良かったらあとがきも読んで欲しいです!
激しい閃光が弾けた。
同時に、荒れ狂う風がマリオの体を叩きつける。
思わず目をつむった瞬間、耳をつんざく轟音が響き、床も、壁も、空気そのものまでもが震えた。
何が起きているのか、もうわからなかった。
ただ、まぶたの裏に焼きつくほどの白い光だけが、視界を支配していた。
やがて、吹き荒れていた風が弱まっていく。
耳鳴りの奥で、轟音の名残がゆっくりと遠ざかっていった。
マリオは、恐る恐る目を開けた。
だが、すぐには何も見えなかった。
目を開いているはずなのに、世界は白く滲んだままだった。
輪郭は溶け、色は混ざり、景色は形を失っている。
マリオは一度、瞬きをした。
白い光が、少しだけ薄れる。
もう一度、瞬きをする。
揺れていた視界が、ようやく落ち着きはじめた。
ぼやけていた影が、少しずつ輪郭を取り戻していく。
最初に見えたのは、赤だった。
次に、金。
そして、黒。
滲んでいた色が分かれ、目の前の景色がはっきりしていく。
壁には、独特な模様が描かれた豪奢なタペストリーが飾られている。
壁面には複数のディスプレイが並び、部屋の奥には巨大な玉座があった。
その光景を見た瞬間、マリオは息をのんだ。
見覚えがある。
間違いない。
ここは、さっきまで自分たちがいた部屋だ。
マリオ「こ、これって!まさか!」
ルイージ「倒せた!倒せたんだ!!」
二人は顔を見合わせた。
信じられない。
けれど、目の前の景色が、その答えをはっきりと示していた。
戻ってきたのだ。
あの戦いを終えて。
つまり、勝ったのだ。
マリオとルイージは、勢いよく抱き合った。
マリオ、ルイージ「「いやっふー!!」」
張りつめていた緊張が、一気にほどけていく。
体を満たしていた恐怖も痛みも、その瞬間だけは遠くへ消えていた。
マリオ「ほらなルイージ!僕たち二人でいれば、何とかなるだろ?!」
マリオの声には、抑えきれない高揚がにじんでいた。
胸の奥では、勝利の熱がまだ脈打っている。
本当にやり遂げたのだと、体が遅れて理解しはじめていた。
そのとき、マリオはふと、自分の手を見下ろした。
先ほどまで全身を包んでいた虹色の輝きは、もうどこにもなかった。
あの戦いの中で、皆を守り続けてくれたスターの力。
その光は、役目を終え、静かに消えていた。
けれど、マリオとルイージの目から輝きが消えることはなかった。
カービィ「はぁ……疲れた……」
その場に、カービィがぱたりと倒れ込む。
すぐにサムスが歩み寄った。
サムス「カービィ、さっきの力は何だ?」
カービィ「さっきのはコピー能力クラッシュ。つよいばくだんをコピーしたら、つよいばくはつをおこせるんだけど……いっかいばくはつすると、すっごくつかれちゃうんだよ……」
リンク「その便利な能力にも制限があるんだな」
カービィの説明を聞き、張りつめていた空気がわずかに緩んだ。
戦いは終わった。
少なくとも、今この場で襲いかかってくる敵の姿はない。
誰もがようやく、周囲を見渡す余裕を取り戻しはじめていた。
その中で、フォックスは玉座を見つめていた。
何かを確かめるように、しばらくその場から目を離さない。
やがて、彼は思い直したように視線を外した。
独特な模様が描かれたタペストリー。
壁面に並ぶ複数のディスプレイ。
薄暗い天井と、部屋の隅に落ちた影。
フォックスの視線は、部屋の中を静かに巡っていく。
気にかかっていたのは、メアリのことだった。
そして、少し離れた場所に立つ彼女の姿を見つける。
メアリは何も言わず、ただ静かにたたずんでいた。
フォックス「メアリさ――」
フォックスが声をかけようとした、その瞬間だった。
ドンキーコングが、彼を押しのけるように前へ出た。
その足取りには、抑えようのない怒りがにじんでいた。
ドンキー「おい!よくも俺達をだましやがったな!!」
メアリは答えなかった。
言い返すことも、逃げることもせず、ただその場に立ち尽くしている。
ドンキー「なんとか言いやがれよ!この野郎!!」
フォックス「落ち着いてください!」
フォックスが割って入ろうとする。
だが、ドンキーコングは振り向きざまに怒鳴った。
ドンキー「なんだよ!何を落ち着けっていうんだよ!こいつのせいであんな目にあったんだぞ!どけ!!」
フォックス「メアリさんは!俺達の協力者です!」
その言葉に、ドンキーコングの眉がつり上がる。
ドンキー「おいおい、おつむが悪いのか?なんでそいつのことを信じられるんだよ!!」
フォックスは言い返さなかった。
代わりに、玉座に向かって静かに腕を上げる。
ドンキー「あの椅子がどうした……なっ!」
吐き捨てるように言いかけたドンキーコングの声が、途中で止まった。
そこには、先ほどまで確かにあった十一か所の窪みが、跡形もなく消えていた。
招待状をはめ込むためのその跡は、もうどこにも残っていなかった。
ドンキー「おまえ……招待状を全部埋めたのか……?」
怒りで荒れていた声が、わずかに揺れる。
メアリ「あなた達を元の世界に帰すと言ったのに、マスターとの戦いには参加できなかった……」
メアリはわずかに目を伏せた。
その声には、悔しさにも似た静かな重さがあった。
けれど、すぐに顔を上げる。
メアリ「やれることはやらなきゃでしょ?」
メアリの声は静かだった。
責めるでもなく、言い訳をするでもない。
ただ、自分にできることをやった。
そう告げているだけだった。
ドンキー「……」
ドンキーコングは、何も言い返せなかった。
メアリは戦いには加われなかった。
それでも、自分たちを元の世界へ帰すために、彼女は彼女の場所で動いてくれたのだ。
ドンキー「……わるかったな」
メアリは何も言わなかった。
ただ、静かに目を伏せる。
その場に、短い沈黙が落ちた。
ドンキーコングの怒りは、完全に消えたわけではない。
それでも、彼の中でメアリを見る目は、確かに変わっていた。
