ブルアカの先生がレイヴンの火を選択した621だったら   作:寺水 風味

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このお話は、某掲示板で落ちてしまったとあるスレで形成された概念を元に個人的な解釈を足して作られています


リザルト

 

 

「ゲホッゲホッ……あれ……」

 

濁る意識を息苦しさが押し退け、徐々に思考が回り始める

 

割れそうな程に痛む頭を抱えながら床に手をついて体を起こすと、辺り一面は白い煙で充満していた

どうやら気絶している間に手榴弾の爆発で充満した煙を吸いこみすぎたらしく、喉の奥まで不快感に包まれている

 

「クソっ……なんで」

 

一人助かってしまったという現実の非情さに、無意識に悪態が口をついたのが、まるで他人の譫言のように聞こえる

 

朦朧とした意識と回る視界が吐き気を催すのをなんとか気合いで耐えながら首から上を動かし、周囲を見渡して目に入ってきたのは

一面に散らばった装置、そしてそれぞれの席で力なく倒れている仲間達だった

 

皆、頭上のヘイローが消えている

どうやら手榴弾から一番遠かった自分だけが運良く気絶せずに済んだらしい

 

「──まだだ、まだ終る訳には……っ!」

 

無表情に横たわる仲間たちの顔を見てるうちに今までの思い出が溢れ出してくる

 

学校に入学して、知り合って、沢山の思い出を一緒に作って

そして、それが壊された

 

そんな思い出の終着点で

最後の最後でこんな情けなくいるわけにはいかない

 

その一心だけで膝をつき、立ち上がろうと側の車長席の座面にすがり付いて息を整えていると

不意に車長用のハッチが開き、光が差し込んだ

 

暗闇に慣れた目には、車外はあまりにも鮮烈で反射的に目を背ける

 

「私たちは連邦生徒会からの要請に基づき貴女方を拘束します、大人しく従ってください」

 

目を細目ながら何が起こったのか確認しようとすると、ハッチが一際大きな軋み音を上げながら完全に開け放たれ

誰かの声が聞こえた

 

それは穏やかな口振りであったが、雰囲気とは裏腹に複数の人影と一緒に銃口が車内へと差し込まれた

 

こちらを覗く人影の表情は逆光で伺うことはできなかったが、その佇まいから放たれる確かな威圧感は

自分と相手の力量の差が絶対的であるということを示していた

 

「──へへ、まぁまぁ落ち着いてくださいよ……こいつらの手当を先に」

 

胸中で仇討ちと恐怖がせめぎ合った結果、震える口からは出任せに言葉が出てきた

 

恐怖か希望か、言うことを聞かない身体に無理を言わせて

こちらに向く銃口と、突き刺すばかりの視線から車内の奥へと逃れるように腕を伸ばす

 

しかし、急な重心の移動に身体が付いてこず、支えにしていた手が滑り

ずるりと床へ倒れ込んでしまった

 

「今すぐ両手を頭の後ろへ、抵抗した場合は実力行使で制圧します」

 

受け身をとる暇もなく床へと叩きつけられた痛みに悶えていると

後ろから酷く冷静な声が身体を貫いた

刺激しないよう、微かに首を動かし様子を伺うと

姿勢が変わった影響か、目眩がする程に鮮やかに照らされた生徒が見えた

 

人数は二人、白髪でグレーの制服の生徒と赤いタイツに赤茶けた淡い髪色の生徒

良くみればそれぞれトリニティの校章とゲヘナ風紀委員の腕章を見に纏っている

 

「……ご安心ください、彼女達には私達で必要な対応を致します」

 

ゲヘナの方がそう言いきる間

トリニティの方はトリガーに指を掛けたまま、照準器越しにこちらを見つめたままだった

 

首筋に汗が一筋流れる

きっとあの二人の目に写る私は、踏み潰された虫のようにひどく無様な姿だろう

 

結局、自分だけでなく仲間も全てなげうっても何も成しえないかった

 

自分のあまりの無力さへ対する、ありとあらゆる感情がごちゃ混ぜになって心の底から沸き上がり

なりふり構わず叫びたくなる程のどうしよもない慟哭を、最後の意地で必死で押さえ

鋼鉄の床に食い込みそうな程の力で床に爪を立て、身体を起こす

 

