1話 誕生!魔法少女ノワールホロウ
私はヤマモト。本名は山本五郎左衛門とかいうクソ長い名前なのでこう名乗っている。今まで、私は妖怪王としていろいろな事を行ってきた。強力な妖怪の説得、存在が厄災な妖怪の意識だけを残して封印する妖術の開発とか……ほんとよくがんばったよわたし、そろそろやすんでもいいんじゃないかな?
よし、最近は平和(妖怪基準)だから休も。魔獣とか出てるらしいけど低級でもつよつよな妖怪にとっては関係ないし知ーらない。低級に相性次第でギリギリ相打ちに持ち込めるBランク魔獣とか妖怪の居住地にはめったに出ないし。出てもCランクくらいまでだ。
「君才能あるかー。魔法少女になるんだカー」
休めないみたいです(血涙)
「いきなり何だよ!せっかく人(?)が休もうとしている時に!」
「まあそう怒るなカ。最近は魔獣が現れて周りの皆が苦しんでるカよね『そうでもないけど』カ!?とっ、とにかく魔獣を倒してヒーローになるチャンスだカ。魔法少女になるんだカ。まあ、もうなってるんカけどねw」
なんだこの害獣は!焼きにして食べそうになったが配下の烏天狗を思い出してしまって思いとどまった。私が天狗系妖怪で良かったな!運のいい奴だ。
「魔法少女としての名前はノワールホロウだカ。早速仕事だカ。この付近にAランク魔獣が出ているカ。他の魔法少女も来るはずだから、協力して倒すの力!座標と獣の情報送っとくカ。【
うわぁコイツさりげなく他の魔法少女を呼んでやがるよ。人目があるからこっそり妖術使えなくなるとかいう妨害行為やめてもらっていいですか?というか、
「いきなりAランクって強すぎない?初心者にやらせる仕事じゃないでしょ。」
「それはその通りだカ。反論の余地すらないカ。でも身体能力が【計測不能】と出ているし、多分大丈夫だ力。計測不能とか今まで色々な人を見てきた中でも見たことがないカ。本当に人間カ?」
「それは後で話すッ!」
「絶対人間じゃない反応やめてもらっていいですカ?選ぶ人(?)間違えたカー、って速っ!」
先程送られてきた座標と私が常時発動している妖術である【探知の術】 に引っ掛かった妖怪の反応が一致している。しかも妖怪の方は皿の水が無くなったら超弱体化する河童、魔獣はスキル【石化】が使えるらしいというコカトリスだ。相性が悪すぎる。
妖怪の体は妖力で守られているが、河童の水は妖力も何もないただの水だ。妖術の耐性などない。そして、恐らくは【石化】の影響も受けるだろう。このような明確な弱点があるからこそ、河童は低級妖怪なのに上位の中級妖怪にも届くような怪力を持つ。逆に言えば皿の水さえなければ、低級の中でもかなり弱い部類になってしまう。
仮にその状態で魔獣に勝てたとしても、その後に駆けつけた魔法少女に殺される可能性もある。やはり急がなければ。私は神通力の一つ、【神速通】を使い瞬く間に魔獣の現れた森へと到着した。
そこでは、想像通りの姿をした魔獣・コカトリス——鶏の躰と蛇の尾を持った全長6mほどの巨大生物と相対している、頭の水が石化した妖怪——俗に言う「河童」がいた。
私はとっさに駆け出して河童を庇うように魔獣の前へと立ち塞がった。
私の姿はいつのまにか魔法少女へと変身していた。状況から察するに、恐らく魔獣が近くに居れば自動で変身するようになっていると思われる。魔法少女を守る安全装置のようなものか。まあいい。
私はすかさず、私の唯一の先輩にあたる妖怪から最初に教えられた妖術である【狐火】を発動させた。烏野郎の代わりにまずはお前を焼き鳥にしてやるよ!!
