ダンジョンでプーサーになった転生者が女の子になった主人公と出会うのは間違っているのだろうか   作:カフェインましまし

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読んでいただけると幸いです。


第1話 麦畑の村で

 

迷宮都市オラリオ

 

そこは世界三大秘境の一つ迷宮が存在する唯一の都市国家である。いつからあるのかはわからず、少なくとも数千年前から大穴と呼ばれていてそこから湧き出てくるモンスターが人類の天敵として現れて世界中に蹂躙するかの様に広がっていき人々を脅かしてきた。

 

だが人類もモンスターにやられっぱなしではなく最初の英雄が誕生するとそこから数多の英雄が名を挙げ人類の反撃が起こった。

 

所謂、英雄時代の幕開けである

 

次第にモンスターの生息区域を取り返していき遂には大穴まであと一歩の所まで迫ったのだがその一歩が進まずここに来て人類の快進撃は止まってしまった。

 

だがその時に突如天から来訪者が英雄達の前に現れた。しかもその来訪者は自らを"神"と名乗った。

突如として 降 臨 した神達は英雄達にこう言った───

 

『またせたな、ショータイムだ!!』

 

いや実際はそんな口調で言ったのかはどうかは不明なのだが、当時の神々達は口を揃えて

 

『いや〜一度言ってみたかったんだよね〜リアタイでw』

 

『あの時はめっさテンションバカ上げしててはやまったわw』

 

『いっときのテンションでやっちまうのはやべーねwでも後悔はしてないw』

 

などと供述しておりこれだけ見ると悪ふざけで言っているのかと思われてしまうがその言動とは裏腹に神々達は英雄達に更にもモンスターと戦える力───

 

いわゆる"神の恩恵"(ファルナ)という恩恵を捧げた。

 

するとどうだろうか英雄達はこれまで以前とは比べられないぐらいの力が宿る感覚を得てモンスターと戦い、遂に大穴を制圧しモンスターを地上から出られなくなるように大きな蓋、バベルの塔を建設して閉じ込めることに成功した。

 

こうして幾度となく人類を脅かしてきたモンスターと大穴は人類側の勝利として一時の平和を勝ち取ったことで新たな時代の幕が開いた。

 

 

神時代の始まりである。

 

 

◇◆◇

 

 

それから約1000年の時がたった───

 

 

黄金色に輝く小麦畑がどこまでも続く北方にある小さな農村。

 

村の外れにある丘を登っていくと小さな家がぽつんと建っていた。

家の中にはベットの中に入っている少女が何度も読んでいるうちにボロボロになってしまった本を大事そうに読んでいる。

 

読んでいる本は祖父からもらった英雄譚の話。

その中でも牛の怪物に囚われてしまったお姫様を取り戻す英雄の話がとても大好きだ。

 

すると家のドアが開く音が聞こえた。年季の入ったドアは軋む音を響かせながらバタンとしまった。

 

「ただいま、ベル」

 

「今帰ったぞ、ベル」

 

「おかえり、アル、おじいちゃん」

 

金髪の少年と、麦わら帽子を被った祖父が帰ってきた。少女は本を閉じてにっこりと笑いながらベットから降りてきた。

 

「ベル、体調は平気かい?」

 

「うん、今日は平気だよ」

 

ベルは生まれた時から身体が弱く、病弱な体質なため身体を動かすだけでも呼吸が辛くなってしまう。

その為、基本的にベットで横になりながら本を読むのが日課となっている。

 

「アルこそ大丈夫だった?」

 

「あぁ、今日は畑仕事だけだったから問題ないよ」

 

そう言ってアルは、ベルを気を使うように手を取る。彼の手はさっきまで畑仕事をしてたのが嘘みたいに綺麗で、それでいて大きい男の人の手だった。少しだけ頬が赤く染まるのを自覚しながら、彼の手を改めてぎゅっと握った。

 

彼、アルは数年前に会って今日まで一緒に暮らしてきた。それこそ家族同然に。ベルより2つ年上で、体は一回り大きい。それに僕が知らない物語を知っているし、それにとても優しくて頼りになる男の子だ。

 

───だけど村の女の子達にも優しいのは、ちょっといやだ。

 

「どうしたんだい?ベル?」

 

「ん、なんでもない…」

 

そういってぷいっと顔を背けて、その場を去るように台所へと向かう。今日の晩御飯はベルの番であるから2人が着替えをしているうちに調理をしようと竈門に火をつける。

 

「すぐにご飯できるからおじいちゃんと一緒にお風呂入ってきて」

 

