アリスたちは、カタコンベに来ていた。
理由としてはアリウスの仕事がある先生の護衛役だ。無論、近頃蘇ったユメもいる。
「こんな物々しい場所の先に学校なんてあるのー?」
「あるんだよ。私もここ最近知ったけどね」
ユメを連れ回している先生ものんびりしながら答えている。
「じゃあ、あの神父さんとも知り合い?」
「神父?居るわけないでしょ私やプレナパテス以外の神父なんて……」
先生の視線の先。
アリウスへと繋がる道には、一人の神父がいた。
片手にそれぞれ銃と斧を持っている。
「ほら、居るじゃん」
「居るじゃんじゃないよ大変だこれ」
その黒い神父は何も言わないままに、アリス達に斧を振ってきた。
ユメと先生が左右に避けて、アリスが誘導するように下がる。
「どうしますかこれ!」
「戦うしかないだろうね。よし、アリス!」
「今日は武器をたくさん持ってきましたけどちょっと取り出す暇がありません!」
「アリスちゃん!こっちにそれ投げて!」
「はい!」
アリスはユメに光の剣を投げた。投げられた方はそれをキャッチすると、神父に構える。
「さあどこからでも掛かってきなさい!このユメ先輩が全員ぶちのめしてあげる!」
「ねえ、それ使えるの!?」
「撃ったら腰をやりそう!」
「ダメじゃん!」
「殴ればいい!」
その間にアリスは準備をするようだ、まあ丸石ブロックを積み上げたり地下墓地の天井をある程度掘ったりしているが。
「何してるの?」
「高さが大事です!」
「あーもうめちゃくちゃ。よし、ユメ!その男の攻撃を耐えてくれ、アリスの準備が出来次第次のアクションを伝える!」
「はーい!」
そのままユメは神父との殴り合いを開始した。
相手は斧とショットガンだ。光の剣では攻撃範囲的に分が悪い。
アリスも殴りかかるという発想そのものはあったが、下手に殴り合って返り討ちに遭ったら目も当てられないことは理解していた。その対策がひたすら上に丸石ブロックを積むなのは理解はできないが。
神父はショットガンで相手を牽制しようとするが、ユメは元々ディフェンダー。盾になるものがあれば、そもそも活躍できるような人間だ。うまいこと光の剣の影に隠れてやり過ごしながら、斧の攻撃はそれを振って対応。なんで死んだのかわからないくらい強い。
「この強さ_____ホシノが熱中するわけだ!」
「なんか指示出して!あと状況確認!」
「あっごめん。とりあえずそいつ以外に敵はいない!状況が変わり次第言うから!」
戦闘は続いている。
斧とショットガンをいなし続けて、適度に光の剣で殴りかかるユメ。
相手の男は何も言わないにしろ着実にダメージが蓄積しているようだ。このままでは分が悪い、そう思った神父は斧を長くして大きく振り相手を破壊する方向に変更する。
「わあ!」
「大丈夫!そのまま避け続けてくれればいい!」
「避け続ける!?無茶言わないで!」
「無茶でも何でもやるしかないだろう!」
斧を振ってくる神父は、何度も強く振っている。その度に周りの地面も、誰も悼みに来ない墓も欠けていく。
ユメも相手の少し早い動きに合わせて避けたり防いだりしていくが、流石に普通の盾と違って取り回しが悪い。当たり前の話だが、大量に回路と機械仕込んでおいて取り回しが良くなるわけがないのだ。
光の剣に斧が刺さる。
「やっば!」
ユメは即座に手を離して相手に光の剣を押し付ける。すると、ショートした部分から爆発して相手にダメージが入った。
斧はその爆発で破壊されたが、ショットガンは無事らしい。爆発の破片が飛んできて手に傷を負ったユメの代わりに、先生は煽る。
「おいクソ神父さっさと撃ってみろよ!」
「先生!?危ないよ!」
相手は銃口を先生に向ける。
「撃ってみろよヴァアアアアアアーカッ!」
無論、躊躇などなく銃弾は放たれた。
