肉体の主導権を握った宿儺、伏黒が死の直前に召喚した魔虚羅、三大怨霊が一遇崇徳天皇の三つ巴戦は熾烈を極めた。調伏の儀に喚び起こされた魔虚羅の先制は人災の如く。純真な腕力で振るわれた退魔の剣の一太刀は崩壊するジェンガさながらに建造物を薙ぎ払った。一度踏み込んだ魔虚羅の攻撃は音速に等しく、さしもの呪いの王もあわや斬撃を一身に受けるところであった。
あらゆる事象への適応を可能とする最強の式神の危機回避能力は比倫を絶しており、コンマ数秒間隔で繰り出される宿儺と魔虚羅、崇徳天皇の呪詛の応酬は一層激化した。幾度伸そうとも必ず起き上がり反撃に転じる魔虚羅を百折不撓だと讃えるような狂人はいない。いるとすればそれは人型か異形を模っただけの猖獗極まる呪いと悪徳だけである。
宿儺の指十五本分に匹敵する式神と史上最強の呪術師、現代の等級における特級の域を優に超越した怨霊の戦いは突如として終止符が打たれた。渋谷の一画での紛糾を強制的に抛ったのは崇徳天皇だった。
喜悦と血気が絶頂に達したとき、東方で黒煙が立ち昇った。誰もが瞬時動きを止めた。最も顕著な反応を示したのが崇徳天皇だった。
「縺薙?蝣エ縺ッ隕矩?」
彼の怨霊は秘策を講じた。
耳障りな雄叫が発せられる。数刻前に特別特級呪術師を殺めたばかりの超音波による攻撃の数倍の威力だった。呪力による広範囲の超音波は次第に仕様を変じ局地的な大地震が勃発した。本能的脅威を感知した宿儺と魔虚羅が迎撃に転じるのも同時だった。 津波のように畝る地面が最初に足場をぐらつかせる。上空に避難した魔虚羅が大剣を振りかざす。その矛先は間近の宿儺へと仕向けられている。回避と攻撃、瞬きの間に最適解を算出した宿儺は領域展開した。
——伏魔御廚子
呪力の帯びたものには捌の斬撃が、ないものには通常斬撃の解が絶え間なく浴びせられる。万象を撃摧せしめる神業である。尚、この場においては結界を閉じることなく生得領域を具現化することで、相手に逃げ道を与えるという縛りを設け攻撃範囲を半径二百メートルにまで拡張した。魔虚羅と崇徳天皇に程度を問わず痛手を負わせるには十二分だった。
凡てが収まった頃には凡てが失くなっていた。後から後から押し寄せる斬撃に家屋は木っ端微塵に粉砕され、地面から起こった音波砲は近辺に棲息していた人や呪霊の生命活動を停止させた。善戦した魔虚羅だったが、宿儺の領域展開と崇徳天皇の不可避の音響攻には肉体の維持がもたず、遂に細切れとなり惜敗した。そして二人は——
北西からの風が死臭と焦げ臭さを運んできた。震度七の大地震の影響で底なしの巨大な陥没穴が道玄坂を中心として八方に生じている。
「地底に潜ったか。まるで
ぽつと彼は呟いた。
…闇が訪れた。街中の明かりが夜空に食われたかのように失われた。大規模な停電だ。それが今し方己が収めた勝敗の帰結かは分からなかった。どうでも良かったとも謂える。
宿儺は裂けた左腕を修復しながら崇徳天皇を追うか新たな獲物を探すかを姦詐を巡らして、折悪く手首から先が痙攣を始めると現界の期限が迫っていることを悟った。
「まあ良い。小僧、精々噛み締めろ。」
一頻り満足した呪いの王は、宿主が目覚めた際に称える絶望を思い浮かべて悪徳に嗤った。三秒後、虎杖悠仁が帰ってきた。
*
其処は無限の翠と碧で充されていた。何もかもが硝子玉を介して世界を盗視するように澄み切っている。
潮の匂いが漂うてくる。天と地を繋ぐ海辺に打ち寄せる漣の音、見渡す限りの群青。生き物の如く畝る洪濤が生きとし生けるものの躍動を表しているようだ。
