AMORED CORE fourth end (4シリーズ非公認)   作:赤髪のTOMO

43 / 43
Chapter6 “数百年後の君へ”

「変わったなあ…お前。恐ろしいくらいにさ。」

 

オジさんが彼に話しかける。

 

「ん?そうかな?……覚悟が決まった…それだけだよ。」

 

彼は仲間達と来た、賑やかな酒場でそう言いながら、空のグラスを置いた。

 

「変わらなかった方が良かったかな?」

 

「いいや、嬉しいさ。少し前のお前は度重なるプレッシャーに押しつぶされていた。でも、今は生き生きしてる。」

 

「……そうだな。」

 

彼はまだ何かに悩んでいるようだった。彼は再び満杯になったグラスの水面を見ながら、植物のように動かなくなった。

その時だった。

 

《ドゴーーーーン!!!》

《ウィーーーン!ウィーーーン!》

 

強烈な爆発音と共に、警報が鳴り響いた。

 

「チイ!クソが!」

 

「各員出撃準備!急ぐぞ!」

 

隊員達の雄叫びが辺り一体を多い尽くすように響き渡った。

 

 

 

〈敵勢力はノーマルや航空機を中心とした大部隊です。尚、AFランドクラブ一機、及び後方に輸送部隊が数車両確認されています。臨機応変に対応して下さい。内容は以上です。無事の帰還を。〉

 

管制塔からの通信が切れる。

 

「(この感覚、俺は…嬉しいのか?戦うことが…)」

 

彼の精神はその感情とは裏腹に、とても安定していた。

 

〈『ブラック・バード』聞こえていますか?出撃の合図を!〉

 

「すまない、『ブラック・バード』出撃する!」

 

カメラアイを水色に光り輝かせながら、その鳥は大空を飛び立った。

 

《(まるで、アイツのようだ。)》

 

オジさんは、記憶の中にしか存在しない男と彼を無意識に重ねていた。

 

「よおし!行くぞおーーー!」

 

《ウォーーー!》

 

彼の掛け声に合わせて、隊員達が雄叫びを上げる。

 

「俺と1番機でAFを叩く。他は敵部隊の迎撃だ!一機も近づけるな!」

 

《了解!》

 

2機はOBを起動し、敵部隊の上を音速で飛んでいく。

 

「ノロマめ!」

 

《遅いな!》

 

彼とおっちゃんは瞬く間にAFを撃破し、鉄塊に変えてしまった。

 

「クソ!それにしても敵が多すぎる。」

 

《アイツらだけじゃ持たないかもな。》

 

2機が振り返って敵の排除に向かおうとしたその時、輸送車両から一機の機体が飛び出した。

 

《なんだ!?あれは!?》

 

「あれは、まさか…ネクスト!?」

 

 

 

【企業部隊】

 

輸送車両の暗闇の中に一機のACが格納されている。

それは、両手に特徴的な鋭い外見をしたマシンガンを持ち、以前に壊滅したレイレナードの主力ネクスト『アリーヤ』と酷似していた。

 

「今回の作戦目標は敵コロニーの占拠だ。これに成功した暁には、俺たちをオーメルグループに入れてやるとの事だ。」

 

「……」

 

「真改やオッツダルヴァに先を越されて悔しいのは分かるが、いつまでもそうしている訳には行かないだろう?」

 

一本の角の様なスタビライザーを頭部に設置した真っ赤な機体の中で不機嫌そうにしている男に、彼のオペレーターが優しく諭す。

 

「ああ。」

 

「なら、やるべき事は分かっているな。」

 

「間も無く、戦闘が始まる。いつでも発進出来るように用意しておけ。」

 

「(フン、AFを用意しておいてよく言うぜ…まあ、奴がいるなら相手にならないだろうがな…)」

 

「いつもの事だが、油断はするなよ!今回の相手は相当な手練らしい。」

 

「通信が入った!AFが落ちたとの事だ。AMSを起動するぞ!」

 

「(さて、ヤツはどうなっているんだろうな?)ネクスト『メメントモリ』出撃する!」

 

こうして真っ赤な機体は美しき体を光の速さにまで加速させた。

 

《チッ!来たぞ!》

 

「ああ!どうやら俺たちを生かす気は無いらしいな。」

 

真っ赤な機体から通信が入る。

 