やがて、皆の視線が自然と玉座へ向かう。
招待状はすべて埋められた。
それはつまり、元の世界へ帰るための道が開いたということでもある。
ピカチュウ「……ピカ……」
小さな声が、静けさの中にこぼれた。
ピカチュウは不安そうに耳を揺らしながら、ゆっくりと玉座へ歩き出す。
小さな足が、一歩ずつ床を踏みしめていく。
やがて玉座の前まで来ると、背もたれに円形の光が浮かび上がった。
光の向こうに映し出されたのは、懐かしい家だった。
そしてその前に、一人の少年が立っていた。
ピカチュウ「ピ……ピカピ……?」
震えるような小さな声が、光へ届いた。
その声に、少年がはっと顔を上げる。
サトシ「ピカチュウ!!」
その名を呼んだ瞬間、光の向こうにいた少年が誰なのか、はっきりとわかった。
サトシだった。
それはまさしくピカチュウの帰るべき場所だった。
サトシ「おまえ、今までどこに行ってたんだよ!ほんと心配したんだぞー!」
サトシの表情が、一瞬でほどけた。
驚き。
安堵。
そして、こらえきれない喜び。
そのすべてが、彼の顔にあふれていた。
今すぐ飛び込みたい。
その胸に駆け寄って、いつものように肩へ飛び乗りたい。
けれど、その前に、きちんと別れを告げたい相手がいた。
ピカチュウは振り返った。
その視線が、少し離れた場所にいるネスを捉える。
ネスは穏やかな表情で、ピカチュウを見つめていた。
ネス「よかったね、友達に会えて」
ピカチュウ「……!ピカチュウ……!」
その声には、はっきりと感謝の言葉が込められていた。
ありがとう、と。
そしてピカチュウは、深々と頭を下げた。
ネスはその言葉と仕草を胸で受け止めるように、静かにうなずいた。
そしてピカチュウは、再び玉座へ向き直る。
ピカチュウ「ピカピー!!!」
ピカチュウは、光の中へ飛び込んだ。
小さな体が円形の光に包まれ、みるみるうちに吸い込まれていく。
次の瞬間、ピカチュウの姿はそこから消えていた。
元の世界へ、帰ったのだ。
満ち足りたように消えていったその背中を、ネスは静かに見つめていた。
友達のもとへ帰っていくピカチュウを見ているうちに、ネスの胸には、どうしても思い浮かべてしまう名前があった。
ネス(結局、僕はポーキーと会うことはできなかったな……)
ピカチュウは、大切な友達のもとへ帰っていった。
けれど、自分は違う。
ネスにも、叶えたかった再会があったが、そのために戦っていたはずの願いを途中で手放した。
無理やりこの世界へ連れてこられ、相棒に会いたいと願っていたピカチュウを、放っておけなかったからだ。
後悔しているわけではない。
それでも、友達と再会できたピカチュウの喜びがまぶしいほど、ネスの胸には小さな影が落ちていく。
ファルコン「帰れるというのに、浮かない顔をしているな」
ファルコンの声に、ネスは少しだけ目を伏せた。
しばらく迷うように沈黙したあと、ネスは静かに口を開く。
ネス「……僕がこの世界に来た理由は、行方がわからなくなった友達に会いたかったからなんです……今、何をしているのか。そもそも、生きているのかどうかもわからない。でも、この大会に参加して、優勝して、願いを叶えれば……とにかく、そいつに会えるかもしれないと思ったんです」
ネスの声は、喜びの余韻が残る部屋の中で、静かに落ちていった。
口にしたことで、胸の奥にしまっていた寂しさまで、外へにじみ出てしまった。
その沈んだ声に、自分で気づいたのだろう。
ネスは、はっとしたように顔を上げた。
せっかく帰れるのだ。
ピカチュウも、大切な友達のもとへ戻ることができた。
それなのに、自分だけが沈んだ顔をしていてはいけない。
そう思ったネスは、小さく頭を振った。
胸に残る影を振り払うようにして、わざと明るく笑ってみせる。
ネス「まぁ……!案外、平気な顔して元気にやってる気もしますけどね」
その明るさの奥に、寂しさが残っていることを、ネス自身もわかっていた。
けれど今は、元の世界へ帰れることを喜ぼう。
そう心に決めて、ネスは顔を上げた。
ネスは玉座へ向かって歩き出す。
数歩分の距離を、ゆっくりと進んでいく。
近づくほどに、円形の光は穏やかに揺らめいて見えた。
やがて玉座の前まで来ると、ネスはその寸前で足を止めた。
玉座の背もたれに浮かんでいた円形の光が、ゆっくりと揺らいだ。
映し出された景色が切り替わっていく。
そこに現れたのは、どこかノスタルジックな雰囲気の町並みと、その中に建つ一軒の家だった。
ネス(ああ……オネットだ……僕の家だ……)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
そこには、ネスが帰るべき日常があった。
懐かしい町並みも、自分の家も、すべてが変わらずそこにある。
その光景を見て、ネスはようやく思えた。
帰れるのだ、と。
ネスは振り返り、一人ひとりの姿を胸に刻むように、皆の顔を見渡した。
そして、静かに口を開く。
ネス「それじゃあ、僕も帰ります。皆さんと戦えたこの日を、僕は忘れません」
言葉を結び、ネスが玉座へ向き直ろうとした、そのときだった。
フォックス「ネス君!」
呼び止められ、ネスは振り返った。
声の主であるフォックスへ視線を向けると、彼はどこか穏やかな目でネスを見ていた。
そして、静かに口を開く。
フォックス「その行方知れずの友達は、ふとしたときに君の前に現れるかもしれない」
ネス「……え?」
フォックス「たとえば、君の命が危ないときとか」
あまりに唐突な言葉だった。
ネスは一瞬、何を言われたのかわからなかった。
励まそうとしてくれているのは伝わる。
けれど、その言葉はあまりにも突拍子がなくて、素直に受け取るには少し難しかった。
ネス「僕の命の危機に……?まさか。あいつは、むしろ僕の命の危機を作ったような奴ですよ。そんなこと、起こるわけ……」