するとふと、指先に何か当たる感覚があった

 

外の二人に悟られないよう指を滑らせ確認すると

どうやら手榴弾の爆発で破壊された内装の一部が鋭利に裂けて手元に転がっていたらしい

 

「これで最後です。今すぐ両手を頭の後ろで組んで投降してください」

「……へいへい、分かりましたよ」

 

沈黙に業を煮やしたのか、銃を構えたトリニティ生徒が再び投降勧告を言い放つ

語気の強まったそれに手短に答えながら地面に座り直し、手を上げる動作で誤魔化しながら袖の中へと破片を滑り込ませた

 

自分でも何故そんな事をしたのか分からなかった

思い付きか、それともただ悔しかったのか定かではないが

ただ、一つだけ確かな事があるとすれば

この行動は監視の目に留まることなく、拘束されてなお袖の中にあり続ける異物感が復讐の炎を灯し続けたという事だけだ

 

 

─────

───

 

 

 

───

─────

 

 

「これでこの辺りは全員ですか?」

「はい、取りこぼしは無いようです」

「了解しました、では残りは向こうの方ですね」

 

戦闘が終了し、皆に怪我がないか見回っていると

ハスミとスズミが不良の拘束に一段落付けたらしく、短いやり取りをしているのを見かけた

 

彼女達の足元にはヘイローが消え、力なくうなだれる生徒達が後ろ手に縛られた状態で瓦礫に身体を預けるように並べられている

 

"見事な手際だね"

「先生、そちらはどうでしたか?」

"みんな気を失っているだけみたい。……こっちの子達も大丈夫そうだね"

 

二人と軽く言葉を交えつつ、拘束された生徒の前で膝をつき様子を見る

 

見える範囲では痣や切傷が目立つものの銃創や裂傷に至るまでの大きな物は見当たらず、意識がないながらも呼吸は安定しているようだ

 

"──ッ"

 

体勢を変えようと体を捻ると、急に腹部から不快な感覚が襲われ無意識に喉が短く鳴った

 

原因には思い当たる節がある

戦車が最初に放った砲撃、それが吹き飛ばした瓦礫のうちの一部が脇腹に当たっていた

爆発による破片の飛翔速度は場合によって銃弾にも匹敵する速度に到達することがある

しかし、今回は運の良かったことに人体に穴を開ける程の速度は出ていなったらしい

痛みの程度から見ても恐らくは内出血程度の負傷に留まっているだろう

 

「先生?どうされました?もしかしてやっぱりどこか痛んだり……」

"大丈夫、なんでもないよ"

 

慌てて口を塞ぐも束の間、いつの間にか隣に立っていたスズミには聞かれてしまっていたようで

心配そうな顔でこちらをのぞき込んできていた

 

その表情で、つい先程まで繰り広げられていた光景がよみがえる

 

戦闘終了後、服の上からでも見える範囲の傷をそのまま放置しようとしたのが見つかり

みんなに総出で傷の手当てをしてもらう事になった

 

それ事体は良かったものの、彼女達もまだこちらとの身体的なギャップに戸惑っているようで

かすり傷に対する処置にしては少々過剰な手当てを受けたばかりであった

 

もし破片が当たっていた事を隠し通せていなければ、今頃はきっと病院に担ぎ込まれていたかもしれない

 

そうなればシャーレへの到着が遅れてしまっていただろう

 

"……ただ、やっぱりみんな丈夫だなって思ってね"

 

強化人間なんかよりもよっぽど

 

怪訝な表情に変わったスズミに対して、あれこれ言い訳を考えている内に浮かんできた言葉をきつく飲み込んだ

 

ACの高機動に耐えうる骨格を備えているだけの強化人間では神秘を宿した生徒達とは異なり、被弾してしまえばそれ相応の肉体的損傷を受けることにはなるが

それでも先の戦闘中にあった事を思えば、あの時再手術せず未だに強化人間だったらという思いが脳裏でちらついた

 

「……この程度の怪我なら、じきに目を覚ます頃かと。恐らくすこぶる元気な様子が見れると思いますよ」

 

考えに耽っていると隣から聞こえるスズミの声が、やけに神妙になっていることに気が付いた

 

