酔った先で寄港しなきゃ、ゲロも吐けません。
「…」
「ま、大体1ヶ月ですね。我慢してくださいよ〜」
「こんな小さい船で」
「ぅ」
船だから、フードは外せない。その上賊もいるらしい。幼子も船はきついらしく。吐いて死にそうなので、美鈴が気を整えさせて気持ちを落ち着かせている。従者以外は平気のようだ。このまま1ヶ月かかるのかぁ…しまったな。魔導書、何個か持ってくれば良かった。収納魔法とかも欲しかったな。
「…面倒ね。空飛びたいわ」
「そんなことしたら、ジパングの野蛮な武士に切られますよ。あいつら、夜もいますから」
「通り魔やってる奴が野蛮なんて言うのは、おかしな話」
「も、も〜!やだな、私だって強者探してたんです!」
「…あんな場所、強者なんかいないわよ」
「やっぱりそうですか?」
「それに、強者なら適当にふらついても会えないわよ。適当に生きてるだけじゃ強者なんてなれないし」
「はぁー、そうなんですか」
「ところで、魚は調理できる?」
「はい!私の得意料理の一つです!」
「じゃあこれ」
「え゛っ…
「さっきから船の跡をついてきていてね。殺した」
なんとも。こう、船の上を見ていると時間の進みが遅い。空は暗く、星空しかない中、一体これ以上は何を見上げれば良いのか。何を見上げても意味はないか。船を進めているのは僕と美鈴。たまに従者と姉。進みが遅いのは当然だけど、まあ疲れること。いやになっちゃうね
「おお、大量ね」
「ま、私の料理ですので。貴女は食べれますかね?」
「大丈夫です、通り魔さん」
「あら、嫌われちゃった」
「そろそろ名前決めなきゃなぁ」
「そうですねぇ…うーん、私が決めても?」
「何?子持ちだったの?」
「バツは一つもついてませんよ。んー、そうだなぁ。」
「いやです」
「えっ」
空を見上げる。僕も先ほど見上げたが、まあ、なんとも。月以外には星しかないので。名前の由来なんてものは月以外に作れるのか?星なら星座とか。…星座なんてわかんないから、どんな名前をつけるのか。この子も人かわからないけど。しかしこの子は嫌がってるな。じゃあ私たちで…
「今日の月は何かわかる?」
「少し欠けてるので…うーん、十六夜か小望月ですねぇ」
「貴女本当に方角わかってるの?」
「いえいえわかってますよ!星を見てるので!」
「…まあ、良いわ。十六夜って名前にしましょうか。苗字は十六夜、下の名前は…」
「つけるなら女の子らしい名前がいいですね」
「姉さんは?」
「…ちょっと、ごめん」
吐いた。揺れが続いて、不安定で、吐いたのだろうか。前言撤回、無事なのは僕と美鈴だけだろうか。いまいちよくわからんが、まあ。船は進んでいるので。下の名前か…うーん。かなえ…とか?ダメだ、パチュリーにでも決めてもらいたい。そういえば小望月とか言ってたな。こもちとかはどうだろうか。
「女の子らしくないですね」
「可愛いでしょ!?」
「ダメです。こもちなんて、ねえ?」
「もー!それなら、サクヤとかメイとか、そう言うので良いでしょ!」
「…姉さん、それだ」
「咲夜ですか…良いですね!」
「もう当の本人だって寝てるのよ…」
「ほんとだ」
ま、僕等姉妹は夜に眠れないけど。起きたら死んでたなんて、嫌すぎる。さっさとつかないものか。ゆらゆら揺れて、僕の姉が二度吐いて、ようやく夜が明けた。うーん、日差しに負けてしまいそう。咲夜が起きてきたので、正式に名前を与えることとする。
「私になまえを?」
「おん。ジパングは遠いし、今つけても良いかなって」
「ありがとうございます!」
「今日から貴女は十六夜咲夜。十六夜が姓、咲夜が名ね。」
「十六夜…咲夜」
「そ。それが今日から貴女の名前。姉さんは今寝てるから、起きたら名乗ってみて。美鈴と考えた奴だから、美鈴も…あんまり嫌わないであげてね」
「はい!」
「さて…美鈴、どれくらいかかりそう?」
「どれくらいって、なぁ…まだ出てばっかですよ。夜がきた数もまだ両手の内ですし。」
「戦いなんて嫌だわ。ジパングの武士も、優しい輩だと良いんだけど」
聴いた話では、いつぞやの襲撃に対して敵陣に生首投げたりしてたらしいと、美鈴から聞き。あ、これやっばやばいんじゃないかな、とか。思ってみたりして。後腐った牛の死体とかも投げ込んできたらしい。野蛮だな、ジパング。僕の前世の出身地とは別だと思いたいが…地図が示してる場所は、日本なんだよなぁ…
「まあでも着くのは…地図で言う、ここですけどね」
「うわ、九州だ…」
「やめときます?方向を変えれば、この大きい方に行けますけど」
「姉さん、ジパングの妖怪って」
「お父様から聴いてるわ。えーっと…ここ!」
「ありゃ、これまた随分と遠い」
「なんなら反対側じゃん」
「え、そうなの?」
でもそれを解決する妖怪もいるらしい。出会える確率は稀。さらには冬眠もする妖怪らしい。クマの妖怪か?少し肌寒いことも考えれば、冬眠の時期は近いと感じる。これは、自力で行かなければならないか。少し面倒だな…いや、こればかりはどうにもならないか。
「それじゃあ、ここに行きますか」
「はーい」
「いえ、こっちにしましょう」
「あれ、そっち?」
「こっちの方が魚が美味いはずよ」
この間、吸血鬼は血を吸ってないのですが、まあ食に関する効率を妖怪に尋ねるのが無理なので。
気にしないで!