「ジパングでこの魔法を起動させたら良いんですって!」
それが協力する証。この家ごと来るのだとか。そんな魔法があるのかね。マジックアイテムの一種らしいが、よくわからない。よくわからないものなんてまともに考える意味はないので。さっさと行きますか。と言うわけで、何もわからない中街中だけを歩く。熊は二人で食べた。パチュリーさんには拒まれた。
「…」
「何見てるの」
「フランドール」
「?」
「従者、欲しくない?」
姉の視線の先には見せ物小屋。見るからにして人身売買だが、それよりも前に出てくるのは臭い。恐らくはあのような箱の中でトイレを垂れ流しにしているのだろう。劣悪な環境でももう少しの命をくれるのに。このうちの何人が生きてそこを出られるのか。
「ほら、あそこの子供なんか。動きが飛び飛びよ」
言われてみると。銀髪の幼子は、箱の隅に腕を放っていたはずなのに、いつのまにか胸元で寒そうに腕を組んでいる。
「面白い子なら良いけど。」
値段をみる。こう言うところでは、年を経るごとに値段が落ちていく。10歳を越えればそれなりにはなる。はずだが、この子供はどうにも違う。明らかに10代ですらないのに、10代の価格をつけられている。動きが飛んでいることと関係が?
「…お姉さんの好きにして」
「やった!」
連れ出されてきた銀髪の子は、裸。まあ当然か。大体こう言う姿に合わない値段の子供は厄ネタで売れないらしく、主人から服をプレゼントされた。いたく喜ばれていたのも、この子供からは少しのショックらしい。
「さて、行く?」
「そうね」
「どこに…ですか?」
「極東の国、ジパングよ!」
子供にもフードを被せる。まずはアジアを越えなければならない。この時代がいつかは知らないけど、僕らはどうやら赤十字軍を超える徒歩移動をするらしい。とは言え、子供もいるから、かなりの長旅になるだろう。
「名前、どうしようかしら」
「アジアについてからでも良くない?むしろ、アジアで出会った文字で決めたりとか」
「そうねぇ…」
「ところで、疲れないの?」
「はい!」
「…すごいのね」
前世の僕なら歩き回るだけで疲れるくらいには貧弱だったのに。未来か過去かは知らないが、やはり僕の前世とは違って皆強靭なのかもしれない。見せ物小屋で身体が固まっているであろう子供が、何故こうも動けるのか。動きが飛び飛びな事と関係がありそうなものだけど。
「ねえ、ここどこ?」
「そうねぇ」
「大体、中東あたりじゃないの?」
「チュートー?」
「ああ、まだだったか。エルサレムから少し東に行ったくらい。」
「エルサレムは…ああ、ここね。随分と歩いて来たわ」
日差しが少しだけ強くなったのか、暑さも感じる。中東の想像する服装とは違うが、私たちの格好が不自然にならない程度には西洋から離れてきた。それでも浮いてるような気配は全然感じるが。道中で血を吸い肉を奪ってきた為、ある程度に腹は膨れている。私達のようなものではないが、旅人なので足もつかない。
「おい、水はいる?」
「大丈夫…です」
後から気づいたのだが。この子はどうも強がる傾向にある。ポーカーフェイスもうまい。が、この状況ではかなり堪えるのだろう。汗の量と顔が大丈夫ではないことを示していた。日陰に連れて行き、フードを取らせる。少しむわっと匂うが、手で払う。果実を買い、水と一緒に口へと押し込む。
「…大丈夫?」
「っ、はい。」
「そう。少し休憩しましょうか」
「フランドールが大人みたいになっちゃった」
「お姉さん、従者が死ぬ時は寿命以外であってはならないのよ。他殺とか病気なんかで死んだら、それこそ主人の程度が知れるもの」
「…確かに」
「銀もまだあるし、寝泊まりして行っても良いけど」
「それには及びません」
どうやらもう元気を取り戻したらしい。すごい子供だ。前世の僕には、こんなにも早く体力を回復させる術はない。よだれの跡を拭いてあげる。まるで寝ていたかのような跡だが、まあ、水でも垂らしたのだろう。
「まずは、ここらで一番栄えている国よね」
「見聞録だと、ここかしら」
「私、知ってます」
「急に背中に乗らないで」
どうやらこの子はこの場所を知っているらしい。変な子だ。ちなみにその場所は僕の知っている限りでは中国であり、名前は歴史の教科書で見たことのある地名だった。となると、ここはやはり僕の前世より前の時代なのか。しかしなあ、この地名、いつの時代だったかわからないや。
「…海沿いでも歩く?」
「そっちの方が地形とかでわかりやすいかしら」
「いや、魚とか食べやすいでしょ?多分」
「…寄生虫とかいるの。せめて買った方が良いわ」
この子がいるからと言う理由もあるが、歩みが遅くなった。夜中は抱いて移動しているが。昼間はどうも難しい。姉の疲労も溜まっている。どこかで完全に休まる場所を見つけなくては。洞窟が良いが、この子への影響がわからない。見かけだけは幼い子供だから、下手したら死ぬかもしれない。
「フランドール様」
「名前覚えたの?」
「はい。それでこっちが、オネエサン様」
「ぷっ」
「残念。そっちはレミリア。」
「えっ」
「んっ、んんっ。ええ、そうよ。私はレミリア。フランドールより歳上なのよ」
「…嘘ですよね?」
「貴女かなり失礼ね」
「姉さんにもかけようか?成長の魔法」
「私は良いわ。このまま生きていくのよ」
今の状況
レミリア…疲れてる。齢100歳以下。能力は顕現しているが、使う機会がない。
フランドール…疲れてない。生後100歳以下だが、成長の魔法により齢1000を超えた。
パチュリー…動きたくないから、着いたら呼んで。
見せもの小屋の子…後の十六夜。能力は時計なしでも発動できるが、自分の意思とは別に不定期で止まる。自分で時を止めることもできる。