ある日のこと。
「どうにかならんのか先生!」
「理事さん!?世の中にはどうしようもないってことあるの!でも今回は逃げれるじゃない!」
彼らは兵力が不足している状態でグレゴリオと対峙している。
いや、本来は対峙する予定はなかった。しかし、何者かにミメシスのミメシスを譲渡しており、それがグレゴリオだったのだ。
ただ、これはただのグレゴリオではない。
金色で結構な人形であり、聖歌隊が思った以上に清麗な見た目をしている。ちなみに神秘属性である。
デバフ/バフを調整しようにも生徒がアリスだけではどうしようもない。
「こういう時にナイトシーカー三人とかいればなあ!」
「世界樹の話をしてないでなんとかしろ!」
「そういう理事こそ文句ばっかり言ってないで早くIフィールドバンカーしてよ!」
「あれ短いぞ」
「長えって!スモーのネガキャンしてないでさっさと攻撃する!」
理事と言い合いをしていると、先生の横をアリスが通り過ぎた。
何か色々バフを持ってきている。
「え、今から何するの!」
「全員吹っ飛ばします!」
アリスはまず、旗を掲げた。すると、赤いバフがアリスにつく。
彼女はそのまま杖に持ち替えてから掲げると青い紋章が浮かんで光った。そのままそのまま流れるようにクラゲのような盾を掲げてバフを盛り、霊薬をがぶ飲みし、下に何かをやってグレゴリオを拘束。あまり動かないキャラなので意味は薄いが、鍵盤が変わらないらしい。
「準備完了です!では____」
アリスが杖を構えると、青い光が収束する。歩きながら微調整をする彼女は、溜まった段階で叫んだ。
「全力全開!スターライトブレイカー!」
そのまま、青い光が束となってグレゴリオに飛んでいった。
デバフは拘束具のみ、とはいえバフもないグレゴリオにはダメージがあまり通らない____はずなのだが、普通に火力が出てるではないか。
「ええええええー!?」
「先生は聖歌隊を!」
「私は武力を持っているわけないでしょうよ!」
「仕方ない!各位突入!」
理事の私兵がそのまま突入し、聖歌隊と激突する。
この時、グレゴリオらしきものの聖歌隊をダウンさせるとシールドが手に入っていき、全員が段々と猛攻に耐えられるようになっていた。
「ん?ああ!なるほどな!」
先生はそのグレゴリオらしきものの正体を看破したらしい。
大人のカードを取り出し、天に掲げる。
「こい!セナ!トキ!」
生徒を呼び出すと、生徒が現れた。
「死体ですか?」
「ぴーす」
「二人とも!これ持って!」
呼び出した先生は、セナに琴を、トキに帽子を渡した。
「どうすれば?」
「セナはそれ適当に弾いて!」
「ん、先生。どうすれば良いのでしょうか」
「帽子なげて適当に踊って!」
二人は先生の指示通りに動き始めた。
すると、アリスにまた別のバフが掛かる。相手のグレゴリオの同類は、そのバフを受けたビームを受けてまたダウンする。バリアがおおよそ一万になったところで、相手は聖歌隊の精霊のようなものを取り込み状態変化。
「そうでした、こいつ強制変化です!」
「バフ掛け直し!?」
「いや、霊薬飲んでもう一度アズールします!」
まるで赤子のような姿になったグレゴリオもどきは、そのままずっと何かを待っている。
アリスは霊薬を飲み、セナとトキは琴と帽子を荷物に戻してから銃器で攻撃を始めた。
相手のゲージを削りながらできる限りバリアの回収をしつつ、アリスは準備を整えた。
「もう一度行きます!」
「いけっアリス!」
「全力全開_____」
杖の先端から、大きな彗星の光が放たれる。
「スターライト_____ブレイカァァァーッ!」
その光は真っ直ぐグレゴリオを名乗るものに飛ぶ。
セナとトキのバフは凄まじい。
相手に出てきた靱性ゲージを割られダウンするグレゴリオのようなものは、そのまま永遠にアズールで削り続けるアリスのせいで動けない。動こうにも、セナのバフによって付けられた靱性ゲージを削られたことで発生した弱点撃破状態を回復できないでいる。
