はい!アリスは戦い方を学びます!ゲームから!   作:らんかん

33 / 85
幕間 蘇った地下生活者/飛翔する隼(上)

 真冬の廃墟は寒く、焚き火をしてもコンクリートを這って吹き荒ぶ風がその暖気を掻き消す。

 

 アビドスという砂の街にも雪は降る、積もるかどうかは別にして。

 

 そんな北風が吹き荒ぶショッピングモール跡の吹き抜けで、人影が中央に二つ。

 

「小生に戦いを挑む、と?」

「ああ、デュエルでね」

 

 片方は地下生活者と呼ばれた男。アビドスの一件で、先生達を追い詰めたゲマトリアと呼ばれる者達の一人。

 

 そしてもう一人は、不良である。アリスに戦いを挑み、一度は代打を使った策略勝ち、一度はアリスと正々堂々とデュエルを挑んで負けている。

 

「あんたは多分、あまり良くない人間だろう。人間ってビジュアルでもないけど」

「シャーレという大樹に寄らない子供が小生に勝つことなど出来はしない、あの男の手の中に奇跡は収束した!だが、貴様はその庇護下にない以上小生に勝つことはできない」

「はっきり言うじゃないか!気に入った」

 

 不良はデュエルディスクを展開。その時に出た微かな光が、彼女の後ろにあるもう一つの人影を捉える。

 

「なっ」

「久しぶりだな、地下生活者」

「貴様は____!」

 

 その影は地下生活者という男とあまり変わりはない偉業。身体そのものは女性の体、ドレスの姿だが頭の白い目のついた翼はまさしく異形だろう。

 

「お前がどう名乗ろうが私の知ったことではない。ただ、お前をここで葬らねば私としても邪魔だ」

「それで小生を倒すためにこんな女を嗾けたと?アリウスのような兵士でもないこの少女が小生に勝てると思っているのか、ベアトリーチェ!」

「チッチッチ、残念だね浮浪者。逆だよ」

「なんだと?」

「私だよ、彼女を使い走りにしたのは」

 

 不良は指を振って言う。

 

「お前がどう言う素性のゲマトリアかは知らない。だが、すでに起こっていた騒乱、カイザーPMCのベアトリーチェ一派が勝手に動いた時のコネを使ってキヴォトスの現状維持という提案でシャーレの地下で拘束されていた彼女を連れ出すことに成功した。ただ、目覚めた後もあまり乗り気ではなかったけど」

「私はすでに負けた身だ。それに今更ゲマトリアに戻ったところで大したものは残っていない。捕虜として機能するのが私にとっても一番いいと判断した。だが、それでもお前を葬らんことにはその平穏を保つことはできないからな」

「ってなわけでお前の____いや、ゲマトリアの十八番、神秘の細工を支えないようなものを作ってもらって今に至ると言うわけだ。私は私の遊び仲間を減らさないためにここで戦うとしよう」

「くくく、ふはははははは!」

 

 地下生活者は高笑い。よほどおかしいと感じたらしい。

 

「その細工をした程度で、貴様に何ができる!運命の歯車に近づいたのは小生!運命を狂わせるのも小生!だがいいだろう、真っ向から叩き潰してやる。小生もこの際小細工抜きで、貴様よりも強いデッキを使えばいいんだからな!」

「私のデッキが分かるのかい?」

「アニメテーマを使うことぐらいしかわからんがそれでも十分!」

「ピンポーン、ま弱いかどうかはこのデュエルで確かめてみるんだね」

 

 両者のデュエルディスクが展開。

 

「デュエル!」

 

 コイントス。

 

 自分が投げて表になった不良は、相手が舐め腐った態度を取るため先行を取る。

 

「それだけ結末に自信があるなら、私が先行を取るとしよう」

「いいでしょう。どれだけ小生を止められる術が出るか!」

「じゃあ行くぞ。私のターン!」

 

 不良の手札。

 

 彼女はRR(レイドラプターズ)と言うテーマを使っているらしい。手札には、RR-ブルーム・ヴァルチャー、RR-バニシング・レイニアス、RR-トリビュート・レイニアス、RR-ファジー・レイニアス、増殖するGの5枚。

 

「私は《RR-ブルーム・ヴァルチャー》の効果発動!自分フィールドに鳥獣族以外の表側表示のモンスターが存在しない時、このカードと手札のRRモンスター1体を特殊召喚できる。現れろ!《RR-バニシング・レイニアス》!」

「小生は手札から増殖するGを発動!このカードを墓地に送り、このターン、貴様が特殊召喚するたびにデッキからカードを一枚引かせてもらう!」

 

