ドンキー「そら、避けてみろ!」
ドンキーコングはマリオに向かって駆け出すと、走る勢いをそのままに体を丸め、前方へ転がった。まるで坂を転がり落ちる大岩のように、その巨体が一直線にマリオへと迫る。
マリオは冷静に間合いを見計らい、相手の接近に合わせて地面を蹴って跳び上がった。そして、真下を通るドンキーコングの分厚い背中めがけて、思い切り足を踏み下ろした。
その衝撃でドンキーコングの丸めていた体がほどけ、うつ伏せに地面へ叩きつけられた。それでも勢いは止まらず、砂埃を巻き上げながら地面を滑っていく。地面に体を擦るにつれ、その速度は徐々に落ちていった。
マリオはこの好機を逃さない。着地するやいなや、減速していくドンキーコングを追って駆け出した。背後から追いつくと、両手でその右足首をがっしりと掴んだ。
マリオは両腕と両脚を突っ張り、かかとを地面に突き立てた。巨体に引きずられながらも、かかとで地面に二本の溝を刻み、その勢いを抑えていく。
ドンキー「おい、何するつもりだ!放せこの野郎!」
ドンキーコングは左足をばたつかせ、マリオを蹴ろうとした。しかし、うつ伏せのまま繰り出す蹴りは空を切るばかりだった。
やがて滑る勢いが尽き、マリオのかかとが地面を削る音も途絶えた。ドンキーコングの巨体は、うつ伏せのまま完全に止まった。
マリオは右足首を掴んだまま腰をひねり、足を踏み替えて回転し始めた。ドンキーコングの巨体が地面を擦りながら弧を描き、回転が速まるにつれて宙へ浮き上がっていく。
やがてその体は斜め上へせり上がり、唸りを上げて空気を切り裂いた。
ドンキー「お前、どこにそんな力が」
マリオ「人を見た目で判断しないことだね!そーれっ!」
マリオが手を離した瞬間、ドンキーコングの巨体は、砲弾さながらの勢いで斜め上へと一直線に飛んでいった。空気を切り裂き、瞬く間に闘技場を横切る。直後、轟音とともに壁へ激突し、砕けた石片が四方へ飛び散った。
その巨体は壁際をずるりと滑り落ち、鈍い音を立てて地面へ崩れ落ちた。足元に砂埃が舞い上がる。
マリオは体勢を整え、油断なくドンキーコングの様子をうかがった。
マリオ「やったか…?」
その願いも虚しく、ドンキーコングはすっと立ち上がり、体に付着した砂を払い落とす。
ドンキー「ふん、これがお前の全力か?」
余裕たっぷりの表情に、マリオは思わず苦笑いを浮かべた。
マリオ(今の攻撃で倒せるとは思っていなかったが…いくら何でも平然としすぎだろ)
マリオは内心の焦りを押し隠し、挑むように口の端をつり上げた。せめて、その余裕を崩してやろうと声を張り上げる。
マリオ「まさか!こんなの序の口さ!それとも何だ?実は今ので怖気づいちゃったのか?!いいからかかってこい、DK!」
ドンキー「煽ってんのか…?後悔すんなよ!!」
ドンキーコングは額に青筋を浮かべ、再び地面を蹴って駆け出した。マリオとの距離を詰めながら、次の一撃に向けて加速していく。
今度も同じ攻撃とは限らない。マリオは迫る巨体から目を離さず、攻撃に移る瞬間を見極めようと、その動きを追い続けた。
するとドンキーコングは体を低く沈め、足を突き出してスライディングを仕掛けてきた。やはり、先ほどと同じ攻撃ではない。マリオは足元へ迫る一撃を見据えた。
マリオ(攻撃する部位を変えただけか…ならまたジャンプだ!)