フォックス「いや……少なくとも、君みたいな子にそこまで心配されているなら、その友達は、そこまで悪いやつじゃないはずさ」
まっすぐな言葉だった。
だからこそ、ネスの胸に少しだけ引っかかった。
気休めのようにも聞こえる。
けれど、ただの気休めにしては、フォックスの目はあまりにも真剣だった。
ネスは思わず、少しだけ眉を寄せて聞き返していた。
ネス「何の根拠があって……?」
フォックス「経験則さ!」
ネス「……!」
その言葉に、ネスは息をのんだ。
フォックスの表情は、少しもふざけていなかった。
その目を見て、ネスはなんとなく察しがついた。
ネス(そうか……この人も、もしかすると似たような経験をしたのか……)
会えない時間の苦しさ。
それでも、どこかで信じてしまう気持ち。
そして、思いもよらない瞬間に、その相手が目の前に現れるかもしれないという希望。
フォックスはきっと、自分の経験を重ねながら、その小さな希望を渡そうとしてくれていた。
そう思うと、ネスの口元に、ふっと笑みが浮かんだ。
ネス「ありがとうございます」
ネスは、少しだけ晴れた表情で言った。
ネス「その経験、信じさせてもらいます」
フォックスは何も言わず、親指を立てた。
ネスは小さくうなずき返した。
ネス「それじゃあ皆さん、お元気で」
ネスはもう一度、皆に向かって軽く頭を下げた。
そして、迷いを振り切るように円形の光へ飛び込んだ。
光がネスの体を包み込む。
その輪郭が、円形の光の中でゆっくりとほどけていく。
そして、ネスが完全に光に溶けた数秒後、揺らいでいた光は、しばらく余韻を残すようにまたたいたあと、静かに収まった。
残された者たちが玉座を見つめる中、ファルコンが一歩前へ出た。
ファルコン「さて、時間がないみたいだから俺も帰らせてもらうぞ」
ファルコンが玉座へ近づく。
すると、背もたれに浮かんでいた円形の光が揺らぎ、映し出される景色が切り替わった。
そこに現れたのは、広い倉庫だった。
静まり返った空間の中央に、青い鳥の翼を思わせるホバー式のマシンが一台、置かれている。
サムス「お前……F-ZEROレーサーだったのか?」
ファルコン「そうだが?」
サムスは、わずかに目を細めた。
サムス「てっきり、
ファルコンは、その言葉ににやりと笑った。
ファルコン「いや、俺は
そう言って、光の向こうに映るマシンへ視線を向ける。
ファルコン「こいつはいわゆる資金源さ」
サムス「わからないな」
サムスの言葉は否定のようにも感じられるが、責めているというより、ただ純粋な疑問として問いかけているようだった。
サムス「F-ZEROレーサーなら、それなりの報酬は得られるはずだ。わざわざ命の危険が伴い、収入も安定しない
ファルコンは笑みを絶やさず答えた。
ファルコン「組織に所属している
そこで、ファルコンはわずかに声を低くした。
ファルコン「そういう場所ほど、悪党どもは狙いやがる。誰も助けに来ないとわかっているからな、俺は、そういう連中が許せない」
短い沈黙が落ちる。
サムスは何も言わず、ただファルコンを見ていた。
ファルコン「……さっきは悪かったな。お前を、銀河連邦直属のハンターだなんて呼んで」
ファルコンは、ほんの少しだけ表情を引き締めた。
ファルコン「お前は、金に目がくらむようなハンターじゃない」
そして、真っ直ぐにサムスを見据える。
ファルコン「正真正銘、銀河の守り手だ」
サムス「気にするな」
サムスの声は静かだった。
サムス「お前のような人間が、私と同じ世界にいると知れてよかった」
ファルコンは一瞬だけ目を丸くした。
それから、いつものように口角を上げる。
ファルコン「そいつは光栄だ」
そう言って彼は玉座に手をかけた、このまま円形の光に飛び込むつもりなのか、少し前のめりの姿勢になったかと思うと、途端に動きを止め口を開いた。
ファルコン「ああ、それと!」
急に張り上げられた声に、サムスがわずかに眉を上げた。
ファルコン「勘違いしてほしくないんだが、俺はF-ZEROにも命を懸けてる!ただの金稼ぎじゃない。あれは実際に命を落とす危険だってある競技だ。だが、その分、観ている奴らに最高の熱狂を届けられる」
ファルコンは、光の向こうに映るマシンを誇らしげに見た。
ファルコン「俺にとっては、そっちも本気の戦場さ」
そして、玉座にかけていた手を離し、もう一度サムスへ振り返る。
ファルコン「時間があったら、F-ZEROも見に来てくれよ!サムス・アラン!」
サムス「ああ……わかった」
ファルコンは満足そうに笑った。
ファルコンは再び玉座に手をかけた。
その反動を使い、勢いよく身を翻す。
ファルコン「See you again!!」
明るい声だけを残して、ファルコンの体が円形の光に包まれた。
次の瞬間、彼の姿は光の中へ吸い込まれていく。
広い倉庫も、青いマシンも、光の向こうへ消えていった。
やがて、光が収まった。
玉座の前に静けさが戻る。
その静けさの中、次に歩み出たのはフォックスだった。
フォックス「じゃあ、俺も帰りますね」
フォックスが玉座の前に立つと、背もたれに浮かぶ円形の光が揺らぎ、映し出される景色が切り替わった。
そこに現れたのは、宇宙船の内部だった。
計器の並ぶ操縦席。
無機質な壁。
そして、その中に立つ二つの影。
一人は、二足で立つ兎の中年。
もう一人は、蛙の男だった。
フォックス「あ、スリッピー、ペッピー!」
最初に反応したのは、蛙の男だった。
スリッピー「え、あ……!フォックス……!フォックス!!」
聞き慣れた声に気づいた瞬間、スリッピーの顔がぱっと明るくなる。
それに気づいた兎の中年も、椅子を倒しそうな勢いで身を乗り出していた。
ペッピー「なんじゃと……フォックス!お前さん、今までどこに行っておったんだ!!」
続いて、兎の中年が声を荒げる。
その怒鳴り声には、怒りよりも先に、隠しきれない安堵がにじんでいた。
スリッピー「ファルコ!ファルコ!フォックスが見つかったよー!!」
