄に)にかっこよく(無駄に)コントンコンっ!と、黒板に文字を書き記した。

 

 

“自習”と。

 

 

「……え?」

 

 まさかシスティの口からこれほど間の抜けた声が聞けるとは思わなかった。

 

「えー、本日の授業は自習にしまーす」

 

 そして、机に突っぷすとすぐに鼾の音が聞こえた。本当に寝ちゃったよこの人。

 

「ちょおっと待てええぇぇぇぇ──っ!?」

「あでっ!?」

 

 当然、真面目なシスティが激昂し、グレン先生の頭頂部に分厚い教科書の角をお見舞いした。

 

 

 

 

 で、無理矢理起こされたグレン先生が頭に盛大なタンコブを乗せたまま授業を始めたのは良いんだけど………。

 

「で多分、こうだから~きっと、こんな感じで~で大体、こうで~」

 

 なんかゾンビみたいな緩慢な動作で教鞭を取りだした。

 聞いていても内容が理解できず、説明にすらなっていない。時々黒板に文字を書くけど字が汚すぎて読めない。

 今までにない最低最悪の授業だ。

 

「……………はぁ。ギンパチ先生、そこの変態の代わりに授業をしてください」

 

 このままじゃ授業にならないと判断したのか、システィがすぐに読書中のギンパチに声を掛ける。

 

「………はあ。ったく、しゃーねーな。面倒くせえが俺が代わりに授業するか」

 

 本からスッと目を離して顔を上げたギンパチ先生は、頭をボリボリと掻きながら教壇の前に立つ。

 

「えー先生、教鞭を執るのは初めてなので一応本を読んで勉強しました」

 

 おっ、なんか少しはまともにやってくれそうだ、と思ったけど―――

 

 

「それではまず皆さんには――――ちょっと殺し合いをしてもらいます」

「「「ぶふぅっ!?」」」

 

 全然駄目だった。

 というか何の本読んだの!?

 

「ふざけんなぁ!!」

「サイコパスぅ!?」

 

 気付けば、ぶちぎれたシスティが手に持っていた教科書を投げつけ、アホンダラの顔にお見舞いした。

 

「もう何なのよこの先生達はあああああああああああああああぁぁぁ━━━━━━っ!!」

 

 ホント何なんだろうね。

 

 この日、二組の教室からほぼずっとシスティの怒鳴り声が聞こえていたのは言うまでもない。

 




リメイクで出てきた新キャラ紹介

名前:シン=フォーミュラ
性別:男
年齢:彼女いない歴
イメージ:三次元だと○田○暉(自称)とのこと
性格:思春期真っ盛りのチェリーボーイ。ツッコミは全部システィに任せる

この作品の主人公は誰だって?決まってんだろ。
この物語の中で、生きとし生ける馬鹿どものことだ!
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