緑谷出久は受肉体   作:助5103

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第一話「両面宿儺」

 

第一話「両面宿儺」

 

 

 

 

時は現代、日本では全人口の約8割が何らかの“個性”を発現している。通常4歳頃までに両親のどちらか…あるいは複合的な“個性”が発現する。

手から炎を出したら、足の一部にエンジンがついて凄いスピードで走れたり…そんな色々な力を持った人間達は、やがて【ヒーロー】という職業が生まれ、世の中の人達に勇気と希望をもたらした。そして、僕“緑谷出久もまたヒーローに強い憧れを抱いていた。

 

 

しかし

 

 

 

「君、個性ないね」

 

「本来なら4歳まで発現するんですがね…」

 

「昔超常黎明期に一つの研究結果が発表されてね、足の小指に関節があるか、ないかって流行ったの」

 

「んで、まぁ無い方が型としてまだ新しい、と」

 

 

「出久君はね、関節が"二つある"…この世代じゃ珍しい…」

 

 

「何の個性も宿ってない型だよ」

 

 

 

世の中にはごく稀に「無個性」と呼ばれる個性を持たない人間が生まれる事があるという。

さっきも言ったけど、人口の八割は個性を持って生まれる…つまり、簡単に言えば十人に二人の確率なんだけれど実際に僕の身の回りには無同年代で個性の子なんていなかった。

当時幼稚園生だった僕はそれから心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚がしばらく続いた。自分も個性を当たり前に持って、いずれかは人を助かるかっこいいヒーローになるのだろうと今は夢物語となった理想を抱いていたからだろうか

 

______現実というのは、誰しもが【コミックのキャラクター】として劇的な人生を謳歌出来るとは限らない______

 

僕は、そんな陰鬱な子供時代に無情にもそれを悟った母親は無個性だと知ってから、僕を傷つけない為に個性にまつわる話はめっきりしなくなった。僕を気遣った結果なのだろう

 

 

ただ…

 

 

 

 

「全く…また見たいの?」

 

「早く!早く!」

 

 

 

僕には【憧れ】がいる

 

ヒーローは人の命を救うのは勿論の事だが、その姿の勇姿…時にはヴィランを悉く薙ぎ倒していくその強さに、人は勇気と力を振り撒く存在として、彼ら達は人々に多大なる支持を得ている。

 

かく言う僕もその内の一人だ。僕はその時、数年前のとある動画を見始めようとしている。

 

 

 

 

見えるか!

 

 

 

もう100人は救いだしてるッ!やべぇって‼︎

 

 

まだ10分も経ってねーッて‼︎やべぇえぇ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

No.1ヒーロー、【オールマイト】

 

 

 

その男、かつて巨悪のヴィランといわれたオールフォーワンを倒し社会に光と平和をもたらした“生ける伝説”

 

彼による登場以降、事件発生率は年々急激な低下が顕著に現れ全盛期を突入した頃には存在そのものが抑止力とされ、今や名実共に平和の象徴と謳われる存在となっている。

 

 

 

 

「もう大丈夫‼︎何故って…?」

 

 

 

「私が来た‼︎」

 

 

僕の将来の夢は決まっていた。勿論、オールマイトのようにみんなを助けるヒーローだ。

個性が出ればきっと自分にもなれると信じていた。

 

 

 

 

 

それは、中学生へ進学した今もその夢を未だ性懲りもなく抱き続けていた。

 

 

寒さは遠のき、多くの草花が活発に生育に勤め始める季節だ。僕は中学三年で本格的に進路に追われていく時期を迎える頃だった。就職、進学…二つの道を短くも長い一年の間で選んでいく最中、僕は頭を悩ませる事なくとある名門校への志望を押し付けた

 

 

 

 

「雄英、かぁ…」

 

 

「まぁ、君がヒーローに特別な思いがあるのは担任である私としてもある程度知ってはいたがね…」

 

 

「は、はい…」

 

 

 

「で…何科かな」

 

「え?」

 

 

「雄英は何もヒーロー特化の高校じゃないでしょ?サポート科、経営科、なんなら普通科もあるし…」

 

 

「ヒーロー科…です…」

 

 

「…」

 

 

「どうして?」

 

 

 

「え…どうして…て言われましても…」

 

 

「だって君…」

 

 

 

「無個性じゃん」

 

 

 

 

 

