また、一部の地域では話題に出すのも忌避されるときた。
葬儀屋とは?噂は本当なのか?忌避される訳は?
それを探るため、我々は葬儀屋がいるという海辺へ向かった…。
誤字報告、ありがとうございます。修正しました。
仕事が片付き、当番だったヒナと一緒にゲへナを散歩していた時のこと。
何か違和感を覚え周囲を見渡すと、ある一角が異様に静かだった。
いつもなら爆発、銃声はあたり前の環境にも関わらず、今日に限っては静まり返っている。
"今日は随分と静かだね。"
そう言うとヒナは顔を顰めて言った。
「…この静けさ…恐らく葬儀屋ね。」
"葬儀屋?"
キヴォトスでは聞いたことがなかった単語に思わず声に出してしまった。
「とある理由で色んな人から畏怖と畏敬の念を抱かれている人よ。
原因は彼女の仕事なんだけど、それを公共の場で話すのはゲへナでも忌避されているわ。」
葬儀屋…。
キヴォトスではそう簡単に人が亡くなるなんてことはない。それなのに葬儀屋、ということは傭兵等の戦闘職で付いたあだ名だろうか?
そうとなれば葬儀屋と呼ばれる所以はなんだ?そう呼ばれる程に過激な仕事をするのだろうか。
そうこうしている内に葬儀屋と思われる生徒は姿を消してしまった。
"教えてくれてありがとう、ヒナ。"
調てみるか。葬儀屋が何者なのかを。
ヒナと別れ、シャーレに戻り葬儀屋と呼ばれた生徒について考えていた。
自由と混沌をモットーとするゲへナでさえ忌避される仕事とは一体何だろうか?
まさかと思うが、殺人を犯していることはないだろう。
だが、何をすれば葬儀屋とまで呼ばれのか、気になってしょうがない。
"アロナ、葬儀屋について調べて欲しい。"
「葬儀屋ですね!
少々お待ちください先生!」
…。
………。
………………。
"アロナ?"
かれこれ5分ほど経っているがどうしたんだろうか?
「…ご、ごめんなさい先生…。
頑張って探したんですけど葬儀の意味についてばかりで、先生が探している生徒さんについては全然見つからないんです!
名前さえありませんでした…。」
そんなことがあるのだろうか?
詳しい情報は伏せらていたとしても名前くらい検索したら出てくると思うが…。
「クロノスや連邦生徒会にもありませんし、色んな学園の記録も探ってみましたが残っていませんでした。」
アロナでも見つけられないとなるとすぐにどうにかなるものではなさそうだ。
ひとまずは置いておくか、そう考えていると、
「こんにちわ、先生。」
聞き覚えのある声が聞こえた。
"やぁ、リン。どうしたの?"
「先生にお渡しした書類に不備があったのでその報告に。」
"そうだったの?
ごめんね、わざわざ来てもらって。"
「いえ、こちらの不手際ですので。」
そうして報告を受けた後、少し世間話をしている最中にふと、リンは葬儀屋について知っているのだろうかと疑問に思った。
"ねぇ、リン。少し話しが変わるんだけど…。"
「いかがなさいましたか?」
"葬儀屋って知ってる?"
「…」
"ゲへナに行った時に知ったんだ。
連邦生徒会に務めてるリンなら何か知ってないかなって思って。"
するとリンも同じように顔を顰め、言った。
「…そうですか…また誰か、亡くなったのですね…。」
"亡くなった?"
予想だにもしなかった言葉が出てきた。
"亡くなったってどういうこと?"
「言葉の通りです。葬儀屋が目撃されたのならそれは誰かが亡くなったということ。
今回はゲへナですか…。」
"…葬儀屋って一体何者なの?"
「答えることができるとすれば個人で活動しているということぐらいですが…。
すいません先生。それ以上は答えることはできません。
それどころか葬儀屋の存在については連邦生徒会も不干渉を宣言していますが、実態としては干渉できないが正しいですね。」
"それって…。"
「キヴォトスにおいて、葬儀屋というのは不可侵の存在の一つなのです。
彼女について知りたいなら直接聞きに行くのが良いでしょう。」
"…わかった。ありがとうリン。"
連邦生徒会すら干渉できないなんて…。
行政機関が個人に不干渉を宣言するのもおかしいが、しないのではなくできないが実態ときたか。
やはりリンの言っていた通り、直接聞きに行くのがベストのようだ。
リンに教えてもらった葬儀屋の拠点は海に面した場所にあった。
どういう訳か時間は昼にも関わらず、空は帳を下ろしたように暗い。
こんな場所に本当にいるのだろうか?