「あぁ、わかったよ」

 

「ベル、今日はなにかのう?」

 

「今日はシチューだよおじいちゃん」

 

予め準備していた具材を鍋に入れて山羊のミルクを注ぎ込み畑から収穫してきてくれた野菜をあらためて切っていると祖父が子供みたいに喜びながら"孫のシチューじゃ!!こうしちゃおれん!!"と素早く風呂に進んでいきながらアルはハハハと笑いながらベルに"入ってくる"と声をかけて手を振った。

 

 

30分後風呂から出た2人がリビングに向かうと机の上には今できたと言わんばかりのシチューと大きなパン、それと前菜が並べられていた。

 

「さ、ご飯のしたくはできてるよ」

 

「ぬっほー!!美味そうなシチューじゃ!!」

 

「あぁ、本当に美味しそうだ!」

 

席に着いた2人は心を踊りながら手を合わし少女も一緒に手を合わす。

 

「「「いただきます」」」

 

手を合わせていただきますと言うのは遠い極東の人たちが食事をするさいの儀式だそうだ。

なぜこんな事をと言うと彼が食事をする際言ったのが始まりでそれ以来3人とも一緒にすることになったのだ。

 

「んーー!!うまい!!流石ワシの自慢の孫じゃ!!」

 

「あぁ、とても美味しいよベル」

 

「う、うんよかった…」

 

そう言うとベルは顔をさらに赤く染めるも、内心とても嬉しかったので照れながら食事に在り付く。

途中祖父があまりにも騒がしくなったので怒ってしまったが、それでも明るくて楽しい晩御飯の時間になった。

 

なにげない食卓、なにげない会話、なにげない日常。

ベルはこの瞬間がとても心地よく大好きであった。

 

 

◇◆◇

 

 

それから数時間の時が経ち、そろそろ就寝の時で自分も寝ようかと灯りを消そうとした時、ふとリビングの方から灯りが漏れていたことに気づいた。

 

ベルは消し忘れかなと近づいてみるとそこには祖父とアルの姿があった。

 

「うむ…どうしても行くのか?」

 

「あぁ、色々考えて決めたんだ」

 

「もう少し待っても良いのでは?」

 

「だが、それでは間に合わないかもしれない」

 

小さな灯りで2人は真剣な表情で何か話していた。

何故だかベルはとてもイヤな感じが肌で感じとりその場で立ち尽くしていた。

 

「はぁ…それでいつ出発するのだ?」

 

「早くても今年の収穫後には出発するつもりだ」

 

(!?)

 

出発する?誰が?まさか、彼が!?

その事が頭の中で広がると居ても立っても居られなくなり身体が動いていた。

 

「うそ…アル…どこに行っちゃうの…」

 

「ベル!?聞いておったのか!?」

 

「っ!?」

 

ベルはアルの元へ駆け寄り、手を掴んだ。

 

「ねぇ…どこに行くの!?アル!?」

 

「………オラリオだ」

 

「っ!?」

 

オラリオ───

そこは世界の中心であり、迷宮があり、冒険者が多く住んでいる大都市だ。

ベルはアルが冒険者になるというのを即座に気付いた。

 

「な、なんで…?」

 

「ベル、君の為だ」

 

「ぼ、ほくの…?」

 

「あぁ、ベルの病気を治す方法を見つけてくる為に僕はオラリオに向かう」

 

彼の真剣な表情からは、固い決意が感じ取れた。ベルは心の中で驚き、怒り、そして悲しみが混ざり合って困惑していた。

 

そして、想像してしまった。

彼が怪物に喰われてしまう姿を、冒険者によって殺されてしまう姿を、そんな最悪な結末を───

 

「いやだ、いやだよ!!そんな事なら…ぼくはこのままでいい!!」

 

「ベルっ…」

 

「一緒にいよう…お願い…いつまでもここに…一緒にいてよ…!!」

 

あのなにげない日常が消えてしまうのが恐ろしい。

何よりアルと一緒にいられないのはイヤだ。

それならば自分の病気など治らなくてもいい!!このままずっと一緒に…

 

そう涙ながらに懇願してくるベルにアルはどう声をかけていいかわからず、口を塞ぎ込んでしまった。

 

───そこで黙って聞いていた祖父が、口を開いた。

 

「ならベル、お前も一緒に行って来い。オラリオに」

 

「っ!?じいさんそれは!?」

 

「えっ…そしたらおじいちゃんは…?」

 