此処が単に渺渺たる大海原ならばどれ程良かっただろうか。額から滴る血を手荒に拭って七海は倦厭をふっと吐き出した。
神経を引き攣らせる感覚に彼は三十メートル立ち退いた。かくも悍ましき見た目のピラニアが一秒の差で七海の頬を齧り損ねた。口惜しげな尾がバシャバシャと海面を跳ね返らせてより手頃な餌のいる方角へと方向転換した。夥しい肉食魚の群勢を引き連れて飛ぶように遊泳する。七海がすかさず「真希さん!」と叫ぶと呼名された真希は過大な海蛇の突撃を難なく躱して襲ってきたピラニアの大群を切り刻んだ。
六十度の方角では直毘人が特級呪霊陀艮と戦っている。庇うべき右腕の袖は疾風に戦いでいるものの、禪院家当主として御三家が一角の豪傑どもを引率する男の怒涛の戦意は衰えてなどいなかった。鮫や大王具足蟲などの横槍をものともせず眼前の特級呪霊を相手に激突し合う様はもはやありもしない海戦戦争画の一点景と化している。
しかしながら対するは海の化身たる陀艮。海辺を具現化する生得領域、蕩蘊平線を展開して以降水棲生物の式神死累累湧軍の跳梁も加速するばかり。領域内に閉じ込められている限り無制限に湧き出る式神の数の暴力と、近頃の特級呪霊とは戦闘能力において霄壌の差がある陀艮との争いは悪戦苦闘になりつつあった。
そも、彼等が陀艮と遭遇したのはまったくの偶然であった。
伏黒と伊野と別たれてから半刻後、直毘人と真希と合流した七海は低級呪霊の祓除を行いつつ渋谷駅を線路沿いに進んでいた。負傷した補助の手当て、呪術師による供述から日下部班の捜索を後回しに夏油を探しに地下鉄へ行こうとしたところでそれは起こった。
——あれ…なんだよ…
突如として轟き渡る地響き、赫赫と白光する大気、竜巻の如く差昇る可視の音響。戦争と形容すべき惨状が繰り広げられる只中に向かっていた伏黒と伊野の姿が過って七海は血の気が引いた。即座に現場に駆け付けんとして、だが次の瞬間には世界から光が奪われた。前触れのない停電に暗闇に慣れぬ視力、一同の脚は自然と懐中電灯を求めて付近の百貨店へと移動していた。そこに道に迷った特級呪霊がいると知っていれば己の携帯のライトを使用したに違いない。
とまれ、当時はまだ愛嬌のある姿形をしていた呪胎の陀艮を直毘人が先手必勝とばかりに殴り飛ばしたのが変異を加速させるという芳しくない展開へと導いた。以前の怯弱で寡黙な雰囲気は鳴りを潜め、成熟した特級呪霊に相応しい人間並みの言語能力と暴虐性を獲得した陀艮はその場で領域展開をして…そして今に至る。
「ぐぁ!」
「真希さん!」
一秒にも満たぬ脇見で、小隙を突いた陀艮に烈しく蹴飛ばされた真希を七海は受け止めた。海水に混じって制服を濡らす赤が彼女の内臓の損傷具合を訴えている。先程から懸命に薙刀を振るってはいるが限界を超えているのは誰の目にも明らかだった。
直毘人が陀艮の追撃を阻止している間に七海は真希を抱えて一時後退した。敵と接触した時点で随分前から使い物になっていない通信機に一縷の希望を掛けて救援要請を送ったものの機械の口は石のように固まったままだ。己らが負け戦を戦っているのは薄々勘付いていた。されば残された手立ては差し違える覚悟で一斉に攻めかかるか、又は一人を如何にか領域から逃して味方に警告を発するか。しかし後者は後者で現実に帰還した直後に何が待ち受けているか判らないという冒険が求められる。何れにせよ此処で拠なく四肢を振り乱しているよりも幾許かの希に賭けるべきだった。
