俺と彼女の恋愛議論   作:素品

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実に久しぶり

何か書いてて自分でもよくわからなくなった

そんな山なしオチなし意味なし三拍子


恋と愛の結び方

「君は恋人たちを見てどう思う?」

 

彼女はそう言って、というかこの始まり方も何度目だ? いい加減、バリエーションぐらいつけるべきじゃないだろうか。

 

「ん、どうしたんだい?」

 

「別に。て言うか、飲みすぎ」

 

小首を傾げる彼女に、俺は今まさにその小さな口から離した、炭酸飲料の入ったペットボトルの返還を要求する。

 

「目的は私の唾液?」

 

「ひっぱたくぞ」

 

神妙な面持ちで何を言うかと思えばこんなこと。

 

どうやら勝手に変態認定されていたようだ。失礼千万も甚だしい。

 

「小さいことばかり気にしてると男の格を下げるよ?」

 

「俺の品格を守るための正統なツッコミだろうが」

 

ひったくるようにペットボトルを回収し、呆れながら喉に水分を落としていく。

 

隣の彼女はそんな俺のことが愉快だったのか、くすくすといつものように綺麗な笑みをこぼす。

 

「それで、非リア充の君はどう思う?」

 

「なに、どうしたの今回。やたらに喧嘩売ってくるけど。それにブーメランでお前に帰ってくるからな」

 

「私には君がいるよ」

 

「・・・・・・・・・・・・目的はなんだ」

 

「もう一口くれないかい?」

 

黙ってペットボトルを渡すことにした。

 

さて、どう思うと来たか。

 

いつも通りすぎて逆に答えようがないのが本音だったりする。

 

彼女の言う恋人たちというのは、もしかしなくても道端で手を繋いでいるような輩のことだろう。

 

「どう・・・・・・なぁ?」

 

「難しい?」

 

はっきり言えば、どうでもいい。

 

どうでもいいし、興味がない。

 

俺自身が彼らに対して思うことなど、何もない。

 

妬みや羨望といった卑屈な感覚は縁遠く、ましてや不快感や嫌悪感といった潔癖な優等生を気取るような人格でもない。

 

「お前はどうなんだよ」

 

驚くほどに無感動な心象に見切りをつけ、俺は早々に彼女へと話を振る。

 

「他にすることないのかな、と切に思うね」

 

どこか濁るような声音で、彼女はそう答えた。

 

「そりゃまたどうして」

 

「どうしてって、彼らはいつも一緒にいるじゃないか。目を離そうが向けようが二人組だ。せっかくの空き時間だと言うのに、馬鹿の二つ覚えのように傍にいる。他にもっと有意義なことが他にあるんじゃないだろうか」

 

彼女は心底理解できない、そんな思いを滲ませながら語ってみせる。

 

「【愛とはそれはお互いに見つめ合うことではなく、いっしょに同じ方向を見つめることである】」

「なにそれ」

 

「『人間の土地』という本の一節だよ。もともとはフランスの本だけど、翻訳されたものもあるから君もどうだい?」

 

せっかくのお薦めだったが、俺はやんわりと断った。活字ばかりの本は性に合わない

 

彼女の言葉を聞く限り、彼女にとってその手の番はおままごと程度の認識なんだろうか。

 

相変わらず、よくわからない皮肉だ。

 

正直、彼女が言うことはもっともなことだとは思うが、そんなことなら周りを見ればいくらでもいる。

 

ソーシャルゲームに課金するやつ、授業の予習復習を欠かさないやつ、栄養価を考えて料理するやつ。俺から言わせてしまえば、俺が興味ないものを齷齪(あくせく)真面目に義務とでも勘違いしたかのようにやってるやつ皆そう見える。

 

無駄だとか、無意味だとか決めるのは、いつだってそれに必要性を考えないやつだ。

 

だから俺はこうとしか思えない。

 

どうでもいい。

 

興味ない。

 

好きにやってくれ。

 

「まぁ、一緒にいるっていう点じゃあ、俺らも馬鹿みたいに連んでるけどな」

 

口の端を歪めながら、どこか皮肉るように俺は呟いた。

 

結局、必要性というのは個々によるもので、俺と彼女の一連の会話だって惰性で続く"当たり前の日常"と化している。

 

これも彼女が言うところの馬鹿の二つ覚え、というやつなのだろうか。

 

「ふむ、じゃあ私たちも、見ようによっては恋人同士に見えるのかもしれない、ということか」

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・ん?

