前回はここまで一気に投稿しようとしてた自分の計画性のなさに驚きますね笑
それでは最終決戦です。
ドタドタドタッ――
地面を叩きつける重い連打音を轟かせながら、ヨッシーは走っていた。
背にはネスを乗せ、怪我を負ったドンキーコングとキャプテンファルコンのもとへ一直線に向かっている。
ネス(は、速い……! 視界が流れて……!)
体が後方へ引かれる感覚。
引き離されるわけではない。ただ、前へ進むヨッシーの速度に、体の感覚がわずかに遅れ続けている。
地面を蹴るたび、内臓が一拍遅れて追いつくような、不安定な浮遊感。
ヨッシーが本気で走ったときの加速は、まだ成長途上の少年の身体では完全には馴染まなかった。
だが、振り落とされるほどではない。
ネスは歯を食いしばり、ヨッシーの頭にしがみついた。
――離れない。
帰る。そのために、ここで落ちるわけにはいかない。
必死に耐えていると、掴んでいる頭の奥から声が返ってきた。
ヨッシー「ネスさん! そろそろ着きますよ!」
その言葉を聞いた瞬間、ネスの意識が切り替わる。
次は――自分の役目だ。
落ちないことよりも、
ネス「え……? ヨッシーさん?!」
背中の感触が、唐突に消えた。
気づいた時には、ネスはヨッシーの小さな手のひらの上に立たされていた。
風を切る音が一段階、近くなる。
ヨッシー「投げますよ!!」
ネス「え!? な、投げ――ちょ、ちょっと!!」
次の瞬間。
視界が、跳ね上がった。
地面が一気に遠ざかり、空気が耳元で裂ける。
速度が、思考を置き去りにしていく。
ネス(なんで!? なんで投げるのさ!!
近づけば
内心で叫びながらも、視線だけは即座に目的地を捉える。
倒れているキャプテンファルコンとドンキーコング。
――やるしかない。
ネスは歯を食いしばり、両手に意識を集中させた。
ネス「PKライフアップ
放たれた光弾が、二人の周囲を高速で旋回し始める。
それを視界の端で確認すると同時に、ネスは身体をぎゅっと丸めた。
ネス(――間に合わな……!)
地面が、急速に迫る。
衝突まで、もはや一呼吸も残されていない。
次の瞬間
ネス「――っ!?」
腰のあたりに、弾力のある何かが張り付いていた。
同時に、落下の軌道が強引にねじ曲げられる。
舌だ。
ヨッシーの舌が、正確にネスの身体を捉えていた。
体が、急激に逆方向へ引かれた。
慣性が反転し、内臓が置いていかれる感覚。
同時に引きの力が段階的に緩められ、落下の勢いが削ぎ落とされていく。
後方へ引かれながら速度が調整され、体はそのままヨッシーの背中へと導かれた。
次の瞬間、衝撃は消え――
気づけば、ヨッシーの背中にしっかりと座っていた。
ヨッシー「ふー! ナイスキャッチですね、私!」
ネス「…………」
心臓が、まだ暴れている。
叫び返したい衝動を飲み込み、ネスは短く息を吐いた。
その直後だった。
ドンキー「ん? なんだ……?」
視界の端で、ドンキーコングが腕を動かす。
さきほどまで地に伏していた巨体が、ぎこちなく上体を起こした。
ドンキー「体が……妙に軽いぞ?」
CF「……」
隣では、キャプテンファルコンが何も言わずに立ち上がっていた。
一度、握った拳を開き、確かめるように肩を回す。
CF「……お前の力か?」
その言葉が向けられた先が、自分だと気づき、ネスは一瞬息を呑む。
ヨッシー「二人とも! 私のところへ走ってください!」
ヨッシーはそう叫ぶと、振り返りもせず駆け出した。
ネス(……そうか)
走り去る背中を見送りながら、ネスの中で点と点がつながる。
ネス(僕を投げて回復させて、
そのまま舌で引き戻す……)
無駄のない動き。
最短距離で結果を出す判断。
ネス(往復を省くための、あのやり方……)
思わず、息を呑んだ。
ネス(この世界に呼ばれた理由がある……
やっぱり、ただ者じゃない)
理解した瞬間、ネスの中で余計な音が消えた。
回復は終えた――次は帰る為の戦いだ。
ネスはヨッシーの頭にしがみつき直し、来る衝撃に備えた。
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走り去るヨッシーの背を見送りながら、ドンキーコングは首をかしげた。
ドンキー「あいつ……何するつもりなんだ……?」
疑問を含んだその声に、隣から落ち着いた声が返る。
CF「立て。行くぞ」
ドンキー「おい! 説明しろよ!