国立雄英高校は偏差値70以上で入試倍率300倍という他の高校より髄を見ない超名門校である。

『一流ヒーローになりたいのなら、雄英に入れ』と言われる程、数多のプロヒーローが排出された登竜門だ。

 

進路面談でそう言われた時、僕は何も言い返せないでいた。創立から今まで無個性で卒業したヒーロー科の人は今まで一人として存在していない。そう、ましてやこの個性至上主義社会であるこの日本で個性を持たないというのはそれ程の壁が存在する。

 

そんな事を言われるのが意外たった訳ではない。むしろ予想内というか、「まぁ、そうだろうな」という感覚だった。捨てきれない夢とその変えられない現実の板挟みにあう僕は今どんな人間になりたいのか分からなくなっていた。

 

 

 

だが、そんな僕を変えた“運命の日”は朝の不穏なニュースから始まったんだ

 

 

 

 

 

『今日未明、静岡県〇〇市にてヘドロ状のヴィランによって相次いで被害に遭う事件が多発しており______」

 

 

 

 

「確か…ここって隣町だったよね?帰り、特に気をつけてね…」

 

 

「うん、じゃあ行ってくるよ…」

 

 

ヴィランに襲われる、なんてこの世界がすっかり珍しくもない話だ。でも、僕が気にする事はない。この世には強く逞しいヒーローが沢山いる、ヒーロー飽和社会と揶揄される程秩序を守る人達に囲まれて生活している。きっと大丈夫だ  

 

 

 

 

と、思っていた矢先だった…

 

 

 

まさか、本当に…

 

 

 

 

 

 

『ァァァァァァァァァァア…!!』

 

 

 

 

いつもの下校帰り、そこで通る田等商店街が賑やかだった風景とは真逆に炎と瓦礫に包まれた地獄のような光景が広がっていた。

それは、ど真ん中にいる気色の悪いヴィランの仕業だというのは直ぐに分かった。

数名のヒーローが駆けつけ現場にいるものの人質がいる事で下手に動けずにいた

 

 

「つーかあのヴィランってさっきオールマイトが追ってなかったか?」

 

 

「え!?オールマイトが!?」

 

 

 

 

大人の人達がその話を聞いた瞬間、僕は耳を疑った。

だって…もしそれが本当だとしたら本来はもうとっくに来ているはずなのに…彼の姿は見当たらない

確かオールマイトの個性の超パワーによる飛行速度はジェット機以上のスピードだから、この県の何処かにいるとしたらものの数分で現着するはずなんだ…!

 

 

そうして僕が推測に頭を回していた時、人質の姿を見えた。目を丸くした

 

 

 

 

「(かっちゃん!?)」

 

 

 

僕の幼馴染で、自分が憧れている友達。なんでも出来て、僕とは違い派手でかっこいい個性を持っている自分とは対極にいる人物…そんなかっちゃんがヘドロの中に今でも溶け込まれそうな時…彼の顔は今まで見ていた悪態のついた顔ではなく、心の底から助けを求める“顔”をしていた

 

そんな姿を見たとき

 

 

一歩、一歩と前に踏み出していく内に

 

 

「あッ!!ちょっと!!」

 

 

「お、おいッ!?死ぬ気かよ君ッ!!」

 

 

その時はもう、訳もわからず走っていたんだ

 

 

「デッ、デクウッ!!」

 

 

「あぁッ、あ、あぁぁあッッ!」

 

 

かっちゃん、確かに…僕なんかがヒーローになっても何も出来やしない…ここにきて更に身を持って知ったよ。

ていうか、やらなくても考えればすぐ分かるけれど…

 

 

「なんで‼︎テメェが‼︎」

 

 

「な、なんでって…足が勝手に‼︎わ、分かんないけどぉ‼︎」

 

その時色んな光景が駆け巡った。無数の感情と言葉が嵐のように渦巻いていたが、その時僕は咄嗟にこう口に吐き出していた

 

 

 

 

 

 

 

君が、助けを求める顔をしていたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまらんな」

 

 

「…はぇ?」

 

 

 

次にいたのは知らない天井、というか…知らない闇のような空間だった。人というのは極限状態に陥った時、幻覚や走馬灯を見てしまうのだろうか…そういうのを本や授業を見たような気がする。でも、そうじゃないというのは直ぐ分かった。何故なら僕の目の前には騒々しい死骸のよう山が乗った上に、一人の男が座っていた。威圧感を醸し出すその人は僕に向かってこう吐き捨てる

