わんだふるぷりきゅあ! えぼりゅ〜しょん   作:シロX

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第二話 わんだふるな出逢い

「プリキュア?」

 

 聞き慣れない言葉にフブキは深く考え、それについて記憶の蓋を開ける。

 聞き慣れないというだけで、聞いた事が無いという訳じゃない。フブキが耳にした話では、プリキュアはとある場所で伝説の存在として語られていた。

 実際に目にした事もないから所詮、文字通り伝説に過ぎないと軽く流していた。

 

 でも違った。それは目の前に居る犬と少女のお陰で、伝説は存在するんだと思い知らされた。

 

「キュアワンダフルとキュアフレンディ」

 

 小言で、何度もその名を口にしてしまう。

 

「ガルガルー!」

 

 鶏のガルガルは、凄まじい鳴き声を発しながらドタバタと二人へと猪突猛進。

 ワンダフルは高く跳び、フレンディは両手を前に突き出してリボン型のバリアを展開させた。

 

「リボンバリア!」

 

 勢いのまま突き進んで来たガルガルを真っ向から受け止め、一時的に足を止めさせる。

 衝突によって受けた衝撃はフレンディの全身を駆け巡り、足先まで痺れさす。踏ん張りもあって多少押されはするものの、ガルガルを完璧に受け止めている。

 その隙にワンダフルが、ガルガルの背中に乗り込んだ。

 

「ガルガルしないで一緒に遊ぼ!」

 

「落ち着いて、私達は貴方を助けたいの!」

 

 二人は言葉で落ち着かせ、ガルガルを宥めようと必死に呼び掛ける。しかし、暴れるガルガルの耳には全く届かず。逆に、凶暴化させて手が付けられなくなってしまった。

 

「わわー! そんなに暴れないでー!」

 

 身体を揺さ振り、背中に乗るワンダフルを振り落とそうと懸命なガルガル。更には、鋭く硬いクチバシでリボンバリアをついばむ。目にも止まらぬ速さのつつきに、リボンバリアは一瞬にして穴だらけとなる。

 

 ガルガルはその場で回転。脆くなったリボンバリアを粉々に破壊し、ワンダフルを振り落とした。

 

「ワンダフル!」

 

 ガルガルの猛攻は止まらない。

 ワンダフルを気にするあまり、僅かに生じた隙を見逃さなかったガルガルはフレンディを蹴り飛ばした。

 

「フレンディ!」

 

「悟さんこっちに来るよ!」

 

 邪魔者は跳ね除けたガルガルが次に狙うべき相手が定まった。なんの力も持たないフブキと悟に、ガルガルは一心不乱に駆け出した。

 普通に走って逃げたのでは速度的に追い付かれてしまう。フブキと悟は、急いでその場から左右に分かれて逃げようとするが、ガルガルはそれすらも読んでいた。

 鶏といえど鳥類。両翼を横に大きく広げる事で、フブキ達の逃げ場をより少なくさせた。

 

「悟くん、フブキくん逃げて!」

 

 逃げてと言われても、圧倒的にガルガルの足の方が速い。

 木々を薙ぎ倒しながら、広範囲のタックルが迫り来る。二人が無事に回避する手段が殆ど無い。例え左右に散らばって逃げれたとしても、ガルガルは必ずどちらかを追い掛けに方向転換をする。そうなってしまえば、どちらかがガルガルのタックルの餌食となる。

 生身の人間がまともに食らえばひとたまりもない。

 

 少ない選択肢の中で選ぶのは。

 

「悟さん、そこから動かないで下さいね!」

 

 フブキはガルガルへ突っ込んで行った。

 左右どちらに逃げても追い掛けて来るのであれば、敢えて前に出て対処する他あるまい。

 

「待って、何を考えているの⁉︎」

 

 フブキは何も考えていない。この状況を打開する策がフブキにはあるのだと思って悟は呼び掛けたが、案の定そんなものは最初から存在しない。

 

