ブルアカの先生がレイヴンの火を選択した621だったら   作:寺水 風味

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このお話は、某掲示板で落ちてしまったとあるスレで形成された概念を元に個人的な解釈を足して作られています

誤字報告ありがとうございます



邂逅2

 

「うーん……これが一体何なのか、まったく分かりませんね」

 

暗室と化した地下室に置かれた、不可解なオブジェクトの前で怪しい人影

もとい狐坂ワカモが首を捻る

 

他の者に外を任せ、破壊すべき設備を思い浮かべながら目的の建屋へ侵入したは良いものの、電気すら通じていない状況にその考えは早々に消し飛んでいた

 

そもそもこのビルを狙った理由は連邦生徒会が秘密裏に整備を行っていたからに他ならない

存在を公言する事なく進められていただけあって、よほど重要な機能が置かれるのだろうとワカモの勘がそう告げていた

 

しかし、蓋を開ければ建物はほぼ放置されているという杜撰な状態で、ワカモの胸の内では目算が外れたのではないかという疑念が少しづつ優勢になり始めていた

 

「これでは壊そうにも……」

 

無論、ワカモも時間が限られている中遊んでいた訳ではない

 

手探りながらも短い探索の末、価値のありそうな物品を発見することはできていた

ただ、しかしそれは一言に『価値がありそう』と言っても、目の前にあるそれは、宙に浮かんでいる下半分が崩壊した石板という奇怪な代物

 

建物全体が暗闇に包まれている中、これだけが照明に照らされているあたりただの置物では無さそうなのは間違いなさそうではあるが

ワカモの思い描く連邦生徒会の中核機能を担う物品の風体とは全くかけ離れた見た目だ

 

「……あら?」

 

少なくない手間をかけここまでたどり着いた以上、何か破壊しなければかかった苦労と釣り合いが取れず

かといって無駄な労力に貴重な時間を割きたくはない

 

そんな二律背反を前に顎に手をあてがい、じばし熟考に耽っていたワカモの狐耳が唐突にピクリと跳ねる

 

あまりに無防備に構えていたせいで気づくのが遅れてしまったが、いつの間にか部屋の中には微かながら確かに靴音が響いており、それは一定の感覚で鳴りながら徐々に大きさを増していた

 

柔軟に動く耳介を操り、捉えた音源へゆっくりと振り向くと

非常灯が疎らに照らす通路の間口に淡く光に縁取られた人影がひとつ、そこにはあった

 

"……君は──"

 

不意を突かれたとはいえ、背後から近付く気配に気がつけないという失態に甘んじた衝撃を飲み下す前に

コツコツと靴音を響かせ緩やかに歩みを進ませ続ける人影から声を掛けられた

 

明らかに生徒から発せられることのないでろう低音が、静かに部屋全体に響く

 

このタイミングで連邦生徒会の重要施設に、それも生徒以外で立ち入る理由がある人物が居るとすれば、その条件に一致する人物はワカモの知り限り一人しか居ない

 

「あら、あららら……」

 

緩やかな足取りが近づくと共に、謎のオブジェクトを照らす灯りによって声の主の姿が明らかになっていく

 

ひどく乱れた衣服とそれから見え隠れしている応急手当の数々

印象は全く変わっているが、間違いなくあの時確かに見た『先生』が目の前に立っている

 

こちらは臨戦態勢、もちろん手に持った愛銃の薬室には銃弾が込められていた

やろうと思えばいつでも躊躇なく発砲することができる

 

だというのにこの大人は何を言うでもなく、ただこちらを見つめ自然体でその場に立っていた

 

「……」

 

あまりにも異質なその佇まいにワカモの動きが止まる

 

いくら銃が一般的なキヴォトスといえど、もしこういう状況で銃を携えた不審者と出会えば誰であれ身構えるのが普通だ

 

百歩譲って銃器の脅威を知らないという事であればこの迂闊な対応にも納得できただろう

しかしあの戦闘での身のこなしを目撃してしまった以上その線はありえないと断言できる

 

つまり、目の前に居るこの人物は

自分が置かれている状況を理解しながらも、敢えて無防備でいる

 

