あのブレザーの目を見て、少し意識が飛んだか。まあ良い、何処か、考えがスッキリした。髪を無造作にかき上げて、腕から垂れる血で止める。こんな感じかな?うん、多分良い感じ。さて、このブレザーか。どうやっても痛めつけようか、人間が入ると弾幕だからなぁ…手短に済ませるとしよう。
「というわけで、さっさと死んで?」
「っ!」
何故か飛び上がって間合いを広げられた。拳銃の真似をしている手から変な弾幕が飛んでくる。両手で叩き潰す。何が予想外なのか、驚愕といった文字の似合う顔をしているブラザー目掛けて走り寄り、腹を潰す。潰した腹からいくらか血を頂く。道標を作らなければ、咲夜が追えないだろうし。
「…あのねぇ」
「っ」
「僕に何しようと勝手だけどさ。それを見えてないと思って行動してんのが気に入らないわ」
予定変更。大腸で矢印作ってやる。魔法で延命も出来る。死ねもせず、動きもできない。慣れるまでは死に続ける恐怖でも味わっておくが良いわ。あら、意外と大腸短いわね。切ったらわからなくなったわ…四肢も取って…お、ちょうど良いじゃない。少し臭いけど…こいつ、トイレ行ってるの?
「今度は、貴女?」
「はぅあっ」
「それとも、こっち?」
屋敷のような建物の、一つの部屋に向けて魔力砲。やはりというか、壊れやしない。どうやら中に入らないといけないらしい。全く、面倒極まる。
「と、いうわけよ」
「死にたいのは理解したわよ」
「何?そんなにその先のお姫様が大事?」
「ええ。この屋敷よりも、なによりもね」
「下手くそ」
初手魔力砲。チグハグな服装をした赤青の女を撃ち抜く。これで死んだと思うようなら低レベルな妖怪。何度でも叩きつけてやる。褒美よ、ありがたく死になさい。あのブレザーと同じように、貴女も同じ状態にしてあげるから。と、思ったのだが。
「は?」
「目の前の相手が、いつまでも目の前にいるわけないでしょ?」
腹を矢が通過していた。振り返りついでに脛を蹴る。三回ほど腹を蹴って、翼で叩き潰す。するとどうか。まだ生きているのか頭に矢が刺さる。おかしい。どれも手応えはあった。翼で潰したときなんかは、確実だったはず。
「じゃ、さよなら」
弓を引かれ、矢がこちらに飛び掛かる。僕の臓器を撃ち抜き、通過する。途端に気分が悪くなる。吐き気が止まらない。何が起きた?僕の体に何をした?毒?矢一本で?あり得ない、全ての矢に?3本だぞ?どういうことだ?
「鈴仙の目を見て狂ってるような生物によく効く毒よ。吐き気と麻痺…あとは四肢の末端が痛むくらい」
「がっ…ぁあ…」
確かに痛む。吐き気も酷い。体も鈍い。あのブレザー…やっぱりあの時からしておくべきだったか。でも、毒か。それくらいならまだなんとかなる。機動性に特化したフランゴーレムを3体。目を閉じて、視覚を共有。3体程度なら共有はできるようだ。攻撃全てを避けるように命令を与える。これで、吐き気と末端の痛みは関係ない。
「帰符『さらば、視』」
僕とフランゴーレムが適当に弾幕を巻き、その後フランゴーレムと僕から魔力を詰め込んだだけの魔力爆弾を放つ。傷一つはつくはずだ。それでもつかなければ。
「ああ、言い忘れてた」
こちらも本気で対抗しなければならない。
「その毒の副作用、狂った気がもっと狂うのよ」
こちらも…本気で…叩き潰さなければ…!
「ぅぁあああ!!!」
「そんな風に」
「咲夜、あんたねぇ、あんな悪趣味な道案内がフランドールのやったことなの!?」
「わかりません、ですが…」
言葉を飲み込む。あんなことをするのはフランドール様以外では不可能だと確信している。でも同時に、フランドール様がそんなことをするわけがないとも感じた。本当なら時を止めてでも見に行かなければならない。だが。もし、フランドール様がその先で地に伏していたら。自分はきっと、止まった時の中で打ちひしがれるだけだろう。
「待ちなさい」
「っ」
「紫、邪魔しないで」
「そうじゃないわ。先、よーく見てみなさい」
じっくりと先を見る。赤青の変な女と…フランドール様。フランドール様はどこか荒々しく、余裕がなく見えた。なんだあれは。過去に何度かフランドール様が戦う姿を見たことはある。でも、そのどれもが、今のフランドール様のように荒々しくなかった。大きく曲がった刀を振り回し、翼で追撃を試み、魔力さえ牽制に使う。一体、これは…
「まずい…」
「あ?何がよ」
「フランドール様が、自我を…」
「は?」
これは過去に一度だけ。フランドール様がお嬢様に怒った時があった。最初に派手な音が鳴ったかと思えば観に行った時には既にお嬢様が地面に埋まるほど、怒ったフランドール様は恐ろしい。そんなフランドール様が自我を失っている…力の加減ができなければ…
「まずいわぁ」
「何、そんなにヤバいの?」
「アレの自我がないって、どこもかしこもめっちゃくちゃよ」
「…??」
フランドール様が異形となった姿が変化し、五人に増えた。パチュリー様曰くではあるけど、フランドール様は異形時にはその脳の部分だけ魔力の発生量が増えるらしい。つまりは、今までよりも強いということ。
「五人って」
「魔理沙がいれば、火力は…」
「無駄ね。あの小娘程度の威力なんか、弾かれて終わりよ。ほら、増えた五人の姿が変わっていくわよ?」
「は?」
徐々に優勢へと近づくフランドール様達。それに伴い増えていくフランゴーレム。赤青の奇抜な女も、弓矢を頼りにした戦いから何でも駆使するようになっていた。
「お嬢様を、連れてきます」
「できることならこの結界ごと封印したいんだけど」
「壊されて終わりでしょうね」
結局、朝も明けずに夜が来るんだなぁ
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