ある日。
いっそ武力で勝てないのかと諦め気味のヘルメット団員は、アリスにオリジナルルールのシャドバを押し付けてきた。
「そこのロリ!今からシャドバで積年の恨みを晴らすぞ!」
「この作品が世に出てから半月しか経ってないです!」
「うるせー!今から説明するぞ!」
ヘルメット団員は声をあげて説明を始める。
「いいか!今からお前はシャドバの他に一つTCGおよびDCGのルールとカードを追加していい!それから勝負だ!」
「分かりました!」
「え、いいの!?」
先生は即答したアリスに聞き返す。
「何か罠があるかもしれないよ?」
「大丈夫です!今のアリスを信じてください!」
「無論アタシはロイヤルを握って、デュエマフォーマットを融合させるぜ!」
「ではアリスの追加フォーマットは第9期遊戯王で!」
「え」
困惑したままの先生はさらにアリスに聞く。
「え、第9期でいいの?リンク使えないよ!」
「リンクなんて必要ありません!」
先生は置いてきぼりのまま、シャドバが開始された。
「先行はもらっていくぜ!ドロー!」
手札は4枚だが、苦い顔をしている。
「くそっ!進化クリーチャーしかいねえ!」
「シャドバってマリガンあったよね?」
「したらこのざまだ!えーい!」
相手は勢いよく先行をもらった割にはなにもできなかったようだ。
アリスのターンが始まる。
「では、アリスのターン!」
手札は5枚。アリスは笑顔。
どうやら、いい手札が揃っているらしい。
「では、アリスは増設されたペンデュラムゾーンを使用します!片方には覇王門零を!もう片方は覇王門無限を!」
フィールドには、輪っかみたいなものとねじれた輪っかみたいなのが二つ出てきた。
「アリスはこの二体で、ペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!
現れろ!ヘヴンリーイージス×3!」
「我は触れられざる光輝」
「我は触れられざる光輝」
「我は触れられざる光輝」
「うるさいよ!」
ムキムキマッチョメンのイケおじ?の威厳ある三重奏はうるさくて当然だった。
そして、どう考えてもあり得ないこの同時召喚。アリスはなにをしたのか。
効果は大体すっ飛ばして、必要なことだけを書く。
遊戯王を知っていればこの説明は必要ないのだが。まず遊戯王には《ペンデュラム召喚》という召喚法がある。
特殊召喚の一つであるこれは、まず《ペンデュラムスケール》なるものを用意することが必要だ。
ペンデュラムモンスターという専用のモンスターがいるのだが、このペンデュラムモンスターはモンスターカードと魔法カードを併せ持った存在。今回相手がデュエマのカードを持ってきていたので、デュエマで例えるなら*1ツインパクトカードに近い。
そのペンデュラムモンスターにはスケールという概念があり、真ん中左右に矢印と数が書いてある。これをスケールと呼ぶ。
それを左右のPゾーンにおいて、ペンデュラム召喚が出来るのだ。
ペンデュラム召喚とは、その数字の間のレベルをもつモンスターを手札もしくは表側表示でEXデッキに送ったペンデュラムモンスターを召喚することができる。ちなみに数字の超過・未満が範囲内。
この場合、アリスが出した覇王門零のペンデュラムスケールが0、覇王門無限のペンデュラムスケールは13なので、この場合はレベル1〜12のモンスターが召喚可能だ。
ヘヴンリーイージスはシャドバのカードであり、コストは9。しかけてきたルールでは、コスト=レベル換算となるようで、それによりレベル9の効果モンスターとしてヘヴンリーイージスは判定された。
故に手札に3枚来たヘヴンリーイージスを、そのまま召喚したのである。
「げ、げぇ!やっぱり禁断入れてきたほうが良かったか……?」
「なんで入れてないの」
「だって!禁断を入れたら負けるんだもん!」
「なにも考えずに全開放すると除去踏むからね。ちょっとだけ焦らそう」
ヘルメット団員の嘆きを聞いても仕方ないと軽く流した先生は、シャドバがメインのため召喚酔いで攻撃できないヘブンリーイージスを三体並べてアリスはターンエンド。
そのまま相手のターンになるが_______
「くそっ!アタシは
「アリスのターン!」
シャドバがメインだと体力は20。ヘヴンリーイージスの攻撃力は8の3体で24。
「アリスはダイレクトアタック!24点でおしまいです!」
「くそおおおおおおおおおーっ!」
ヘルメット団員はそのまま吹き飛んでいった。
アリスの勝利である。
「やりました!アリスの勝ちです!!」
「おめでとう」
相手が吹っ飛ぶ時に散ったカードが足元に散らかった。
「えーっと。ああやっぱレッドゾーンか。まあ、ん?」
ついでに落ちてきたクイックブレーダーを見る。
火文明でコマンドを付与された状態で、疾走を持っていたようだ。
「こっッッッッッッわ!?なんだこれ!」
「どうしたんですか先生!」
「これ見てよこれ!」
アリスも驚く!
「え、なんですかこれ!ひどいです!」
相手がしたかったこと。
先生がいったレッドゾーンというのは、進化クリーチャーの一つ。
普通の進化クリーチャーとは違い、条件を満たした自身のクリーチャーが攻撃する際に本来召喚に必要なマナを必要とせず重ねることができる《侵略》という効果を持っている。
クイックブレーダーはシャドバのカードだが、コスト1で疾走を持っている。この疾走とは、本来シャドバでは召喚してから次のターンでないと攻撃できないという召喚酔いの概念を無視して攻撃できる能力だ。いわゆるスピードアタッカーである。
レッドゾーンやレッドゾーンZ、ターボ3(デュエプレ版)を抱えていたヘルメット団員は、これらの侵略条件である『火文明のコマンド持ち』という条件に当てはまるものをクイックブレーダーに付与しており、言ってしまえばクソでかいクリーチャーを先行1ターン目に出してシャドバではあり得ないはずの12000ダメを与えてアリスを倒そうとしたのだ。
しかし、当の本人は手札事故を起こしてしまった。
デュエマはルール上、手札5枚にシールド5枚で初めの山札が30枚になる。故に基本手札事故は他カードゲームよりは少ないのだ。しかしシャドバは引き直しアリとはいえ初手3枚、しかも先行だと1ドローなので手札は4枚。あとは全部36枚の山札の中。
禁断と呼ばれているカードがあれば、初手6枚禁断というカードの上に重ねる《封印》でデッキ圧縮も可能だったが、この禁断は扱いを間違えると特殊敗北してしまう。それを幾度となく味わってきたからか、仕掛けた本人はデッキに禁断を入れなかった。
結果、クイックブレーダーを引くに至らず手札事故を起こした状態でスタート、運よく初手3イージスをかましたアリスがそのまま勝利する流れとなった。
「結局なにがしたかったんでしょうね」
「私にもわからないけどまあ_____いいカード落としてくれたし拾っておくか」
「傷もつけちゃったので泡銭ですね____」
「もう売る算段つけてるの?」
アリスは笑顔で言う。
「え、知らないんですか?flat-工房のD.U.店新しくできたんですよ」
「マ?じゃあこれら売りに行くか」
「そうしちゃいましょう!もしかしたらアッシュレイダーより高く売れるかもしれませんよ!」
「相場わからないけど___まあいっか」
二人は、その店へと足を運んだ。
カードは傷ついているが、空は青いのである。
※人のカードを勝手に売るのはやめましょう