「こうして直接尋ねたことはなかったけど、本当にここにいるのかしら?」
護衛を頼んだヒナも同じことを考えているようだ。
少し歩くと一軒家が見つかった。恐らく葬儀屋の家だろう。
ノックをして待つ。
すぐに返事は返ってきた。
「はい、今行きます。」
いよいよか。
「緊張しているの?」
"うん、少しね…。"
少ししてからガチャリ、と音を鳴らしながら扉が開いた。
「はい、どちら様で…。」
喪服に身を包んだ葬儀屋と思わしき生徒は私とヒナの顔を見て驚いた顔をしている。
「…空崎様にシャーレの先生ではありませんか。依頼でしょうか?」
「ごめんなさい、依頼じゃないわ。
先生があなたと話しをしたいらしいの。」
「…わかりました。どうぞ中へ。」
葬儀屋の家は木で作られた温もりを感じる雰囲気だった。
「粗茶ですが。」と言いながらも程よく温められたお茶のお陰で緊張も少しほぐれてた。
「初めまして、先生。葬儀屋こと秋月カナエと申します。
是非カナエと。
それで、私と話をしたいということでしたが…。」
"うん、そうなんだ。
君が何で葬儀屋と呼ばれているのかとか、何で連邦生徒会が不干渉を宣言したのかとか色々。"
「…何故葬儀屋と呼ばれるか、ですか…。
何故も何も私の仕事が葬儀屋だから、としか答えられないのですが。」
"え?葬儀屋って異名とかじゃないの?"
「いえ、名の通りですよ?」
まさか、本当に葬儀屋だったのか…。
"ごめん、カナエ。君が何か危険な仕事をして付いた異名だと勘違いしていたんだ。"
「いいえ、構いませんよ。
先生、あなたのことは存じております。
外から来た存在であり、生徒を導く大人だと。
ここは元の世界とは随分違うでしょう?それ故にキヴォトスではこうなのか、と勘違いしてしまうのも無理はありません。」
"ごめんね、ちょっとキヴォトスに染まり過ぎたかも。
それじゃあ、連邦生徒会が不干渉を宣言したのは何でなの?"
「それは私がキヴォトスで唯一の葬儀屋だからですよ。」
"唯一?そんなことあるの?"
「あるんですよ。
先生、キヴォトスでは死という概念が強く忌避されているのは知っていますか?」
"うん、知ってるよ。私がいた所もそうだったんだ。"
「ええ、死というのはどこも変わらずですからね。
しかし、キヴォトスの人間は頑丈なのでそう簡単に死んでしまうということはありません。」
「だからこそ、より一層死を重たく感じるのよね?」
「その通りです、空崎様。
このキヴォトスでは死は強く忌避される一方で、それを重く感じます。恐らく、先生が元いた世界よりも。」
"死を重く見ていることはわかった。だけどそれが君が唯一の葬儀屋であることとの繋がりが見えないんだけど…。"
「そうでしたね。
先程も言いましたが、キヴォトスではそう簡単に人が亡くなるということはありません。
ですがいない訳ではない。
年に2,3件あるかどうかというレベルですが。
そして…こんなこと、考えるのも憚られますが…。
言ってしまうと商売にならないんです。」
「死を重く見ている、だけど件数が少ない上、1回1回の葬儀に掛かる費用が大きく、商売として確立できない。
悲しけど、これがキヴォトスの現状ね。」
確かにボランティアでやることも難しいだろう。
言われたことは理解できるし元の世界もそうだったが、いざ人の死を商売として見ているのを感じると何とも言えない感情に襲われる。
"じゃあ、カナエは何で葬儀屋をやろうと思ったの?"
「…私も友人を亡くしまして。
ゲへナ生ですが優しい方だったんです。笑顔が素敵でいつも笑っていました。
だけど、他のゲへナ生が起こした爆発で落盤が起きてしまい生き埋めになって…。
堀り起こされた時には、もう…っ!」
"…これ、使って。"
そう言って涙ぐむ彼女にハンカチを差し出した。
「…っ!…ありがとうございます。
少し…落ち着いてきました。」
"無理に話さなくてもいいよ?"
「いえ、あなただからこそ知って欲しいんです。
…彼女が堀り起こされた後、その遺体をどうするかという話になりました。当時は葬儀屋なんてなかったので個人で弔わなければなりませんでした。
彼女の遺灰は海に流しました。閉所恐怖症だったので暗い土の中は落ち着かないだろうと。
それから私は、故人が正しく弔われるために葬儀屋を初めました。最初はバイトを何個も掛け持ちして費用を稼いでいましたが、過去に依頼された方が募金を募ってくださったんです。それで今まで続けてきました。
私はキヴォトスで死者を弔うことができる唯一の人間。
私に何かあれば死者は安らかに眠ることすらできなくなってしまう。それが連邦生徒会ですら干渉できない理由です。」
"…そうだったんだ。辛かったろうによく頑張ったね。
きっと君の友達もその頑張りを見ているよ。"
「そう言ってもらえるだけでも救われます。」
「何か手伝うことはある?」
"私にも手伝わせて欲しい。"
「ありがとうございます。
…そうですね。これから墓参りに来られる方がいらっしゃいます。私はそちらの対応へ向かうのでその間、お墓の清掃をお願いします。土を掃く程度で構いませんので。」
"わかったよ。行こうかヒナ。"
ヒナと共に墓所の清掃に来た。
一面が白い花に覆われている。百合だろうか?