 

「受肉には成功したという事はある程度オレに対する耐性があるという事…なのだが、よりにもよって何の力も持たぬ空虚の小僧とは」

 

「実につまらん…」

 

 

 

その人の第一印象は「怖い」、「分からない」、「殺されるかも」

 

おおよそ好印象とは言えない発言を僕に投げかける彼に僕は今何が起きているのか分からない中、それは現実のようで何かとてつもない物を見させられている感覚であった。

 

 

 

それがその人と最初に出会った時の、記憶だ

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「宿儺、呪物になる感覚はどうだい?」

 

 

「何ともない、今まで通りだろう」

 

 

仮想の鬼神“両面宿儺”。個性社会よりも遥か千年前にその名を轟かせた伝説の術師でありそれは実在している。そして、その光景は呪術全盛とも言われた平安の時に二人の術師が忌々しい雰囲気を放つ祠の中で儀式のようなものを執り行っている。

奴の名は羂索。謎多き人間であり、奴の目的なぞ俺が知るよしもない。見る度に呪術について研究を熱心に進めるが、何故そのような事をしているのかは奴自身にしか分からない事だろう。はっきり言って気持ちの悪い奴だ。しかし、今の俺はそんな奴とある“契約”を交わしていた。

 

奴は研究の末に“呪物化”によって人間を永く生きる手段を確立した。それは所謂魂の保存であり、それを含んだ人間を“器”として新たに再生を可能とする羂索独自の転生術だ。

 

「へー…僕はやった事ないけど、これは魂を等分割する訳だから少なくとも五感になんらかの変化を及ぼすと思っていたのだけれど」

 

 

 

「…」

 

 

「まぁでも、これで君との“契約”は成立って事だよね」

 

 

 

「ふん…」

 

 

「貴様がそのような技術が出来るという事があってのこの交渉だ。勘違いするなよ」

 

 

「分かってるよ」

 

 

「でも意外だね。君は誰かを頼る事も、縋る事すらもあり得ない。なのに…」

 

 

「何故君がこのような事を望んでいる?」

 

 

「…取るに足らんものだ」

 

そう、俺が生きるのは俺の為であり誰が為のつもりなど毛頭ない。俺の為に喰らい、必要であれば殺す。それが俺の身の丈であり俺にとって“ソレ以外”はどうでもよいものだ

 

 

「理想だの、夢だの…そんな矮小な事でない」

 

 

 

「人間の刹那はそれぞれ違う」

 

 

「ただソレを喰らう、それだけだ」

 

 

 

死ぬまでの暇潰し。俺はその時楽しくてしょうがない…身に秘める未曾有の呪いを何かに吐き捨てる事で、俺は欲求を満たしていたのだ。だが、まだまだ足りない…その腹にはまだまだ呪いが潜んでいる。

 

 

そう…鏖殺だ。まだ俺は殺し足りない、まだ呪い足りない。この力が俺自身を焦がす前に…

 

 

「ほぉ」

 

 

俺が目覚めたのは、とある人間に受肉した時だった。羂索は魂を他の人間に移植するのは初めてだという。だがこれは紛れもない“成功”と言えるだろう。

 

 

「コイツか…俺の器となる人間は」

 

それは、奴が4歳の時に受肉を果たした。どうやらソイツは何も力を持たないただの雑魚だ。

 

「なんだ、至って貧弱な小僧ではないか」

 

 

 

「羂索め、奴は何故このような人間に受肉したのだ…?」

 

 

奴の考えている事は相変わらず分からない。俺は生得領域の中で、苦虫を噛み潰した顔をする。しかし、俺の頭の中にある考えが一つ浮かぶ

 

 

「ククク…いい事を思いついたぞ」

 

 

「コイツ、いやこの世界はどうやら呪術を知らぬ者どもが大半…別の異能が発現した事による呪術師の減少が原因だろう」

 

 

ヒーロー社会とも言われたこの現代はもう俺の知る世界ではない。それは時を越え千年も経った世は生活や情勢も大きく変化していた。それならば好都合、この小僧を騙す事は容易である。

 

 

「つまり、コイツは俺の存在はおろか呪術の知識すらも持っていない」

 

 

「どうせだ、痛ぶるついでにコイツの身体を利用してやる」

 

 

 

「禍々しきこの“呪い”を受けてみろ、小僧」

 

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