マリオ「会いたかったよ、ルイージ!」
声を上げたマリオの目には、懐かしさと安堵の色が浮かんでいた。
ルイージ「僕もだよ、兄さん!久しぶり!会えて嬉しい!」
マリオ「もう、本当に心配したんだぞ。今までどこに行ってたんだよ!」
ルイージ「そのことなんだけど...」
ルイージ「まず兄さんにお土産があるんだ!」
ルイージは嬉しそうに肩から大きなカバンを下ろすと、どこか焦るような仕草で鞄の中を探り始めた。
ガサゴソと音を立てながら手を動かすその様子からは、何か特別なものを見せたいという期待がはっきりと伝わってくる。
すると、先ほどまでの慌ただしい動きが、ぴたりと止まった。
ルイージは顔を上げ、まっすぐにマリオを見つめる。
ルイージ「ほら、これ見て!」
マリオ「ふーん?」
マリオは何気なく視線を向けたが、次の瞬間目を見開いた。
マリオ「それって!ボールフラワー!」
ルイージが取り出したのは、黒と白のモノトーンが交互に彩る、不思議な花だった。
両手ですりつぶすことでボールを生み出す、キノコ王国では見かけないパワーアップアイテムである。
それを目にした瞬間、マリオは弟がどこを訪れていたのかを悟った。
マリオ「ルイージ、まさかサラサランドに行っていたのか?」
ルイージ「ご名答!」
ルイージ「でも、それだけじゃないよ」
そう言うと、ルイージは再び鞄を探り始め、次々とパワーアップアイテムを取り出した。
茶色と小麦色が交差した葉っぱ、先端がオレンジ色に輝く羽、そして愛らしい目が描かれたニンジン。
それらを次々と鞄から取り出していく。
マリオ「スーパーこのは、スーパーマント、それにニンジン!どれもキノコ王国では見られないパワーアップアイテムだ…」
マリオは息を呑んだ。目の前に並べられたアイテムは、それぞれが異なる国でしか手に入らないものばかりだった。
ルイージ「薄々気づいていたかもしれないけど、今回の旅は兄さんが今まで冒険してきた場所を全部巡ってきたんだ!」
マリオは静かに弟を見つめた。その眼差しには、驚きと共に複雑な思いが宿っていた。
そんな兄を気にも留めず満面の笑みを浮かべたまま、もう一度鞄に手を伸ばした。
マリオ「まだあるのか?正直、もう驚き疲れたよ」
ルイージ「いやいや、兄さん」
ルイージ「残念だけど、これからがメインディッシュさ。今から一番驚くことになるんだから」
マリオは首を傾げ、不思議そうな表情を浮かべた。弟が何をそこまでもったいぶっているのか、さっぱり見当がつかなかった。
ルイージは場を盛り上げるように、大きな声で宣言した。
ルイージ「これこそが兄さんに一番見せたかったもの。
そして、僕の冒険の最高の成果!」
彼は片手を大きく掲げ、もう一方の手を鞄に突っ込んだまま、舞台に立つ役者のように声を張り上げる。
ルイージ「ご覧あれ、ルイージの努力の結晶を! そーれっ!」
勢いよく鞄から取り出されたのは、眩い光と圧倒的な力を放つ星だった。
それを見たとたん、マリオの顔から血の気が引いた。
マリオ「ル、ル、ルイージ!お前...それって!」
ルイージ「うん、スーパースターだよ!」
スーパースターは、触れた者に一定時間あらゆる攻撃を退け、
どんな強敵であろうと打ち倒す無敵の力を与える、
めったに見つかることのない強力なパワーアップアイテムだ。
しかし、マリオが動揺している理由は別にあった。
マリオ「ルイージ!」
マリオ「忘れたのか?スーパースターはとんでもないパワーを秘めてるから、見つけたその国に収める決まりだっただろう!」
しかし、マリオの焦りとは裏腹に、ルイージは落ち着いた様子で微笑み続けていた。その不自然な態度に、マリオは違和感を覚えた。
マリオ「な、なにニヤニヤしてるんだよ。かなりまずいことしてるんだぞ…!」
ルイージ「うん、確かに普通ならよくないことだね、でも僕はしっかりとお決まりを守った上でこのスーパースターを持ってきたんだよ」
マリオは困惑した。
冒険の最中、スーパースター自身が力を貸してくれることは確かにある。
だが、それはごく特別な状況に限られていた。
本来、スーパースターの使用は許されていない。
当然その国の支配者以外が持ち出すことは、決して認められていないのだ。
マリオ「一体どんな方法で…?」
ルイージ「兄さん」
諭すような口調でルイージは語りかけた
ルイージ「僕は兄さんが今まで冒険した国を全て巡ってきたんだよ?その中に、スーパースターを自由に持ち帰れる国があったはずだよ?よーく思い出してみて」
マリオは眉をひそめながら、一つずつ確認していった。
マリオ「えーと、キノコ王国、7つの隣国、サラサランド、ヨースター島に、マリオランド……」
マリオ「マリオランド⁈」
