リンクは激しく混乱していた。
なぜなら、本来送られるはずだった七年前の聖地ではなく、まったく見知らぬ部屋で目を覚ましたからだ。
リンク「どこだ……ここ……?」
呟いた瞬間、自分の声に違和感を覚える。低い。大人の声だ。
はっとして己の体を見下ろす。小さくなっているはずの手足は、相変わらず成長したままだった。
リンク「どういうことだ……? 時のオカリナの誤作動……? いや、ゼルダがそんなミスをするはずが……」
混乱する頭を抱えながら、ふと視線をテーブルに移す。そこには一通の置手紙と、封がされた招待状が置かれていた。
警戒しながら手紙を手に取り、目を通す。
『ようこそリンク様。お好きな食べ物をご注文ください』
リンク「……歓迎されてる?」
違和感が募る中、招待状を開封する。
『拝啓 リンク様。貴方を“大乱闘スマッシュブラザーズ”へ招待いたします。優勝した暁には、何でも願いを叶えて差し上げましょう』
リンクは息をのんだ。
リンク「願い……まさか、トライフォース……!?」
急いで手の甲を確認する。そこには今も変わらず、トライフォースの一部が宿っていた。
何が起こっているのか。なぜ自分がここにいるのか。状況はまるで掴めないが、ひとつ確かなことがあった。
リンク「ナビィ……?」
相棒である妖精の姿が、どこにもない。
リンク「ナビィ! いるか!? 返事してくれ!」
しかし、静寂が返るだけだった。
不安に駆られながらも、リンクは深く息を吐く。考えろ、冷静になれ。招待状には“リンク”と明記されている。つまり、ここに呼ばれたのは自分だけの可能性が高い。ナビィがさらわれたのではないかという疑念は一旦、保留するべきだ。
リンク「ガノンドロフの仕業か……? それとも……」
かつて自分を七年間も聖地に封印した、あの剣に視線を落とす。
リンク「マスターソードが試練を課したのか……?」
思考が堂々巡りを始めたその時——
ギィィ……ッ
目の前の壁に突如として扉が現れた。
リンク「……進めってことか」
リンクは招待状をしまい、慎重に扉へと歩み寄る。ひんやりとした木の感触が指先を冷やす。
ゆっくりと、押し開けた。
眩い光がリンクを包む。
「「「「ウォォォォォォォォッ!!!」」」」
耳をつんざくような大歓声。
目の前に広がっていたのは——闘技場。
無数の観客がスタンドを埋め尽くし、叫び、拳を突き上げていた。リンクは思わず息を呑む。
異様な熱狂に戸惑いながらも、彼は自分がどういう状況にあるのかを理解し始める。
これはただの誘拐でも、ガノンドロフの陰謀でもない。明らかに“戦いの場”だ。
その証拠に、彼の装備はすべてそのままだった。剣も、盾も、失われてはいない。
リンクは、戦いのスイッチを入れるように腰からハイリアの盾を取り、構える。
「「「「ウォォォォォォ!!!」」」」
その荒々しくも洗礼されたリンクの所作に歓声がさらに爆発する。
リンク(調子が狂うなぁ……)
これまで戦ってきた相手は、魔物か、敵か、せいぜい相棒のナビィだけだった。こんな風に、大衆に戦いを見世物にされるのは初めてだった。
だが——やるしかない。
アナウンサー「さぁさぁ、お待たせいたしました!」
場内アナウンスが響く。
アナウンサー「選手が入場したということは、戦いの準備が整ったということ! 盾まで構えて戦う気満々のようですね! では、選手の紹介! 火蓋を切って登場するのは……!」
リンクは息を呑む。
アナウンサー「対魔の剣を持ち、神々が遺した“勇気のトライフォース”を宿す男——ハイラルの勇者、リンク!!!」
「「「「ウォォォォォォォ!!!」」」」
リンク(……!)
リンクの目が鋭くなる。
リンク(オレが……トライフォースを宿していることまで知られているのか)
トライフォースは今、三つに分かれている。
“力”はガノンドロフに。
“知恵”はゼルダに。
“勇気”は、リンクに。
リンク(……やっぱり、優勝者の願いを叶える方法に……トライフォースを使う気か!?)