一度三人で協議する必要がある。幸いにもこの広漠な溟海の空間には密林の茂った孤島がある。現在、己と真希が踏み締めている絶海の島が。何が何でも追手を撒き十秒、十秒だけでも時間が欲しい。七海は再び戦闘に戻ろうとした真希を引き留め、遠方の直毘人に声掛けようとした。
…不意に陀艮が攻撃の手を緩めた。その隙に七海は直毘人を呼び寄せる。
「あれは?」
「さあな。」
斜め頭上の一点を凝視する陀艮の手が颯と横切られる。すると、海と空の境に楕円形の漆黒が生まれた。現実と領域を繋ぐ微かな穴が。
嫌な予感がした。果然、不気味に口を開いた穴からヒトならざるナニかが藍白の指先を覗かせた。それは徐々に瞬く間に異形の容態を示していく。手から腕、肩を過ぎる頃には事前に要警戒の呪霊についてを夏油を介して与から知得していた真希と七海は戦慄せざるを得なかった。
「陀艮、何を手間取っておる。」
「じきに終わらせるつもりでした。」
大地への畏怖から生み出された呪霊はその属性故か火山型の頭部に水飛沫が掛からぬよう徐に鮫の背に着地した。紅蓮の単眼がぎろりと三人を虎視する。この時、勇猛な直毘人すらをも襲った震撼は決して自身より強き者と相見えた武者震いによるものではなかった。敗北を知らぬ五条を除いた大抵の呪術師が格上の相手と対面する羽目になった際に思い描く己の悽愴な最期が、彼等に圧倒的な敗北感を味わわせていた。この瞬間各々の脳裏では善戦ではなく恰も蟻が人間に踏み潰されるかの如き、或いは只々死を待つだけの屠所の羊もかくやのあの惨敗が確定していた。だがしかし、諦観の選択肢は惨死以上に有り得なかった。否、有り得てはならなかった。
七海は脳漿を急速に絞らせる。まだ漏瑚は陀艮との会話に気を取られている。今のうちに特攻を仕掛け是が非でも領域を穿孔し真希を外に逃す。言葉を交わしている暇はない。
奇遇にも直毘人は七海と意中を一致させていた。自然に見合った互いの眼差しが同意を送り合う。この間僅かコンマ一三秒。
…行動に移すべく重心を変えんとした七海の視野に、突と藍白色が過った。胸に何かが触れる。七海は恐る恐る目線を落とす。
いつの間にか目近に迫った漏瑚が片手を七海の晒された素肌に接触させていた。鋸歯が無情に紡ぐ。
「まずは一人目。」
時間が止まる。何もかもがスローモーションもかくやの停滞を映じているのに体はまるで動かない。不穏な熱が呪霊と触れ合った箇所で上昇しているような気がした。
間に合わない。これは死——。
ドゴォン!爆撃さながらの大音が響き渡った。
七海はいつまでも訪れない死に屡叩いた。幾度か心許ない瞬きを繰り返して、やがて真希と直毘人がそうであるように爆速で吹き飛んだ死の代わりに自身の目の前に現れた存在に瞠目した。
「なぁに面白ェことやってんだお前らァ。」
「貴方は…」
「甚爾か。」
七海を遮って直毘人が発した。甚爾は逞しく突き出された腕を下ろすと、季節にはそぐわぬが領域には最適なビーチサンダルを翻した。真希が「パチカス!遅い!」と責つけば彼はなんとも覇気に欠ける舌打ちを寄越した。
水平線の彼方から一朶の赤錆が飛来してくる。
「おい糞爺。態々来てやったんだから礼金はたっぷり期待してるぜ。」
「救えん奴だ…」
ターボエンジンの如き音を鳴らして空気を劈いて現れた陀艮の頭を鷲掴むと砂浜に叩きつけた。烈しく散じた土砂が薄らと等身大の膜を作り上げる。さあさあと雲散する砂の向こうで天与の暴君はせせら笑った。
*
上京区は依然として朱色に染まっていた。竈門の火というよりも引火したタンクローリーさながらの猛炎は、しかしこの頃には燻る程度の弱火となっていた。近畿一帯に放出された千を超える呪霊の根源は五条によって討ち取られ、近畿の呪術師らに委任しても何ら支障はないと思われた…。
