KVハイウェイ前、入り口。
2台の大型で、少し形が特徴的なバイクが二つ。
「本当にやるんですか……?」
「上のお達しだからな」
片方にはアリスが乗っていて、もう片方にはヴァルキューレの警官が乗っていた。二人のバイクには、デュエルディスクがある。間違いなくDホイールだ。
事の発端はあまりに疲れてしまったカンナの提案からだった。
『デュエルを仕掛けてあれこれ決まるならヴァルキューレにデュエル強いやつ集めたらこの学園の権威も強まるし治安維持として最適なのでは?』
先生は止めたがカンナは止まらなかったのである。
結果、シャーレ近くに勤務していた警官も巻き込んでのDホイールテストが始まろうとしていた。アリスのDホイールは、実は地下生活者を倒してRR使いの不良のもの。
二人のDホイールのモニターに、カンナ達が映る。
「二人とも、聞こえるか?」
「聞こえてますよ」
「ああ」
「ならいい。今からテストを始める、デッキは?」
お互いに顔を見合わせてから、デッキを取り出す。
それをセットすると、腕のホルダーでシャッフルされた。確認したのちに、今度はDホイールを開発したリオが出てくる。
「いいですか?今回はあくまで作動テストです。安定するかどうかも確認すべく長くデュエルして欲しいので、あらかじめ両者のデッキはハイランダーで組んでいます。と言っても、アリスのは両方借りてきたものらしいですけど」
「リオ?何でいるんですか?」
「いいでしょう別に。あと、今回はあくまで走行中の基本機能テストなので、ルールはスタンディングデュエルと変わりません。LPも8000です」
呆れたようなリオを押し除けて、不良が顔を出す。
「それ一応借りもんだから壊すなよ」
「わかってます!」
「よろしい。じゃ、さっさと始めちまおうぜ」
不良のその言葉で、カンナは合図を出す。
警官とアリスはペダルを踏んで、クラッチを合わせてから走り出す。
交通規制をしていたのでスムーズにハイウェイに入り、二人は叫ぶ。
「ライディングデュエル!アクセラレーション!」
流石に不良の改造した方が早いらしい、前に出たアリスが宣言する。
「アリスの先行です!」
デュエルが始まる。
アリスの手札には想い集いし竜、サテライト・シンクロン、ジャンク・ジャイアント、くず鉄のかかし、スターライト・ロードの5枚。
「アリスはカードを2枚伏せ、ターンエンドです」
トラップカードであるくず鉄のかかしとスターライト・ロードを伏せてアリスはターンエンドした。
「私のターン!」
と言っても、全てのカードが一枚ずつしか入っていないと動きは正直安定しない。警官も魔法罠ゾーンに2枚伏せてターンエンドとなった。
またアリスのターンが回ってくる。
「ドロー!」
アリスが引いたのはスピード・ウォリアーだ。
相手の動きがどうなるかは不明だが、アリスはこれをセットする。
「アリスはモンスターを裏守備にセットしてターンエンド!」
今のところは派手な動きはない。互いに構え、動ける時を待っている。
警官にターンが回ってきた。
「ドロー!____カードを一枚伏せて、ターンエンド」
彼女も派手に動けないらしい。
しかし、伏せカード3枚という威圧感はすごい。お互いに運転をしつつのデュエルで、いつもよりも緊張感が増していた。
「アリスのターンです!ドロー!」
引いたのはクイック・シンクロン。
「アリスは裏守備にしていたモンスターを反転召喚します。現れろ!《スピード・ウォリアー》!」
アリスと並走する形で、スピード・ウォリアーが現れる。
しかし、それをチャンスと言わんばかりに、警官は伏せカードを発動した。
「トラップ発動!《砂塵の大嵐》!このカードを発動するターンは自分はバトルフェイズを行えないが、フィールドの魔法・罠カードを2枚まで選択して発動可能!そのカードを破壊する!」
だがアリスもその手のカードを待っていたようだ。
「トラップ発動!《スターライト・ロード》!このカードは自分フィールドのカードを2枚以上破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動したときに発動できます。その効果を無効にして破壊し、その後、EXデッキからスターダスト・ドラゴンを一体特殊召喚します!」
「なんだと!」
相手の発動した砂塵の大嵐は無効にして破壊され墓地へ、そして。
「飛翔せよ!《スターダスト・ドラゴン》!」
キヴォトスの街に、シグナーの竜が現れた。とても壮観だが、世界観を間違えてる気がしてならない。
さらにアリスは何かに気がついたようだ。
「そして《想い集いし竜》を通常召喚!」
彼女の場には、スターダスト・ドラゴン、スピード・ウォリアー、そしてチューナーモンスターの想い集いし竜がいる。
「アリスは、スターダスト・ドラゴンとスピード・ウォリアーに、救世竜 セイヴァー・ドラゴン扱いの想い集いし竜をチューニング!」
三体のモンスターが上に飛び、想い集いし竜が巨大な影になって他二体を包む。
「集いし想いが、輝く奇跡を呼び起こす!光さす道となれ!」
一筋の光となって、それが広がる。
「シンクロ召喚!光来せよ!シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン!」
白く、宝玉のようなものをいくつか纏った美しい竜がアリスを追従するように出てきた。
警官も、その姿に驚く。
「なんだと!?しかし、ぬかったな。トラップ発動!《無限泡影》!このカードはフィールドのモンスターを一体対象として発動でき、ターン終了時までその効果を無効にする!そして、セットしていたこのカードを発動していた場合、このカードと同じ列の魔法・罠カードも無効化される!」
「シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動!1ターンに一度、相手が効果を発動したとき、このカードをエンドフェイズまで除外してその発動を無効にして除外します!」
シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンはアリスの墓地から除外され、無限泡影も無効化された上で除外。
ここで動きが取れなくなったアリスは、そのままターンエンド。
「エンドフェイズに、シューティング・セイヴァー・スターは帰ってきます」
アリスのところに帰還した。
「私のターン!ドロー!」
ようやく動き出せそうか、警官は手札からモンスターを召喚した。
「私は《オーバーフロー・ドラゴン》を召喚!そして、アローヘッド確認!召喚条件はレベル4以下のドラゴン族モンスター1体!