《貴様が例のノーマルか…似ているな、ヤツと。》

《企業の作るルールを破壊する者、貴様らのようなヤツは排除されるべき…企業はそう判断した。》

《俺も十数年前、身を持ってキサマらのような危険分子がいると思い知った。》

《例外は排除されるべきなんだ…だから、消えろ“イレギュラー”!!!》

 

こうして、「黒い鳥(イレギュラー)」と「山猫(リンクス)」の死闘が始まった。

 

《挟み撃ちで行くぞ!》

 

「了解!」

 

オジさんと彼はネクストにも劣らないスピードで真っ赤な巨人に牙を剥く。

 

〈ブン!!!〉

 

オジさんの振るったブレードはスラリと交わされてしまった。

 

《動きにムラがあるな。…そうか、機体の特性だな?そういう動きだ。》

 

オービエは両手に持ったマシンガンを連射し、絶え間ない弾幕は最も簡単に[098]の装甲を貫く。

 

《まずはお前からだ!逃しはしない!》

 

《“オービエ”!感情が昂り過ぎだ!冷静にやれよ。》

 

敵機のオペレーターらしき男の通信を彼の機体が拾う。

 

「…やらせない!」

 

黒い鳥から6つのミサイルが猛スピードでネクストに向かい、直撃した。

 

《やはり、1番の脅威は…ウッ…障害は排除する。》

 

彼はその声だけで、オービエという男の寿命はそう長く無いと悟った。

オジさんを差し置いて、「黒い鳥」と「山猫」は激しい銃撃戦に突入した。

 

《お前は、何の為に戦う?何の為に、その力を使う?どれだけ足掻いても結果は同じだろうに…》

 

両機に銃弾の傷跡が深く突き刺さる。

 

「俺は…死にたくないだけだ。この世界がどうなろうと知ったこっちゃない。俺に世界を変える力はない。でも、俺は世界に示す義務はある。」

 

《何をだ!?》

 

「人の持つ可能性さ!」

 

彼はオービエの質問にハッキリと答えた。

[095]は再びミサイルを発射すると同時にOBを起動し、一気にネクストに接近する。

 

「ウォーーー!!!」

 

『メメントモリ』はマシンガンを連射しつつ引くが、[095]はパルスアーマーを最大展開して弾を弾きながら進んでいく。

 

《やはり貴様らは危険分子だ!消されて当然の人間だ!》

《ガサッガサ……、オーメルに認められて、お前達を消せば、俺たちの仕事はもう終わりなんだ。》

《俺と…ザー…で稼いだ金だ。それで再手術をして…空で…二人で…普通の暮らしを…》

 

《クッ!感情的になるな!…ザーッ…隙を見せればやられるのはお前だぞ!》

 

そんな漏れ出た通信が彼の耳にも届いた。

何故だろうか!?彼らは敵で、彼らの事を何も知らないのに、胸が締め付けられる…とうに忘れてしまっていた、どうにもならない気持ちを感じ取った。

少しでも気を抜けば、レバーから手がすり抜けてしまいそうだった。

でも、彼が殺らればコロニーを守れる人間はいない。

二つの銃口は交わらなければならなかった。

それが誰のせいでも、彼らには自分の意思を貫き通すことしかできないのだから。

 

 

 

2機は既にボロボロだった。2機共、整波装置を損傷しアーマーを展開出来ない状態だった。

ネクストは左腕を欠損しており、ブレードで切り裂かれたようだった。

[095]は全身が銃痕だらけで、最早動いているのが不思議な程だった。

2機は再び向かい合い、動きを止める。

 

《俺は、負けたくなかった…》

 

オービエが不意に話し始めた。

 

「何の事だ?」

 

《俺は中々出世出来なかった…ザー…周りの奴らは、みんなオーメルに行ってしまったのに、俺はずっと…オーメルの隠し玉として、こき使われてきた。》

《俺も薄々勘づいていた。オーメルは、自社のリンクスを犬として首輪をかけたが、俺はそれ以下…ただの駒としか見ていなかった。》

《オーメルに取れば…ザー…お前達は邪魔者だったが、自社リンクスを投入するほど暇じゃなかったんだろう。》

《だから俺を利用した。だが、カラードに登録していないリンクスを所持する事は…オーメルが政治的優位を失うほどの問題になる可能性もある。》

《そう。邪魔者を排除し、あわよくば俺も共倒れする事を期待しているんだ。》

 

「それが分かっていて、何故反抗しなかった?」

 

《俺はただの“物”だ。その意思を見せたら、すぐ廃棄処分になるだろう。》

《そうなれば、この世界を生き抜く術はない。お前に引き下がれない理由があるように、俺にもそれが…ある。》

 