火力を間違えて灰にしてしまった。Aランクと言うものだから低級妖怪に勝てる存在だと思って火力を調整したが、こんなに簡単に焼き鳥超えて灰になってしまうとは。
もしかしたら【石化】の厄介さによりAランクと位置付けられていただけで単純な身体能力だけならそこまで強くない魔獣なのかもしれない。
「あっあの、ありがとうございます!」
河童が私にお礼を言っていた。
最近は私が妖怪王として名を馳せていたこともあって、尊敬や畏怖の混じってない純粋な感謝をされたのは久しぶりだな、と思った。
それと同時に、元男な上に妖怪達のボス的なことをしている自分には魔法少女なんて似合わないと思っていたのに、少しだけ、こういう風に感謝されるのって良いな、魔法少女も良いかもしれない、と思ってしまった。
いかんいかん、何を思っているんだ私。
とにかく、早く本題を伝えなくては。
「私は魔法少女ヤマ……ゴホン、ノワールホロウです。ここは危険だから逃げてください、妖怪さん。」(健気なロリの演技)
「えっ、今の妖術の【狐火】だよねそれにヤマって言いかけてたしもしかしてサンモ『逃げてください』ハイ……」
よし、これにて一件落着「な訳ないないカー!」えぇ……
「何やってんだカー!っていうかやっぱり人外じゃねーカ!全くもう、妖怪だなんてファンタジーすぎんか流石に。他にも言いたい事はあるけど今は勘弁してやるカー!帰ったら色々言ってやるカー!」
ブーメラン刺さってんぞこの烏。ブーメラン串で串焼きの完成だ!
「アンタらだって私からしたら十分ファンタジーだよ!この喋る烏が。あと誰にも言うなよこのこと!」
「言われなくても分かってる力。正直に言うと僕たちマスコットからしてみれば魔獣が倒せるなら誰でも良いから言いふらして強い人材を失うなんてこと多分しないカー。」
「それと自己紹介がまだだったカ。僕はムニン。情報の伝達に最も長けたマスコットにして、魔獣の特性・危険度の情報収集とその記憶を役割としたマスコットだカー。」
なんか軟らかそうな名前だなこの烏。しかも情報伝達に長けているとか絶対言いふらすやん。
「おいボスに言いふらしたりしたら命は無いと思えよ伝達係」
「……ボスはもう…………いないカー。」
重いっ!本当に空気が重い。それに妖怪は基本死ぬ事が無い所為でこんな時どういう言葉を掛けたら良いかが分からない。
「何というか……その、嫌なこと聞いちゃたね。ごめん。」
「いや、そっちに落ち度は無いカ。本当に魔獣のこと以外は伝えないと約束するカー。」
超気まずい。さっきまで喧嘩腰で話していた奴が急に落ち込んで元気が無くなっている時ほど気まずいことは少ないだろう。
だが私の長年の経験を舐めてはいけない。ヤマタノオロチが超絶濃い酒を飲んで酔いが回って寝ている隣で「うわ、8割近く酒余ってんじゃん。なんか余った酒勿体無いなー」って思って酒を全部飲み干したのにあんまり酔わなくて平然としていた時よりはまだ気まずくない。あの時は周囲の「まじかよコイツ……」とでも言いたげな目が痛かった。とても。
それにこの烏はさっき魔法少女を呼んだと言っていた。きっと華麗に登場して気まずい雰囲気を払拭してくれるはず……!早く来てくれ魔法少女!そして私をこの雰囲気から助けてくれ!
「死にたくないよぉ、Aランクなんて無理だよぉ…………」
めちゃくちがガタガタしてる人来たんですけどー!!これ雰囲気悪化しないか!?
「……ハッ!安心して欲しいカ。もうAランク魔獣は討伐されたカー。増援の君とリンドヴルムにももう大丈夫って送るところだったカー。」
ハッ!とかこの烏完全に増援のこと忘れてやがった!自分が呼んだ癖に。まぁ結果的に増援乱入のおかげで雰囲気が緩和されたからナイスだ。イヤーヨカッタヨカッタ。
「そっそうなんですか!?えっAランクを倒されたのですか!!」
ブルーの魔法少女がすごくキラキラした目で見てくる。いや〜後輩って感じで良いね。向こうの方が魔法少女歴でいえば先輩だろうが。自分の後輩と言えるような妖怪どもは横綱河童とか鬼神とか可愛げのない奴ばっかりだったからなー。
「あの!私ブルーストリームって言いまひゅ!これからよろしくお願いします!今度コラボしまひぇんか?」
ふーん、そこでかむのね、分かってんじゃん(?)
妖術で録画しておいて正解だったわ。妖魔界に盗撮や肖像権などという概念は存在しないのだよ!……その所為で私の写真集が私の預かり知らないところで発売されていることには目を瞑ることにする。妖怪共は前世が男と分かっているのに何故買うのやら。
「いいよー。連絡先交換しよっか。それと、緊張しなくて良いんだよ。それに私は今魔法少女に選ばれたばっかりだから、貴方の方が先輩だしね。」
フッ、優しい先輩感(魔法少女としては先輩じゃない)を出してやったぜ。連絡先はスマホで良いかなー。買ってて良かった。世代5つくらいズレてるけど。いやー世代交代早いなー。そろそろ変えないと。
コラボかぁ。あれ?今なんて言って……
ん?
ん!?
ん!?!?!?コラボって何だ????