マリオは相手の姿勢の低さと突進の速さを見極め、地面を蹴って跳び上がった。狙いを定め、ドンキーコングの体めがけて足を踏み下ろす。
だが、その瞬間、ドンキーコングはにやりと笑った。すかさず伸びてきた手に、マリオの右足首ががっしりと掴まれる。
マリオ「え?」
ドンキー「バーカッ!同じ手を食らうわけねぇだろ!」
マリオは容赦なく地面に叩きつけられ、そのまま滑る勢いに引かれて、地面を少し引きずられた。
やがて勢いが収まると、ドンキーコングはマリオの右足首を掴んだまま立ち上がった。まるで生け捕りにした獣を見るような、悪意に満ちた目つきでマリオを見下ろす。
マリオは身をよじって逃れようとしたが、足首を掴む手はびくともせず、圧倒的な腕力の前では抵抗もむなしかった。
マリオはドンキーコングの顔をゆっくり見つめて、引きつった笑みを浮かべた。
マリオ「はは…良かったら手加減してくれたり…?」
次の瞬間、顔面に激しい衝撃が走る。思わず額に触れると、粘り気のある温かい液体が流れていた。血だ。
ドンキー「どうだ?手加減してやったぜ」
マリオ「これが手加減…?冗談じゃないよ…」
ドンキー「まだまだだ!そらっ!」
次の瞬間、岩のような拳が絶え間なく降り注ぐ。
マリオは文字通りのサンドバッグと化していた。殴られるたびに体がのけぞり、重力に従って再び拳に向かっていく。
次第に殴られていなくても痛みが走るようになる。
意識が朦朧とし始める。なんとか反撃しようと右腕を振り上げるが、空を切るだけ。抵抗しようとする体の捻りも、容赦なく封じられていく。
マリオ(くそ……どうすればいいんだ……)
掴まれてから、まだ数秒も経っていない。それなのに、もはや抵抗するすべが見つからなかった。絶え間なく全身を襲う激痛に、考えさえまとまらない。逃れる手立てを見いだせないまま、マリオは絶望に呑まれかけていた。
その時、顔に何かが触れた。それは、オレンジと赤に縁取られた、目の付いた花だった。
マリオ(これは…ファイアフラワー?)
それは、幾度となくマリオの冒険を助けてきたパワーアップアイテム。ルイージから渡され、オーバーオールにしまっておいたものだった。逆さに吊り上げられ、絶え間なく打撃を浴びたことで、服の中からずり落ちてきたのだろう。
だが、これを使えば切り抜けられるというわけではない。なぜならパワーアップアイテムにはある明確な弱点が存在する。それは一度攻撃を受けると能力が消え去ってしまうことだ。こうも一方的に殴られ続けていては、反撃に移る前に能力を失うだけだ。
逆転の手段は、すぐそばにある。それなのに、使う隙がない。
このままでは、勝ち目はなかった。
その時、
ドンキーコング「いよーしっ!!とどめだ!!」
ドンキーコングはとどめを刺すかのように、マリオを空中に放り投げた。
足首を掴む手が離れ、マリオの体は勢いよく上空へ放り出された。地面がみるみる遠ざかり、腹の底がふわりと浮くような感覚が走った。
マリオはこの瞬間を逃さず、すかさずファイアフラワーを両手ですりつぶした。
拳が迫る。だが、それが命中する寸前、ドンキーコングの目が大きく見開かれた。先ほどまでの余裕に満ちた笑みが消え、顔が恐怖に引きつっていく。
ボッ!と音を立てて、炎がドンキーコングの顔を一瞬覆った。その勢いのまま、炎は頭の後ろへと吹き抜けた。
ドンキー「うわぁぁ、熱ちいいいっ!」
振りかぶりかけた腕が止まり、その手が慌てて顔へと向かった。ドンキーコングは顔に付いた炎を必死に払い落とす。ようやく炎が収まると、息を整え、それからゆっくりとマリオへ視線を移した。
その姿を見た途端、ドンキーコングは眉をひそめ、いぶかしげに目を細めた。
ドンキー「お前、何をしやがった……」
ファイアフラワーの力で、マリオの姿は変化していた。赤かった帽子は白く、青かったオーバーオールは炎を思わせる鮮やかな赤に染まっていた。
マリオ「簡単な話さ。パワーアップしたんだよ!」