今のはどういう状況なんだ!?」
CF「分からん。だが――」
キャプテンファルコンは、前を見据えたまま言った。
CF「ここで寝ているよりは、
何かが起きそうだ」
言い終える前に、ファルコンは地を蹴る。
ドンキー「……ちっ。
一体なんだって言うんだよ……」
悪態をこぼしながらも、ドンキーは巨体を前に傾けた。
キャプテンファルコンの背を追い、ヨッシーの進む先へと走り出す。
巨体を前傾させ、両手両足で地面を掴むようにして加速する。
その勢いで、みるみるうちに距離を詰めていった。
やがて、ヨッシーの走行線の先にサムス、ルイージ、カービィ、ピカチュウの姿が見えてくる。
ヨッシーは彼らに近づくにつれて速度を落とし、合流した瞬間にぴたりと足を止めた。
ほどなくして、ドンキーたちも追いつく。
CF「……何か策を思いついたのか?」
キャプテンファルコンの冷静な問いに、ルイージは緊張した面持ちで頷いた。
ドンキー「俺は難しい話は分かんねぇぞ。何をすりゃいい?」
ルイージ「まず、みんなを一か所に集めなきゃいけない!
だから、剣士の人と狐の人のところへ――」
そう言いかけ、走り出そうと地面を蹴った、その瞬間。
フォックス「剣士と狐なら、ここにいます」
ルイージ「えっ!?」
背後から声がして、ルイージは振り返った。
そこには、まさに探していた狐と剣士が並んで立っている。
ルイージ「え、えっと……なんで?
どうして体が治ってるの?
ネスくん、いつこの二人を回復したの!?」
ネス「いや、僕は何もしてないですよ」
フォックス「説明は後にしましょう。
時間がないんでしょう?」
混乱するルイージとネスを、フォックスが冷静な声で制する。
ルイージははっとして頭を振り、表情を引き締めた。
ドンキー「それで?
次は何をすればいいんだ?」
ルイージは一歩前に出て、はっきりと告げる。
ルイージ「今から、みんなにスーパーパワーを共有する。
そのために――まず、手を繋いでほしい!」
その言葉に、ドンキーコングとキャプテンファルコンは揃って眉をひそめた。
CF「おいおい……手を繋いでパワーアップ?
随分とメルヘンチックな話だな」
ドンキー「こんな時にふざけてんじゃねぇぞ!」
絶望的な状況を覆す策を期待していた分、
あまりにも拍子抜けする提案に、二人は呆れを隠さない。
しかし――
カービィ「うん、わかった!」
フォックス「手を繋げばいいんですね」
ピカチュウ「ピッカチュウ!」
サムス「……」
ヨッシー「皆さん、早くつなぎましょう!」
ネス(……なんか、ちょっと恥ずかしい)
リンク「よし、繋いだぞ」
先入観を捨てた者たちが、迷いなく手を差し出していく。
その様子に戸惑う二人へ、サムスが静かに手を伸ばした。
サムス「早くしろ。
自分たちの世界に帰りたくないのか?」
CF「……伝説にそう言われちゃ、断れないな」
彼はドンキーへ手を伸ばす。
取り残された形になったドンキーコングは、一瞬唸り声を上げ――
ドンキー「本当に何とかなるんだな!?
ならなかったら、許さねぇからな!!」
吠えるように言いながら、手を掴んだ。
こうして、全員の手が繋がり、準備が整った。
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ルイージ「……よし!」
自分の声で、ようやく覚悟が定まったのを感じる。
ルイージは素早く視線を巡らせ、作戦の要となる存在を探した。
――見つけた。
戦場の只中、マスターハンドの攻撃を紙一重でかわし続ける赤い影。
ルイージ「……このままじゃ、だめだ」
その呟きに、真っ先に反応したのはドンキーだった。
ドンキー「おい! ふざけるなよ!
期待させやがって! 結局、手をつないだのも無意味だったってのか!?」
ルイージ「違う!
この作戦は、全員が一か所に集まらなきゃ成立しないんだ!」
CF「……つまり」
キャプテンファルコンが、短く言葉を継ぐ。
CF「マリオも必要なんだな」
その一言で、全員の視線が同時に向いた。
マスターハンドの巨体と瞬間移動を活かした、広範囲かつ苛烈な攻撃。
その中心で、マリオは休む間もなく動き続けている。
ドンキーコングは、思わず息を呑んだ。
あの密度の中で一瞬でも止まれば、即座に潰される――それが直感で分かる。
ヨッシー「……まずいですね。
まるで、隙が見当たりません」
ルイージ「うん……
僕たちはここから動けないし……」
答えの出ないまま、短い沈黙が落ちる。
だが――
ネス「……引っ張れば……引っ張ればいいんだよ!」
ルイージ「え?」
ネスはヨッシーを見上げ、勢いよく続けた。
ネス「僕を投げた時みたいに、舌で引っ張れば!
マリオさんだって、一気にここへ来られる!」
ヨッシー「なるほど!
その手がありましたか! よーし!」
CF「待て!」
ヨッシー「なんですか!? 止めないでください!」
CF「あの攻防を見ろ。
的であるマリオは、常に動き続けている。
この距離から正確に捉えるのは、不可能だ」
ヨッシー「だったら!
マリオさんに止まってもらえるように言えばいいじゃないですか!」
CF「その“隙”が無いから、困っているんだろう」
ルイージ「……じゃあ……
一体、どうすれば……」
行き詰まりかけた、その瞬間。
フォックス「俺に任せてください」
ルイージ「……え?」
その声は、沈みかけた空気を切り裂く、確かな希望だった。
フォックスはホルスターからSFチックな銃を取り出し、指先で軽く回転させる。
フォックス「隙なら……いくらでも作れます」
銃口が、迷いなくマスターハンドへ向けられる。
フォックス「作戦の準備を。
時間は、俺が稼ぎます」
ルイージ「……うん!」
思わず声に力がこもる。
フォックスの言葉に背中を押され、胸の奥に再び火が灯った。
ルイージ「とりあえず!