その瞬間、マリオはルイージの意図を完全に理解した。
ルイージの笑顔は更に広がる。
ルイージ「そう!このスターが取れたのはマリオランド!それで!マリオランドを治めているのは誰だっけ?!」
マリオ「僕だ…!」
ルイージ「その通り!僕はあくまで決まりに則って、兄さんにスーパースターを収めてるだけなのさ!」
マリオ「すごいぞルイージ! まさか、これを見つけるためにわざわざ冒険に出たのか?」
ルイージ「いいや。スターは、たまたま見つけただけさ」
マリオの興奮とは裏腹に、返ってきた答えは意外なものだった。
マリオ「え? じゃあ、なんで?」
そう問いかけられたルイージは、少し落ち着いた様子で言葉を選び、しみじみと語り始める。
ルイージ「僕たちは、二人そろえば何だってできる。無敵のマリオブラザーズだ。
それは、僕も分かっているつもりだよ。
でも……サラサランドやマリオランドでは、僕がいなくても兄さんは次々と国を救っていた」
一拍置いて、ルイージは顔を上げる。
ルイージ「だから僕も、兄さんが築いてきた実績に追いつきたかったんだ!」
マリオは心の中で静かにつぶやいた。「そんなことしなくても、お前は最高の弟だ」
だが、その言葉を口に出すのは控えた。弟の成長を認め、その努力を尊重したかったからだ。代わりにマリオは優しく微笑み、心からの言葉を贈った。
マリオ「お疲れ様、ルイージ!」
ルイージは誇らしげに胸を張った。十分な再会の喜びを分かち合った後、マリオは新しい話題を切り出した。
マリオ「そういえばさ、母さんが最近僕らに会いたがってるんだ。今からブルックリンまで顔を見せに行かないか?」
ルイージ「いいね!久しぶりに母さんの手作りスパゲッティが食べたいな!」
その後、ルイージは家に入ってシャワーを浴びた。
その間にマリオは、お馴染みの赤い帽子と青いオーバーオールに着替え、
ルイージから受け取ったアイテムを丁寧にポケットへと収める。
シャワーを終えたルイージも、いつもの緑の帽子と紺色のオーバーオールに身を包んだ。
久しぶりに弟とおそろいの服装になり、マリオの胸には言葉にできないものがこみ上げてくる。
マリオ「よし、行こうか」
思慮深い感情をにじませた声でそう告げ、マリオがドアを開けた、その瞬間――
ゴンッ、という鈍い音が響いた。
ルイージ「ね、ねぇ兄さん、今ドアの方からゴンッて音しなかった…?」
マリオ「あ、あぁ…しかも、この重みからして誰かにぶつかった感じがする」
2人が恐る恐るドアを開くと、そこには背中から翼を生やした若い亀が、鼻を押さえながらうずくまっていた。
マリオ「きっ、君は…パレッタ!」
パレッタ「あ、どうも……マリオさん、ルイージさん」
そう言いながら、なんとか顔を上げて挨拶しようとするが、
ぶつかった鼻を押さえたまま、その場から立ち上がれずにいる。
パレッタ「ちょっと待っていてください……
まだ、痛みが引かなくて……」
マリオとルイージは申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。
パレッタは亀郵便局で働く若き配達人で、自らの翼による配達を誇りにしている優秀な郵便屋だった。
やがて痛みが和らいだのか、パレッタはゆっくりと体を起こした。
マリオ「ご、ごめんよパレッタ」
パレッタ「いえいえ、気にしないでください!それより、お二人にお渡ししたいものがありまして…」
首からかけた鞄を開け、丁寧に中を探り始めた。かなりの数の手紙が詰まっており、目的の物を見つけ出すのに手間取っているようだった。
パレッタ「あ、ありました!」
そう言うと二枚の封筒を勢いよく取り出した。
パレッタ「はい、これです!こちらがマリオさん宛で、こちらがルイージさん宛です!」
兄弟は不思議そうに封筒を受け取った。純白の封筒には、円の中に十字が描かれた印が押されていた。
マリオは封筒の差出人を確認した。
マリオ「えーと、マスターハンド…誰だ?ルイージ知ってるか?」
ルイージ「いや、僕も初めて聞くね」
ルイージ「パレッタ、これは何の手紙なの?」
パレッタ「格闘大会の招待状だそうです!詳しいことは私もよく分かりませんが、様々な国の英雄であるお二人への招待状とのこと。きっと素晴らしい大会になると思います!ぜひ開封してみてください!」
興奮気味のパレッタに促され、マリオたちは招待状を開いた。マリオは書かれた内容をゆっくりと読み上げた。
マリオ「何々…『拝啓 マリオ様、あなたを大乱闘スマッシュブラザーズに招待いたします。優勝者にはどんな願いでも一つだけ叶えさせていただきましょう』…」
内容は簡潔だったが、まるで童話のような約束が記されていた。同じ文面を読んでいたルイージは、今にも跳び上がりそうで興奮を抑えきれない様子だった。
