アリスは掃討に出ていた。
ヘルメット団の連中は今までの被害で当然鳴りをひそめる形になったが、それらの被害を受けても連絡が取れていないのかまともな判断をせず今度はオートマタの軍団がゲヘナ領で行進を開始。彼女達は、年始の大掃除と称して該当する集団がいる場所へと駆け出した。
「うわーん!オートマタが蝗害のようにうじゃうじゃいます!」
「アリス!」
「仕方ありません!全員薙ぎ倒します!」
ただし、彼女はそう言いながらも持っていたのはアサルトライフルのような何か。
「逃げられないと思ってください!」
そう言って、彼女のその銃口からは……黒い光が放たれた。
それにあたれば当然その分の体積はえぐられ、ドローンは爆発する。
「え、え?」
「アリスに勝てると思わないでください!」
よく見たら彼女の背中にはバックパックがある。それが展開し、ついでにアリスはビームサーベルみたいなものを取り出して起動して突撃。ドローンいくつかを切りつけて爆発させ、もう一度先生のところへ戻ってくる。
アリスは、服の下にあれこれ機械を装着していた。ドローンが隊列を組んで、集まっているところにはヘッドホンにつけたバルカンで撃ち落とし、敵の侵攻を単騎で防ぎ続ける。
「さすがはアリス!」
「まだ褒めるのは早いです!来ます!」
ドローンの群れを掻き分け、足音がする。
いつものゴリアテだが、今いるのはアリスと先生の二人だけ。
「アリス!一回下がろう!私達だけだと危ないかも!」
「大丈夫です!あのゴリアテは一体だけ、このままいけます!」
彼女は武器を戻して構え出す。
「何をやってるの!?」
アリスは構え、左腕を上に伸ばし、そのまま相手に向けるように構えた。
左腕の装置が展開すると、中には丸鋸みたいなのが入っている。それが回転すると火花を上げる。
「チャクラムシューター、発射です!」
そう言って、ワイヤーに繋がれたチャクラムがそのまま発射。
ゴリアテは前進していたが、その足にチャクラムのワイヤーが巻き付いた。そうすると巻きつく勢いに従うようにチャクラムが相手の関節部に当たって、相手の脚を切断。片足ではあの巨体を支えきれずに倒れ伏す。
「凄いやアリス!このまま行こう!」
「それでは最後の必殺技をお見せします!」
遠くで倒れているゴリアテを倒すため、一度アリスは飛び出した。
前々に作ってもらっていた推進器の制御をしながら飛んでいくと、彼女に並走するように飛んでいるものがある。
「あれは……光の剣?」
ただ、光の剣にしてはSF作品のランチャーと呼ばれるようなものの類みたいなものが出てきた。
その装備はアリスの前へ出てきて、持ち手を出す。するとアリスはそれを掴んでから停止して、両端の持ち手の方を掴む。
「ブラックホールキャノン!発射!」
そう言うと、銃口の方から黒色の光が出てきてゴリアテを襲う。
最初の方はなんともなかったものの、ビームの中でブラックホールに飲み込まれたように圧縮し引き延ばされたゴリアテはそのまま消滅。そして、ビームが撃ち終わった後に、なにかしらが割れる音が出てきて、終了した。
ドローンもおらず、ゴリアテも破壊。
前にレッドウィンターで戦っていた時と比べては数が少なかったのもあり、簡単に突破できた。
「終わりました!」
「よくやったアリス!」
先生はアリスに駆け寄る。
「ところでこの装備はどこから?」
「エンジニア部の人たちに頼んで作ってもらったんです。縮退炉を作るための実験の一環で作ってもらいました」
「え、縮退炉を?まさかシュウ・シラカワも来たのここに!?」
「あの紫色の髪をした方ですか?」
「あーあーなんだと思ってんだここのこと」
先生は下を向いて首を振る。
「まあいいか、もうすでに終わったことだし」
「先生も諦めが良くなりましたね」
