AMORED CORE fourth end (4シリーズ非公認) 作:赤髪のTOMO
彼はガレージのハンモックで寝ていた。あの戦いから、ずっとこうして暇を持て余していた。
彼が酒の入ったビンを取ろうと目を開けた時、
「お前、生きていたのか?」
彼の眼前にペアの男が立っていたが、何処か神々しく感じられた。その男は一言も発すること無く、いつもヘリを置いている空き地に向かって歩いて行った。
「ま、待って。」
彼はそれを追おうとして、ハンモックから転がり落ちて地に叩き落とされた。
「痛ってえ。お、おい、待てって言ってんだ…ろ。」
彼は顔を見上げたが、そこにはヘリの姿も彼の姿もなく、ただ無意識に彼自身が行った整備済みのACだけが佇んでいた。
彼はもう一度顔を下に向けて、息を吐きながらゆっくりと目を瞑った。ペアの最後の言葉が鮮やかに蘇る。
「悔いが残らないように生きろ……か。フフ、分かったよ。」
「俺たちは沢山の依頼で、沢山の人間を殺して来た。敵だろうと、味方だったヤツだろうと。有力な手練のレイヴンも、強化人間でさえも…」
「俺たちは自由に生きて、理不尽に死ぬ、そんな傭兵の一人だった。フフ、恨まれて当然だ。」
「俺は最後のお前の顔が見えなかったが、不思議とその時の顔が思い浮かぶんだ。お前は最後まで笑顔で、あんな言葉を残して……逝ったんだろう?自分の運命に抗ったんだ。なら、俺も同じようにするだけだ。」
そこに一つの通信が舞い込んで来た。
「ん!?な、何だ?」
彼は急いで通信機に繋がっているヘッドホンを付けて内容を聞いた。どうやら、企業連があるコロニーに本格的に攻撃を仕掛けようとしているらしい。
そこを守っているあるACの名前と特徴を企業は仕切りに呼んでいた。よほど強いレイヴンらしい。そして、彼はそれを聞いて驚いた。
「『ブラック・バード』だと?そんなはずは、アイツは俺がこの手で…」
彼は自分のACを見つめた。自分とある男が戦った死闘の記憶が蘇る。そして、出会って間もない頃にペアに言った、「最強のレイヴンになる。」という言葉も。彼は“黒い鳥”の強さをよく知っていた。
「名を継ぐものって訳か…へへ!なら俺がそいつを倒して最強のレイヴンになってやる。」
彼は再び立ち上がった。
【コロニー】
RADは幾つもの危機からコロニーを守って来た。彼は十分に隊長と呼ばれるほどの人間になる素質を持っていたが、未だに彼は自信を付けられていなかった。自分はそんな人間になる資格が、あの機体を任されるだけの実力がないんだと。彼はそう思い込んでいた。
「おーい、これからみんなで飯を食いに行くんだが、お前も来いよ。みんな呼んでるぞ。」
「………」
「おい、てめえ。」
オジさんは彼の胸ぐらを掴んだ。
「こっちはそんな態度にもうあきあきしてんだよ。そんなに背負うのがイヤならさっさと辞めちまえば良いじゃないか。」
「イヤだ。俺は大切な人を守るために戦いたい。何も出来ずに、死にたくない。」
「だったら腹括るしかないだろうが。ここにいる以上お前は隊長なんだ。だったら隊長らしく行動してみろよ。」
オジさんは無理しているようだった。いつも酔っ払っていて優しかった老人がここまでするほど、自分が腑抜けていた事に初めて気付かされた。
「ごめん。俺、大切な事を忘れていた。もう、下を向いたりしない。前を見続けるよ。」
オジさんはその言葉を聞いて、手に入った力を緩めた。
「もう二度と、こんな思いはしたくなかったんだがね。………昔のアイツは…お前に似てたよ。」
オジさんは一人言のように呟いた。
「えっ!?」
〈ウィーーーン!ウィーーーン!〉
「敵か?」
「格納庫に行こう!」
警報がコロニー全体に鳴り響く。彼らは慌ててACの格納庫に走って行った。
〈敵部隊が我々のテリトリーに侵入した。RAD、全機発進せよ。奴らが引かない場合は全力で叩け!健闘を祈る。〉
放送が鳴り響く。
彼は対Gスーツを着用して、いち早くコックピットに乗り込んだ。そして、無数のコードに繋がれた真新しいヘルメットをかぶり、それに付いているゴーグルを自分の目に合わせる。