みんな、もう一回手を繋ごう!」
不安を抱えながらも、全員が再び手を差し出す。
右端にはサムス。
彼女の右腕にはアームキャノンが装着されており、手を繋ぐことができない。
そして――
スターの力を共有する方法を知るルイージは、左端へと移動した。
マリオと接触する役目は、自分だ。
だが、左端に立った瞬間、違和感が走る。
ルイージ「……えっと?
何してるの?」
そこには、拳を地面につけ、じっと動かないリンクの姿があった。
しばしの沈黙。
リンク「……よし」
何事もなかったかのように立ち上がり、左手を差し出す。
ルイージ「……何してたの?」
リンク「ん? ああ」
リンクは、ニヤリと笑った。
リンク「念には念を、ってやつかな?」
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マリオ(参ったなぁ……)
そう弱音を吐露するのも無理はなかった。
マリオは、マスターハンドの猛攻をひたすらかわし続けている。
自身の体など優に包み込んでしまうほどの巨体。
そこから繰り出される攻防は苛烈で、瞬きひとつが命取りになる。
マリオ(ルイージたちと一緒にスターで逆転するはずだったのに……
これじゃ、近づくことさえできない……)
招待状が消えるタイムリミット。
その制約が、じわりと焦りとなって胸に広がった――その瞬間。
マリオ「!!」
意表を突いたマスターハンドの大振りが、
マリオの体を**チッ!**と音を立てて掠める。
マスターハンド「疲労が溜まってきたようだな」
マリオ「……!」
言い返す余裕はなかった。
マリオは類まれな身体能力を持ち、スーパーキノコによってその力を底上げしている。
だが、それでも体は体だ。
巨大な敵の攻撃を避け続け、
一瞬ごとに跳び、捻り、踏み込む。
それだけの動きを休みなく続ければ、
どんな男でも疲れは確実に積み重なっていく。
マリオ(どうする……!!
ここで僕自身がスターを使うか……?
いや、僕一人じゃ、こいつは倒しきれない……)
短い沈黙ののち、考えは一つにまとまった。
マリオ(よし……。
ルイージたちにスターを渡す事だけ考えるんだ)
自分がその力を受け取らなくてもいい。
仲間に託せば、もっと大きな可能性が生まれる。
そう判断した瞬間、迷いは消えた。
その目に、はっきりとした決意が宿る。
次の瞬間、マリオはマスターハンドに向かって、攻撃を仕掛けるかのように走り出した。
マスターハンド「血迷ったか?」
嘲るような声とともに、巨大な手が大きく開かれ、
マリオを押し潰す勢いで振り下ろされる。
それを視界に捉えたマリオは、一度深く身を沈め――
次の瞬間、自身の身長の四倍ほどの高さまで、
回転を交えながら跳び上がった。
常人であれば、上下も左右も分からなくなるような光景。
だがマリオは違った。
着地を想定したまま、空中で周囲の状況を冷静に見渡していた。
――そのとき。
マリオ(……なんだ?
なにか、レーザーみたいなものが……近づいてくる?)
背後から、赤く光る無数のレーザーがこちらへ向かって迫っていた。
マリオ(でも……おかしい。
明らかに、僕の方へ飛んできていない……?
僕を狙っていないのか?)
違和感は、すぐに形を持つ。
マリオ(まさか……!
僕の着地を狙っているのか!?)
だが、すでに宙にある体は軌道を変えられない。
マリオは瞬時にレーザーの配置を読み取り、
足一つ分だけ残された隙間へ、片足で着地する。
その反動を利用し、さらに跳び上がることで体勢を立て直そうとした。
そして――
レーザーの配置を強く見据えた、その先で、
マリオは“ある存在”と視線が交わる。
マリオ(……あれは……ルイージ!?)
この場で、最も信頼できる存在。
その弟の姿を視界に捉えた瞬間、マリオはレーザーの配置を追うのをやめた。
代わりに、身体を大きくひねり、
降下の軌道をレーザーの進行方向へと向ける。
マリオ(ルイージがあの場にいるってことは……
間違いない。このレーザーは仲間のものだ。
足元を狙っていたのは、マスターハンドを撃つため……!)
理解が追いついた頃には、
降り注いでいたレーザーの雨は、ぴたりと止んでいた。
そして――
地に足が触れた瞬間、
マリオは全身の力を脚へと集中させた。
地面を蹴る。
迷いなく、ためらいなく。
胸元からスーパースターを引き抜きながら、
視線はただ一人――ルイージへと向けられている。
マリオ(よし……
スターを、ルイージの元へ届けさえすれば、
僕の役目は終わる!!)