そうこうしているうちに、アリスの攻撃で相手は耐えきれずに消滅した。
空いた空間には、陽が差し込んでいる。
「_____やりました!」
「やった!やったぞ!」
突っ込む暇もなく大変だったことをやり遂げた先生たちは大はしゃぎ。セナとトキは用事が終わったからと戻っていくが、先生は理事とアリスと手を繋いで踊ってる。
「よっしゃー!やったぞー!」
「よくやったな!これで我々の強さを相手に知らしめることができたぞ!」
「アリスたちは最強です!」
一通り踊る。
だが、踊った後_____
「なんでお兄様がグレゴリオ判定なの?」
先生は無表情で疑問を口にした。
グレゴリオとは言っていたけど、どう考えてもあれはディエスドミニ、スターレイルの週ボスである。バフ/デバフの数など関係なしに、殴って弱点撃破状態にして、バリアを回収して耐えながら戦っていくボスだ。それがどうしてグレゴリオという名前でここに来たのか。
これも神秘の仕業なのか。
「うぅむ、こちらでもわからん」
「アリスもわかりません。何が起こっているのか」
「先生でわかんないんだもの、アリスもわからなくて当然だよ。しかし___随分と褪せたなのはだったな。え、いつそれ覚えてきたの?」
「ケイが教えてくれました」
「また勝手に全盛期復活してる____」
敵も味方もフリーダムに復活しすぎである。それ故に、二大陣営の対立でなく、三つ巴のような様相を呈していた。
「しかし、まあ理事も素直に協力してくれたよね」
「最初に協力を要請したのはこちらだからな。兵力が足らんから手を貸せと言って、よくそちらこそすぐ承諾したものだ」
今回の作戦は、実はカイザーPMC理事からシャーレへの依頼だった。
無論ゲマトリアに与する組織ともあれば普通警戒はするのだが、アリスとの共闘の例がありあまり無碍にできないのが実情である。
先生の独断では今後の信用問題となったので、ある程度生徒や連邦生徒会という組織に依頼して、護衛としてアリスを連れていくことで一旦は"調査"という名目で同行することになった。
理事の方も当然調査という形をとっており、殲滅することは微塵も考えてなかったが今回は急にあれが出てきたのでどうしても対処する必要があった。大人のカードを切るしかない、というところまで追い詰められたのは大人同士での把握不足が響いた形だ。
「すまなかった先生、もう少しこちらで調査していれば」
「こちらももう少し生徒を連れてくればよかったね」
不測の事態に対しての対策不足も、また反省点である。
しかし、今回は勝ったのだ。少しぐらいは喜んでもいいだろう。そう思った先生は、笑顔に戻る。
「とりあえず今回は勝てた。もう少し、未知のことには慎重にならないとな______」
「そうだね。じゃ、帰ろっか」
「はーい」
先生たちは、そのまま調査跡を離れる。
「そうだアリス、それってどこで手に入れたの?」
「これらすべてはトリニティからミレニアムに帰る際に、シスターフッドの皆さんから頂きましたよ!『あまりに古いものだからもし使うならどうぞ!』って。サクラコさんから」
「彼女らしいね。でも、中世ファンタジーを作るんだったら絶対に損はない資料をタダでもらえるなんてすごいね」
「治安維持の協力のお礼なのでタダではないですよ!」
「それをタダだと思わないのはいい成長の仕方をしているよ」
「ただより高いものはない、か。行動の価値を見極めれるように教育しているのだな、先生は」
「大人は何にも価値を見出す。煩わしいこともあるけど、その価値を見誤らなければ間違いない基準になり得るからね」
三人は、晴れた道を歩き続ける。
空は厚い雲から陽が差し込む形だ。そして____
「先生!」
「あ、雪だ」
明るい雪が降り始めた。