「アリスです!」
「ミカだよ〜☆」
目の前にいるのはなんかでかいミメシス(仮称)である。正確に言えばグラブル風のグレゴリオが生えている。
「アリスちゃ〜ん!これぶっ壊すの超めんどくさいじゃんね?」
「アリスもそう思います!ですので見てください、これを用意しました!」
なんか沢山の素材が転がっている。
「これはそれぞれル・オーの竜珠、新なる光のアニマ、白星の輝き、ジェネシスフラグメントそれぞれ10個ずつ揃えています!」
「わーお!でもこれで何するの?」
「見ててください」
適当な机に置いて、アリスは何かを唱える。
「オロロンチョチョパァ⤴︎」
「アハハハハ…アハハハハハハハ…あーおかしホッホッホッwww」
様子がおかしいが問題ない。
二人には何かやばい力が付与された。
「これで天破の祈りが使用できたってことですね」
「ところでなんで光属性なの?」
「よく考えてくださいよ」
そう、今から殴り込みに行くグレゴリオはバフとデバフの均衡を取らないといけない。
当然どちらかに偏ればその分強くなってしまい、手がつけられなくなる。ここまでは常識だ。
「で、傾き切ったら即死するんですよね」
そんな行動あったっけ。
「なのでデバフとバフの均衡を保たないといけないんですね」
「古事記にもそう書かれてあるじゃんね」
「で・す・が」
今キメた祈りはどうやらすごいらしい。
「この天破の祈りは"その耐性を削除した上に即死を取り除ける"んですね」
「それほんと?」
「はい」
明らかにブルアカに持ってきてはいけない要素である。でも欲しい。
「そして大体のステータスが上昇します!」
「ええ!?」
ミカが歓声を上げる。
「どれくらい上がるかは忘れましたがまあ基本一発七桁後半は出ますし、スキルでの攻撃は八桁超えます!」
中途半端な状態なのでそこで止まるが、グラブルだと当然ちゃんと育てて毎日根気強くやっていれば九桁ダメを出すのは可能だ。
「ところでHPってどれくらいでしたっけ」
「今ざっと見たら2億2000万って出てるじゃんね。大体マグナ1HL二体分くらい」
「ゆぐゆぐ二体でオーバーレイしたらグレゴリオってことですね」
後ろのグレゴリオは怯えている。
あまりによくわからないものをキメ始め、挙句自分のことを意に介さずしゃべっている彼女らが怖いらしい。
「ちなみにレヴァンス素材にしたけどレヴァンスのHPってどれくらいなのアリスちゃん」
「共通して20億です。ムゲンだけ18億ぐらいですが七割になった段階で全回復するアホ仕様なので実質23億になります」
「頭おかしいじゃんね」
「ミカさんレヴァンスで実装されたらそうなりますよ」
「ブルアカにレヴァンスなんて概念実装しないで欲しいな☆」
とりあえず説明は終わったようで、二人はそれぞれの得物を構える。
「このミメシスぼこすじゃんね!」
「はい!」
_______そうして、グレゴリオは悲惨な目にあった。
本来五桁六桁ぐらいのはずのダメージを出す生徒が通常攻撃で七桁、EXスキルで八桁出してくるのだから。しかも合計ではなく一発ずつ。
あと、前にミカが出し損ねた星晶獣もいる。
「ケイオス・レギオン!」
「パラダイス・ロスト!」
当然そいつらも一発であれば同じ火力を出せる。
「ターゲット確認、戦闘開始」
なんかBGMが変わった挙句に細くてスタイリッシュなロボットも出てきて殴り込んできた。
もはや何のゲームかわからなくなっているが、通常の挙動すら相手は出来なくなっている。何の鍵盤があろうが、聖歌隊がどれだけいようが破壊され即死し、挙句20秒も経たないうちにそれごと跡地になったのだから。
「わ〜☆粉々になったじゃんね」
「これで二度と逆らえなくなったでしょう!」
「うん!」
更地を見せながら、二人は満足していた。