腕を大きく振りかぶった、そのとき――
ルイージ「兄さん! 走って!!」
考えるよりも早く、身体が反応した。
次の瞬間、マリオは全力で駆け出していた。
理由はただ一つ。
それが、最も信頼している弟の言葉だったからだ。
踏み込むたび、地面が弾ける。
呼吸が荒くなるのも構わず、ただ前へ、前へ。
走る。
余計な動きは一切ない。
速度だけを求め、全力で距離を詰めていく。
その進行方向には、ルイージの姿。
そして、その少し手前――
SFチックな銃を構えたフォックスの姿もあった。
マリオ(……あのレーザー……
フォックスが、僕を援護してくれていたのか)
視線の先には、ルイージのもとへ集結する仲間たちの姿があった。
倒れていたはずのドンキーコングやリンクも、すでに立ち上がっている。
マリオ(人数を集めてほしいとは思ってたけど……
まさか、全員をまとめ上げるなんてな……すごいな、ルイージ)
称賛の念を胸に抱きながらも、マリオは走り続けた。
だが、フォックスの動きに違和感を覚える。
走りながら視界の端で捉えた銃口は、
先ほどまでの狙点から外れ、
いつの間にかマリオの頭上よりやや高い位置を向いていた。
マリオ(さっきのレーザーの軌道で分かったけど……
彼は、僕を避けてマスターハンドだけを撃っているはずだ)
マスターハンドの全長は、マリオのおよそ1.5倍。
つまり、この高さを狙うということは――
マリオ(……奴は、もう体勢を立て直しているってことか!?)
その直後、レーザーが頭部すれすれを掠めて飛び去る。
同時に、背後から“ズズズッ”と空気を裂く重い音が迫ってきた。
マリオ(まずい……!
このままじゃ、追いつかれる……!!)
振り返る余裕はない。
マリオは、ただ走ることに意識を集中させた。
歯を食いしばり、地面を蹴り続ける。
目指す先は、ただ一つ――ルイージたちの元。
ヨッシー「マリオさん!!」
信頼できる仲間の声が響いた。
視線を向けると、一直線に伸びてくるヨッシーの舌が見える。
意図を察したマリオは、舌を狙ってさらに速度を上げた。
そして、舌が十分に伸びきった瞬間――
マリオは迷わず飛び込んだ。
舌にしがみついた瞬間、
強い粘り気と、柔らかく生暖かい感触が伝わる。
次の瞬間、マリオの体は走っていた方向へ一気に引き寄せられた。
ヨッシーの舌は、獲物を逃がすまいと素早く収縮する。
その速度は、マリオの全力疾走をも上回っていた。
だが、マリオの焦りは消えなかった。
首をひねって背後を振り返り、迫る気配を確かめる。
するとマスターハンドは、寸前まで迫っていた。
マリオ(ダメだ……!
このままじゃ、追いつかれる!!)
伸ばされた指先が、マリオの足先に届きそうになる。
距離は刻一刻と詰められ、捕まるのは時間の問題だった。
そして――
指がついに届こうとした、その瞬間。
マスターハンドの身体に、赤いレーザーが再び突き刺さった。
光は命中するたびに弾け、
その閃光がマリオの頬をかすかに赤く照らす。
だが、マスターハンドは怯む様子を見せない。
さらに距離を詰め、ぐっと身体を寄せると、
大きく手のひらを広げた。
マリオ(ここで終わりなのか……!!)
そう心の中で呟いた瞬間――
閉じられた指先が、掴んだのは空気だけだった。
わずかに混乱した様子を見せながら、
マスターハンドは再びマリオを追い始める。
だが、その距離は徐々に開いていった。
マリオ(どういうことだ……?
急に、やつのスピードが落ちたぞ?)
マスターハンドの動きには、
微かな疲労の兆しが浮かんでいた。
先ほどまで続いていた、息をつかせぬ攻防のせいか――
いや、違う。
原因は、レーザーだった。
フォックス「……ようやく効いてきたか」
フォックスの放つレーザー――通称ブラスターは、
直撃してもほとんど痛みを感じないほど微弱な攻撃だ。
しかし、痛みを感じないからといって油断はできない。
それに晒され続ければ、疲労とダメージは確実に蓄積し、
気づかぬうちに大きな負荷となって身体を蝕んでいく。
フォックスはこのブラスターを連射し続け、
相手を少しずつ消耗させたうえで、
弱った瞬間を逃さず叩く戦い方を得意としている。
つまり、フォックスはこう考えたのだ。
フォックス(五体満足のマスターハンドの攻撃を避け続けていたマリオさんなら、
少し疲労を与えるだけで、大きな隙になる)
そして、その読みは的中し,そこに、仲間の連携が重なったことで、 決定的な“隙”が生まれたのだ。
もはやマスターハンドがマリオに追いつく望みは、完全に断たれていた。
気づいたときには、マリオはすでにルイージたちの目前にまで迫っていた。
ヨッシー「ほろほろはなひまふよ!!(そろそろ離しますよ!!)」
ヨッシーは舌を力強く引き戻し、マリオの身体を一気に引き剝がした。
マリオは瞬時に体勢を立て直し、ルイージのもとへ全速力で駆け出す。
ルイージ「兄さん!!」
ルイージは必死の思いで、マリオへ向かって左手を伸ばした。
マリオ「ルイージ!!」
それに応えるように、マリオはスターを掲げ、ルイージへと差し出す。