「儂はこの家を守らんといけない。ベル、お前が決めるのじゃ。アルと一緒に行くか、行かないかを」

 

いつもベルには優しい顔しか見せてこなかった祖父が真剣な表情でベルに問う。

ここで祖父と暮らすか、或いはアルと一緒にオラリオに向かうか。その選択肢にベルは考えた。

 

祖父の事は好きだ。この世で唯一の血の繋がった家族であり、生まれた時から一緒だった。正直離れ離れにはなりたくない。

 

だけどいつ亡くなるかわからない自分の病気を治して、アルと2人で暮らして、いつかは本当の家族になれるかも…そう考えるとベルは、塞いでいた口が自然と開いた。

 

「───ぼくも、アルと一緒についていく」

 

「…ベル」

 

「そうか、なら行きなさいベル。己の意志を大事にするのじゃぞ」

 

そう言って祖父は決断したベルの頭を撫でてやり頬んでくれた。アルも少し笑いながら受け入れてくれたようだ。その表情を見たベルは安堵したように笑みを浮かべた。

 

それまで動かなかった時計の針がようやく動いた、そんな気がした。

 

 

◇◆◇

 

 

「まいったな…こりゃ…」

 

視界に広がる麦畑に、溜息をつきながら畑仕事をする。

もうすぐこの麦畑ともお別れが来ると思うと嬉し半分、悲しさ半分といったところか。

 

私アルこと、本名アルトリウスは所謂転生者だ。しかもただの転生者ではなく、ある別作品のキャラで別作品の世界に転生したのだ。

まず転生先の話をしよう。

 

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

 

ざっくり説明すると主人公のベルが、迷宮都市オラリオで仲間と出会い、ヒロインと出会い、強敵と出会い、そして成長していく少年漫画の王道を行くストーリーが醍醐味の作品だ。

 

ただこの作品、タイトルからしてなんかヒロインとイチャラブしながら進むファンタジー作品かなと思ったら大間違いである。

なんと話の内容はめっちゃくっちゃシリアスand胸糞展開ありで、それでいて世界観がまぁー見事にやばいのなんの、ネタバレになるが世界が滅びる一歩手前からスタートするっていうとんでもない設定な世界だ。

 

しかも更に問題なのは、この作品の主人公ベル・クラネルは少年なんだが…俺があったベル・クラネルは女の子だった(・・・・・・)のだ。

 

いやね、この世界に目覚めた時何故か馬車の中でしかも馬車が事故がなんかで俺以外の人間がみんな亡くなってて、そこをたまたま通りかかったベルの祖父こと神ゼウス*1に助けてもらったのはよかった。

 

そして祖父(ゼウス)の家に案内されてそこで出会ったのがベルなのだが…俺の記憶が正しければベルは白髪の両眼がルベライトの紅眼の少年であったんだけど…

 

目の前にいたのは長髪白髪で、片方は紅い瞳、もう片方は灰色の瞳の少女だった。

 

そう、ベルくんはベルちゃんだったのだ!!

 

しかも女の子になってしまったのかなのか、生まれつき病弱である事も後になって知ったのだ。

 

ここにきてこの世界詰んだと悟った。

何故かというと本来ならベルくんは病気なのはなく、至ってすこぶる健康体な少年なのだ。

それが病弱、しかも女の子となると世界が救う前に死んでしまう、そうでならなくてもヒロインと結ばれる事がない可能性があるのだ。

 

これはまずい、とてつもなく。

 

最悪ヒロインと結ばれるのは百歩譲っても*2に世界を救うのはベルくんと決まっているからこの前提が覆ってしまう可能性が出てくるのだ。

そしたらこの世界ジ・エンドまっしぐらになっちまうってばよ!!

 

なら病気を治せばいいと思うが、そうは行かないのががってん承知の助。

実はベルくん(ちゃん)の母親とその姉は病気が原因で亡くなっているという経緯があるのだ。

つまりベルちゃんの病気が母親のと同じのを受け継いでしまっている可能性があるという事だ。

 

oh…なんてこった

 

作中でも不治の病と言われており、ゼウスにその病気のことを聞かされて自分のファミリアが病気を治す薬の材料を探してダンジョンに潜っていたがなかなか見つからなかったそうだ。

ただし、病気を治す薬はあるらしいのだが自分たちが潜れたのは71階層まででそれ以降の階層にあるかもしれないそうだ。

 

そう、あくまでもあるかもしれないだ。

 

正直に言って無理だ。

 