ルイージ「に、兄さん!なんでも願いが叶うんだって!」
その興奮に呼応するように、パレッタも目を輝かせた。
パレッタ「す、すごいですね!優勝したらどんな願い事をするつもりですか?」
ルイージ「うーん、そうだなぁ、山盛りのスパゲッティとかいいかもしれないね」
そんな2人の盛り上がりをよそに、マリオは冷静さを保っていた。水を差すのは気が引けたが、懸念を伝える必要があると感じた。
マリオ「2人とも、落ち着いてくれ、願いが叶うなんて、そんな都合の良いことがあるか。それに、この手紙には会場の場所も日程も書かれていない。誰かの悪戯としか思えない」
マリオの言葉に、2人の興奮は静かに冷めていった。少しの沈黙の後、パレッタは申し訳なさそうに頭を下げた。
パレッタ「大変申し訳ございません、亀郵便局は厳重な審査を通した手紙しか取り扱わないはずだったのですが…もう一度、体制を見直させていただきます」
マリオ「気にすることないよ。それに、僕たちは大会で優勝して山盛りのコインを手に入れるより、地道に配管工を続けている方が性に合ってるしね」
ルイージ「そうだね」
しばらくして、パレッタは深々とお辞儀をすると、翼を広げて空へと飛び立っていった。
マリオは招待状を手にひらひらと仰ぎながら考え込んだ。
マリオ「しかし、僕たちの家に悪戯の手紙を寄越すなんて、一体誰の仕業なんだろう。まさかクッパ?」
ルイージ「流石にクッパも、こんな小さいことはしないと思うよ」
ルイージは苦笑いしながら答えた。
ルイージ「でも兄さん、僕は願い事は無しにしても、格闘大会には出てみたかったな」
マリオ「なんでだ?」
ルイージ「僕がどこまで成長したか試してみたいし、何より僕たちは何度も国を救ってきたマリオブラザーズだよ!優勝まではいかなくても、絶対いいところまで行ける気がするんだ」
マリオは自信に満ちた弟の姿と、これまでの数々の冒険を思い出し、心が温かくなるのを感じた。
マリオ「よし、ルイージ。その話も母さんたちに聞かせてやろう!」
ルイージ「あはは、母さんに話したら『殴り合いなんて危ないことはやめなさい!』って叱られちゃうかもね」
他愛もない会話を交わしながら、2人がワープ土管に向かおうとした、その瞬間だった。
突如、招待状が眩い光を放ち始めた。
マリオ「うわっ!何だこれ!これも悪戯の仕掛けか?」
しかし、その驚きも束の間のことだった。
ルイージ「うわぁぁぁ!兄さん、体が!」
ルイージの悲鳴に、マリオは慌てて自分の体を確認した。
マリオ「なんだこれ…?体が…透けてる…?」
なんと体が徐々に透明になっていくではないか。同じ光に包まれたルイージにも、同様の現象が起きていた。
ルイージ「兄さん、これどうしよう!僕たち、これからどうなっちゃうの!」
マリオ「落ち着くんだ、ルイージ!これはきっと何かの仕掛けだ!」
透明化のパワーアップアイテムを知っているマリオはまだ冷静さを保てていたが、そのことを知らないルイージは更なる恐怖に襲われていた。
ルイージ「いいやっ落ち着いてなんかいられないよ!」
ルイージの姿は今や、目を凝らさなければ背景と区別がつかないほどになっていた。
ルイージ「兄さああああぁぁぁぁ…」
やがてルイージの叫び声が、まるで遠ざかっていくかのように消えていった。
マリオは咄嗟にルイージがいた方向へ駆け寄った。
しかし、そこには何もなかった。
マリオは焦った。
なぜなら透明になっただけなら、そこに弟がいるはずだった。
マリオ「おい、ルイージ!どこにいるんだ!ルイージ!」
マリオの叫び声は虚しく響くだけだった。そして気づかぬ間に、マリオの身体も徐々に薄れていき、やがて完全に消え去ってしまった。
静寂が訪れた後、残されたのは2枚の白い招待状だけだった。その上には、かすかに十字の印が輝いていた。
次回からスマブラのお話が始まります。
キャラクター紹介
ルイージ
マリオの双子の弟で、緑の服と帽子が特徴的。兄よりも背が高く、ジャンプ力も優れているが、滑りやすいというクセがある。臆病な一面があるが、いざという時には果敢に戦うことも。マリオと共に多くの冒険に挑み、影が薄いといじられることもあるが、ファンからは根強い人気を誇る。
ルイージの冒険履歴
スーパーマリオブラザーズ→スーパーマリオブラザーズ3→スーパーマリオワールド
ルイージはマリオワールド以降のマリオの冒険を知らない為マリオRPGとマリオ64の冒険の舞台となった場所には訪れていません。
マリオランド2の出来事も知らないですが、兄が所有している土地に興味を持った為訪れています。
良ければ感想と評価よろしくお願いします!!