 

「あん?」

 

なんつった今。

 

「いやなに、若い男女が二人でいるんだ、そう思われても不思議はないんじゃないかな?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「そこまで嫌そうな顔をすることないじゃないか」

 

少し傷つく、と困ったように笑う彼女だが、俺の内心は、よくわからないことになっている。

 

「お前はどうなんだよ」

 

「どう、というと?」

 

「いやだからよ、俺とお手て繋いでキャッキャウフフしてるように見られてる、っつーのはどうなんだってことだよ」

 

「手を繋ぐことに関しては否定するよ。鬱陶しいし、何より交通の邪魔になるからね」

 

いや、そういうことじゃねーよ。

 

「こうやって間接的にも唾液の交換をしてるんだ、何とも思わないさ」

 

そして、返されるペットボトル。

 

今更ながらに、飲み口のテカりが自己主張している。

 

「別に君となら、私は何とも思わないよ。手を繋ぐのは嫌だけど、それ以外でならハグでも、キスでも、セックスだってしてもいい」

 

「・・・・・・そりゃまた、何とも愛のない話なことで」

 

驚くより先に呆れていた。

 

機能的に見ても、俺という人間は男であることは間違いない。本能的に言うならば、彼女の言葉、特に最後の単語については、色々と反応するものがあった。

 

ただ、そこは彼女というべきか、あくまでも俺だったらいいというだけの、本当にそれだけの話なんだろう。

 

本気にするだけ馬鹿を見るというものだ。

 

「案外、そうでもないよ?」

 

不意に聞こえた楽しげな声に誘われ、視線が糸に引かれるように移り行く。

 

墨を鋤いたような黒い髪が風に靡き、仄かな甘い香りが鼻腔の奥から俺の内を埋め満たしていく。

 

「明日は何をしようか?」

 

色の薄い唇、一節ごとに動くそれはどこか官能的で、見る者の男女を問わずに魅せる淫靡な様相で着飾っていた。

 

視線が重なることはない。

 

彼女が俺に問い掛け、俺は横目で適当に答えるだけ。

 

「わざわざ決めるようなことか? 今日も昨日も明日だって・・・・・・」

 

そこで彼女が俺に何を言わせたいかが分かった。

 

・・・・・・あぁ、面倒くせぇ。

 

「今日も昨日も明日だって?」

 

声音だけで見えてくる彼女の表情。

 

分かってるよ。

 

言えっていうんだろ。

 

だから、そのムカツク笑顔を今すぐにやめてくれ。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・たぶん、お前と一緒に馬鹿話してるさ」

 

 

 

 

 

 

「たぶん、じゃなくて絶対さ」

 

 

 

 

 

 

「あっそ、じゃあ絶対な」

 

 

 

 

 

 

「うん。だから、また明日も」

 

 

 

 

 

 

「あぁ、また明日もよろしく」

 

 

 

 

 

 

いつものように彼女は笑って、俺は笑わなかった。

 

 

 

たぶん、いや、この当たり前は、絶対これからも続くだろう。

 

 

ペットボトルの中身を飲み干しながら、俺はそう考えることにした。

 

 

 

 

 

END




終始、二人が顔を合わせることはなく、それでも繋がれる何か

歪ではあるんだろうけど、こんなのがあってもいいんじゃないでしょうか


最近のアニメとか見てると強くそう思います。
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