〈システム戦闘モード起動します〉
新型の機体ではあったが、全てが自分用に調整されており、扱いやすさは以前と変わっていなかった。
「こちら『ブラック・バード』出撃する。」
カタパルトの射出機に機体が固定され、彼の視界の右横の隅に配置された三つのライトが順に赤に点灯していく。
《こちら管制塔です。ご武運を!》
最後のライトが緑に点灯し、それと同時に機体が射出機と共に加速していき、その優美な姿を光輝かせながら飛び立った。
《いつものヤツらか!?》
オジさんが言う。
「そうだな。だが…」
《肌がヒリヒリしますね。》
他の隊員達も彼と同じ雰囲気を感じ取っていた。流石は組織内で選抜されたエースパイロットと言った所だろう。管制塔から通信が入る。
《敵主力は量産型AF『ランドクラブ』二機!その他多数のノーマル、MTを確認!排除して下さい!》
「チッ!今日に限って俺達のネクストは作戦行動中で出払っている!ついてないな。」
敵からも当然のように通信が入る。
《我々は企業だ!我々に逆らう者は全て排除する。降伏するなら今のうちだぞ!》
「俺たちが従う訳もないと知っている癖に…全機!奴らが防衛ラインを突破する前に全て殲滅する!行くぞおーーー!」
《ウオオオオ!》
「俺と1番機、2番機でAFを叩く。他は通常戦力を撃破してくれ。」
《了解!》
全員が声を合わせた。3機のノーマルがOBを起動する。
「俺が右のヤツをやる。おっちゃんは二人で左をやれ。」
《一人で大丈夫か!?俺も…》
「俺はもう…覚悟は出来ている。今は死なない為に、全力で戦うのみだよ。そっちこそ、タダでさえ装甲が薄いんだから…死ぬなよ。」
《フン、任せとけ。》
彼は正面のAFのグレネードキャノンを意図も容易く回避し、懐に忍び込んだ。
レーザーブレードで敵の脚部を切り裂き、動きを止めた。その後、彼は素早くAFの頭上へ飛び上がりし、死角から一基ずつだが確実に砲台を潰し、無力化に成功した。
「ハア…ふう。よし、これで終わりだ。」
彼が右方向に顔を向けた時、ありえない事が起こった。
オジさんは二人でもう一機のAFに接近し、同じく一撃の被弾もなく、キャノンを回避した。二人が攻撃を仕掛けようとした、その時だった。AFの陰から一機のハイエンドノーマルが顔を出した。恐らく敵の増援だろう。
「俺がコイツを引きつける。お前はAFを止めろ。」
《了解!》
2番機は武器内蔵型の腕部を装備しており、とっつきの装備された武器腕に切り替えて、AFの脚部に突っ込んだ。
豪快な爆発音と共にAFの足が止まり、すかさず通常腕に切り替え、レーザーライフルで砲台を一つ残らず破壊した。
《クッソ!レーザー兵器は効かないのか?》
オジさんは両手に装備したレーザーブレードで何度も敵ACを斬りつけたが、擦り傷程度のダメージしか入らなかった。
《ムダムダムダ!そんな細っちい腕で俺の装甲が傷つくかよお〜〜!》
敵ACはオジさんに集中攻撃する。2番機はレーザーが通らないのを理解して、とっつきに切り替え果敢に接近戦を仕掛ける。
《へッ!一般人では所詮その程度か。当たらなければ意味ねえんだよ。》
敵ACは装備していたレーザーブレードでとっつきを装備した腕を薙ぎ払った。
彼らは絶対絶命だった。彼が間に合う程の時間も無かった。その時だった。突然6発のミサイルが飛んで来た。
《アアッ!何なんだ一体ーーー!》
管制塔からも通信が入る。
《未確認反応急速接近!ッッ!この機体はッ!?》
〈ドオオオーーーー!〉
真っ黒な機体が追加ブースターを装備して高速で接近して来た。そして、彼らの前でそれを切り離し着陸した。
《おい!?この機体は…一体どういう事だ!?》
オジさんは困惑していた。
《テメエ、突然乱入して何のつもりだ!》
敵ACが動きを止める。
〈ガコン、ガコン…〉
そいつの言葉を気にも止めず、“黒い鳥”は左腕に装備した大型の3連装チェーンソーを展開した。
《き、貴様…何をするつもりだ!》
敵ACは戸惑いながらも攻撃を続ける。
“黒い鳥”は、禍々しい音を放つチェーンソーを敵ACのコアに叩き込んだ。