今まで数えきれない程の生徒を相手にして来た中で、毅然と向かってきた者や平静を装っていた者は稀に存在したが

ここまで平穏で、警戒どころか柔和な雰囲気を自然に漂わせている人物は初めだ

 

命が惜しくはないのだろうか

痛みが怖くはないのだろうか

 

この状況で笑みすら浮かべている大人に対して胸の奥から溢れ出す底知れない何かに、ふと自分の鼓動が早まっている事に気がついた

 

銃を交わす知っているからこそ覚える違和感に、いままで感じた事の無い感情がワカモの胸の内から徐々にまろび出始めていた

 

────

──

 

──

────

 

停電の影響で空調が止まり、淀んだ空気と濃密な建材の香りが何とも言えない不快感を漂わせる中

無線でリンと約束した地点へと薄暗い廊下をひた歩くも、その足取りは先の戦闘で負った負傷で軽快とは程遠いものだった

 

「……静かだな」

 

静寂に解けていく靴音に安堵にも近い呟きが漏れる

 

身体を痛めた原因は自分の怠慢だった事もあり、神経を尖らせ警戒しながら歩みを進めてはいるが

ただでさえ心配を掛けている依頼主の代理(リンちゃん)にこれ以上迷惑を掛けるのはどうしても忌避感があった

 

焦りに駆られながらも踏み出す度に胸元から響くズキズキとした痛みにうんざりしながら何度か廊下の角を曲がった時

ふと通路がぼんやりと明るくなっているのに気がついた

 

道順に間違いがなければそこはようやくたどり着いた目的地

目を凝らしてみれば、そこには間口からは宙に浮く石板を背にして一人の人影が見える

 

こちらに気付いている素振りを見せず、何か考え込むように時折呟きながら石板と向き合う影は、恐らく先に到着していたリンで、見つかりやすそうな場所でなにか思考を巡らせているのだろうか

 

「……あら?」

 

小言の一つや二つを覚悟し、一倍に緊張を高めて部屋へ一歩踏み入れると

その影はこちらの気配を異様なまでに素早く悟り、こちらを振り向いた

 

"──君は……"

 

花弁のようなヘイロー

袖に向かって広がる艶やかな服装

白い動物を象ったお面

そしてその奥から覗くギラつく視線

 

青色に照らされて暗闇に浮かび上がったその姿は、思い描いていたものとは全く異なっていた

 

更に良く見てみれば、少女の手には当たり前のように銃が握られている

見た目からしてフルサイズのライフル弾を使うタイプ、撃たれれば当然致命傷だろう

 

命令への脅威は速やかに排除しなければならない

そう骨の髄まで染み込んだ規範が激しく警鐘を鳴らしている

 

「あら、あららら……あ、あぁ……」

 

しかし、強行手段で解決するは他の何者でもない『先生』としてあるまじき行為であるというのは学んだばかりだ

 

幸い銃を向けられる程度は日常茶飯事だった、突然とはいえ平常心で居ることは特に難しくもない

 

意を決して息を深く吸い、警戒心を解いて待ち構えていた見知らぬ生徒と正面から向かい合う

 

「し、し……失礼いたしましたー!!」

 

視線が交差して1秒にも満たないうちにその生徒は目に見えて様子が変わり、話しかけようとする間もなく仮面の上から両手で顔を覆って奥の方へ続く通路へと飛び出していってしまった

 

遠のいていく足音と共に部屋に残されたのは、非常電源で駆動している電子機器のノイズと一時の喧騒の余韻だけ

 

相応の覚悟をして対話に挑もうとしただけに、目まぐるしく変わっていった状況にただただ呆気に取られて立ち尽くすしかなかった

 

────

──

 

──

────

 

「お待たせしました」

 

生徒が走り去った方をただ呆けながら眺めていると、自分が通ってきた通路の方から物音が聞こえ

振り返るよりも前に聞き覚えのある声が背中越しに掛けられる

 

「……?何かありましたか?」

 

連邦生徒会の純白の制服

地面に着きそうな程にまで伸ばされたストレートの長髪

オーバルの眼鏡に蒼いヘイロー

 

静かな室内を反響する靴音を頼りに目線を向け目を凝らし、視界に捉えた暗がりから浮かび上がってきたその人物は、今度こそ間違いなくリンだった

 

"いや、なにも"

 

やっと合流できたところでほっと一息ついていると、リンもまたこちらを見つめ返しているのに気がついた

 

少しばかり冴えない顔をこちらに向けるリンに、呆けて居たのを誤魔化すように首を振って答えるも、視線は相変わらずこちらを向いたまま

 

何事かとその目線を辿ってみると、それは傷の手当てがある箇所へと向けられているように見えた

 

"あぁ、これね。やっぱり気になる?"