スリッピーは大慌てで振り返ると、誰かを呼びに行くようにその場を離れた。
その背中を見送りながら、フォックスは周囲を見回した。
見慣れた仲間の姿が、まだ一人足りない。
フォックス「ファルコは?」
ペッピー「あいつは今、席を外しとる」
ペッピーはため息まじりに肩をすくめた。
ペッピー「まったく……お前さんが無事だと知ったら、あいつも騒がしくなるぞ」
フォックス「迷惑かけてごめん」
フォックスは少し照れくさそうに笑った。
けれど、その表情はどこか晴れやかだった。
帰る場所がある。
自分を待ってくれている仲間がいる。
その事実が、胸の奥に静かに染み込んでいく。
フォックスは、ゆっくりと振り返った。
フォックス「それじゃあ皆さん、またどこかで」
別れの言葉は短かった。
それでも、その声には確かな感謝がこもっていた。
次の瞬間、円形の光がフォックスの体を包み込む。
宇宙船の景色が近づき、スリッピーとペッピーの声が光の向こうから響く。
そして、フォックスの姿は静かに吸い込まれていった。
光が消えると、残された者たちの間に、ほんの一瞬だけ静けさが戻った。
だが、その静けさを長く保つつもりなどないと言わんばかりに、ドンキーコングがずかずかと前へ出た。
そして、次の瞬間だった。
カービィ、ヨッシー「「わっ!」」
ドンキーコングは、カービィとヨッシーをまとめて強く抱きしめた。
ドンキー「俺が元の世界に戻っても、お前らとは食べ物の絆で結ばれているからな!!」
力任せの抱擁だった。
だが、その声は少しだけ震えていた。
目元も、いつもよりわずかに潤んでいる。
それに気づいたカービィとヨッシーも、つられるように目を潤ませた。
カービィ「うん!!ぼく、ドンキーのことぜったいにわすれないから!!」
ヨッシー「離れていても、私たちは永遠の友です!!」
ドンキーコングは、二人をもう一度ぎゅっと抱きしめた。
それから名残惜しそうに腕を離す。
ドンキー「じゃあな!!また会えたら、一緒にバナナを食おうぜ!!」
ドンキーコングは大きく手を振ると、そのまま玉座へ向かって走り出した。
その背中に、カービィとヨッシーも手を振る。
カービィ「またねー!!」
ヨッシー「また会いましょう!!」
ドンキーコングは振り返らないまま、片手を高く掲げて応えた。
そして、そのまま円形の光の中へ飛び込んだ。
豪快な足音も、大きな背中も、次の瞬間には光の向こうへ吸い込まれていく。
最後に残ったのは、彼らしい明るい別れの余韻だけだった。
そうして、仲間たちは次々と元の世界へ戻っていった。
玉座の光が揺らぐたびに、誰かの帰る場所が映し出される。
そして一人、また一人と、その光の向こうへ消えていく。
その光景を見つめながら、マリオは静かに息を吐いた。
マリオ(終わったんだな……この戦いも)
胸の奥に広がっていたのは、深い安堵だった。
絶望的な状況の中で、それでも自分たちは勝った。
元の世界へ帰る道も開かれた。
仲間たちは、それぞれの帰るべき場所へ戻っていく。
それを見届けるたびに、マリオは少しずつ勝利を実感していた。
マリオ(今回の戦いに勝てたのも……お前のおかげだ、ルイージ)
マリオは、隣にいる弟へ視線を向けた。
ルイージは、いつものようにそこにいた。
頼りなく見えて、誰よりも大事な場面で自分を支えてくれる弟。
マリオ(やっぱり、僕たち二人でいれば何だってできる。これからも、ずっと)
そのとき、メアリが静かに声をかけた。
メアリ「さぁ、みんな次々と元の世界に帰っているわ。次は誰が帰るの?」
さっきまで途切れることなく続いていた帰還の流れが、いつの間にか止まっていた。
その沈黙を促すような声だった。
マリオ「あぁ、なら次は僕たちが行くよ」
マリオはそう言って、ルイージの手を取った。
マリオ「ほら、行くぞルイージ」
そして、玉座へ向かって歩き出す。
マリオの足だけが、半歩先へ出る。
けれど、ルイージの体はそこから動かなかった。
マリオ「ルイージ……?どうしたんだ?早く帰るぞ?」
ルイージは、神妙な面持ちでマリオを見つめていた。
ルイージ「ねぇ兄さん……本当に僕たち、元の世界に帰っていいのかな?」
マリオ「……どういうことだ?」
その言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
自分たちは、元の世界へ帰るために戦ってきた。
どれだけ傷ついても、どれだけ苦しくても、そのためだけに進んできたはずだった。
それなのに、ルイージの言葉は、ようやくたどり着いたはずの答えを揺るがしていた。
ルイージ「僕……知っちゃったんだ。この世界の人たちが、どれだけ苦しんでいるのか」
ルイージは、迷いながらも言葉を続けた。
ルイージ「あの手の人がやっていることは、確かにひどいよ。でも……この世界の人たちを思っている気持ちまで、嘘だったとは思えないんだ」
マリオ「ルイージ……」
マリオは、弟の顔を見つめた。
そこにあったのは、いつもの気弱な迷いではなかった。
怖がりながらも、自分で考え、自分で選ぼうとしている目だった。
ルイージ「元の世界に帰れなくなったとしても、ここに残って、みんなを助けた方がいいんじゃないかって。僕たちなら、この世界の人たちも救えるかもしれないって……そう思ったんだ!」
マリオ「そ、そんなこと、あの手とメアリや、この世界の兵士たちに任せればいいだろ?」
マリオの声が、わずかに上ずる。
それは反論というより、すがるような言葉だった。
このままルイージが本気で残ると言い出したら。
その考えが、マリオの胸を強く締めつけていた。
ルイージ「でも、兄さんは困っている人がいたら、誰だって助けてきたじゃないか」
マリオ「そりゃ気の毒だとは思う!だけど、今回はわけが違う!」
マリオはルイージの手を握る力を強めた。
マリオ「今ここに残ったら、僕たちは元の世界に帰れなくなるんだぞ!」
