「君は『恋』というものをどう考える?」
彼女は俺に、そんな質問をした。
「いきなりなんだ?」
俺は質問に質問を返す。
「質問は私が先だ、先に答えてくれ」
「・・・・・・」
どうにも上から目線な言葉が癪に障ったが、とりあえず俺は考えた。
考えて、俺は答える。
「『気の迷い』」
「・・・・・・何故そう考えるんだい?」
彼女はまた質問を投げ掛ける。
「俺としての経験が少ないからな、他人の話を客観的にみて思ったことだよ」
「ふーん、随分と捻くれた考えだね。過去に何かあったのかい?」
「特になかったよ。だからこそ、一つの感情に振り回されて、一喜一憂するような人生は嫌なんだ」
シェイクスピアの悲劇も、光の君の酒池肉林も、その他諸々も、俺は別に人生をそこまでアクティブに生きる気は毛頭無い。
「俺の人生を俺なりに生きて、最後は眠るように死ねたら本望さ」
「毎日を眠るように生きてるのにかい?」
彼女は小気味よくクスクスと笑う。
「お前はどうなんだ?」
俺も同じ意味での質問を彼女に返す。
「私かい?」
彼女はあらかじめ用意していたのか、すぐに答えた。
「『精神病』」
「その理由は?」
君と似たようなことだ、と彼女は笑いながら言う。
「人は『恋』という感情が芽生えれば、善くも悪くもそれだけで豹変する。全てがどうでもよくなり、その人のことしか考えられなくなり、相手に気に入ってもらうために何でもする。その人のためなら、勉強することもスポーツをすることも金を貢ぐことも犯罪を犯すことも、何の抵抗も無くできるようになってしまうんだ」
朗らかに、彼女は言う。
「大した病気だとは思わないかい?」
「そう言うけど、お前って誰かと付き合ったりしたことあるのか?」
それを聞くと彼女は目をしばたたかせ、腕を組み少し考え始めた。
どうやらそういう経験はないらしい。
考え始めて一分弱、漫画なら頭の上に光る電球が浮かび上がりそうな顔をして、彼女はこう言った。
「なら、恋をしてみようじゃないか」
「いや、意味わからん」
本格的にわからなかった。
馬鹿にはわからない、高等な暗号か何かだろうか。
「ちょうど独り身の男女が揃っているんだ、まさにグッドタイミングだろ?」
そう言って彼女は、右手の親指を立てて可愛らしい笑顔を見せる。
・・・・・・成る程、そういうことか。
「それでは、あぁー、ゴホン」
彼女は少しわざとらしく咳ばらいをし、こちらに視線を合わせる。
俺も彼女の言葉を待ちつつ、言葉を考える。
そして、
「■■■、私は君が好きだ。世界で一番に愛している」
「俺もだ◆◆◆、世界の誰よりもお前を愛してる」
「・・・・・・・・・フッ」
「・・・・・・ハハッ」
俺達は二人同時に笑いだし、お互いの顔を見ながら声を揃えてこう言った。
「「あー、気持ち悪い」」
End