視線を声に方へ向けると、スズミは地面に横になっている生徒達を憂鬱そうに見つめている

親切にもキヴォトス基準の怪我の程度を答えてくれたようだが、その中には幾分かの忌々しさが混じっているように感じた

 

「──本来ならば念のため手錠などの拘束具を使用したいのですが、今回は急な戦闘で用意がなかったのでロープの代用です。正直、きちんと拘束出来るのかは疑問が残りますね」

 

小さくため息をついたスズミはおもむろに一歩踏み出し、地面に膝を突くと

心配そうに結び目を掴み、二、三度軽く揺すって手応えを確かめた

 

「──これで抑えきれるんでしょうか」

 

スズミの表情からして目覚めた後のことは想像に難くはない

 

四肢の末端に加え両腕と胴体をを何重にも巻き付けた拘束は、十分過ぎるように見えはするものの

ここはキヴォトス、外の常識は通用しない場所なことは、今しがたその身を持って体験したばかりだ

 

もしかしたらこの程度の縄など簡単に引き裂く事ができる生徒がざらにいるのかもしれない

 

「きちんと施せば十分に効果を発揮するはずです……不馴れで不安なのは私も同じですが、チナツさんが確認済みなので問題はないかと。それに──」

 

不安そうなスズミにどう声を掛けるべきかと言葉を探していると、ハスミが変わって間に入ってくれた

流石副委員長と言うべきか、慣れた様子で心配りをする様子に心の中で思わずうなる

 

「ゲヘナではこのやり方が一般的のようです。あそこで通用するなら心配しなくても大丈夫でしょう」

 

初めのうちはその二人の様子を感心して眺めていたものの

 

膝を折り、スズミの背中に手を当て穏やかに話すハスミの口調が

ゲヘナの事情を口にしている間、変化したように感じた

 

ほんのりとではあるが、どこか侮蔑が滲んでいた口調

それが気になりハスミの顔色を伺うと、平静を装おうているものの

その表情には確かに静かな怒りに浮かんでいる

 

"……ハスミ?どうかしたの?"

「いえ、何でも──それでは私達は残りの方々の拘束に戻ります。先生はどうされますか?」

 

今までの印象とはまた違った様子が気になり、様子を伺いながら声をかけると

意識の外から話しかけられたハスミは面食らったのか、少し慌ていたものの直ぐに元の様子に戻り、話を続ける

 

"そうだね……私は一足先にシャーレに行くよ。リンちゃんも待ってるだろうからね。皆にはよろしく言っておいて"

 

暫く逡巡して出した答えを二人に伝えながら立ち上がる

 

呼び止めて話を聞くべきかとも考えたが、今はお互いにやるべき事が多く残されている

生徒達とはこれからふれあう時間が多くあるはずだ

それこそ根深い話なら、今無理に話を聞くのは悪手になるかもしれない

 

「了解しました、ではまた後ほどお会いしましょう。先生」

"うん、よろしくね。スズミもまたね"

「あ……はい先生、また今度」

 

心残りは多いものの、それを飲み下して二人と別れの挨拶をすると

二人もこちらに習って立ち上がり、淑やかに一礼して大通りを引き上げていく

 

幸いなことに二人の表情は、元通り柔らかなものだった

 

"さぁ、もう一仕事だ"

 

小さくなっていく二人の後ろ姿を見送り、シャーレへと向き直る

振り向けば、遠くから全景を眺めていたビルは

いつの間にか見上げなければ全てを視界に納められない程の距離まで迫っていた

 

あれだけ派手な銃撃戦にも関わらず、外壁にも目立った傷も見受けられず

皆の協力のお陰で戦闘前と変わらずに健在でそびえ立っていた

 

当初の目的を果たすまであと少し

 

誰も居ない通りの真ん中で、胸一杯に空気を吸い込み

身体を襲う倦怠感と共に大きく吐き出し

一路、シャーレへと歩みを進め始める

 

 

 




時間が空いた割には文字数少なめです
というのも何度か書き直している内にここら辺が区切りが良くなったので一旦ここらで投稿することにしました
あと流石に筆が遅すぎますしね

代わりと言っては何ですが、少し書き溜めが出来たので次はここまで間が空かないはずです……多分……メイビー……

ちなみに予定としてはあと3話でプロローグは終わりです
長いね
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