ルイージ「でも……僕は、助けを求めている人たちを見捨てちゃいけないと思う」
マリオ「そんな……」
胸の奥が、冷たく沈んでいく。
マリオは助けを求めるように、ヨッシーの方を見た。
マリオ「なぁ……ヨッシー君からも何とか言ってくれよ……」
だが、ヨッシーは静かに目を閉じていた。
その表情は、迷っているようには見えなかった。
むしろ、すでに答えを決めている者の顔だった。
そして、ゆっくりと口を開く。
ヨッシー「迷い……晴れました」
マリオ「……?何を言って……」
ヨッシー「私も、この世界に残ります」
その言葉を聞いた瞬間、マリオは息をのんだ。
頼ろうとした相手まで、自分とは違う答えを選んでいた。
マリオ「君は……何を言ってるんだ……?なんで、この世界に……?」
理解したくなかった。
ルイージだけではない。
ヨッシーまでもが、この世界に残ると言っている。
その事実を受け止める前に、追い打ちをかけるように、リンクが静かに言った。
リンク「やっぱり、ヨッシーも同じ気持ちだったんだな」
カービィ「そうだよね!みんな、すごいこまってたし、たすけないと!」
その場にいる何人もの仲間が、同じ方向を見ていた。
マリオだけが、そこに取り残されたような気がした。
マリオ「ど、どうしてだ……!」
マリオの声が震える。
マリオ「元の世界に帰れなくなるのに、どうして!?」
ヨッシー「マリオさん……私たちは、同じ闘技場で戦っているときに遭遇したんです。その闇の軍団に」
リンク「俺たちは、この世界の人たちが襲われるところを実際に目の当たりにした。そして、助けた」
カービィ「みんな、すごくこわがってた。ずっとこわいおもいをするのって、かわいそうだし……たすけてって、いわれたんだ」
マリオ「そんな……」
もう、言い返す言葉が見つからなかった。
誰かを助けたい。
それは、マリオ自身がずっと大切にしてきた思いでもある。
だからこそ、否定できない。
けれど、うなずくこともできなかった。
困っている人を助けることと、元の世界へ帰ること。
どちらも大切なはずなのに、今はその二つが真っ向からぶつかっている。
マリオは、悲しそうな顔でルイージを見つめる。
ルイージ「……兄さん。一緒に、この世界を救おう」
ルイージは手を差し出した。
それは、兄を責めるための手ではなかった。
一緒に来てほしいと願う、ルイージなりの精一杯の手だった。
けれど、マリオは首を横に振った。
マリオ「無理だ……」
その声は、かすれていた。
マリオ「僕は、元の世界が大事だ……」
ルイージ「そっか……」
ルイージの目に、悲しみが浮かぶ。
それでも彼は、すぐに表情を整えた。
兄を責めるつもりはない。
そう伝えるように、少しだけ声色を明るくする。
ルイージ「兄さんだけでも帰りなよ。お母さんやピーチ姫が心配しちゃうでしょ?」
マリオは何も言えなかった。
差し出されたはずの手が、今度は自分を送り出すためのものに変わってしまった。
その事実が、胸に重くのしかかる。
そのときだった。
サムス「いや、お前たちは全員、元の世界に帰れ」
マリオ「!!」
ルイージ「!!」
ヨッシー「!!」
カービィ「!!」
リンク「!!」
思わぬ助け舟だった。
マリオは、一瞬だけ息を忘れた。
自分では言えなかった言葉を、サムスが代わりに口にしたのだ。
しかし、その言葉はすぐに受け入れられるものではなかった。
リンク「帰れって……そんな……じゃあ、この世界の人達はどうするんだ?」
リンクの問いは、当然だった。
ルイージたちを帰らせる。
それ自体は、マリオにとって救いになる言葉だった。
だが、その先にこの世界をどうするのか。
その答えがなければ、誰も納得できるはずがない。
そして、サムスが示した答えは、さらに場を揺らすものだった。
サムス「私だけが残ってすべて終わらせる」
その場の空気が、さらに張りつめた。
それでは、ルイージたちが言っていたことと何が違うのか。
自分だけが残り、誰かを救おうとする。
その一点だけを見れば、サムスの言葉もまた同じに聞こえた。
だからこそ、ヨッシーはすぐに声を上げた。
ヨッシー「サムスさんを一人にはしません!だから私達も残って……」
サムス「それはダメだ。私だけが残る」
ヨッシーの言葉を、サムスは静かに遮った。
カービィ「そんな……!なんでサムスだけのこるの?!」
サムスは一度、短く息を置いた。
短い沈黙のあと、彼女は静かに告げる。
サムス「お前たちには帰る場所があるからだ」
ルイージ、リンク、ヨッシー、カービィ「「「「!!!!」」」」
その答えは、四人の胸をまっすぐに貫くものだった。
帰る場所。
それは、彼らが今まで当たり前のように持っていたものだった。
あまりにも身近で、失う日が来るなど考えもしなかった居場所。
サムス「お前たちは優しい。実際、その優しさで多くの人を救ってきたこともわかる……だが、お前達と当然のように会って、会話して、他愛のない日常を無意識で待ち続けてる身近な人物はどう思う?その決断を面と向かって宣言してみたら、どんな反応をすると思う?」
サムスの視線が、静かにマリオへ向いた。
サムス「いま私たちの目の前の男がそれだ」
サムスはマリオを指した。
サムス「その男は笑っているか?弟と他愛のない日常を取り戻すために奮闘したその男は、お前たちの決断を聞いて、どんな顔をしている?」
四人は、言われるままにマリオを見た。
マリオは立ち尽くしていた。
握りしめた手には、強く力がこもっている。
肩はわずかにこわばり、口元は固く引き結ばれていた。
眉は苦しげに寄り、赤い帽子のつばの下で、目元がかすかに揺れていた。
誰がどう見ても、焦りと悲しみに押し潰されそうな顔だった。
その顔を見た四人は、何も言えなかった。
自分たちは、この世界の人々を助けたいと思った。
その気持ちは、決して嘘ではない。