いくらなんでも詰んでいる状態だ。これで黒龍も倒せして世界救えときた。

いくらベルが憧憬一途を発現(これもベルちゃんになってしまったからでるかどうか)したとしても病弱のデメリットで原作の様にスムーズに進むとは限らない。

 

 

だがしかし、これはあくまでベルだけならの話だ。

 

 

最初の俺の発言を思い出してほしい。

俺は別作品のキャラに転生したのだと。

 

そのキャラの名はアーサー・ペンドラゴン

 

そう、俺はTYPE-MOONのキャラクター、アーサー王ことFate/prototypeの騎士王、プーサーに転生したのだ。

 

なんでプーサーだってわかったのかと言うと、冒頭に俺は馬車の事故で生き残った1人と言っていたが、その荷物の中に俺の名前入りのブローチが入っていてその名前がアルトリウス・ペンドラゴンと書かれていたのだ。

 

アルトリウスとはアーサーの別名でもあり、しかもブローチの紋章には赤い竜が描かれていたのだ。赤い竜と言えばアーサー王の父ウーサーがマーリンから"赤い竜は吉兆となり守護するであろう"とお告げをもらいそこからペンドラゴンという名前をつけた*3にといってるくらい有名な話だ。

 

しかも極め付けは、詳細は省くがゼウスに神の恩恵(ファルナ)を刻んで貰ってくれた時にスキルが発現していてそのスキルの名が"魔力放出"というこれまたTYPE-MOONを知っている人には聞いた事があるスキルがあったのだ。

 

その時、俺はある可能性が思い浮かんだ。

ベルの病気を治す薬の材料を探してくれば良いのではと。

 

もちろん、無謀な考えだとはわかる。

しかし俺がアーサー王のスペックを持っているとわかったなら、もしかしたらワンチャン見つけ出してベルの病気を治す事ができるかもしれない。*4

 

俺はそれに賭けることにした。

 

そこから素早く行動に移した。

神の恩恵(ファルナ)を貰ってすぐにでもオラリオに向かおうと思っていたのだが、生憎当時のオラリオは暗黒期真っ最中であり、そんな危険な状態で向かうのは駄目だなと思い断念。

 

ベルが10歳になる頃なら暗黒期も抜けて大丈夫だろうと思い、いざって時にベルが近くの森で迷ってしまい怪物に襲われて助けたのだが、ベルが俺がついていないと危ない状態まで病んでしまいここでも断念。

 

あれよあれよと時が経てば、なんと原作開始間近まで近づいてしまっていたのだ。

 

そうして今現在に至る。

 

「はぁぁぁ…とりあえずは自主練やら村の警備やらなんやで経験値をつんできたつもりなのだが…」

 

そうぼやきつつ手元にある羊皮紙に書かれている自分のステイタスを改めて確認する。

 

 

 

アルトリウス・ペンドラゴン

Lv 1

 

力 I92

耐久I67

器用I58

敏捷I79

魔力I37

 

《魔法》

 

《スキル》

 

【魔力放出】

・精神力を消費し全ステータスを上昇させる

・使用する武器の威力、強度の強化

 

 

恩恵を授かって7年で(・・・)これだけしか上がっていないのだ。

 

オラリオの外での経験値は雀の涙に等しいとは聞いていたが、まさかこれ程までに少ないとは思ってもいなかった。

 

「やはりオラリオのダンジョンに潜って経験を積まないとそうそう得られないな…」

 

そう思ってゼウスに相談して1人で行くと決意して、ベルには黙って行こうと計画していたのだが、やはりバレてしまって今に至る。

 

「仕方ない…当初の予定を変更して、すぐにでも出発しないとな…」

 

もうすぐ収穫祭が始まり、年を超えたらすぐに原作が開始するであろう時期に入ってしまう。

 

とりあえずすぐにでも、ある女神を見つけてファミリアを結成し、ベルの安全を確保するところから始めないと。そして難しいと思うが…ディアンケヒトに所属してる彼女にベルの容体を診てもらえるかどうか頼まないとな…。

 

「…よし、腹を括れアルトリウス()。お前がやらないで誰がやるんだ」

 

赤い夕焼けが麦畑に反射して幻想的な光景が映し出される中、俺は夕焼けを背に丘の上で待っているであろうベル(彼女)の元へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
これまたネタバレ

*2
だとしても確かヒロインと結ばれるのが結末に関わってくるとは聞いている

*3
こちらは諸説あり

*4
プーサーのスペックがあるなら黒龍倒してやると考える頭はこの時点ではない





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