するとリンクの対角線上に扉が出現した。
リンクは身構え、扉を凝視する。
アナウンサー「対するは、こなしてきた依頼の数は知れず!パワードスーツに身を包み、数多の敵を駆逐する正体不明の人物!サムス・アラン!!!」
扉が重々しく開く。中から現れたのは、オレンジと赤を基調とした金属装甲に包まれた人物。人の形をしているが、表情も見えず、得体が知れない。
リンク「キミが最初の相手ってわけか…」
リンクはマスターソードを引き抜き、ハイリアの盾を構える。
リンク「悪いけど、俺はすぐにこの大会を終わらせてハイラルに帰らせてもらうぞ!」
だが、サムスと名乗るその人物は、ただ無機質にこちらを見つめるだけだった。その沈黙が逆に不気味で、リンクは緊張を強める。
アナウンサー「さあ、ファイター双方準備が整いました!それでは、戦いを始めましょう!!」
「3…」
リンクは大きく息を吸い込む。
「2…」
サムスが僅かに身を低くした。
「1…GO!!」
リンク「行くぞ!!」
リンクは地面を蹴り、一直線に駆け出す。そのまま勢いよくマスターソードを振り下ろした。
リンク「隙だらけだ!」
剣がサムスに振り下ろされる、その瞬間。
サムスの姿が、消えた。
リンク「なっ…!」
戦いにおいて、一瞬でも敵を見失うことは致命的な隙となる。リンクは反射的にバックステップを取り、慎重に周囲を見回した。すると、足元に小さな金属の球体が転がっているのが目に入る。
リンク(さっきの鎧姿が…丸まった?)
リンクが構え直すより早く、球体は素早く転がり、再び人型へと変形した。
リンク(あの装甲を叩き割らないとダメージは通らなさそうだな…でも、大振りの攻撃はまたかわされる…どうする?)
思考を巡らせるリンク。しかし、サムスは構え直すわけでもなく、両腕をひらひらと持ち上げた。
サムス「待て」
無機質な外見から、女性の声が響いた。
リンクは一瞬困惑するが、警戒は解かずに問いかける。
リンク「待てって、どういう意味だ?」
サムスは淡々と告げる。
サムス「私たちが今、こうして戦っている理由について話がしたい」
リンク「戦う理由…?」
敵意のない様子に一抹の疑念を抱きながらも、リンクは慎重に言葉を紡ぐ。
リンク「なんで今、それを俺に話すんだ?」
サムス「お前が先ほど言った、『大会を終わらせて帰る』という発言が気になったんだ」
リンクはサムスの言葉に耳を傾ける。
サムス「私は…とある惑星の爆発から脱出し、宇宙船に乗り込んだ。そして起動した……それが最後の記憶だ」
宇宙船、惑星の爆発。リンクには馴染みのない言葉ばかりだが、意味は何となく理解できた。
リンク「つまり…キミも突然、この場所に連れてこられたってことか?」
サムスは静かに頷いた。
リンクは数瞬考え込む。これは一体どういうことだ? 大会主催者が意図的に自分たちをここに集めたのか? 目的は? そして、どうすれば元の世界に戻れるのか?