だが先生は勿論シッテムの箱を持っている。弾かれるように銃弾は軌道を逸らし、彼は傷つくことはない。
「ほら!もっと来い!」
先生はゆっくりとアリスが立てた丸石の柱に寄る。
相手はまだ銃を持っていて、ゆっくりと先生に近づきつつあった。もっと近づけばあんなバリアを無効化できる、そう考えた上の接近だ。
しかし、先生はその柱から動かなかった。
「先生!」
「ユメはその場で待機して!」
先生に神父が向かってくる。ただ銃にしろ手にしろ、彼に届くことはなかった。
「……今です!」
準備が出来たアリスは丸石の柱から急速落下。手にはハンマーみたいなのを持っている。
彼女がそれを振り下ろすと、ものすごい衝撃が無尽蔵に散った。
「わっ!?」
先生は耐えきれずにすっ飛んで、ユメは何が起こったのか見えないほどに視界が遮られた。
視界が元に戻ると、少し荒れた地面にさっきの神父が倒れている。弾き飛ばされた先生も
「はあ……はあ、なんか倒せたようだね」
「やったね!さすがは先生!キヴォトスのメイン頭脳なだけあるよ!」
「社会のほとんどを作ったのはキヴォトスの生徒達さ。私は外部アドバイザーにすぎないよ」
「アリスのことも褒めてください!」
「よくやったよアリス。ガスコインをメイスでしばいたのはアリスが初めてだ」
「にしても急なエンカウントでしたね、一体どうなっているのやら」
「さあ、分からないね。もしかしたらガスコインの複製だったのかもしれないよ。ゲマトリアお手製のね」
「なんのために?」
意味のわからないエンカウントに困惑していた三人に、目的地がある方から足音が聞こえてくる。
振り向くと一人、見知ったような顔。
「先生、大丈夫か?大きな音がしたから来たのだが」
「サオリか。やっほー、今丁度騒ぎが終わったところだよ」
「そうか」
彼女は安堵の表情を見せる。
「ああ、そうだ。一つ質問なのだが____その隣の女性は?」
「女性ってほど歳はいってないよ!まだ、少女だから!いい!?サオリちゃん!」
「うん?」
「私は18歳!」
「二年くらい経ってるのではないか?」
「じゃあ20歳」
「制服を着る歳ではなくなってないか?」
「行方不明の二年は留年ってことで」
「もう死亡届が出されているのではないか?」
「イーヴィル・ヒートか何か?」
「いいじゃん!花のJKやっても!」
ユメの悲痛な叫びが聞こえた。
先生はどう考えても若いからあまり彼女に対することは頭にない。
「ところで、ユメ」
「なーに?」
「光の剣が壊れたこと、どう言おうか」
先生達ができる最大限の闘い方をしたものの、斧のせいで破壊されてしまった光の剣。
パーツが転がり、配線は剥き出しになり、二割は欠け落ちている。
「そうだったね。ごめん!アリスちゃん!」
「ごめんねアリス、アリスの準備で預かった光の剣を壊してしまった」
「あー!アリスの光の剣が……いや、大丈夫ですよ。あとで直せばいいですから。アリスは直せないほど精巧です、アレも負けず劣らずですがちゃんとした使用方法で壊したのです。それに曲がりなりにも相手は未知の存在、むしろあれの破壊だけでみんなが無事ならいいことではないですか。喜んでユウカもお金を出してくれるはずです」
「そうだね。ありがとうアリス、温情に感謝する」
「気にしないでください。では____」
アリスは欠けた光の剣を持ち上げる。
「行きましょう!仲間も来ましたから!」
「そうだね」
「はーい!」
「ああ、そうだな。行こう。姫も気を揉んで待っている」
そうして四人は、薄暗い地下墓地を通ってアリウス校区へと出た。
「あ!」
「わあ……!」
「すごいなこれは!」
そんな四人を迎えたのは。
雲の隙間から射す光と、ダイヤモンドダストの雪景色。
歩くのには困難を極めそうだが、それゆえに総ての子供心をくすぐる柔らかい絶景だった。