「ガスコイン神父がカタコンベで就職決まったらしいし、まあもう驚くものがなくなっちゃったよ」
「えっあの神父あそこの警備になったんですか?」
彼は首を縦に振って、細かい状況を説明した。
「あのコメ返スペシャルの後で就職が決まったんだ。実際アリウスとトリニティは以前として仲がいいとは言い難いし、当然そこにゲヘナの人間が来たら大惨事になってしまうでしょ?だからナギサがお願いして、あの墓地を境界線としてその守護者をやるって話になった」
「びっくりですね。あの人強いから、結構適任だとアリスも思います」
「実際壁や伝言役として彼は重宝してるし、獣も居ないから彼自身もまた満更でもないらしいよ」
ガスコイン神父が地下墓地の守護者兼アリウス-トリニティ間の管理者をやる、本人が強くて立派な大人なので問題はないだろうと決まった。まあ、例のホヨバからの刺客がずっとシャーレに居候していることを考えればかなり健全ではある。
装備を全部ブラックホールキャノンにつけて送り返したアリスは、そのまま先生と帰路に着く。
「そう言えば先生」
「なーに?」
「あのゴリアテとオートマタの件なんですけど、何か新しい報告とかってあったんですか?」
「んいや、ないね」
彼もまた、困ったと言いながら返した。
「モモカとかリンとかが調べてくれたりはしてるんだけどどうも足取りがつかめなくてね。地下生活者とかが関与したりしてるか、ベアトリーチェ一派みたいなのがまだ残っているか、はたまた別の組織がやっているのか。状況知れずだね」
正直な話、このキヴォトスはピンチである。
最近は鳴りを潜めてるデカグラマトンと預言者達、それにベアトリーチェ一派と名乗る一部の武装勢力、復活してしまった厄介極まりない地下生活者など。事態はかなり混沌としていた。
無論シャーレ側も大人が増えるという本来はあり得ない挙動を起こしているのだが、それでも結局責任者が先生っであることには変わりない。油断してしまうと一瞬で終わってしまう。実際にプレナパテスというバッドエンドの姿があるのだから、その事実が彼を怖がらせている。
「いや〜、ずっと困ってるんだ。確かに何も問題がない状態が続くってのもそれはそれで怖いけど、問題がずっと解決しないのも恐ろしいことこの上ないからね。事態も大きく動いてるわけじゃないから尚更だ」
「それでも先生やアリス、みんながいれば超えていけます」
「そうかもね」
そう返事した後で、先生に電話が掛かる。
プレナパテスからだ。
『もしもし?』
「あっプレ先。どうしたの?」
『いえ、書類の件で電話があったのでお伝えしようかと』
「重大不備!?マジ、何やらかした?」
『キキョウの苗字間違ってるんです』
相手の名前を間違えるのは失礼だから後で謝らなければならない。
しかし何を間違えたか、とりあえずは聞いておかないと。そう考えた先生はプレナパテスに聞く。
「なんて間違えてた?」
『鬼柳って書いてましたよ』
「あの言葉じゃ分かんない」
『鬼に柳』
「あー、その鬼柳?」
先生はやらかした、とため息をついているがプレナパテスはお構いなしに掛かってきた内容を話す。
『キキョウが話に聞いていたのと真反対の性格になってしまい、すごく高笑いしながら責めたりあれこれ言ってきたりしてて大変なことに_____』
「苗字通りの性格になったってこと?」
『ついでになんか喧嘩を売られてましたね。百鬼夜行連合学院のどこでしたっけ____ともかくそこで待つなんて言ってたので、多分早く行った方がいいかも知れないですね』
「マジか……わかったすぐ行こう」
『場合によっては必要になるかも知れないので、増援も用意しておきます』
「よろしく!」
電話は切れ、二人は走り出す。
キキョウに謝らないと大変なことになってしまう!頑張れ先生!