《き、貴様…俺を…企業を…敵に回すというのかあ〜〜!?》
敵ACは爆散した。
《ハハ!アイツが残した装備が、役に立ったな。俺が何をするのか、全てお見通しだったという事か…》
“黒い鳥”はチェーンソーをパージして、あっと言う間に企業の残戦力を全滅させてしまった。
《スゲー、あんな一瞬で…何者なんだ?それに、あの機体は…隊長?》
《いや、カメラアイの色が違う!これは…》
その場にいた全員が困惑した。
「全機、後退しろ!」
彼の合図と共に硬直していた隊員達が一斉に動いた。その時、正体不明機からの通信が割り込んできた。
《待てよ。俺はお前に用があるんだ。“黒い鳥”…》
「仲間を助けてくれた事、感謝するが…何者なんだ?…何故それに乗っている?」
彼は冷や汗をかきながらその男に話しかけた。
《昔話をしてやろう。10年以上前だったか。いつ起こったかなんて忘れちまったが、俺は企業に雇われていたレイヴンだった。ハイエンド乗りなんぞ、今の世界には利用価値なんてないも同然だったが、俺は周りよりも強かった。自分は最強のレイヴンなんだと言って、調子に乗っていたんだ。》
《だが、ある作戦で俺は“黒い鳥”に出会ったんだ。俺はアイツの強さに圧倒された。手も足も出なかった。ふと気付いたら、俺はアイツに魅入られていた。ただアイツの動きが美しいと思った。》
《でも戦闘の最中、突然アイツの動きが止まったんだ。俺は無我夢中でライフルを連射した。たまたまその内の一発が、薄くなっていたコアの装甲を貫通し、アイツの胸を貫いた。俺は…やはり自分は強いんだと思った。》
《でも、それは違った。俺の機体はボロボロだったから、その綺麗な機体を貰い受ける事にして、色々調べてみた。そして、俺はただ運が良かっただけで、他と何ら変わらんただのレイヴンだと思い知った。この機体のブースターが一部故障していたんだ。この機体に詳しくなかった当時の俺でも直せるほどの簡単な故障。でも、それで彼の動きは止まった。しかも、その機体はたった一つの弾痕以外はとても綺麗なままだった。それは、俺の攻撃がほとんど当たっていなかった事を示していた。俺はそれを知った時、彼こそが本物のレイヴンだと思った。俺はアイツになりたいんだ!》
《そして、今俺の前にはお前がいる。同じ機体は2つもいらない。俺はお前を倒して本当のレイヴンになる。俺と1対1で戦え!》
彼は高圧的は態度を崩さない哀れな鴉を真剣な眼差しで見つめ返した。
「…分かった。いいだろう。RAD全機、最終防衛ラインまで交代。」
《おい、お前…》
「おっちゃん、大丈夫だよ。俺は負けない。必ず戻ってくる。」
機体の頭部が振り返ってオジさんの機体を見た後、再び元に戻る。
そこは、2匹の鴉だけの戦場になった。
「どちらが死のうと、負け惜しみは無しだ。いいな?」
《フハハハ!そうだ。それでこそだ。…じゃあ、行くぞおお!》
2羽の鴉が真っ青な刀身を輝かせながらお互いに向かっていく。
〈ザアアアーーーーー!〉
二つの刀身が触れ合い激しく火花を散らす。
[095]の刀身の出力が上がり、片方の刀身を両断していく。
《へッ、旧式ではキツイか…だがッ!!》
[081]は後ろにQBを吹かして移動し、両背中の3連装ミサイルを連射した。
[095]の周りに水色のカメラアイが隠れるほどの濃い煙が上がる。
《ッッ!!!シールドにも出来るのか!?》
[095]は青白い刀身を円形に展開し、ミサイルの攻撃を防いでいた。彼の装備されたブレードは、本来こういった使い方は考えられていないが、それは本当のシールドのように見えた。
「サイコミュがここまで便利なモノだとは…驚きだな。」
2機はお互いに死角を取り合うように空中戦を展開する。だが、彼の放った弾丸は[081]の装甲を確実に貫き、一方で[095]へ向かって放たれた弾丸は、まるで弾が自ら避けているかのように逸れて行った。
そして、
〈ザアアア!!〉
青眼の鴉が緑眼の鴉の左腕を切り裂き、再び2機が向かい合う。
[081]の至る箇所から火花が散り機体が燃え始める。しかし、どれだけボロボロになろうとも、それの動きは止まらなかった。