マリオは右の掌を上に向け、見せつけるように掲げた。ボッと音が弾け、そこには握り拳ほどの
マリオ「見せてあげるよ、ファイアマリオの力を!」
マリオは
ドンキーコングは飛んできた
ドンキー「気取りやがって!調子にのんなよ!」
言い放つと同時に地面を蹴り、マリオめがけて突進してきた。
マリオ「突っ込むしか能がないのかい!?」
ドンキー「うるせぇ!また掴んでボコボコにしてやるぜ!」
突進してくるドンキーコングを前に、マリオは深くしゃがみ込んだ。勢いよく地面を蹴り、自分の身長の三倍もの高さまで跳び上がると、その真下を巨体が通り過ぎた。
マリオ「どうだ!これじゃ手は届かないだろ!」
ドンキー「バーカッ!お前が降りてくる瞬間を狙えばいいだろ!」
ドンキーコングが振り向いた瞬間、マリオはファイアボールを握った右手を思い切り振り下ろした。放たれた炎が、ドンキーコングの頭に直撃した。
ドンキー「あっちぇぇ!」
マリオ「降りるまでは、こっちが有利ってことさ!」
ドンキーコングが両手で頭を押さえる間に、マリオはその背後へ軽やかに着地した。
ドンキー「なら、降りてきたらこっちのもんだ!!」
ドンキーコングは勢いよく振り返り、マリオへ距離を詰めようとした。
マリオ「近づかせないよ!やっ!ふぅっ!」
マリオはあえて一歩前へ踏み込み、ドンキーコングの右足めがけて炎を投げた。距離が縮まったことで、放たれた直後には足元へ迫っていた。
ドンキーコングは慌てて右足を大きく持ち上げた。その隙にマリオはもう一発、左の脇腹を狙って投げつけた。
狙いどおりに炎が命中し、ドンキーコングの体がくの字に折れた。脇腹を押さえた手にも、マリオは容赦なく次の一発を浴びせた。
たまらず引っ込められた手を見て、マリオはさらに攻撃を速めた。相手が体勢を立て直す暇も与えず、両手から次々と炎を放った。
顔、首、両脇、背中、後頭部、足。ドンキーコングが身をよじるたび、露わになった箇所へ炎を叩き込んだ。体のあちこちに火傷が広がり、ドンキーコングは反撃もできず、悲鳴を上げてもがくばかりだった。
マリオ(流れは僕に来たぞ!)
優位に立てたことを喜びながらも、マリオは慎重だった。いくら炎が強力でも、ドンキーコングなら根性で耐え、間合いを詰めてくる可能性があった。再び捕まれば、せっかく掴んだ優位を失ってしまう。
マリオは攻撃の手を緩めず、少しずつ後退した。
反撃のリスクが軽減される一方で、距離が開くにつれ、放った炎がドンキーコングに届くまでの時間は長くなった。やがて、ドンキーコングはマリオをにらみながら、飛んでくるファイアボールをかわし始めた。
初めは数発かわしては炎を浴びるという繰り返しだったが、マリオが距離を取るにつれて軌道を見切られ、ついにはすべて避けられるようになっていた。
ドンキー「そんなに離れたら、当たるもんも当たんねぇだろ……?近づいてこいよ。動けなくしてやるからよ……」
その目からは先ほどまでの焦りが消え、獲物を狙うようにじっとマリオを見据えていた。マリオは笑い返した。
マリオ「やなこった。またサンドバッグになるのはごめんだからね。君がへとへとになるまで狙い続ければ、いつかは当たるさ。そもそも、君には離れて攻撃することができないから近づくしかないんだろ?かといって、近づけばまた炎を浴びる。つまり、僕の勝ちだ!」
マリオは勝利を確信していた。もう、あの腕力を恐れる必要はない。この距離を保って炎を投げ続ければ、いずれは決着がつく。そう考えると、自然と口元が緩んだ。
先ほどまで散々こちらを見下していた相手は、今どんな顔をしているのだろう。悔しさに歯を食いしばっているのか、それとも打つ手を失って途方に暮れているのか。マリオは笑みを隠そうともせず、ドンキーコングの顔をうかがった。
しかし、ドンキーコングに動揺する様子はなかった。それどころか、口元に嘲るような笑みが浮かんでいた。
期待を裏切るその表情に、マリオの笑みが薄れた。
マリオ(なんだ…?僕は何か見落としているのか…?)