 不良のフィールドには、2体のRRが並んだ。一回の特殊召喚で、地下生活者は一枚ドロー。

 

「さらに私はバニシング・レイニアスの効果発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに一度だけ発動可能!手札から、レベル4以下のRRモンスターを召喚できる!現れろ!レベル4《RR-トリビュート・レイニアス》!」

 

 彼女のフィールドには、3体目のRRモンスター。相当順調らしい。この効果で地下生活者はもう一枚ドローした。

 

「トリビュート・レイニアスの効果発動!このカードが召喚、特殊召喚したターンの自分メインフェイズに一度だけ、デッキからRRカード一枚を墓地に送る。

 私が墓地へ送るのは《レイダーズ・ウィング》!」

 

 墓地にレイダーズ・ウィングが落とされる。そして勢い止まらずと、彼女は手札からもう一枚召喚した。

 

「そしてこのカードは、自分名称以外のRRモンスターがフィールドに存在するときに召喚可能。現れろ!《RR-ファジー・レイニアス》!」

 

 彼女のメインモンスターゾーンには、4体のRRが。またこの特殊召喚で、地下生活者は一枚引く。

 

「現れろ、反旗翻す飛翔のサーキット!アローヘッド確認、召喚条件はRRモンスター2体!RR-ファジー・レイニアス、RR-ブルーム・ヴァルチャーをリンクマーカーにセット!

 リンク召喚!現れろ、リンク2!《RR-ワイズ・ストリクス》!」

 

 右のEXモンスターゾーンに、彼女のリンクモンスターが現れた。また、地下生活者は一枚ドロー。

 

「ワイズ・ストリクスの効果発動!このカードがリンク召喚に成功した場合、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスターを守備表示で特殊召喚できる!この効果で特殊召喚したモンスターはリンク素材にできず、効果は無効化される。

 そして墓地に行ったRR-ファジー・レイニアスの効果発動!このカードが墓地に送られた場合、デッキからファジー・レイニアス以外のRRモンスター1体を手札に加える!」

「させるか!ファジー・レイニアスの効果に対し《灰流うらら》の効果発動!このカードを墓地に送り、デッキからカードを手札に加える効果を無効にする!」

 

 実質的に発動する効果はワイズ・ストリクスの効果だけとなった。

 

「仕方ないか。私はデッキから《RR-ミミクリー・レイニアス》を守備表示で召喚!」

 

 ワイズストリクスの右下に、ミミクリー・レイニアスは特殊召喚。地下生活者は一枚ドローして_____

 

「くくく……貴様は小生の手札などまるで気にしないように振る舞った。そこに警戒心があれば、もしかすれば結果は違ったかもしれないのに。

 私は手札より《原始生命態ニビル》を発動!」

「なっ!?」

「このカードの存在は言うまでもないがルール上ちゃんと言っておこう!相手が5体以上のモンスターを召喚・特殊召喚したターンのメインフェイズに発動可能!自分・相手フィールドの表側表示モンスターを可能な限りリリースし、このカードを手札から特殊召喚する!その後、相手フィールドに元々の攻撃力・防御力それぞれがリリースしたモンスターの攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値の原始生命態トークンとして特殊召喚する」

「仕方ないか。私は手札より《増殖するG》を発動!説明は省かせてもらうぞ、お前が捨てたカードと同じだからな」

 

 地下生活者は笑いが止まらないらしい。

 

「その手札を捨てたことでお前の手札は0枚!それで何ができる!?何を出せる!2枚を引いて、その中に逆転のカードが入っていると思っているのか!?」

「どうだろうか。ただ、私はデッキを信じているよ」

「デッキを信じるぅ!?」

 

 もっと相手の笑いを誘ったようだ。

 

「お前はこの世界をアニメやゲームと勘違いしてないか!?体裁はデュエルだが、ゲマトリアがそのゲームに大きな代償を背負わせることは想像に難くないはずだ!負けたら貴様の身がどうなるか、わからないだろうに!」

「それでも私は信じているよ。神や仏やと言うつもりはないが、ロマンスはあって損じゃない。それに私は確率を盾にした冷笑は好きではなくてね」

 

 不良は穏やかな笑顔のまま話す。

 

「私は高二病という存在が嫌いだよ。お前のような存在だ、気品だなんだと騒ぎ立て、現状に不必要な倫理を見出し、それをアイデンティティとすることでしか自己を保てないお前がな」

「なんだと?」

「高二病とはいわゆる冷笑の風潮だ。中二病が幻惑の熱なら、その真逆。しかし、それほどつまらないものは無いだろう。何かを馬鹿にすることに終始し、真っ当に考えてみる前から馬鹿にして熱狂せず真面目に事に当たらない。反証というのはすでにある意見の背、影のような存在だ。影は自然と生まれる、その当然を強調する以外に"お前には個性がない"んだよ」

「笑わせる!そんなカッコつけで逆に寒風を忘れるほどの大笑いが出来てしまうな。それに今、逆転の手札を引く前だ!その粋がる心もいずれ砕ける、貴様の手にしたカード!貴様のデッキでな!