けれど、その選択が、身近な大切な人をこんな顔にさせている。
その事実を突きつけられ、四人の表情に戸惑いが広がっていく。
そこへ、サムスの声が静かに落ちた。
サムス「見ず知らずの人間を助ける前に、大切な身近な人間を傷つけるな」
それは、ルイージたちの善意を否定する言葉ではなかった。
助けたいと願う心は間違っていない。
だが、そのために、自分を待つ者たちを置き去りにしていい理由にはならない。
サムスの言葉は、その現実を突きつけるものだった。
四人は黙り込んだ。
それでも、ひとつの大きな疑問が残る。
その疑問を最初に口にしたのは、リンクだった。
リンク「じゃあ……サムスはどうなのさ!君もこの世界に残るなら同じことだろ!」
リンクの声には、反発だけでなく戸惑いも混じっていた。
自分たちを帰そうとするサムスが、自分だけ残ると言う。
その矛盾を、見過ごすことはできなかった。
サムスは、リンクを見た。
その表情は変わらない。
けれど、返ってきた言葉は、誰も予想していないものだった。
サムス「私の帰る場所と身近な人は、すべて蹂躙された」
リンク「えっ……」
空気が止まった。
サムスの声は、少しも揺れていなかった。
怒りをぶつけるでもなく、悲しみを訴えるでもない。
ただ、自分が通ってきた過去を、事実としてそこに置くような声だった。
サムス「友も、両親も殺され、故郷は破壊され、子供のように愛したものも殺された」
カービィ「そんな……ひどい……」
カービィの声が、小さく震えた。
誰も、すぐには言葉を返せなかった。
サムスが背負ってきたものの重さを、簡単な慰めで受け止めることなどできなかった。
サムス「だから、私には帰る場所も、待っている人もいない」
その言葉は、あまりにも静かだった。
だからこそ、誰の胸にも重く沈んだ。
しばらくの沈黙のあと、メアリがサムスへ問いかけた。
メアリ「本当に……いいの……?」
メアリは恐る恐るサムスに聞いた。
その問いには、感謝だけではなく、ためらいもあった。
自分たちの世界のために、彼女だけを残していいのか。
その重さを、メアリもわかっていた。
だが、サムスは迷わず口を開いた。
サムス「私は、私のような子供を生み出さないように戦い守る。それが私の使命だ」
その眼には、揺るぎない決意が宿っていた。
頼まれたから仕方なく残るのではない。
憐れみだけで、この世界に踏みとどまるのでもない。
奪われる痛みを知っているからこそ、同じ悲劇を止めるために残る。
サムス自身が、そう選んだのだ。
メアリ「わかった……ありがとう」
メアリは静かに微笑んだ。
メアリ「サムスのいう通りよ。私たちの争いに、あなた達を巻き込むわけにはいかない。早く帰りなさい」
メアリの言葉に、ルイージたちは何も言えなかった。
短い沈黙が落ちる。
その中で、最初に動いたのはカービィだった。
カービィはしばらく黙ったまま、小さな手を胸の前でぎゅっと握っていた。
迷いが完全に消えたわけではない。
けれど、サムスとメアリの言葉は、たしかに届いていた。
カービィは顔を上げ、ゆっくりと玉座へ歩き出した。
カービィが近づくと、背もたれに浮かぶ円形の光が揺らいだ。
映し出されたのは、のどかな緑に包まれた景色だった。
やわらかな風が吹いているような、穏やかな場所に、オレンジ色の一頭身の小さな生き物がいた。
カービィ「ワドルディ……」
その声に気づいたのか、ワドルディがはっと振り返る。
ワドルディ「カービィ……?カービィなの……!!」
次の瞬間、ワドルディの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
ワドルディ「今までどこ行ってたの……!ほんと、心配したんだから!」
泣きながらも、ワドルディは必死に笑おうとしていた。
ワドルディ「ほら!カービィの好きなスイーツ、いっぱい作ってきたから!一緒にたべよ!」
カービィ「ワドルディ……!」
カービィは、それ以上多くを語らなかった。
けれど、その小さな体が一度だけ震えた。
自分が何を置いていこうとしていたのか。
誰を悲しませようとしていたのか。
そのことに、ようやく気づいたのだ。
カービィは振り返り、サムスの方を見た。
カービィ「サムス、ありがとう。ぼく、ともだちをきずつけるところだった」
サムスは何も言わず、静かにうなずいた。
カービィは、ぱっと表情を明るくした。
涙の気配を振り払うように、いつもの笑顔を浮かべる。
カービィ「わーい!ぼくスイーツだいすき!!なにつくってきたのー?!」
そう言って、カービィは円形の光へ飛び込んだ。
小さな体が光に包まれ、ワドルディの待つ緑の景色へ吸い込まれていく。
やがて光が収まると、玉座の前にはもうカービィの姿はなかった。
次に歩き出したのは、リンクだった。
リンクが玉座に近づくと、円形の光がまた静かに形を変える。
そこに映し出されたのは、白い空間だった。
他の者たちの帰る場所とは違う。
生活の匂いも、誰かの待つ気配もない。
ただ、どこまでも静かで、神秘的な白が広がっていた。
リンク(そうか……俺はまだ、過去に戻ってる最中だったのか)
リンクがそう思った直後、白い空間にかすかな揺らぎが生まれた。
何もなかったはずの場所に、淡い光がいくつも浮かび上がっていく。
その光はやがて形を持ち、いくつもの光景へと変わっていった。
そこに映し出されたのは、時を超えて繰り広げられた、ガノンドロフとの死闘。
王家の間でひざまずく、野心を秘めたガノンドロフ。
苦悩に顔を曇らせる幼いゼルダ。
リンク「……!」
リンクは息をのんだ。
それは、リンクの記憶であり、これから向き合わなければならない現実でもあった。
リンク(このままだと……同じ歴史を繰り返す)
胸の奥で、焦りにも似た感覚が強くなる。
リンク(それに、俺が元の世界に戻らないと……この先ガノンドロフを打つ者がいなくなってしまう……!!)