「もう満足だろう?お前はここで、むざむざ死ぬべき人間ではない。」
彼が説得を試みるがその男には通じなかった。
《フフフ。まだだ!!まだ俺は戦える!!》
《ここが、この戦場だけが、俺の魂の場所なんだ!!!》
その名も知らぬ男はペアの幻に導かれ、再び操縦桿を握る。ライフルをパージして、切り落とされた左腕に搭載されたブレードを右腕に装着する。
《フハハハ!これで、最後だ!行くぞお!!!》
2機がOBを起動して一気に間合いを詰める。
〈ドクン…ドクン…ドクン…〉
彼らはその一瞬だけ、まるでスローモーションで動いているかのように感じた。ただ、目の前の“ライバル”を切ることだけに集中していた。ゆっくりと装甲の繋ぎ目を割くようにブレードが入り込んでいく。
[095]の右腕がストン!と落ちたが、同時に彼は[081]のコアを半壊させていた。[081]を包む火の手は、最早収拾のつかないレベルだった。
「俺は……すまない。」
《フ、フハハハ!これでいいんだ。お前が俺を気にする必要はない。》
その時、あの瞬間にかけられた言葉をフッと思い出す。彼は血まみれのレバーから手を離して、ゆっくりと精一杯シートにもたれかかった。そして、最後の力を振り絞った。
《悔いが残らないように…生きろッ…》
機体がゆっくりと崩れていき、爆発した。もうそこには男はいなく、ただ激戦の痕跡と鉄塊だけが残った。
《終わったのか…》
オジさんの声で、彼の目が覚める。
「ああ。帰還しよう。」
彼はその残骸に背を向けた。その時だった。管制塔から通信が入る。
《未確認目標接近!警戒して下さい。》
全ての機体が同じ方向に頭部を向ける。
「(一体…何が来るってんだ。)」
〈ビュウウウーーーー〉
風がなびく。
〈ガシャン!〉
突然、燃え残った[081]の残骸を踏み潰すように、一機のACが着地した。
《ハア…やっぱりコイツもダメだったか〜〜〜…せっかく手間をかけてブースターやら特注の武装やらを用意して泳がせたのにさ…どいつも最後は呆気ないもんだね。》
ダミ声の男がそのACの中でボソッと呟いた。
「お前は一体何者だ?」
《俺は、人間の可能性が知りたいんだ…そいつを示す力のあったヤツを、俺は何度も見てきた。》
《だが、結局は何も変わらなかった。》
《コイツもその一人だ。期待していたんだけどね〜〜〜一度は僕に勝ってるし。》
《君はどうかな?コイツら愚かなゴミ虫どもと同じか、あるいは…》
「俺の質問に答えろ。お前は誰だ?」
《ん〜〜〜難しい事聞くねえ〜〜〜。》
〈ガシャン、ガコン〉
大きな機械音を上げながら、巨大なキャノンが組み立てられる。
《俺を倒したら…教えてやるよ。》
〈ドオーーーン!!!〉
キャノンから放たれた青白い光がコロニーの近くに着弾する。
「各機、散開しながら目標に攻撃しろ!ヤツの狙いは俺だ。俺がヤツを引きつける!」
彼はOBを起動して高速で距離を詰めていく。
《お前の目的は一体何なんだ!?何の為に戦っているんだ!?》
オジさんが尋ねる。
《言っただろう?俺は君たち人間の可能性が知りたいんだ。つまり、君たちを愛してるってことさあ!〜〜〜アッハッハッハ!》
ノイズ混じりの声が彼らの耳に響く。
《イカれてるよ、お前!》
《それの何が悪い。君たちには分からないさ…俺らの事なんかね。》
その会話の最中にも、彼のすぐ真横を青白い光が通り過ぎていく。
「終わりだ!」
〈ザン!〉
彼はレーザーブレードでキャノンを真っ二つに切り裂き、それを装備していた重量機を蹴り飛ばした。
彼の蹴りによって敵機体のコアが大きく凹み、火の手が上がった。
《アーーーハッハッハア〜〜〜!…それでいい!最高だあ、貴様ら〜〜!》
ノイズまみれの彼の声は機体の爆発と共に消えて行った。
《これで、やっと終わりだな。》
「ああ…帰還しよう…」
《チッ!結局何も分からずじまいかよ!!》
オジさんは堪らず愚痴を溢した。彼はまるで何事も無かったように無表情な顔をしていた。
彼らはACの残骸を後に、コロニーに戻って行った。