「負傷されたと報告を受けました、お身体の方は大丈夫ですか?どこか痛んだり等は」

"ただのかすり傷だよ、それにもう手当ては受けたしね"

 

心配そうなリンに笑顔で答える

 

嘘はついていない

実際手当ての下は飛び散った破片による軽度の裂傷や擦過傷だ

 

ただ腹部に関して言えば痛みは引いてはきているものの、本音を言えばなるべく早く安静にしたい気持ちはあった

しかし、どちらにせよ今の状況でその優先度は仕事の完遂より下に位置している

 

「……分かりました」

 

こちらの思惑を知ってか知らずか、リンはそのまま視線を顔と身体で何度か往復させ逡巡した後

少し俯いてから何かを飲み込むように小さく答えると眼鏡を掛けなおし、目を合わせず再び足を踏み出した

 

「──ここに連邦生徒会長の残したものが保管されています……幸い、傷ひとつ無く無事ですね」

 

薄く青に照らされた部屋の中、リンは淀みなく壁際に並んだ金属製の引き出しの一つへと向かい、指を掛け

艶のある長髪に覆われた背中越しに滑車の転がる音が響いたのについで、棚の中から何かを取り出して確認している様子が青い輪郭に縁取られて暗闇に浮かび上がった

 

「受け取ってください」

"タブレット端末……?"

 

静かに頷き、こちらに振り向いたリンの差し出された手に握られていたのは、変哲のないタブレット端末

 

これと言って特徴は無くありきたりで、かといって備品として使い回したような傷や汚れも見えず

むしろ箱から出したばかりの新品と言っても言い見た目をしていた

 

「はい。これが連邦生徒会長が先生に残したもの──『シッテムの箱』です」

 

どこかで聞き覚えのある気がする名前で呼ばれたタブレットをリンから受け取り、しっかりと両手で持ち直して手触りを確認する

 

さわり心地の良いディスプレイに、化粧板の程よいグリップ感

 

それはただ単に質の良い製品であるというだけでは説明がつかない程に手によく馴染むものだった

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSを含めたあらゆるシステム構造やハードウェアの詳細すらも不明──」

 

触れる度に感じる得たいの知れない郷愁とも似た感慨深さに手元のタブレットから視線を外せずに見つめていると

視界の端で向き合っていたリンが姿勢を正すのが見えた

 

「……連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでサンクトゥムタワーの制御権を回復できるはずだと言っていました」

 

そう改まった所作で告げるリンの蒼い双眸がこちらを真っ直ぐに見つめる

 

連邦生徒会長の失踪以来となるサンクトゥムタワーの制御権奪還、リンにとっては待ちわびたはずだがその表情には未だに緊張の色が見えた

 

「私たちでは起動すらできない物でしたが、先生なら起動させられるのでしょうか、それとも……」

 

リンの声のない投げ掛けを残し、期待と疑念が渦巻く沈黙が二人の間に流れる

 

唐突に訪れた先生としての資格を示す機会にタブレットを握る手が思わず力み、無意識に息を深く吸い込んでいた

 

「……では、私はここまでです。ここから先は、すべて先生にかかっています──邪魔にならないよう、離れています」

 

こちらを見定める連邦生徒会長代行としての視線に見送られ、再び暗闇で一人佇み

キヴォトスの命運を託されたという重圧に息を吐き、それと共に視線を手元に落とすと

暗転したディスプレイから自分の顔が覗き込んでいた

 

虚ろにも見えるその瞳を一瞥し、意を決して側面にある電源ボタンを押し込み

シッテムの箱を起動させる

 

 