そしてマリオは、迷うことなくルイージに向かって跳躍した。
しかし――
パチンッ
マリオ「!!」
掴めるはずだったその身体は、何ものにも支えられることなく宙を切った。
マリオは地面を引きずるように身を支えながら、苦しげに背後を振り返った。
そこには――
つい先ほど指を鳴らしたばかりのように、人差し指と親指を突き出した白い手が、静かに宙を漂っていた。
マリオ「う、嘘だろ…」
マスターハンドは、落ち着き払った調子で言葉を紡ぎ始める。
マスターハンド「君が走り出した方向を見たときは、さすがに肝を冷やしたよ。私が倒したはずの
白い手は、感情のない動きでゆるやかに宙を漂った。
マスターハンド「君に気を取られている間に、ここまで戦況を立て直されるとはな…やはり、侮るべきではなかった…」
まるで盤上の駒を見下ろすかのように、その視線がマリオを捉える。
マスターハンド「ところで、君の持っているその星だが――一連の行動を見る限り、力を共有できるようだな?」
マリオ「…!!」
言葉を失ったマリオの沈黙が、何よりの肯定となる。
マスターハンド「図星か。つまり、強化された力で私を一斉に叩く算段だったわけだな?」
白い指先がわずかに動き、その仕草だけで甘い算段を嘲笑した。
マスターハンド「君たちの思惑通りに事が運べば、私にとっては分が悪い。そんな展開を、黙って見逃すほど甘くはない。」
その声には、焦りではなく余裕が滲んでいた。
マスターハンド「それにしても、ここまで私を出し抜けるとはな……やはり、君たちをこの世界へ連れてきた判断は正しかったようだ。」
その声音には、わずかながらも偽りのない称賛が滲んでいた。
マスターハンド「終いだ」
次の瞬間、指先から巨大な銃弾が撃ち出され、一直線にマリオへと迫った。
逃げ場のない現実が、静かに迫ってくる。
マリオ(ここで……終わりなのか……? 僕たちは、これからの人生を一生この世界に捧げなければならないのか……?!)
マリオ「マンマ・ミーア……」
銃弾はすでに、マリオのすぐ傍まで迫っていた。
諦めたように視線を落とし、肩をすくめた――その刹那。
マリオの皮膚をかすめる、やんわりとした風圧。
そして、次の瞬間。
マリオ「なんだ!? 風が……どんどん強くなってるぞ!」
背後から、明らかに異様な突風が吹きつけてくる。
その風の中に、次第に“温度のある何か”が混じり始めた。
マリオ「な、なんだ!? 僕の体に……なにかまとわりついているのか……!?」
腹の周囲に、人間の腕のような感触が絡みつく。
荒れ狂う風のなかで、まるで台風の目の中心に守られているかのように、マリオは突風の渦の中に留め置かれていた。
風の勢いはみるみる増していき――
やがて、その渦が巨大な銃弾を正面から弾き飛ばした。
マスターハンド「……!!」
荒れ狂っていた風が収まり、張り詰めた静寂が戦場を包み込む。
その中心で、マリオを抱き留めていた“何者か”の姿が、ゆっくりと輪郭を現していく。
緑の衣。
風に揺れる、とんがった帽子。
そして、外気を鋭く捉える――尖った耳。
マリオは息を呑み、その存在を確かめるように視線を向ける。
マリオ「君は…!!」
その正体は、風の名残とともに静かに姿を現した――リンクだった。
その直後、マリオは周囲へと視線を巡らせ、その場の変化に気づく。
視界の端に、見覚えのある人影が次々と映り込んだ。
リンクを先頭に、仲間たちの姿がその場へ集結していた。
その光景に、マスターハンドの余裕は明確に揺らいだ。
追い詰めていたはずの状況が、逆転の兆しを帯び始める。
マスターハンド「馬鹿な……君たちは、先ほど私が移動させたはず!」
リンク「フロルの風っていう魔法さ!残念だったな! マーキングした場所なら、俺も瞬間移動できるんだよ!」
マスターハンド「!!」
直後、マスターハンドは即座に人差し指と親指を合わせようとした。
だが、それよりも早く――
マリオとルイージは、すでにスターに触れていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パチンッ。
その乾いた音が黒い空間に響き渡ったことを、マスターハンドは確かに認識していた。
そして、標的のいる方向を鋭く見据える。
その瞬間――
この漆黒の空間を満たすほどの強烈な光が、前方から一気に差し込んだ。
マスターハンドの視界を、完全に塗り潰す。
マスターハンド「…っ! 目くらましのつもりか!」
マスターハンドは怯むことなく、光の中心へ向けて指を伸ばし、銃弾を撃ち放つ。
銃弾は凄まじい速度で光へ突き進み、真正面から着弾した。
それと同時に――
空間を満たしていた光が、徐々に収まっていく。
マスターハンド(……光源を破壊できたのか?)
そう思いながら、マスターハンドは光のあった方向へと視線を戻した。
そこに立っていたのは――
虹色の光を全身にまとった、戦士たちだった。
マスターハンド(なんだ……あの姿は……。あの星の力は、身体能力を強化するものではないのか……?
……いや、それよりも……奴らから感じる、この圧倒的な重圧はなんだ……!!)