己の業火で焼け焦げ微光を放ちながら消滅していく菅原道真を五条は見詰めていた。
「思ったよりも時間を無駄にしちゃったな。」
現代最強と謳われる己にとって宿儺の指十本分に相当する怨霊との肉弾戦はさしたる難儀はなかったものの、捻くれ者が千年余りの歳月をかけて編み出した渾身の試練はさしもの五条も思慮を強いられた。というのも
柱は消え失せ帳は解け、最大の難は解決した。即座に東京に帰還しようとして彼は思案した。己が元凶を始末しただけで居然上級呪霊は街に氾濫している。何人もの呪術師が戦死し負傷者は碌な野外救護施設を設けていない為に百孔千瘡の状態で戦場を駆け続けている。呪術師の等級にも偏りがみられ、少なくとも上京区を担当する呪術師は六割が非番に駆り出された三級以下だった。対して菅原道真が北野天満宮の守衛の為に召喚した呪霊は二級以上。即ち五条がこのまま立ち去れば現場は全滅に近い状態に陥ることは火を見るよりも明らかだった。
従って五条は慎重に裁定した。自身が仕事を任せられる他地域の呪術師が来るまでの時間、近辺の呪術師の援助を行ったのちに帰還するべきと。
——ま、傑がいるから大丈夫っしょ。
それが最悪の選択だとは露ほども思わず、五条は滴る汗を拭きながら西の都市へと繰り出した。
*
発電所の破壊が図らずも齎した大停電は激戦地にまで及び、暗黒が大都会を支配していた。これは予想外のハプニングだけど悪夢ではなかった。悪夢なのは渋谷が跡形も無くなっていたことだった。
空襲なんて可愛いもんだ。都会の摩天楼を描いていたビル群は見る影もなく消滅し方角も分からない暗闇で巨大なクレーターが妖異めいた威圧感を醸し出していた。予定通り三福がやってくれたのか呪詛師の帳は無効化されているが、都会の隅々に至るまで恐怖と混沌の帳が降りているようだった。クレーターの内側には奈落にまで続いていそうな陥没穴ができている。呪術師が、人間が生成できる規模の損害じゃなかった。
特級相当の呪霊が二体以上被害を憚らずに全力で猛威を振るわなければ此程の災害は起きない。品川からの帰路で家々が倒壊していたことから俺が少しの間気絶している間に巨大地震が起こったものと思われる。尠くも品川の位置では単なる自然災害に過ぎなかった。渋谷に着いてから予想は覆された。ありとあらゆる建築物は倒壊の直前に細切りにされたような痕跡を残していたのだ。俺が知る限り国家が誇る建築強度をこうも呆気なく切断できる輩は一人しか思いつかない。
「間違いない、宿儺だ…!けど如何して?だって、食ってる指の数は本来より少ない筈なのに。」
平将門と菅原道真が出現した時点で崇徳天皇のような異例が起きていないわけがない。地震はソイツか安達の仕業に違いない。それでも夏油先生の死に付随して起こる渋谷事変での魔虚羅戦は回避されていなければならない。何より万一に魔虚羅が喚び出された時に備えて三福に粗方の展開は説明しておいたんだ、真偽はどうであれ五条先生に勝てると自称するほどの呪霊が梃子摺るとは思えない。
なら元神様の彼ですら対処できない異常事態が同時多発したとか?それにしてもこれは、俺の眼前に広がってる悲劇ははっきり云って無秩序すぎる。呪術師側の相互連絡と連携に深刻な齟齬があるか壊滅的に機能していなければこんな事態にはならない。何おいても夏油先生が敵の暴威を決して許さない。
…待て、五条先生は今京都で三大怨霊と呪霊千体の対処に当たっているはずだ。それも安達の策略で。如何して奴は封印するべき五条先生を他県に追いやって夏油先生を残した?そうだ、特別特級呪術師の夏油先生がこんな状態を見過ごすわけがない。