_____という活動記録を、プレナパテスと先生は見ていたのである。
「あのーこれどう言えば良いんですかね?」
「まあ敵対してるのは事実だしいいんじゃない。それにミメシスああ見えてもしぶといからいずれ復活するよ」
そんな呑気に言う先生は、デスクから離れて地下室へと向かった。プレナパテスもそれに続く。
「アリス達が戻ってくるのは多分3時間後くらいじゃないかな」
「遠出なのに割と早いですね」
「これもまたエンジニア部のテストで電動のスーパーカーに乗っているんだ。本来はそのテストがメインだったんだけど私無しで出会ったのをしっかり解決してきたんだね」
「嫉妬、しますか?」
「喜ばしいことじゃないか」
先生は微笑んで言う。
「前、多分どっかで話したと思うんだけどね。そもそも私はここの住人でない以上は本来あまり口出しは出来ないんだ。無論、シャーレとしての私は先生であり、そこはキヴォトスの住人である証はあるけど……当然私と彼女達は違う。種族的な差はどうしても生まれるし、その分常識だって乖離する。だから過干渉は逆に悪影響を及ぼすんだよ」
「では今回の件は先生にとっては好ましいと」
「好ましいって言うかなんて言うか」
そんな話をしてたら地下室の扉にやってきた。
開けるといろんなやつがこたつに入ってぬくぬくとしてる。特にはしゃいでいるのはシュロだ。
「セレヴィデッキがようやく完成したから味わってください手前のファンサービスを!」
それを横目に、別のコタツに移動して先生は話を続ける。
「私は彼女達より早く生まれたから、当然私は彼女達より早く死ぬ。寿命的な面でもそうだが、まず根本的に私は弱いんだ。弱いってことは当然死にやすいと言うこと。プレナパテスだってそうでしょ?」
「ええ、私も不慮の事故で死んだので。生徒達は死にませんでしたが」
「先生が死んだからそうなった、では社会としての体をなしてないのさ」
彼は蜜柑をむいて食べる。プレナパテスは機械なので何も口にしない。
「私が居なくなっても私の教えや、そうでなくても絶対的な指導者が要らない無数の賢者によって成り立つ民主主義が私の理想とする社会なんだ。まあ当然難しくはあるし、全員が賢くなれるわけでもない。それでもさ、社会に立ち向かおう、良くしようと思える熱量がずっと続く社会であればいずれ良くなるし、歴史が奇蹟となって盤石な政治を実現できる」
「それが先生の望み、なのですか」
「当然さ。まあ、あんな絵面で真面目な話をするのもアレだけどね」
みかんの一個を食べ終わり、2個目に手が伸びる。
「私が死んだから終わりではない。私が死んでも続いて、またバトンを渡す。私達の生きてきた世界だってそうして続いてきたのだから、この世界もそうであるべきだ。そうしたら、色彩なんて簡単に越えられる。一つの強引な運命なんて、沢山の命とそれぞれの運命であっという間に押し崩されちゃうさ」
彼は笑顔を見せた。
「そう、ですね」
プレナパテスは失敗した身、そう思っていたからこそあまり何かを主張することはない。
だけれども、生徒たちの自立さえ出来れば何でも解決できる。そう言う先生の発言には一理ある、と頷いていた。
話が終わると、部屋に誰か入ってくる音が。
「ただいまー!」
「ただいま帰りましたー!」
3時間どころか10分経たずに、アリスとミカが帰ってきた。
「えっ!?早いね!一体どうやって?」
「結構車が居ないから仕事で〜って警察に許可もらってすっ飛ばしてきたじゃんね。性能テストしなきゃいけないのは事実だったし、200km/hくらい出したよ」
「結構怖かったです……今度から120km/hくらいにしてください……」
「あんなの運転してたら慣れるよ〜!」
そう言ってアリスとミカは、スイーツを取りに冷蔵庫へ。
一月ももう1/3は過ぎようとしていた。