人類史初の魔法使い(仮)   作:ねうしとら

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年齢の壁

 騎士団長のギルバード卿とのお話が終わり、ホクホク顔で自室へと戻ってきたは良いものの、仮説を検証することもできないというもどかしさに襲われていた。

 

「あの会話で坊ちゃんの疑問は解消されましたか?」

 

「まあまあかな。結構良い線はいってるけど、もう少しサンプルが欲しい」

 

「サンプルですか……。というか、さっきの会話で何が分かったんですか?」

 

 そう言えば、フィンには魔法を探すとは言っていたが、肝心の方法については何も教えていなかったな。

 そんな彼に、俺は少し機嫌を上げながら説明する。

 

「俺の仮説は知ってるよな?人間の身体能力を引き上げているのが魔力だと。ギルバード卿との会話では、その光明が見えてきた」

 

「と言うと?」

 

「彼は言った。『格上の魔物を打倒した時に実力が上がった』とね。つまり、自分よりも実力が上の相手……いや、それは定義としてはあまりに曖昧だし、ここでは『魔力量が自分よりも多い相手』としよう。そう言った生物を倒すことで、内包する魔力量が増えるのではないかと俺は考えたわけだ」

 

「なるほど。坊ちゃんの理屈だと、人間の身体能力を底上げしているのは魔力だということでしたよね。すると、格上の魔物を倒すことでその魔物が本来持っていた魔力が流れてくると?」

 

 こいつ、理解が早い!

 

 俺の考えを理解してくれたという嬉しさと同時に、俺の理想を共有してしまったらもうフィン一人でできるのではないかという後ろ向きな考えが俺の脳裏によぎる。

 

 いやいや、ネガティブ思考に陥ってどうする。俺は魔法を開発すると決めたのだ。

 

「そうだね。恐らく、人間には魔力を吸い取る器官が存在しているのではないかと思ってる」

 

 まあ、内臓として物質的に存在しているのか。スピリチュアル的な感じで目には見えない概念的な器官なのかは知らんけど。解剖書とかが読めれば、前世と今世の人間の肉体構造の違いがあるかどうかを確認できそうだ。

 

「何故、格上でなければならないのでしょうか」

 

「さあ。そこはまだサンプルが少ないからよく分からない。そもそも、ギルバード卿の主張が本当に正しいのかもまだ分からないんだ。でも、考えられるとするのなら、格下相手でも魔力を吸い取ってはいるものの、限界を突破するだけの量と質には至らないとか」

 

 レベルが高くなればなるほど、次のレベルアップに必要な経験値量は多くなるように、成長すればするほど必要な魔力量が増えていくとか。

 

「まあそういうことも色々知りたいから、俺は冒険者の人たちにインタビューをしたいんだよね。冒険者って普段何してるの?」

 

 俺のイメージ通りなら、世界中を旅するとか魔物を退治しているとかだろうか。

 

「基本的には、ギルドが仲介し様々な立場の人たちからの依頼を引き受けるという形です。ギルドには、主に国から依頼される大依頼と個人や組織が依頼する小依頼に分けられ、主に未開拓領域の調査や戦時中の徴兵などが前者、後者はそれこそ様々な種類の依頼が貼りだされています。基本的に、大依頼は恒常的かつ不特定多数に向けて開放されている依頼で、参加の意をギルドに示せば人数制限なく依頼を受理したと見なされます」

 

 報酬は成果に依りますが。と付け加えられたフィンの説明を聞き、割とちゃんとしてんなという感想を抱いた俺は、早速ギルドに依頼を出そうとして、フィンに止められた。

 

「依頼を出すのは良いとして、坊ちゃんがどうやって依頼するんです。ギルドとしても依頼相手や冒険者を見極める義務があります。特に年齢制限はありませんが、報酬の支払い能力がないと思われたら、その時点で断られるのが目に見えていますよ」

 

「貴族なのに?というか、フィンが代わりにやればいいじゃん」

 

「いや、オレが代わりに依頼を出すのはいいんですがね。坊ちゃんに報酬の支払い能力がありますか?」

 

「父上にお願いすれば……」

 

「何て言ってお願いするんです」

 

 ……うーん困った。冒険者にインタビューしたいから依頼を出したいんだけどお金出してくれない?なんて願いが通るわけがない。万が一許可が取れたとして、「なんでインタビューしたいの?」なんて理由を聞かれたら「魔法を見つけるため」なんて、子供のお遊びとしか思われないだろう。

 

 俺ならそんなことのために私財を投げ出そうとは思わない。どころか、お金の大切さを教えるために冒険者ギルドと依頼料について懇切丁寧に説明する気がする。

 

「ここに来て己の年齢が障害として立ちふさがるとは……!」

 

「まあ、個人的に話を聞くくらいならできるかもしれませんが、まず外出の許可が取れるかどうかが問題ですね。坊ちゃんの年齢だと、オレが付いているからと言ってそう簡単に許して下さるとは思えない」

 

 クソッたれ!結構いい線までやってこれたと思ったら俺自身じゃどうしようもない問題に直面した。

 めっちゃビジュアルがタイプなキャラがいるからって始めたソシャゲで、目当てのキャラのガチャがやってなかったみたいなもどかしさを感じる……!

 

 仕方ない。なら、色々とこの立場からでも調べられることからやるべきか。

 

 そうなると、そうだな。

 

「こんなに熱量が最高峰なタイミングで冷や水をぶっかけられたみたいに納得が行かないけど、ならやれることをやるまで。フィン、人体の解剖書とか持ってきて」

 

「……は?解剖書?」

 

「そう言うのあるでしょ。人体構造について書かれている学術書とかさ」

 

「そうは言われましても……そのような学問に関わる専門書は扱いが厳重で、取り寄せるにしてもかなり時間が掛かり、原本に至っては持ち出し厳禁なのですが……」

 

 そう言えば、コピー機が無いんだから本って貴重品なのか。紙の生産にもかなりのコストが掛かるようだし。

 

「何とかして。俺は今すこぶる機嫌が悪い。時間が掛かってもいいから、複写するなりなんなりして持ってきて。もし出来たら父上にフィンの昇給の打診をしてあげるから」

 

「……その言葉、努々お忘れなく」

 

「もちろん。俺は嘘は吐かないさ」

 

 そうして、俺とフィンの取引は完了した。

 

 とは言っても、やはり自由に動けるようになる年齢になるまで魔法の研究は中々出来なさそうだ。しかし、例え亀の如き一歩でも進んでいる事には変わりない。

 

 あまりネガティブにならないように自分を律するのだ。頑張れイザーク。負けるなイザーク。

 

 

 

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