 例えあったとしても講じている暇も無い。だったら動く以外の選択肢は無し。

 悟との距離が数メートル出来て、フブキは急ブレーキを掛ける。そして腰を低く落とし、全身の力を足のみに集中させて受け止める姿勢を作り上げる。

 

「プリキュアでもないのにあまりにも危険過ぎる!」

 

「危険は百も承知。何をやるにしても、先ずは行動あるのみ!」

 

 と、啖呵を切ったのはいいが状況は変わらず。これと言った工夫すら施しておらず。ガルガルとの力と力の真っ向勝負。

 

「──ガルガル、来て!」

 

 フブキの言葉で更にガルガルは加速する。衝突まで残り──。

 

「「危ない!」」

 

 フレンディと悟の声が重なる。

 同時に耳がつんざく程の音と全身を貫く衝撃ながらも、フブキはガルガルの突進を一身に受け止め、これを耐え切った。

 尋常ならざぬ力に、これを間近に見ていた悟は唖然としており、開いた口が塞がっていなかった。勿論フレンディも同様にだ。

 

「ガルガルを止めたよ、フレンディ!」

 

「そうだね、そうなんだけど……」

 

「プリキュアじゃないのにす、凄い力」

 

 ワンダフル達はもう感心の言葉しか漏らす。それ以外の表現が中々に見つからないから。

 当人であるフブキの様子は、多少の冷や汗は出ているものの平然としており軽く安堵の息を吐く。

 

「悟さん大丈夫でしたか?」

 

「えあ、うん大丈夫だけど」

 

「それなら良かった。それじゃあちょっとずつ、押し返して行くよ!」

 

 受け止めてから硬直状態だった様子から、フブキの言葉通り僅かながら動き出していく。

 一歩ずつ、ゆっくりと着実に、そして慎重に足を前に出してガルガルを押して行く。

 

「す、凄いよ!」

 

「それはどうも!」

 

 ワンダフルの素直な感想に、フブキはよそ見をしながらも笑顔でそう述べる。まだまだ余力を残しているのか。

 

「後はどう鎮めるか、かな?」

 

 フブキは爪を立てる。暴れる相手に容赦無く抵抗する素振りを見せた時だった。ワンダフルとフレンディが叫んだ。

 

「ガルガルを傷付けちゃダメー!」

 

「お願い、暴れたくて暴れてる訳じゃないから傷付けたくないの!」

 

「それってつまり」

 

 無傷で、且つガルガルの鎮静化をしないといけない極めて困難な要求。応えるにしたって、相対するこちら側が圧倒的にリスクを負う危険性が高い。

 

 ふとワンダフル達を一人ひとりに目を向ける。三人共、言っている事は至った真面目。フブキとガルガルに向けるその眼差しが何よりも証拠。

 フブキは、くしゃりと笑顔を作り。

 

「そのお願い、了解しましたよ」

 

 応えることにした。

 

 両脚から両腕に力の流れを切り替える。大きく息を吸い、肺に空気を溜め込み、一気に力を余す事なく解放させる。

 

「せーのっ!」

 

 ガルガルを上へと突き上げ、跳ね除けた。そのままバランスを崩し、木々を背にしてその場で尻餅を付いた。

 

 ガルガルはすぐさま起き上がり、身体に付着した砂を振り落としてフブキに目を光らせた。ある意味、惹きつけたという点で捉えるなら悟に危機が訪れる事は無くなった。

 

「素早い相手、そんな時は足下を狙うのが一番」

 

「でも、どうするつもり?」

 

「見てて悟さん」

 

 拳を地面に叩きつけ小さな地割れをわざと引き起こす。それがガルガルの足下へと伸び、足場を崩させた。

 立っていた場所が崩れた事で、身体の大きなガルガルじゃ自信を支え切れず体勢が崩れ落ちる。

 割れ目に足がはまってしまい、完全にその動きを封じ込める事に成功した。

 

