先生はアコを散歩させていた。
あまり乗り気では無かったものの、賭けの勝ち負けとは厳粛であるべし。つまり守らないといけないという意識からどうしてもアコの罰として散歩プレイをする羽目になる。
「よぉ先生!捜したぞクソ野郎!」
「あーこいつこんな羞恥プレイやってるんだ!?じゃあさっさと潰して写真広めないとなあ!」
「やっばどうしよ。アコ、流石に立って戦っ……」
「わふ!」
急にアコは口に剣を咥えて突撃していった。鋭いつめやピントレンズなども持っている。
「あれ、いつのまに渡したっけ……?」
先生が困惑している中でアコは暴れる。
横乳はみ出てる犬プレイ趣味の少女が急に暴れる光景に相手は怯んでいるが、アコは咥えている剣を光らせて振る。
すると、周りに金色の円が出来た。それで切り付けられた相手は怯んで止まっているが、その間に円の中から無数の斬撃が。
「いっでえ!?」
体力をかなり削られ動きも止められた不良だったが、アコは止まらない。四足歩行のまま相手へ吸い付くような突撃をかました。
「いっだあああああああっ!?」
アコの攻撃は、まるで相手の防御なぞ無いかのようなクリティカルダメージを出して相手を撃破。他のメンバーも寄ってくるが、もう一度固まった段階で今度は普通の青白い円を描く。
相手も怯んだがその隙にアコは突撃。もう一度防御を全無視したクリティカルで思い切り破壊した。
「何だこれ!?雌犬ってか忠犬だぞ!」
「忠犬な訳あるか!」
「どうする!?」
「スタングレネードで止める!生身で食らったら怯むだろ!」
そんなことを話していた不良の集団は、スタングレネードをアコへと投げた。
防ぐ手段のないアコはその場で受ける。ダメージはあるがさして大したことではないらしい。
「これで怯んでるうちに逃げ」
不良の背を飛び越えて、目の前にアコがやって来た。明らかに相手を狩ろうとしている目。咥えている剣はかなり光っていた。
「待って待ってなんでスタングレネード生当てしてお前無事だし復帰してるんだ!?」
「何言ってんだこのままだとやべえぞ逃げるぞお前!」
「ああ!」
そんな不良達は、アコとは反対方向へと走って行く。先生すらもすぐに追い抜くほどの速度だったが_____
彼女が少しステップすると移動速度が上がり、不良達へと近づく。光は集まったままの剣を咥えたまま、急にぽんっという音がして相手のすぐ後ろに飛んだ。
「え」
不良達は、拡大した光った剣その剣で斬り裂かれた。血は出ていないようだが、撤退を余儀なくされるほどの大打撃。蹴散らした不良と一緒に、逃げ出していったのだった。
アコは疲れたのか二足歩行に戻って、ちぎった首輪を回収しながら先生のところへ戻って来た。
「プレイの続き……出来なくなりましたね」
「気にするところそこじゃないと思うよ。今のアコ石田三成か何かだよ?」
「持ち物みて何したかもしかして分かってないのですか?」
「何で実装当初のバグザシアンなの」
「羞恥心が爆発してこうなりました」
数度のプレイで最早満足してしまった彼女は、あっけからんと先生に答える。
「というかアコってポケモンユナイト知ってたんだ」
「少しばかり進めようと思って、風紀委員と最近仲良くなった小鳥遊ホシノと一緒にフルパ組んでいきましたよ。プレイ自体はザシアンが出る前からやっています」
「アイテム急所型なんだね」
「近頃はダンベル型もあるらしいのですが急所の方が馴染み深いのでつい」
「私も割とチキンだからダンベル持つと急に弱気になっちゃうの。最初は一積みか二積みで良いらしいんだけどね。レジが出てくるちょっと前からファイター上残りとかするからそこで積むのが良いんだって」
「先生のルカリオダンベル積むの下手すぎてゴールかそくそうちまで積んでたではないですか」
