□38 もう二つの終わり
遠く離れた暗黒星団。
ワープガスの実験によって発見されたその星団は銀河系から遠く離れた人類や宇宙人が何時到着するか分からない場所に存在していた。
暗黒星団の中にある天上人の秘密実験場。
そこはヘブ長官のみが知る秘密の実験場でもあった。
この事実一つをとってもヘブ長官がいずれ天上人社会においても内乱を引き起こそうとしているのは確かだった。
小惑星を改造して内部に作られた秘密実験場は外から見ただけではそこに何があるのか誰にも分からなかった。
そこには作業用のロボットの他には一人脱出させられたヘブ長官の息子である木鳥高夫(ズル木)=天上人名アプエルがいた。
ズル木「おのれ・・・・・・。おのれ!父を殺し全ての頂点に立つ筈だった我々天上人から全てを奪った奴らめ・・・・・・」
ズル木の瞳には狂気に溢れている。
ズル木「復讐だ!!何年かかってもいい!僕が死んでも構わない!あいつらに復讐してやる!!僕こそが劣った奴らの支配者に相応しいんだ!」
ズル木は一つのカプセルの前で足を止める。
カプセルの中には何か生物の破片が入っている。
ズル木「密輸業者から入手したゴゴロンゴ星に住む不死身の寄生生命体ダンボコのDNA・・・・・・。これを使えば・・・・・。この生物のDNAと僕のDNAを合わせた新たな寄生生命体を作り出す!」
そう言ってズル木はもう一つのカプセルに自らが入り込む。
ズル木「僕の想いを宿した新たな寄生生命体を誕生させる。彼らはやがて奴らを支配下に置くだろう。僕には分かっている。そうだ。僕の思いを宿したお前達の名はヤドリだ!!新たな種族ヤドリの礎と僕はなるんだ!」
叫びながらズル木の入ったカプセルに液体が流れ込む。
やがてズル木の姿は液体に紛れて見えなくなった。
これからズル木の身体から少しずつ細胞が抽出されダンボコや他の生命体のDNAと融合して新たな生命が作り上げられて行く。
生命の営みを経ずに自然ではあり得ない異形として現れる生命。
本来受け継がれる事の無いズル木の持つ怨念とも言える執念は受け継がれる筈がなかったのだが新たな生命ヤドリに受け継がれて行く。
それ程にズル木の支配欲は強かったのか。それこそ神のみぞ知る事だ。
このズル木の行動が未来でのび太達が出会う敵、ヤドリの始まりになろうとは、この時は誰も気が付く事は無かった。
やがて時は流れて22世紀のハテノハテ星雲にヤドリは侵略を開始した。
しかしドリーマーズランドに来ていたドラえもん達によってヤドリの侵略は防がれる事になった。
ハテノハテ星雲の指導者とも言えるドリーマーズランドの園長やコスモタイムズのボーム記者の報告を受けて22世紀においてヤドリとの戦い、後にヤドリ戦争と言われる戦いが始まった。
ヤドリは銀河の数カ所に拠点を作り出し多くの人々を乗っ取っていた。
戦争が始まると対処法である真空ソープに対抗する為にヤドリはロボットを乗っ取って戦力としていたが、ヤドリと言う寄生生命体の正体を掴んでいた人類側の優勢だった。
ボーム記者が持ち帰ったヤドリの死体からDNAが解析されてヤドリが天上人と
暗黒星団にヤドリの本拠地があると掴んだ星間連合の艦隊が遂に攻撃を仕掛けた!