現れろ《ストライカー・ドラゴン》!」
警官はリンク召喚をして、フィールドにはリンク1モンスターが。
「そして普通のルールと同じ名を利用し、手札からフィールド魔法《リボルブート・セクター》を発動!」
フィールド魔法は、本来のライディングデュエルであればそもそも魔法は使えないが、リオのテスト内容のおかげで今回ばかりは使えるようになっているらしい。
「私はこれでターンエンド」
「アリスのターン!ドロー!」
ターンチェンジ。
アリスの手元にはセイヴァー・ミラージュが。
「アリスはカードを一枚セットして、シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンでストライカー・ドラゴンを攻撃!」
「トラップ発動!《聖なるバリア-ミラーフォース-》!」
「シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンの効果を利用して無効にし除外します!」
相手の攻撃宣言時に相手フィールドの攻撃表示モンスターを破壊するミラーフォースを無効にして除外。当然シューティング・セイヴァー・スターもエンドフェイズまで除外される。
モンスターがいなくなったことによって攻撃はできなくなった。そのままアリスはターンエンドして、シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンも戻ってきた。
警官にターンがくる。
「私は手札から《ブラック・ホール》を発動!フィールドのモンスターを全て破壊する!」
「お願いします!シューティング・セイヴァー・スター!」
また除外して、相手のカードを無効化する。
「さらにチェーンして永続トラップ《セイヴァー・ミラージュ》を発動!」
ただし効果はまだ使えない。
チェーンの逆順処理で、セイヴァー・ミラージュの発動→シューティング・セイヴァーの無効化除外→ブラック・ホールの発動(無効済)となる。
「シューティング・セイヴァー・スターがフィールドから離れたことによってセイヴァー・ミラージュの効果を発動!自分フィールドの表側表示のスターダスト・ドラゴンまたはそのカード名が記されたSモンスターが、自分のカードの効果を発動するためにフィールドから離れた場合か自分のカードの効果でフィールドから離れた場合に発動できます!そのモンスター1体を選んで特殊召喚するか、相手のフィールド・墓地からモンスター1体を選んで除外するか、このターンの自分が受ける全てのダメージは半分になるか、1つを選んで適用します!
アリスはダメージの半減を選びます!」
展開された後のダメージを危惧しての選択だった。
しかし、警官はそれができる手札ではないらしい。
「私はこのままバトルフェイズに入る!いけ、ストライカー・ドラゴン!」
どうやら半減してもそこまで味はないようだった。
「そうくるなら話は別です!トラップ発動!《くず鉄のかかし》!」
効果は『相手モンスターの攻撃宣言時に、その攻撃モンスター1体を対象として発動できる。その攻撃を無効にする。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする』である。
これでストライカー・ドラゴンの効果を無効にして、くず鉄のかかしはそのままセット。
「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
そして、アリスのターン。
「ドロー!」
引いたのは墓穴の指名者だ。
「アリスはカードを一枚セット。そして、サテライト・シンクロンを墓地に送って《クイック・シンクロン》を特殊召喚します!」
自身の効果によって、クイック・シンクロンが出てきた。
「そしてクイック・シンクロンをリリースして、現れろ!《ジャンク・ジャイアント》!」
アリスの場に、レベル5の攻撃力2000のモンスターが。
「バトルフェイズ!ジャンク・ジャイアントで、ストライカー・ドラゴンを攻撃!」
ストライカー・ドラゴンの攻撃力は1000で、1000ダメージが入る。
「そして、シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンでプレイヤーにダイレクトアタック!」
警官に、シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンが襲いかかる。
「うわああああああっ!?」
どうやらバトルフェイズで仕掛けられるものがないようだ。そのまま攻撃は通ってしまう。
「このモンスターは通常の攻撃に加えて墓地のスターダスト・ドラゴン及びそのカード名が記されたシンクロモンスターの数だけ攻撃ができます!
行ってください!もう一度、プレイヤーへダイレクトアタック!」
シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴンは叫び、もう一度警官に直接攻撃する。
「わ、わ、わあ!」
彼女は後にも先にも、恐ろしいトドメを食らった。
_______アリスの勝ちだ。
互いに一度停車して、近寄った。
「いやー、凌ぎきれなかったか」
「あのカードが通らなければかなりキツイ展開を強いられていたと思います、ありがとうございました」
「こちらこそ」
二人は立ってから、握手する。
そんな実験も終わりを告げるように、後ろからパトカーがやってきた。
「実験は終わったようですね」
「リオ」
「……二人とも、楽しそうでなによりだわ」
パトカーから出てきたリオは、少しだけ口角を緩めた。
「いい天気だからこのまま遠くにでもいってランチしたい気分だけど、一度データが欲しいからヴァルキューレの方へ行って頂戴」
「はーい!」
「ああ、了解した」
「私も二人の後をついて行くから」
この言葉を最後に、各々の乗っていたものに戻っていく。
アクセルを踏んで、クラッチ繋いで、三者勢いよく走り出した。
今日は雪すら降っていない快晴である。