「捕まえはしたけど、ここからどうすればいいの?」

 

「私達に任せて! あっという間にガルガルな心をわんだふるにするから!」

 

「わんだふる、か。キミ達は面白いね」

 

「えへへ、褒められちゃった!」

 

「それじゃあ、張り切って行こうかワンダフル!」

 

 ワンダフルとフレンディは二人して同じタクトを構えた。

 

「「フレンドリータクト! ワンダフルをきみに!」」

 

 フレンドリータクトを優しく振り、ワンダフルには犬の尻尾、フレンディには犬の耳があしらわれる。

 

「「ワン! ワン! わーん!」」

 

 備え付けられているボタンをタッチし、それを下から上へと指でなぞる。

 

「「ガルガルなこころ、とんでけー!」」

 

 その掛け声で二人の準備は整った。

 

「「プリキュア! フレンドリベラーレ!」」

 

 ピンクと紫の光がガルガルを包み込み、ワンダフルとフレンディが抱擁した事でガルガルな気持ちが浄化されていく。そして、邪な心が消え去った事でガルガルは本来の姿、鶏の姿へと元に戻るのであった。

 

 これを目の当たりにしたフブキは、思わず「おー」と感心を露わにして目を輝かせていた。

 無傷でガルガルを鎮静させるどころか、その元凶すら取り払ったのだから。そんな二人の勇姿に心打たれ、少しばかり見惚れていた。

 

「ニコガーデンに帰してあげるね」

 

 フレンディはそう言って小さなトランクを取り出した。

 

「そのトランク!」

 

「えっ、どうしたの?」

 

 小さなトランクは瞬時に大きくなり、開けて鶏がその中へと入って行った。

 フブキは確かに見た。トランクの中は此処とは別の世界に繋がっている。そしてフブキは、その先にある空間を知っている。トランクにも見覚えがある。

 

「そのトランクは何処で手に入れたの?」

 

「これはその──」

 

「メエメエに貰ったの!」

 

「あ、ワンダフル!」

 

「メエメエって?」

 

 これまた秘密にしようとしていたが、フレンディの言葉を遮ってワンダフルが口が開いた。

 これ以上秘密情報を漏らすのは非常にマズいと、フレンディが口を閉じようとするももう遅い。一度開いてしまった口は止まらず、ブレーキの壊れた暴走列車の如くワンダフルは喋る。

 

「この先はね、『ニコガーデン』っていう所に繋がってて、メエメエはそこの羊さんなの!」

 

「ワンダフル、そこは執事さんだよ」

 

「いやいや悟くん、丁寧に訂正してる場合じゃないよ」

 

「えーっと、難しい事はあんまり分かんないけど、ガルガルになった動物達をわたし達は頑張って助けてるの!」

 

 フレンディは頭を抱えた。言ってしまった、何もかも全部言ってしまった、と。

 悟は苦笑い。ワンダフルはというと、特に何も考えてはいない表情をしておりフブキの事を見つめている。

 

「でねでね──」

 

「ワンダフルストーップ!」

 

 もう遅いと思うが、これ以上下手な事を言われても大変なのでフレンディは口を塞いで強制的にこの話を終わらせる。

 

「ニコガーデン、それだけでもう十分だよ」

 

 フブキは納得した表情をすると、光に包まれてその姿を猫に変える。

 

「「猫⁉︎」」

 

「わー、わたしと同じだー!」

 

「人間の姿と猫又という名は仮の姿。改めて自己紹介するよ、ボクはフブキ。ニコアニマルじゃないけど、一応ニコガーデンの関係者だから」

 

「「関係者なの⁉︎」」

 

「よろしくね」

 

 本日二度目の自己紹介は、フブキが思う以上に驚かれた。

 この出逢いを偶然と呼ぶのか、はたまた必然と呼ぶのかはフブキ次第。




他小説もあるので周一ペースで投稿出来たら良きかな

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