墓石も綺麗に磨かれており、言われた通り土を掃くだけでよさそうだ。
そう言えば、ヒナとカナエは知り合いなのだろうか?様付けだが先程の会話からすると話したことはありそうだが。
聞いてみると
「…友人よ。事故に巻き込まれた娘とも仲良くしていたわ。
あの事故があってからカナエは故人を弔う道を選んで、私は事故を減らす道を選んだ。それだけよ。
死と向き合う遺族の方にも最大限の敬意を払わなければならない、と言っていつからか様付けが基本になったわ。」
"それじゃあ、依頼がきた時以外は人と関わらないみたいだけど…。"
「実際、その通りね。
あの時、私が風紀委員になったときから見なくなったし、今日まで連絡の一つもなかった。
忙しいのを察してくれたのかどうか分からないけど…。
けど、これからもきっとカナエから連絡がくることはないと思う。
死に触れ、死に寄り添って生きていく。
あの娘は多分、これからもそうだと思う。私には止める権力も理由もないから…。」
そんな悲しことはさせたくないが、それを伝えた所でカナエに失礼だ。青春を捨ててまで死と向き合おうとするカナエの覚悟を無視することになる。
考えた所で案がでる訳でもない。ひとまず、掃除が終わったことを伝えに行こうか。
カナエの元に行くと誰かの啜り泣く声が聞こえた。
そういえば、墓参りに来る人がいると言っていた。
後にしようか、そう考えていると
「…じゃあ、報告も終わったしそろそろお暇させてもらいますね、ユメ先輩。」
…ユメ?それに聞き覚えのある声。
まさか…。
「いつもありがとうね、カナエ。
ユメ先輩のお墓、綺麗にしてくれてさ。」
「お気になさらず、小鳥遊様。
それが私の責任ですから。」
「仕事じゃなくて責任って言えるの、何気に凄いと思うな、私。」
「仕事なんてなんだか事務的じゃないですか?
何より、生を全うした故人に失礼です。」
「…本当、尊敬してるよ。
ユメ先輩が死んで、色々荒れてたころもカナエはずっと側に居てくれたよね。なんだか助けられてばかりだな〜。」
「あなたにも散々助けられましたよ。
依頼人の元へ向かう時、いつも護衛を請け負ってくださいましたよね?」
「それは今までの恩返しというか…。
ていうか、葬儀屋が知られるようになってからは皆、カナエを傷つけないようになったから護衛もできなくなったし…。」
「それでも十分過ぎる程に助けられました。」
「ヘヘ、そう面と向かって言われると変な感じになっちゃうな…。
ってあれ?先生に風紀委員長ちゃん?」
…っしまった。さっさと戻るべきだった。
「終わりましたか?先生。」
"うん、終わったよ。その報告に行こうと思ったんだけど2人がまだ話してたから…。"
「大丈夫だよ〜。おじさん達も区切りはついたから。」
そう言うホシノの側には梔子ユメと書かれた墓石が佇んでいた。
梔子ユメ
私がキヴォトスにくる前に亡くなった生徒。
ホシノの先輩にしてアビドスの元生徒会長。
そうか。ホシノは私が来てからもずっとユメのことを想い続け、カナエはそんなホシノを支えてきたのか。
私が救いきれなかったばかりに辛い思いをさせてしまった。
「今、辛い思いをさせてしまった、なんて考えてます?」
"え?い、いや…。"
「顔に出てるよ〜先生。確かにユメ先輩が亡くなったことを知った時は辛かったけど、頼れる人がいるし、先生もいるから大丈夫だよ。」
「私は先生が救いきれなかった方を救うだけです。
あなたは余計な心配をせず、今まで通りでいいんですよ。」
"少し、不安になっちゃうな…。"
「大丈夫よ先生。私がいるし、小鳥遊ホシノもいる。カナエや、他の生徒もいるわ。
私が言えたことではないかもだけど、1人で抱えこもうとしないで皆で支え合っていきましょ?」
"うん、そうだね。
ありがとうホシノ、カナエ、ヒナ。"
ユメの墓の清掃も終わり、時間も遅くなったのでそろそろ帰ることにした。
「先生、空崎様、今日はありがとうございました。」
"こちらこそありがとう。君のことを少しだけでも知れて良かった。"
「また来年、お世話になるねカナエ。」
「お待ちしております、小鳥遊様。」
「ねぇ、カナエ。別に葬儀屋を辞めろとか、ゲへナに所属して欲しいとかじゃないんだけど…。
連絡、たまにはくれると嬉しいな…。」
「…そうですね、空崎様。連絡がない内に土の中にいたなんて余りに悲しですし。
たまに、メールでも送らせていただきます。」
そうして少しの間話をし、葬儀屋の拠点をあとにした。
今回は、改めて考えることがあった。
例え私がどれだけ手を伸ばしても、生徒全員は救えない。皆で支え合わなければならない。
カナエ、君に葬儀屋を辞めろとは言わない。でも、いつか君にも青春を送れるように、私も頑張るから。
そう決意を固め、私はシャーレに帰った。
設定は思いつくのに文章が作れない、これどうにかならないんですかね?
国語の教科書に載ってる小説とか改めて読むと文章力とか語彙力、言い回しとあらゆるものが違いますね。