────────

────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

Connecting To Crate of Shittim…

 

 

 

……

システム接続パスワードを入力してください

 

 

 

>……

 

 

────

 

 

"…………パスワードは──"

 

脳裏に浮かんだ文章を入力する

 

 

────

 

 

……

 

我々は望む、七つの嘆きを

我々は覚えている、ジェリコの古則を

 

 

……

……照合中

 

 

……

接続パスワード承認

接続者:先生

 

確認できました

ようこそ、『シッテムの箱』へ

 

 

……

生体認証及び認定書類作成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aへ交換します……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

────────

 

 

視界が白に覆われ

気がつけば周りの景色は一変していた

 

崩れた柱と朽ちた壁に切り取られた、鮮やかでどこまでも高い空

そしてそれを反射して溶け合い、宙に浮いていると錯覚を覚えさせる程凪いだ、地平線まで続く水面

 

整然と並ぶ机と椅子と残された調度品を見るにかつて教室だったであろう部屋の外には

世界が水没してしまったかのような景色が視界一杯に広っている

 

"これは──"

 

突然の出来事に言葉を失う

 

急に様変わりした世界への驚きも去ることながら、眼前に広がった浮世離れの風景から感じる既視感が思考全体を靄のように覆い尽くし

いつの間にか、ただその場に立ち尽くすしかできなくなっていた

 

この景色、前にもどこかで──

 

「くうぅぅぅ……くうぅぅぅ……」

 

暫しの間、漠然と景色を見つめながら記憶の引き出しを開けることに気を取られていると、ふと漂う気配に気がついた

 

止めることができなくなった記憶の探索で緩慢な動きになりながらもその方向へと振り向くと

足元から水音が響き、床に薄く張った水面に身動きに合わせて波紋が広がっていく

 

「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方が……」

 

振り向いた先、未だ残っている天井が作り出した日陰の中

そこには机に突っ伏して寝息を立てている少女が居た

 

目眩がする程の日差しから切り取られた陰の中、水面に反射した日光が少女の淡い水色と疎らに覗くピンク色の髪と空色のヘイローが斑に照らされてキラキラと輝いている

 

「くうぅぅぅ……えへっ……まだたくさんありますよぉ……」

 

青空を切り取ったようなグラデーションのセーラー服に顔を埋め、幸せそうに寝言を呟き続けている少女

見覚えのないその姿を目にした瞬間、自分の足は弾かれたかのように少女へと向かっていた

 

「うにゃ……まだですよぉ……しっかり噛まないと……」

 

対面から少し回り込み、顔が見えそうな位置へ歩き抜けると

そこからはキヴォトスに来てから見た子供の中でも群を抜いてあどけなさが残る顔が腕の中から覗いており

その表情は静寂の中に響いていた急ぎ足の水音を意に介さず、

無防備に緩みきっていた

 

「あぅん、でもぉ……」

 

無意識に高鳴る胸の鼓動、ぼんやりとあやふな思考

いまだ現実感の湧かない漠然とした意識の中、少し火照った頬を優しく風が撫でるのを認識した時、いつの間にか少女の顔へと伸びた手が2、3回と頬をつついているのに気がついた

 

「……うぅぅぅんっ」

 

自分が行った無意識の行動に驚くと同時に、触れるたびに指先から伝わってくる柔らかな触感が、おぼろ気な意識の中に響き

奥底で眠る何かと共鳴している

 

以前誰かと話した記憶

座席に腰掛け、対面の誰かと向き合い、会話の中で何か約束をしたはず

 

しかし、肝心の内容は大半は真っ白に塗りつぶされ

強化人間となる以前の記憶と同じく、もはや詳細を思い出すことは叶わないものになってしまっていると直感で感じ取った

 

「むにゃ……んもう……ありゃ?」

 

突然襲われた言い難い喪失感に意識を奪われていると

指先に訪れた感覚の変化に意識を現実に戻される

 

「ありゃ、ありゃりゃ……?」

 

手元に視界の焦点を合わせると、そこには重そうな瞼を持ち上げながら身体を起こそうとしている少女の姿があった

 

「え?あれ?あれれ?」

 