ネクストに小さな爆発が起こった後、火の手が上がり、機体全身を包み込んだ。

 

「機体を捨てろ!我々が身柄を保護する。」

 

《いいんだ。最後に…ザー…あの赤い小さな巨人と…もう、一…度…》

 

〈シャキィーーーン!〉

 

何が起こったのか、分からなかった。ただ、彼のゴーグルが跡形も無く割れると同時にそれは起きた。

『メメントモリ』の背後から白い筋のようなモノがすり抜け、目の前の赤黒い機体がバラバラに崩れていき、その後、彼の目の前で赤い液体がコックピット内を覆い尽くすかのように広がった。

 

《何だあれは!?…ザーッ…》

 

薄れていく意識の中でオジさんや隊員達、アイツのオペレーターが大声を上げているのが分かった。

 

《あれは、プロ…ザッ…オンだ!何故…ザアー…んな所にいる!?オービエ?…ザー…オービエ!?…ザーーッ…》

 

どうやら、みんなが何か騒いでいるみたいだ。

 

《おい!?お前…ザー…丈夫か!?…ザー…クソ!?レ…ザ…ルに連絡を取れ!緊急…ザッ…の準備だ!俺が…ザーッ…まで隊…ザー…運ぶ!》

 

《…ザッ…が撤退し…ザー…いる!?》

 

《チッ!!まずは生存者を…ザー…認しろ!敵のオペ…ザーッ…ーさんには発砲…ザッ…な!》

 

《了解!》

 

みんなが必死で叫び続ける中、彼は薄れゆく意識に飲み込まれていった。

 

 

 

彼が目覚めると、彼はベットの上で点滴を受けながら寝ていた。何故か、いつもは左腕に注射するはずの針が右腕に刺さっていた。

彼は何かを察して、震える顔を右側に向けて、また眠りについた。

次に目覚めた時には、ベットの周りをおっちゃんと隊員達、そして見知らぬ顔の男が囲んでいた。

彼は左腕に違和感があるのを認識して起き上がり、本来肩や二の腕があるはずの場所を触ろうとしたが、やはりそこには何も無かった。

 

 

 

数ヶ月後、俺の体力もほとんど回復し、左腕に義手を身につけている。あの戦闘以降、何故か企業の攻撃は激減しコロニーの安全は確保されている。

あのオービエというリンクスのオペレーターは我々の元に残るらしい。彼は「オービエがいないのに、自分だけノコノコ空へは行けない…」と言っていた。彼らが一生を懸けて稼いだ金は自分達の墓まで持っていくそうだ。俺達からすれば、喉から手が出るほど欲しい金額だったが流石に声をかけれるほど俺達も汚くはなれなかった。

間も無くしてレニカルが作られてから初めての葬儀が行われた。コジマ汚染が比較的少ないコロニーの周辺を使って、敵味方関わらず精一杯戦って死んでいった者達を鎮魂するのだ。その中には、あのノーマル乗りとオービエの姿もあった。

 

 

 

彼が風に当たれる場所で外の景色を見ながら、一人事を喋っている。

 

「改めて見ると、酷い景色だ。」

「見渡す限りの荒野。苔が俺達のように地面にへばり付いて生きているのがほんの少し見えるだけで、緑色が一つもないな。」

「隊長…これがあなたの守りたい景色だったんでしょうか?」

「俺は何処かで選択を間違えたんでしょうか?」

 

彼は自問自答を繰り返していたが雲一つない真っ青な晴天を眺めると、再び彼の眼に光が灯った。

 

「もう、ACには乗らないのか?」

 

ゆっくりと彼の隣にオジさんが座って来た。

 

「今は…乗るつもりは無いよ。戦える体じゃないからね。」

「でも、俺はまだ諦めるつもりも無い。それに…」

 

「それに?」

 

オジさんは尋ねる。

 

「“黒い鳥”を継ぐ者は俺一人だけじゃ無い。俺は遠い遠い未来の世界で“黒い鳥”が羽ばたけるように、まだ戦い続ける。」

 

彼は勢いよく立ち上がって、大空を優雅に舞う1羽のワタリガラスを見ながらそれに話しかけるように呟いた。

 

 

 

(完)




読んで頂きありがとうございました!
今年は今日が最後の投稿となりそうです。
来年も引き続き作品を描き続けて参りますので、見て頂けたらそれだけで嬉しいです!
では、よいお年を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:10文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。