マスターハンドは、スーパースターが生み出す“絶対的な無敵の力”を、本能的に察知していた。
そして、次の瞬間――
目の前にいた集団の中から、マリオとルイージの姿が一瞬にして掻き消えた。
マスターハンド「何!? 消えっ……!!」
その直後。
マスターハンドの手のひらに、二つの強烈な衝撃が叩き込まれた。
マスターハンド「ぐあああああ!!」
その巨体は大きく体勢を崩し、凄まじい衝撃に、巨体ごと強引に吹き飛ばされながら、地面に二度、激しくバウンドする。
そのまま地面を擦りながら、大きく後方へと弾き飛ばされた。
やがて、ゆっくりと前方へ視線を戻す。
そこには――
虹色の光を全身にまとった、マリオとルイージが立っていた。
マリオ「みんな! 一気に畳みかけるぞ!!」
マリオがそう叫んだ瞬間――
戦士たちの集団は、一斉に姿を掻き消した。
マスターハンド(まずい……来る!)
マスターハンドは手首の付け根から、ジェット機のマフラーのような噴射口を生やし、その場からの離脱を図ろうとした。
だが――
カービィ「にがさないぞ! がんばりすいこみぃー!!」
カービィが体をぎゅっと引き絞り、全力で息を吸い込む。
次の瞬間、マスターハンドの身体はその場に縫い止められたかのように静止し、少しずつカービィの方へと引き寄せられていく。
マスターハンド(まずい! この方法では逃げられない!)
マスターハンドも必死に踏ん張るが――その次の瞬間。
リンク「であっ!!」
マスターハンド「ぐぅ!」
鋭い一閃。
リンクの剣が、マフラー部分を正確に切断した。
推進力を失ったマスターハンドは大きく体勢を崩す。
切り落とされたマフラーは、そのままカービィの口へと吸い込まれていき、飲み込まれた瞬間、吸引はぴたりと止んだ。
そしてカービィは、くるりと軽やかに一回転し、片手を高く掲げて宣言する。
カービィ「コピー能力! ジェット!!」
次の瞬間、カービィの頭に、どこかおもちゃのようなジェット機型の帽子が出現した。
直後、帽子から轟々と唸るエンジン音が鳴り響く。
そして――次の瞬間。
カービィ「ジェットダッシュ!!」
マスターハンドですら視認できない速度で、ピンクの弾丸が迫る。
カービィ「ジェットキック!!」
マスターハンド「……っ!!」
その一撃は凄まじかった。
スターによる無敵の力、ジェット機の圧倒的な速度、そしてカービィの小さな足――
それらが重なり合い、貫通力すら伴う強烈な威力となって炸裂する。
マスターハンドの身体は、容赦なく吹き飛ばされた。
マスターハンド(まずい……まずい! 体勢を立て直さねば!)
必死に空中で姿勢を制御しようとするが、突如として身体が減速し始めた。
さらに、時間が経つにつれて――
今度は、何者かに引き寄せられている感覚がはっきりと伝わってくる。
ヨッシー「ふかまえまひたよ!(捕まえましたよ!)」
気がついたときには、マスターハンドの身体はヨッシーの長い舌の強い粘着力で貼り付けられていた。
強烈な力で引き戻される身体を、必死に踏ん張ってその場に留まろうとする。
だが――
前方から、速く、そして驚くほど静かな足音が近づいてきた。
次の瞬間、フォックスが跳躍し、一直線にマスターハンドへと迫る。
フォックス「はあああ!!」
鋭く突き出された足が、マスターハンドを正面から捉えた。
狐の強烈な蹴りを受け、マスターハンドの身体は大きくのけぞる。
その衝撃と同時に、引き絞られていたヨッシーの舌が一気に力を解放する。
二つの力が重なり合い――
マスターハンドは凄まじい勢いで後方へと吹き飛ばされた。
マスターハンドの身体は地面に激突し、何度も跳ね返りながら転がる。
やがて地面を擦り、火花を散らしながら、ようやく減速していった。
マスターハンド「はぁ……はぁ……」
疲弊した身体を引きずるように、マスターハンドはゆっくりと体勢を立て直し、低く呟いた。
マスターハンド「図に……乗るなよ……!!」
その心に浮かんだのは、紛れもない焦りだった。
本来ならば、先ほどまでの戦いで戦士たちを再起不能にすることもできた。
だが、マスターハンドの目的は殲滅ではない。
戦力の補強――そして、心を屈服させること。
しかし、今はどうだ。
相手を服従させるどころか、自分自身が追い詰められている。
マスターハンドは拳を強く握り締め、前方に立つマリオとルイージへと、猛獣のような速度と迫力で突進した。
そして、二人に真正面から激突する。
――だが。
マスターハンド「な、なに……?」
拳を受け止めたマリオとルイージは、微動だにしなかった。
マリオ「ルイージ、行くぞ!」
ルイージ「うん、兄さん!」
次の瞬間――
マスターハンドの中指が、二人の手にしっかりと掴まれていた。
息つく暇もなく、マリオとルイージは自分たちの身体を軸に、
まるでハンマー投げのように、マスターハンドの身体をぐんぐんと振り回し始める。
必死に抵抗するが、あまりにも強烈な遠心力に抗うことはできない。
掴まれた中指と回転の力に引かれ、身体が引き延ばされていく感覚が襲う。
そして――
その引き裂かれるような苦痛から解放された瞬間。
激しい浮遊感が、マスターハンドを包み込んだ。
マスターハンドは必死に身体へ抵抗をかけ、その場に踏みとどまろうとした。
だが、吹き飛ばされた先には――
ドンキー「待ってたぜ、この野郎!!」
CF「リベンジと行こうか!」
腕を大きく振りかぶったドンキーコングと、キャプテン・ファルコンが並び立っていた。
マスターハンド(ま、まずい……! 体を……体を固めなければ!!)