その余裕の理由が分からず、胸にじわりと不安が広がった。
マリオ「何を笑ってるんだい?!」
思わず問い詰めた声には焦りがにじんでおり、それを察したかのようにドンキーコングはにやりと笑って口を開いた。
ドンキー「いいや……?お前が馬鹿みたいに喋ってくれたおかげで、あることを思い出したぜ」
その言葉に、マリオの胸にあった不安が一気に膨らんだ。
マリオ「何を言ってるんだ?」
その問いに答えるように、ドンキーコングはどこからか木製のバズーカを取り出し銃口をマリオに向けた。
マリオ「!!」
ドンキー「俺も離れて攻撃できるってことをな!」
次の瞬間、バズーカから飛ばされたヤシの実がファイアボールを上回る速さで迫ってきた。
マリオ「うそだろ……!!」
マリオは攻撃を中断し、とっさに跳び上がった。最初の一発が足元を通り抜けた直後、二発目、三発目が続けざまに飛んできた。
マリオは空中で両足を突き出し、ドロップキックの要領で二発目を迎え撃った。靴底に強い衝撃を受けながらも、その勢いをどうにか殺した。
続く三発目には、すかさずファイアボールを放った。炎に包まれたヤシの実は勢いを失い、黒く焦げながら落ち始めた。
マリオ(まずい……!速すぎる!これじゃファイアボールが攻撃に使えない!迎え撃つだけで精一杯だ……!)
焦りが募った、その瞬間。目の前の焦げたヤシの実を、巨大な拳が突き破った。
かわす間もなかった。拳が腹にめり込み、体がくの字に折れた。
マリオ「うあぉぉぉ……!!」
体が一気に吹き飛ばされ、背中から地面へ叩きつけられた。衝撃に息が詰まり、体にうまく力が入らなかった。それでもマリオは身をよじり、どうにか体勢を立て直そうとした。
そんな中重い足音が徐々に大きくなった。
マリオ(ま、まずい……奴が来る……!ファイアボールを出さないと……!)
震える腕を何とか伸ばした。だが、その掌に炎は生まれなかった。視界に入った袖は、すでに元の赤色に戻っていた。
マリオ「そん……なっ……!」
ドンキー「小さな体で俺を追い詰めたことだけは、褒めてやるぜ」
マリオ「……!」
すでに目の前まで迫っていたドンキーコングが、マリオを片手で軽々と持ち上げた。振りほどこうにも、もう体に力が入らなかった。
マリオ「マ……マンマ……ミー……」
ドンキー「じゃあな!!」
体を支えていた手が離れ、わずかな浮遊感が走った。
次の瞬間、激しい衝撃が全身を貫いた。痛みを感じる間もなく、マリオの意識は途絶えた。
ドンキーコングの性格は映画を元にして、設定はバナンザを元にしています。
父がクランキーコング.です。
キャラクター紹介
ドンキーコング
『スーパードンキーコング』シリーズの主人公で、ジャングルに暮らす力自慢のゴリラ。元々、マリオの故郷ブルックリンで大暴れしたドンキーコング(現在のクランキーコング)の孫にあたり、現在は自らが「ドンキーコング」を名乗りながら仲間と共に冒険を繰り広げる。バナナをこよなく愛し、敵に奪われた時は全力で奪還に挑む。ディディーコングやディクシーコングといった仲間たちと共に、クレムリン軍団と戦うことが多い。
ドンキーコング冒険履歴
スーパードンキーコング→ドンキーコング64→ジャングルビート→リターンズ→トロピカルフリーズ→バナンザ
良ければ感想と評価お願いします!