リンク「俺が、過去を変えないと……」
その声には、もう迷いはなかった。
リンクは決意を宿した目で、サムスを見た。
リンク「ありがとう。俺は危うく、自分の使命を見失うところだった」
リンクは、自分の胸元で左手を強く握った。
その手の甲に、三つの三角が薄く浮かび上がる。
そして左下に宿る勇気のトライフォースが、強く光を放った。
リンクはその光を胸に刻むように、一度だけ目を閉じる。
リンク「俺は……トライフォースに選ばれた勇者だ。務めは、最後まで果たす」
そして次の瞬間、円形の光へ向かって力強く飛び込んだ。
白い空間がリンクを包み込み、その姿を静かに飲み込んでいく。
やがて、光が消えた。
リンクの姿が完全に消えたあと、玉座の前に短い静けさが戻る。
そして最後に、円形の空間へ映し出されたのは、キノコ王国だった。
見慣れた空。
見慣れた大地。
マリオたちが帰るべき世界。
その景色を前に、ルイージは黙って立ち尽くしていた。
ルイージ「……」
マリオ「行くぞ」
マリオの声は、やわらかかった。
ルイージ「兄さん……」
マリオ「帰ろう……僕らの世界へ」
ヨッシー「行きましょう、ルイージさん」
マリオとヨッシーが、ルイージへ手を差し伸べる。
ルイージは、その手を見つめた。
まだ胸の中には迷いが残っている。
この世界を助けたいという思いも、完全に消えたわけではない。
それでも、差し出された手の温かさが、ルイージをこちら側へ引き戻していた。
ルイージ「本当に……いいのかな……」
メアリ「いいのよ」
メアリは静かに言った。
メアリ「あなた達の世界にも、困った人たちはたくさんいるでしょ?その人たちを助けなさい。この世界は、私たちが何とかする」
サムス「あとは任せろ」
短い言葉だった。
けれど、その一言だけで十分だった。
そこには、誰かに背負わせるためではない、自分で背負うと決めた者の強さがあった。
ルイージ「わかった……この世界の事よろしくね」
その声には、もう迷いはなかった。
メアリの言葉も、サムスの覚悟も、ルイージは確かに受け取っていた。
この世界を守る人たちがいる。
ならば、自分たちは、自分たちの世界へ帰る。
そう決めたルイージは、マリオとヨッシーの手を取った。
ルイージ「さっきはごめんね、わがまま言って」
マリオ「気にするな。むしろ、ルイージにわがまま言われて新鮮な気分だったよ」
マリオの声には、ようやくいつもの調子が戻っていた。
ヨッシー「私も、わがままを言ってすみませんね」
マリオ「君はわがままだらけだから、改めて自重してほしいね」
ヨッシー「手厳しいですね!」
三人の間に、小さな笑いが生まれた。
さっきまで張りつめていた空気が、ほんの少しだけほどける。
別れの前に、いつものやり取りを取り戻せた。
それだけで、マリオの胸は軽くなった。
マリオ「それじゃあ!」
ルイージ「ありがとうね!」
ヨッシー「さよならです!!」
三人は一斉に、円形の光へ飛び込んだ。
キノコ王国の景色が大きく揺らぎ、三人の姿を包み込む。
そして次の瞬間、マリオ、ルイージ、ヨッシーの姿は、光の向こうへ消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
晴れ渡る空の下、キノコ王国には穏やかな時間が流れていた。
キノコの頭をした国民たちは、広場や通りのあちこちで楽しげに語り合っている。
最近流行りのフード。
近々開かれるイベント。
新しく建てられた大きなマンション。
交わされる会話は、どれも他愛のないものばかりだった。
けれど、その何気なさこそが、この国の平和そのものだった。
笑い声が弾む。
子どもたちが走り回る。
店先では、焼きたての菓子の甘い匂いが風に乗って流れていく。
誰もが、今日もいつも通りの一日が続くのだと思っていた。
そのときだった。
ふいに、広場に大きな影が落ちた。
晴天のさなかに現れるはずのない、重く黒い影。
キノピオたちは、恐る恐る空を見上げた。
そこにいたのは、巨大な飛行船。
そして、その船首に堂々と立つ、見慣れた大魔王の姿だった。
クッパ「ガッハハハハッ!キノコ王国よ!震えあがれ!今日こそこの国を破壊して、ピーチ姫を吾輩のお嫁さんにするのだ!!」
キノピオ「ぎゃあああああ!!クッパだ!!」
平和だった広場は、一瞬で悲鳴に包まれた。
キノピオたちは慌てて逃げ惑い、店の扉は次々と閉じられていく。
さっきまで楽しげに交わされていた会話は、恐怖の叫びに塗りつぶされていた。
クッパはその様子を見下ろし、さらに声高らかに叫んだ。
クッパ「さあ、クッパ軍団よ!キノコ王国を襲うのだ!!」
クッパが指さした先には、ピーチ城があった。
その号令に応えるように、飛行船からクリボーやノコノコたちが次々と飛び出してくる。
悪い笑みを浮かべた軍団は、一直線に城へ向かって進軍していった。
キノピオ「だ、誰か助けて!!」
その叫びが、空へ吸い込まれた次の瞬間。
クリボー「ぐああああ!!」
ノコノコ「うわあああ!!」
軍団の先頭が、まとめて吹き飛んだ。
前列から次々と崩れていくクッパ軍団。
まるで見えない嵐が走り抜けたかのように、敵の列が一瞬で乱れていく。
クッパ「なんだ?!どうした、お前たち!」
クッパは目を見開いた。
軍団の中を、何かが跳ねている。
小さな影が、クリボーの頭を踏み、ノコノコの甲羅を蹴り、軽やかに前へ進んでいく。
ひとつではない。
二つの影が、息を合わせるように戦場を駆け抜けていた。
クッパ「吾輩に盾突くとは!また貴様らか!!」
クッパが目を凝らした、その瞬間。
その影が大きく跳び上がった。
青い空を背に、赤い帽子がひるがえる。
青いオーバーオール。
白い手袋。
そして、あの忌々しいほど見慣れた口ひげ。
マリオ「イッツミー、マリオ!!」
続けて、緑の帽子をかぶった弟が軽やかに着地する。