マスターハンドは咄嗟に身体を丸め、全身を覆うように透明なバリアを生成する。
そして、為す術もなく、二人のもとへと飛ばされていく。
今やその身体は硬化し、マリオブラザーズによって高速で投げ込まれた“弾丸”そのもの。
しかし、迫り来る巨体に怯む者は、そこにはいなかった。
ドンキー「おらあああ!!」
CF「ファルコン……パンチッ!!」
二つの拳が、爆発するような轟音とともに叩き込まれた。
衝突の瞬間、空間が歪み、
マスターハンドが生み出したバリアは悲鳴を上げる間もなく粉砕される。
逃げ場を失った拳は、そのまま手のひらの奥深くまでめり込んだ。
叩き込まれた衝撃は、空中にあった巨体をさらに押し出し、
制御も抵抗も許さぬまま、マスターハンドの身体を
弾丸のように後方へと打ち出した。
次の瞬間、戦場の景色が激しく横に流れ、
そのまま巨体は低空を保ったまま、地面へと引きずり込まれる。
地面を削るように身体を擦りつけながら跳ね、
何度もバウンドを繰り返して、ようやく減速していった。
ゆっくりと身体を起こしながら、マスターハンドは考えた。
マスターハンド(まずい……こちらが攻撃する暇がない……!
それどころか、私のありとあらゆる行動が、奴らの前では無益になっている……!)
そして――
マスターハンド(このままでは……負ける……!)
脳裏に、これまで考えたことすらなかった言葉が浮かぶ。
――敗北。
先ほどまで取るに足らなかった存在が、今や“無敵”と呼ぶほかない力を手にしている。
マスターハンド(なんとか……なんとか活路を見いださねば……!)
そう思い、前を見上げた瞬間――
虹色に輝いていた戦士たちの身体が、唐突に点滅し始めた。
そして、次の瞬間。
戦士たちは表情を変え、最後の力を振り絞るように一斉に襲いかかってきた。
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自身の身体が点滅し始めたのを確認し、ルイージが叫ぶ。
ルイージ「兄さん! スターの効果が、もう切れそうだよ!」
その言葉に、全員が一瞬だけ耳を澄ませる。
緊張が走り、マリオが声を張り上げた。
マリオ「時間がない! 今のうちに奴を倒しに行くぞ!!」
戦士たちは、最後の力を振り絞り、マスターハンドへと突撃する。
――だが、サムスだけは動かなかった。
サムスはスターが発動してから現在に至るまで、
モーフボールのまま丸まっていた。
だが、それは決して戦機を見誤った結果ではない。
勝利のための準備だった。
彼女の奥の手――
最終兵器、スーパーボム。
それは周囲の生命体を一瞬で蒸発させるほどのエネルギーを持つ。
味方がいる状況では、決して使用できない切り札だ。
だが――
スターを使えば無敵になる。
その話を聞いたとき、サムスは半信半疑だった。
しかしスターの力を分け与えられ、
全身を駆け巡るエネルギーを実感した瞬間、
疑念は完全に消え去った。
かつてベビーから授かった
マザーブレインの生体エネルギーを、
遥かに凌駕する圧倒的な力。
スターの力を受けた者は、間違いなく無敵。
ならば――スーパーボムすら耐えられる。
準備は整った。
サムスはモーフボールを解除し、
点滅する自身の身体を静かに見下ろす。
サムス「そろそろか……だが、スーパーボムが収まるまでは持ちそうだな」
スキャンバイザーでマスターハンドの状態を確認する。
サムス「……なんだ。もう満身創痍じゃないか」
この相手に決定打を与えるには、
スーパーボムしかないと思っていた。
だが、スターの力を得た仲間たちの猛攻により、
マスターハンドはすでに限界へと追い込まれていた。
――勝てる。
サムスは、そう確信した。
パチンッ。
サムス「何……!!」
次の瞬間、スーパーボムは
はるか上空へと移動されていた。
サムス「くそっ……!!」
マスターハンド「はぁ……はぁ……
それだろ? 君が必死に狙っていたのは……
だが、させないぞ……
君たちのその力は長くは続かないのだろう?
それさえ耐えきれば、私の勝ちだ……!」
マリオ達の身体の点滅が、さらに速くなる。
カービィ「させないぞ!! ばくれつジャンプ!!」
おもちゃのようなジェット機から、凄まじい爆発が噴き上がる。
その反動を推進力に変え、カービィは一直線に――
上空に移動されたスーパーボムへ向かって突き進んだ。
マスターハンド「いかせるか!!」
マスターハンドもまた、手首にジェット機のマフラーを生成し、
カービィを迎え撃つように一直線に加速する。
ピカチュウ「ピッ……!」
その異変を察したピカチュウは、地面を蹴って走り出し、
上空にいるマスターハンドの真下へと滑り込む。
そして――
頬から微細な火花を散らしながら、全身に電気をまとった。
ピカチュウ「ピカァアアアアヂュウウウウ!!」
次の瞬間、上空に黒雲が急速に生成される。
マスターハンド「なんだ!? これは……!?」
刹那――
黒雲を走る無数の稲妻が、一点へと収束した。
ドゴンッ!!