リンクは拳を強く握る。慎重に選ぶべき選択肢が多すぎる。しかし、サムスが敵意を持っていないのは確かだった。
リンク(信用するしかないか…)
リンクはマスターソードを鞘に収め、ゆっくりとサムスに近づく。
リンク「…剣を向けてごめんね。オレはリンク、よろしく」
サムスも僅かに頷き、無骨な装甲の手を差し出す。
サムス「気にするな。私はサムス・アラン」
その手を、リンクは握り返した。
握手を交わした瞬間、リンクはふと安心感を覚えた。この人は、信じられる。
リンクはゆっくりと観客席に目を向け、手を挙げて高らかに宣言した。
リンク「みんな、楽しみにしてたところ悪いけど…オレたちはこの戦いを棄権する!!」
「「「……」」」
次の瞬間。
「「「ええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇぇえぇ!!!」」」
会場が一気に混乱し、割れんばかりのざわめきが広がり混乱の渦に包まれていた。
リンク「この混乱に乗じて逃げよう!」
サムスは軽く頷く。
リンクは素早くフックショットを取り出し、観客席の手すりに狙いを定めた。逃走の算段を整えたその時だった。
観客A「きゃあああああ!!」
鋭い悲鳴が会場内に響き渡る。
リンク、サムス「「……!」」
リンクとサムスは即座に声の方向を向いた。すると、そこには——
ヨッシー「アムアム……ごっくん!!いや〜、ファストフードは体に悪いとわかってますが、やっぱ美味しいですねー! あ、失礼します、その唐揚げもいただきますね! ペロン♪」
観客B「うわー! 俺の唐揚げがぁぁ!!」
緑色のトカゲが観客席を飛び跳ねながら、容赦なく食べ物を強奪していた。
観客C「きゃあぁぁぁ!!」
また別の方向から悲鳴が上がる。
リンク「なんだ? まだ何か……」
リンクがそちらに目を向けると、今度はピンク色の丸い生き物がポップコーンを抱え込み、夢中で頬張っていた。
カービィ「あー! 美味しい! ポップコーンもジュースも、チョコレートも!食べ放題!! 幸せぇぇ!!」
リンク「……なんだ、この状況?」
リンクとサムスは顔を見合わせ、混乱する。
その瞬間——
——パチン。
鋭い音が響き渡った。
次の瞬間、緑のトカゲとピンクの生き物が、まるで空間をねじ曲げられたように一瞬でリンクたちの目の前に現れた。
ヨッシー「あれ? ここは? 私のランチは?」
カービィ「ぼ、僕のお菓子はどこ?」
食い逃げ犯たちが困惑する中、上空から冷たい声が降り注いだ。
マスターハンド「……いい加減にしろ」
——ドクン。
圧倒的な威圧感が場を支配する。
リンクとサムスは息を呑み、同時に空を見上げた。
そこには——
巨大な白い手。
指は優雅に曲げられ、まるで全てを掌握するかのように静かに宙を漂っていた。
マスターハンド「いい加減にしろ、貴様ら。かたや戦闘を放棄し、かたや観客を襲う……モラルというものがないらしいな」
——ゴクリ。
巨大な手から発せられる声は低く冷徹で、まるで心の奥底を凍らせるかのようだった。
サムスが即座に右腕を上げ、巨大な銃口、アームキャノンを構える。
リンクも慌ててマスターソードを構え、敵意を見せる。
サムス「リンク、恐らくあいつが私たちをここに呼び寄せた張本人だ」
リンク「そうだね……あの食い逃げ犯たちが突然目の前に現れたのも、あいつが指を鳴らしたからだ。あのサイズと不思議な力……間違いない」
リンクは剣をを握る手に力を込め、鋭く叫ぶ。
リンク「おい! お前が俺たちをここに連れてきた犯人なんだろ!! お前は一体、何者だ!!」
巨大な手はゆっくりと宙を滑るように動いた。
どこから発しているのかわからない、しかし確かにそこに響く声が、冷静に答える。
マスターハンド「私はマスターハンド……」
——ドクン。
マスターハンド「大乱闘スマッシュブラザーズの主催者であり——」
——ドクン、ドクン。
マスターハンド「君たちをこの大会に招待した者だ」
その言葉を最後に、空気が凍りついた。
リンクは息を詰まらせ、サムスは僅かにアームキャノンを構えなおす。
巨大な手——マスターハンド。
その圧倒的な威圧感と、神のような存在感に、誰もが言葉を失っていた——。
対戦相手はサムスかと思いきやなんとヨッシーとカービィが乱入してきて、さらにマスターハンドも現れました。
ここからどうなるんでしょうかね。
キャラクター紹介
サムス・アラン
『メトロイド』シリーズの主人公で、銀河最強のバウンティハンター。オレンジ色のパワードスーツを着用し、右腕の「アームキャノン」からエネルギービームを放つ。スーツには「モーフボール」や「ミサイル」などの特殊機能が搭載されており、多彩な戦闘スタイルを持つ。正体は金髪の美女で、スーツを脱いだ姿は「ゼロスーツサムス」としても知られる。クールで冷静な性格だが、時には仲間を想う優しさも見せる。
サムスの冒険履歴
メトロイド→メトロイドプライム→メトロイドハンターズ→メトロイドプライム2→メトロイドプライム3→フェデレーションフォース→(おそらくメトロイドプライム4)→メトロイド2→スーパーメトロイド