ルイージ「&ルイージ!!」
そこにいたのは、キノコ王国のヒーローだった。
キノピオ「や、やった!マリオブラザーズが来たぞ!!」
キノピオたちの声が、歓声へ変わっていく。
恐怖に塗りつぶされていた広場に、希望の色が戻ってきた。
クッパ「しつこいぞ、この忌々しいひげどもめ!!」
マリオ「しつこいのはどっちだよ。毎度毎度キノコ王国を攻めてきてさ」
マリオは帽子のつばを指で軽く押さえ、クッパを見上げた。
マリオ「ピーチ姫のことは、いい加減諦めたらどうなんだ?」
クッパ「こんのー!!ピーチ姫とちょっといい感じだからって、図に乗りおってー!!ノコノコども!キラーを放てー!!」
クッパの咆哮が、晴れ渡る空を震わせた。
号令を受けたノコノコたちが、一斉に黒い大砲を構える。
砲口が、まっすぐマリオたちへ向けられた。
次の瞬間、火薬の炸裂音が響く。
目のついた黒い弾丸――キラーが、白い煙を引きながら撃ち出された。
唸りを上げて迫る黒い影。
いくつものキラーが空気を裂き、マリオたちめがけて一直線に飛んでくる。
マリオが身構えた、そのときだった。
マリオたちの前へ、ひとつの影が滑り込んだ。
地面を削るように着地したその影から、長い舌が勢いよく伸びる。
先頭のキラーが絡め取られた。
そのまま影は体をひねり、捕らえたキラーを大きく振り回す。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
迫っていた他のキラーたちが、次々と弾き飛ばされ、空中で爆ぜていった。
爆煙が広がる。
熱を帯びた風が、マリオたちの帽子と服をはためかせた。
やがて煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、頼もしい恐竜の姿だった。
ヨッシー「ヨッシー!!参上!!」
キノピオたちの歓声が一斉に上がる。
クッパ「ぐぬぬ!!おのれ!!もういい!吾輩が直々に貴様らをなぶってやる!!」
怒りに顔をゆがめたクッパが、飛行船の縁へ足をかけた。
そして、巨体を空へ投げ出す。
落下する影が、みるみる大きくなる。
次の瞬間、クッパの巨体が地面へ叩きつけられた。
轟音。
大地にひびが走り、砂煙が一気に吹き上がる。
凄まじい風圧が、マリオたちへ押し寄せた。
クッパ「今日こそ貴様らの終わりだ、マリオブラザーズ!」
低く響く声が、砂煙の向こうから迫ってくる。
だが、マリオは一歩も退かなかった。
隣にはルイージがいる。
そして、ヨッシーもいる。
それだけで十分だった。
マリオ「今回も無駄さ!なんたって僕らは……」
ルイージ「二人そろえば無敵のマリオブラザーズだからねっ!」
マリオ「ルイージ……!」
ルイージは少し照れくさそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、マリオの胸の奥に残っていた不安が、すっとほどけていく。
ヨッシー「ちょっと!私もいることを忘れないでくださいよ!」
ルイージ「ごめんごめんっ」
マリオ「ふふっ……!」
こらえきれず、マリオは笑った。
マリオ「あーはっははははは!!!」
それは、勝利の笑いではなかった。
帰ってこられたこと。
またルイージと並んで立てること。
ヨッシーと一緒に、この騒がしくも大切な日常へ戻ってこられたこと。
そのすべてが、たまらなく嬉しかった。
マリオは目元に浮かんだ涙を、手の甲でぬぐった。
そして、真剣な表情で前を向く。
マリオ「よし……いくぞ、ルイージ!ヨッシー!」
ルイージ「うん!」
ヨッシー「やってやりますよ!!」
マリオは拳を握りしめた。
長い戦いは終わった。
けれど、彼らの日常は終わらない。
困っている人がいれば助ける。
大切な誰かが泣いていれば、手を伸ばす。
たとえ相手が何度でも立ちはだかる大魔王だとしても、決して逃げない。
それが、マリオたちの世界だ。
それが、彼らの帰ってきた日常だ。
マリオ「Here We Go!!!」
三人は、まばゆい空の下、クッパへ向かって飛びかかっていった。
遂に最終回を迎えることができました!
話数を重なるにつれてどんどん投稿期間が延びていき「これ完結まで書けるか…?」と不安な気持ちでいっぱいでした。
僕は思い付きで書き始めて途中で何を書けばいいのかわからなくなるので今まで書いてきた二次創作はすべてエタりましたが、今回は無事に完結まで書けて本当にうれしかったです!
ただ、完結とはいってもこのシリーズはまだまだ続けるつもりです。
あらすじにも書いてある通りDXやforのストーリーも書くつもりなので、投稿自体はまだ続きます!
ただまだDXの原作のゲームがすべて終わっておりません。
一応結末は決まっているのですがどういう話の流れにするのかはまだ決まっていないのでDX編の投稿はまだ先になりそうです。
ですが、実はプロローグだけはもうできてます!
ただ今は終わりの余韻に浸って欲しいので、
DX編プロローグは5/28の20:00に投稿させて頂きます。
最後になりますが、この長い投稿期間の中最後まで読んで下さい本当にありがとうございました!
良かったら、感想と評価、お気に入りやしおりなどいろいろお願いします!
では最後今のDXのゲームの進捗だけおいてしばらく離れさせて頂きますね!
それではありがとうございました!!
ルイージマンション
F-ZERO FOR GAMEBOOY ADVANCE
アイスクライマー
ファイアーエムブレム烈火の剣(現在プレイ中)
ファイアアタック
アニポケ
金銀編78話~金銀編108話
映画
セレビィ
戦士の帰還MVP
-
マリオ
-
ドンキーコング
-
リンク
-
サムス
-
ヨッシー
-
カービィ
-
フォックス
-
ピカチュウ
-
ルイージ
-
ネス
-
キャプテン・ファルコン
-
プリン