 小生は場にあるRRを全て墓地へ送り、ニビルを召喚!」

 

 彼のモンスターゾーンには、ニビルが特殊召喚された。それによって手札を一枚、不良は引く。

 

(一枚目は幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)か、まあ悪くはない。逆転の一手には遠いがな)

 

 そして、すべてのRRの攻撃力・防御力の数値を持ったトークンが特殊召喚された。

 

 不良は、デッキに祈ることはしなかった。祈らなくても、2枚目のカードが決着をする。過度な期待をしないでも、応えてくれるだろうと確証があった。そのバトンを有効活用できるかどうか、それは個々の実力にかかっているのだから。

 

「……ドローッ!」

 

 手札に来たのは______

 

「ふふ、ふ、はは」

「なにがおかしい?」

「いやあ、ついつい私はかっこいいことをしてしまうな。そう思っただけだ」

「何?」

「来たよ、運命のカードが」

 

 不良はカードを一枚、場に伏せる。そして

 

「私は墓地にあるミミクリー・レイニアスの効果発動!このカードをゲームから除外し、デッキからミミクリー・レイニアス以外のRRモンスター1体を手札に加える!私が加えるのは《RR-ストラングル・レイニアス》!」

 

 これで逆転の手は整ったらしい。

 

「見せてやる。私は手札から《RR-バニシング・レイニアス》を通常召喚!」

「なんだと!?」

 

 彼女の場には、バニシング・レイニアスが召喚される。

 

「貴様!一体どんなズルを!」

「ズルだって!?よく思い返してみろ!私が先まで召喚したのは全部特殊召喚だ!」

 

 ブルーム・ヴァルチャーによるバニシング・レイニアスとの同時特殊召喚、バニシング・レイニアスの効果によるトリビュート・レイニアスの特殊召喚、手札から効果発動して特殊召喚されたファジー・レイニアス、ワイズ・ストリクスはただのリンク召喚で、その後にワイズ・ストリクスの効果で出されたミミクリー・レイニアスもやはり特殊召喚だ。

 

 一回も()()()()使()()()()()

 

「そしてフィールドのバニシング・レイニアスの効果発動!こいつはターン1指定、カードが違うならもう一度発動可能だ!

 私は先ほど手札に加えたストラングル・レイニアスを特殊召喚!」

 

 もう一体のRRが召喚され、地下生活者は一枚手札にドローして加える。

 

「レベル4のバニシング・レイニアスと、ストラングル・レイニアスでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!

 現れろ、ランク4!《レイダーズ・ナイト》!」

 

 レイダーズ・ナイトがエクシーズ召喚された。それで、地下生活者はまたドロー。

 

「そしてレイダーズ・ナイトの効果を発動!1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を一つ取り除き、このカードよりランクが一つ高い、もしくは低いRR、幻影騎士団、エクシーズ・ドラゴンのエクシーズモンスターを1体、このカードの上に重ねエクシーズ召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する!そしてそのカードは、次の相手エンドフェイズに破壊される」

「まだあるのか!?」

「レイダーズ・ナイトで、オーバーレイネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!

 現れろ、ランク5!《RR-ブレイブ・ストリクス》!」

 

 ブレイブ・ストリクスが、メインモンスターゾーンの上に特殊召喚される。また、地下生活者は一枚ドローした。

 

「ブレイブ・ストリクスの効果発動!1ターンに一度、鳥獣族モンスターがエクシーズ素材になっている場合に発動可能。素材を一つ取り除き、デッキからRUM(ランクアップマジック)1枚を手札に加える!」

 

 彼女が手札に加えたのは《RUM-ファントム・フォース》だ。

 

「私はこのカードを場に伏せ、ターンエンド」

 

 不良のフィールドには、原始生命態トークンと、RR-ブレイブ・ストリクス。

 

 魔法罠ゾーンには、ファントム・フォースに幻影霧剣。

 

 だが、手札はない。

 

 彼女の切り札は、未だEXデッキの中。

 

 次の地下生活者のターンが、全てを決める状況だ。

 




※次の話まで続きます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。