マスターハンド「ぐあああああ!!!」
雷速の一撃。
ピカチュウの『かみなり』が直撃し、
マスターハンドの身体は、叩き落とされるように再び地面へと落下した。
視界が激しく回転し、
制御を失った巨体は空気を切り裂きながら加速していく。
雷の余熱が身体を灼き、
重力だけが無慈悲に、地面へと引き寄せていった。
轟音とともに、地面がえぐれ、衝撃が走る。
それでもなお、マスターハンドはしぶとく上空を睨みつける。
マスターハンド「……! まだだ!!」
負けじと、中指と親指を近づける。
スーパーボムを、さらに移動させようとした――その瞬間。
視界の正面に、ネスが現れた。
ネスは右手を突き出し、叫ぶ。
ネス「PKフラッシュ
眩い光が炸裂し、ネスはそのままマスターハンドの視界を横切った。
マスターハンドの身体が、完全に硬直する。
マスターハンド(まずい……! 体が……動かない……!)
完全な拘束。
身動きの取れない、絶体絶命の状態。
――だが、それはマリオたちも同じだった。
マリオ「まずい!! もうスターの力が消える!!」
その叫びが、地上から上空へと響き渡る。
一方――
上空では、カービィがスーパーボムへと着実に近づいていた。
カービィ「よーし! もうすこしだ!!」
だが次の瞬間、
スーパーボムは、カービィの目前をすり抜けていく。
カービィ「あ! どうしよう! ぼく、とびすぎちゃった!!」
そのとき――
地上から、マリオの声が聞こえた。
その声を受けた瞬間、
カービィの瞳が、ぐっと引き締まった。
ジェット機の帽子から、再び轟々とエンジン音が鳴り響く。
カービィ「ジェット……ダッシュ!!」
次の瞬間、
カービィは信じられない速度で、地面へ向かって急降下した。
刹那――
視界の先に、スーパーボムを捉える。
カービィは迷いなく、帽子を脱ぎ捨てた。
カービィ「コピー解除!!
うおおおおおおお!!
がんばりすいこみいいいい!!」
強烈な吸引。
スーパーボムは、抵抗する間もなくカービィの口の中へと収まった。
そしてカービィは勝利へと一直線に進む。
はるか上空から、
ジェットダッシュの推進力をまとったまま、
カービィは信じがたい速度で降下していた。
空気は悲鳴を上げ、
白い軌跡が空に刻まれていく。
その速度は、もはや制御の域を超え、
止めることなど不可能な弾道となっていた。
カービィは、地面へ向かって突き刺さるように迫っていく。
ヨッシー「カービィさん!!」
その声に引き寄せられるように、
すべての視線が上空へと集まる。
そこには――
激しく点滅する虹色の光に包まれながら、
その輪郭の内側で、白い靄のような光が滲んでいた。
それは落下しながら、徐々に大きくなっていく。
リンク「なんだ……あの白い光は!?」
サムス「あれは……まさか……!」
その声に、リンクはサムスを振り向いた。
なぜなら、その声には――確かな希望が宿っていたからだ。
サムス「スーパーボムが、爆発する直前の光だ!」
この世界に集められた、十二人の戦士たち。
巨大な亀の魔物に攫われた姫を、幾度となく救い出してきた兄弟。
ジャングル中のバナナを強奪したワニの軍団を、力でねじ伏せたゴリラ。
幼い心のまま、大人の肉体で国を救った勇者。
破壊と略奪を繰り返す凶悪な集団を、単身で壊滅させた賞金稼ぎ。
親元から離れてしまった赤子を、千里先の町まで届け抜いた、心優しきスーパードラゴン。
太陽と月の争いを食い止め、星の危機を幾度も救ってきた勇敢な若者。
宇宙を駆け巡り、世界征服を企む科学者の野望を打ち砕いた遊撃隊のリーダー。
高みを目指し、相棒と共に冒険と切磋琢磨を重ねてきた黄色のネズミ。
宇宙からの侵略者に、幼いながらも勇敢に立ち向かった野球少年。
レーサー業をしながら、正体を隠して悪党を狙い続ける、熱き心を持つ男。
そして――
歌えば、どんな相手であろうとも確実に眠らせてしまう、ピンクの風船。
突如としてこの世界へ集められ、戸惑いながらも手を取り合い、あいてがどれほど強大であろうとも力を合わせてを手を取り合った。
単身でも世界を救ってきた英雄達を思い通りにしようだなんて不可能な話だったのだ。
マスターハンドの敗因は、ただ一つ。
――【英雄たちを“なめた”こと】――
そして、カービィは高らかに、力の限り叫ぶ。
カービィ「コピー能力……!!
クラァァァァァァシュッ!!!!」
次の瞬間――
終点は、ただ一つ。
青く、圧倒的に強烈な光とエネルギーが、
すべてを包み込んだ。
次回戦士の帰還完結です。