目が覚めてきたのか、こちらを見つめる瞳は少しづつ大きく見開かれ、その露になった紺碧の虹彩からの視線と交差する

 

「せ、先生!?この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか本当に先生……?!」

 

椅子から勢いよく立ち上がった少女の足元から水しぶきが上がり、静かだった室内に叫び声にも似た声がこだました

 

「う、うわああ!?そ、そうですよね!?もうこんな時間!?」

 

前のめりになって私を呼ぶ少女に頷いて答えると、慌てた様子で辺りを見渡してから空中に手を伸ばし空間を叩く

 

すると指先から空間を切り取るようなウィンドウが現れ、そこに表示されたデジタル時計が刻々と時刻を刻んでいる

 

「うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて……」

 

慌てて身だしなみを整える動きはまるで小動物のようで

見ていると不思議と思考を覆っていた靄が晴れていき、疲弊した身体の痛みも少し忘れられる気がした

 

「えっと……その……あっ、そうだ!まず自己紹介から!」

 

そうして少女の様子を見守っていると、あちこちに目線を飛ばした末に頭の中の整理がついたのか

少女はやるべき事を見つけ、仕切り直しと言わんばかりにこちらに向き直った

 

「私はアロナ!」

 

弾けるような笑顔

無垢な表情に瞬きを忘れる

 

「この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

あぁそうか、ここはシッテムの箱の──

赴任前に依頼主(連邦生徒会長)から伝えられた情報と『アロナ』と名乗った少女の説明を照らし合わせ、現状が胸に落ちた

 

連邦生徒会長が用意したオーパーツには『内包された空間がある』と聞いていたが、この場所がそうなのだろう

 

「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

 

アロナの口ぶりからして相当待たせていたらしい

現に渾身の身振り手振りでその気持ちを表現し、こちらに飛び付かんばかりに身構えて喜びを露にしている

 

その姿にふと、胸に込み上げてくるものがあった

心なしか記憶の奥底で消えかかった約束が果たせたような

漠然とした喪失感が満たされていくような

そんな気持ちが溢れてくる

 

"……ここに跡ついてるよ?"

「えっ!?あっ……こ、これはたまたま居眠りをしていただけで……」

 

熱の入ったアロナと、感情を堪えきれなくなりそうな自分を落ち着かせようと目にはいったアロナの頬についた腕枕の跡をわざとらしく指摘すると

一瞬で真っ赤に染まった顔を覆うように手をペタペタと顔中に這わせながらしどろもどろな

 

『感情に流される』脳を焼かれていた頃思えば随分と贅沢な悩みだが、今はそれが疎ましく感じる

霞から抜け出し、元の調子に戻った思考は任された仕事の完遂を求めていた

 

"よろしくね、アロナ"

「はい!よろしくお願いします!」

 

慌てた様子でごしごしと顔を服の袖で擦るアロナを前に、意地の悪い言動を謝りながら手を差し出し、一言挨拶を交わす

 

すると、差し出した手に小さく暖かな掌が重なった

目の前で燦々と輝く太陽の様な笑顔

それを見ているとアロナを始めて目にした時の胸のざわめきもいつのまにか落ちついている

 

これからこの小さな少女がこれから仕事のサポートをしてくれる

年端も行かない子供がシッテムの箱の管理者だという事実に驚きはしたものの、不思議と不安は無く

むしろこれからキヴォトスでつつがなく過ごしていけるような頼もしさすら感じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで生体認証に指紋をスキャンしたいんですが……その包帯はどうしたんですか?」

"……ミイラのコスプレだよ"

「うーーん、良くわかりませんが似合っていると思います!」

"ははは……ありがとう。アロナ"

 

 

 

 

 

 

 

 




大っっっっっっっっっっっっ変遅くなりました
寒くなった頃とは言いましたがここまでになるとは思っていなかったんです……
原作描写残して書くのムズカシイネ……

それはそうとデカグラの新章で公式がこっち方に体当たりしてきたんですがもしかして監視されてます????
ケイとかぼエア(幻覚)じゃん……

このままではアビドス入る前にブルアカがACになってしまいそうなので引き続き牛歩ながら頑張って書いていこうと思います

では暖かくなったらまたお会いしましょう!
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