本拠地を攻められ遂に一部のニムゲは逃亡しあるいは玉砕した。
統制を失ったニムゲは次々と駆逐され遂に本拠地である天上人の秘密実験場へと乗り込んだ兵士達。
その中には従軍記者に志願したボームの姿もあった。
彼らは遂にヤドリを作り出す中枢のヤドリを作り出すヤドリの人口子宮とも言える設備を発見した。
兵士「速くこれを破壊するんだ!」
??「ヤメロ!コレヲ破壊スルナ!」
ボーム「この声は?」
??「我ハ、ヤドリ中枢。我コソガ全テノ宇宙ヲ支配スルノニ相応シイ存在ナノダ」
ボーム「まだそんな野望を抱いているのか!?」
??=ヤドリ中枢「ナニ?ソンナ野望ダト?」
ボーム「そうだ!お前はまだそんな野望を抱いていたのか!天上人アプエル!」
ヤドリのDNAを検査した結果、ヤドリが天上人アプエルとダンボコのDNAを掛け合わせた合成生命体だと既に判明していたのだ。
ヤドリ中枢「我ヲ知ッテイルノカ!?」
ボーム「いや。最早アプエルの成れの果てか。時代遅れの野望を振りかざすお前達の存在は時代によって淘汰されるべきなんだ!天上人の末裔としてお前達の最後を見届ける!」
ヤドリ中枢「ヤッヤメロー!?」
そんなヤドリ中枢の言葉を無視して星間連合の隊員達によって天上人の秘密実験場は爆破され遂にヤドリは滅亡したのだった。
天上人の末裔であるボームがそれを見届けたのは皮肉だった。
惑星ニムゲ。
アニマル星、ニムゲ同盟、ニムゲ連邦の共同体であるニムゲ共同体によってこの星には緑が蘇りつつあった。
地球を追放された天上人と名誉天上人達も自らの始祖の地である惑星ニムゲの植林作業や汚染除去の作業に従事していた。
その中に名誉天上人だったグリオもいた。
呼び出されたグリオが通信室に入り席に座ると通信モニターに出木杉の顔が映った。
出木杉「お久しぶりです。グリオさん」
グリオ「出木杉君か。私に何の用だ?君を洗脳した相手に何か言う事があるのかな?」
出木杉「はい。実は・・・・・。パルパルさんが亡くなりました」
グリオ「!? ・・・・・・・。そうか」
出木杉「グリオさんは以前、パルパルさんの事を自分よりも絶滅動物保護州を運営するのに相応しい人だと言っていました。だから僕がこの事を知らせに・・・・・」
グリオ「そうか。辛い事をさせたな。ありがとう」
そう言ってグリオは通信を切った。
パルパルの事をかつて殺そうとしたグリオだったが初めからそうだった訳では無かった。
かつて絶滅動物保護州で同僚として働いていたパルパルの事をグリオは高く評価していた。動物の管理官として。
だがドラえもんと会った事で彼女の持つ地上人への思いやりと言った感情を名誉天上人だったグリオには理解しがたい感情でもあった。
彼女がハト派に属してからは大きな溝を感じていた。
キー坊大使暗殺を狙った爆破テロの後、グリオ属するタカ派は直ぐにパルパルのいるハト派に属する天上人を拘束して計画の妨害を防ごうとした。
しかしヘブ長官の調査によってパルパルがメインコンピューター《レテ》が産み出した特別な天上人だと発覚するとドラえもん達と言う計画の障害となる地上人に連絡を取る筈と考えて敢えて泳がす事になったのだった。
本音を言えばグリオはパルパルには死んで欲しく無かったが、地球から地上人を追放して地上を浄化すると言う思想を信じ切っていたグリオはその感情を押し殺した。
しかしパルパルは死んだと言う。
自らの行っていた事は何だろうと自問する日々が続いた。
そんな中で惑星ニムゲにいる天上人や名誉天上人を対象に地球で天上人がテストの為に設置した新型地雷の除去や兵器開発の拠点解体の仕事を行うのならば地球へ一時的な帰還を認めると言う報せが来た。
身体に発信機が取り付けられるが地球に帰る事が出来るが余りにもリスクの大きな仕事である事は明白だった。
二の足を踏む天上人や名誉天上人が多い中でグリオは真っ先に志願した。
地球に置いて彼は黙々と地雷除去に従事していた。
だがその地雷は天上人が作り上げた新型地雷。
除去する事も命懸けだった。
グリオは何度目かの地雷除去の作業中に事故で爆発に巻き込まれ死亡した。
それが彼の償いだったのかは誰にも分からない。
これで完結です。
この作品を考えたきっかけはドラえもんの作中に置いて唯一、天上人の傲慢さに私は腹を立て勝手な事ばかり言って地上人に罪を着せてばかりで具体的に何もしない彼らを傲慢な敵とする事で地球から追放したいと思ったのが切っ掛けです。
この作品の元ネタの一つにはウルトラセブンの名作ノンマルトの使者があり、そこから天上人も実は地球を侵略しに来た侵略者で地上人を支配しているのでは?と言う発想からひねり出しました。
ズル木が融合しようとしたダンボコと言う生命体は藤子F不二雄先生の書いた別作品モジャ公と言う作品に登場する寄生生命体でニムゲとの共通項があるからドッキングさせました。
ズル木の末路は最初からこうと決めていました。