「だっしゅつそうちをつけていると思ってカタカタ鳴ってるの結構滑稽だったね」
「味方の人にピン刺されませんでした?」
「LoLでそんなこと気にしてたらやっていけないよ」
二足歩行でカップルのように二人は歩き始めた。
「最近復帰したんだけど、なかなか環境変わってるね。みんな強くてハッサム使っていったらバレパンの回復量全然追いつかなかったよ」
「メレーはだいぶ性能を求められる時代ですからね」
「それでも変わらないザシアンの安心感はすごいね」
「基本がかなりしっかりしてるので、腕さえあればかなり活躍できるのはいい塩梅だと思います。私あまり使いませんけど」
「アコっていつも何使ってるの?」
「私ですか?今はピカチュウ使ってます。サーナイトを結構使っていたのですけど、あまり取れるような状態ではなくなったので」
「強いと思うんだけどねえ」
そんな話をしていると、目の前にはプレナパテスがやって来た。
「おや、ここに居ましたか」
「任務は終わって今戻るところだよ。そう言うプレナパテスは何でこんなところに?」
「ヒナから先生の様子を見て来てと言われましてね。彼女自体もそこまで心配はしていないようでしたが、私としても色々変わって来てますから彼女の言う通りにしようと思った次第です」
「大丈夫だよ、無事さ。まあ羞恥プレイの最中だったけどね」
「世間体終わりませんか?」
「犬のまま四足歩行で不良を蹂躙したんだ、このアコには狂犬って称号も着いただろうね」
プレナパテスから困惑の声が上がるが、無事なのは確定したのだから問題はないだろう。
「では、私は無事だったと報告してからシャーレへ戻ることにいたしましょう。書類に関してはあらかた片付けてあります。あとはまあ、直近の傾向からして1時間もあれば片付く程度の束が残っています。そのくらいです」
「いつもすまないねプレナパテス」
「前にも言いましたけど、ぼうっとしてても暇ですから。失礼しますね」
挨拶を交わしてから、先生とプレナパテスは別れた。
「で、先生」
「どうした?アコ」
彼女は疑問を先生に投げた。
「さっきの話の内容的に、まだ帰らないってことですか?」
「帰ってどうするのさ、まだ昼だよ」
「そろそろ帰らないと委員長の書類が大変なことになるので……」
「いや、気にしなくていいよ」
彼は言う。
「プレナパテスに彼女の仕事を一部手伝わせているのさ。ゲーム開発部の取材という体でアリスも新武器のテストをやっているんだし、すぐに戻らなきゃいけない理由はない」
「しかし業務としては居た方が」
「アコ」
先生は、アコの肩を抱き寄せてから自分の大きいコートを被せる。
「せっかくだから何処かのレストランにでもいってあったまろうじゃないか。これだけ時間があって、あんなプレイをした後だ。身体を冷やし続けたままっていうのも、あまり良くないだろ?」
「しかし、あのプレイは賭けの結果ですから」
「鞭ばかりでは振るう方も疲れてしまう、飴が無くてはね」
コートを完全にアコに被せた先生は傘を持って、相合傘で雪を凌ぐ。白いスーツだから当然コートを羽織っている時よりは寒いらしい彼を心配するようにアコは言った。
「寒くないですか?」
「ときめいて暖かいアコが居る」
「そんな……いえ、そうですね」
二人はまた歩き始める。
ゲヘナは重厚で鋭利な飾りをした厳かな建物が多い。言ってしまえばドイツ風の風景が続くので、雪が降ればやはり外面に温もりを感じるのは難しい。
しかし、そこから漏れる光は心には温かみをくれる。ならばそれに従って歩き、嗅覚が信じた場所へと進めば幸福のかけらが見つかることだろう。
今日の天気は師走の入り、騒ぎ雪下で蠢く曇り空である。