「先生は何処にいる…?」
………。
胸に忍び寄る不吉な影に促されるまま悄然と向かった先の地下鉄構内で俺は崩れ落ちた。
血溜まりが酷い。人工大理石の床は生々しい赤で反射していて、まだまだ乾ききってない鮮血は咽せ返る臭いがした。それが一人の人間から流れたものだとは信じたくなかった。
俺の名前を呼んで莞爾と笑ってくれる口元は力なく開かれたまま、切れ長の愛情深い眼は真っ白な天井以上のモノを眼差してはいない。ぽっかりと空いた脇腹からは袋が破れたうどんみたいに腸が飛び出している。這いつくばってどうにか夏油先生の首元に指先を当てるも脈はなかった。
「先生、先生、起きて」
先生は答えない。唖の如く黙って無視を決め込んでいる。少し先のホームドアに凭れ掛かるようにして美々子と菜々子が瞼を閉ざしていた。二人は眼や耳、口など穴という穴から出血していた。食い破られたような夏油先生とは異なり、破裂した内臓から血液が外に溢れ出したような死に方だ。ここに来るまでの非呪術師の遺体に多く共通している有様だ。三人ともとっくに冷たくなっているという事実が俺を絶望の淵へと突き落とした。蘇生はもう効かない。
「渋谷が大変なんだ…皆、どこにもいなくて俺…」
死んでいると分かっていても、先生の肩を揺さぶることしかできなかった。夢を彷徨うように、途方もなく絶大な不幸が重くのしかかって俺から再起する力を奪っていた。どれ程の間愕然と座り込んでいたのかは分からない。けれども真後ろに迫る気配に気付かないくらいに茫然自失としていたのは確かだ。
「あー!やぁーっと見つけた!ずっと探してたんだよ舞南斗」
殺戮が成された場には相応しくない底抜けに明るい声が背中に掛かった。先生を膝に抱えたまま見返れば見知った顔が手を振っていた。
「真人」
「聞いてよ、安達がさー」
俺達を取り囲む惨状には目もくれずに真人はいつもみたいにあっけらかんと愚痴を溢し始める。彼の後ろから人影が現れた。 この世界では対面したことはないが原作を介して一方的に知っている人物。透き通る白髪に梅色が入り混じったおかっぱ頭、明眸皓歯な面立ち、白黒の単調な和服はそう易々と間違えやしない。宿儺の側近の呪術師、裏梅だ。
「あ、この子がさっき話してた舞南斗。
無頓着な目差しを足元に送っていた裏梅は真人の紹介に徐に俺を見て…「お前はッ!」と顔つきを一変させた。憎たらしい仇に再会したかのような嫌悪の籠った顰めっ面だ。今すぐにでも飛びかかってきそうな変貌に思わず身構えて、けれども我に返ったように「嗚呼、そういうことか」と彼女は独り納得してまた興味を失った。理解不能な言動も今の俺にはどうだって良かった。
二人が夏油先生を一瞥もせずに此処に居ること、それが示す意味は一つしかない。
「お前らが夏油先生を殺したのか?」
半ば確信めいた問いだった。静かな怒気を孕んだ質問に真人は意想外とばかりに小首を傾げる。
すぐに曳けた笑みを貼り付けた。この眼をよく知っている。虎杖と対峙した時、壊相と喧嘩した時、自分の意にそぐわない出来事があった時、相手を殺したくて仕方ないっていう戦闘狂の歪み切った醜顔だ。丁寧に夏油先生を脇に寄せて立ち上がる俺に、拳を収めたばかりの裏梅が眉根を顰めた。
真人が訊き返す。
「そうだって言ったら?」
「
無数の蝶が羽ばたいた。
新年明けましておめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します。