「お邪魔しまーす」
アリスはいつも通りシャーレの地下室へやってきた。
しかし、先生はぐったりしてて起きない。
「あれ、先生?」
揺さぶってみても起きない。
先生が持っていた手にはスマホがあって、そのスマホにはスターレイルの画面が映っている。
「先生、僕でもできそうな書類200枚くらい終わらせておいたよ」
「ケビンさん」
何故かいるケビン・カスラナもアリスの方へ寄ってきた。
「あの〜、他の三人はどうしたんですか?」
「アベンチュリンは総督の仕事があるって言って宇宙に帰り、ロビンもこれまたアイドルとしての本業があるって帰って、デュランダルはなんか小さくなった挙句リサカンみたいなテレポートで引き戻された」
「あなたはなんで帰らないんですか」
「だって僕の出番多分もうないし_____」
白髪碧眼の男はいじけた。
「でも英傑好きの焼鳥がきっとなんとかしてくれますよ、というよりあの作品何度でもキャラ使い回すじゃないですか」
「お願いです運営さん、僕を原神に出してください。そうしないといずれ僕はどこに行ってもファイノンと呼ばれて、3rdおじさんとスタレ民が喧嘩することに」
「それは逆のパターンでもう起こってますし原神に出てきたらまた話が違ってきませんか?」
アリスがずっと大人な対応をするくらい情けない。
しかし、アリスはお腹が空いている。先生も多分こたつで熱中するほどゲームをやって寝ているところを見ると、きっと腹を空かせているに違いないだろう。
この白色の不審者のことは放っておいて、アリスは料理を作ることにした。
「とりあえずアリスは何か美味しそうな、肉料理でも作ろうと思います。早く仕事に戻ってプレナパテスの負担減らしてあげてください」
「わかった。出来たらメールくれると助かるな」
「わかりました!」
元気よく返事してからアリスは彼を見送った。
そのまま地下室の奥にあるキッチンに立つと、そのキッチンには何か変な機械が。
「なんですかこれ」
その機械に触れると、いろいろなレシピが出てきた。
使い方はわからないが、その中には食べ物もある。
「うーん、材料これわかりませんね。とりあえず材料をこの中に入れれば大丈夫ですかね」
チャーハンの素材をアリスは入れた。
すると、その機械から大盛りのチャーハンが。
「えっこれどうなってるんですか。しかも暖かい」
アリスは困惑しながらもさらに入れる。
「今度は豚の生姜焼き_____これできるんでしょうか」
材料を入れると出てきた。
「すごいです!なんて、なんて便利なのでしょう!これであれば先生も独身男性みたいな生活をおさらばできます!」
ひどいことを言っている上に結婚しなければその生活は脱却できないのである。他の先生ならともかくこの先生にそんな相手ができるとは思えないだろう。
「うーん、とりあえずあとは……」
素材を入れると今度は味噌汁が。
「チャーハンだけ浮いてるような気がしますがまあいいでしょう。とりあえず、先生がこれで起きるかどうか」
「おはよう」
「もう起きてたんですね、おはようございます」
落ち着いた声でアリスは言う。
「いやあ、いい匂いがしたからね。これ全部アリスが?」
「はい。とはいっても、あの機会に材料突っ込んでみたら出来たってだけですけどね」
先生はあくびしながら、彼女に伝えた。
「ああ、それ?万能合成マシンだよ。星穹列車にあったやつのスケールダウン版」
「それ万能って言っていいんですか?」
「万能合成マシンって言う名前の機械だからね。それね、クラフトチェンバーで作れたんだ」
先生はこう語った。
三人が帰って暇を持て余し、仕事として書類を片付けていたケビンが偶然クラフトチェンバーを発見。先生が居場所を伝えてなかったのもあって、それがどう言うものか知らないで使ってみたら大興奮。
「それでいじって出来たのがこれってわけ。でも冷凍食品以外にもこれで食べたいものとかが色々味を調整して作れるようになったから、結構ありがたいんだよね。こうして、あったかくて作りたてのものが____」
話している途中にアリスが作ったものを食べ始める先生。
「うーん、うまい。どれも普通に美味しい。生姜焼きもチャーハンも味噌汁も正しくって味だ」
「これがあるならキッチン要らずですね」
「それがそうとも行かないんだ」
先生は、何かに想いを馳せるように話す。
「なんでですか?」
「人間ってのは不思議なもんで、雰囲気や空腹度によって食欲ってのは増減する。飲み物だってそう、先生はコーヒーを飲む時にいつもは普通にミルク入れて砂糖入れて飲んでるけど、たまーに砂糖をコップ一杯に入れてからコーヒーで溶かして〜みたいな飲み方をするけど機械ってそんな変なことしないじゃん。
まあこれは極端な例だけどね。でもさ、人って必ず感覚ってのがある。感覚で作る料理がもしぴったり、誰かの好みにハマった場合。それを作った人がもの匙になるから機械だと当然近似値は出来ても完璧には再現できないんだよね、何故か」
そう言いながらも胃に優しく、過激でない味付けの機械産の食事を食べ続ける。
「料理って文化は如何に進化しても無くならないと思うんだよね、先生は」
「どうしてですか?」
「食事という一次的欲求に繋がっていながら、趣味という文化の根源にも直結しているから。つまり料理とは誰でも楽しめる趣味であり、結果としてそれは人間社会の結束を強固にできる素晴らしい存在なんだ。寝ていれば独りであり、性に関しては軽々しく口に出せない中で、食事という事象だけは簡単に共有できてしまう素晴らしい文化。アリスだって食べる時があると思うんだけど、その食事の内容で盛り上がったりしない?」
「アリスはモモイ達と一緒に食べるご飯が大好きです!」
「そうでしょ?そう言ったのは点在し続けるのもまた、人間の文明なんだと思うよ」
彼はそのまま味噌汁と生姜焼きを空にして、炒飯をかきこむ。
食べ終わったら皿を置いて手を合わせ、シンクの方へとその皿を入れる。
「で、いつアリスはここに?」
「ついさっきです。ケビンさんとちょっと話してから彼は書類を先生の代わりに片付けに」
「僕はここにいるよ」
「私もいます」
キッチンの入り口から、二人が覗いているのが見えた。
「あ!二人とも!」
「いつのまに。ごめんね、片付けさせちゃって」
「先生の書類を片付ける為のマクロをガンガンに使っているのでそこまで問題では有りませんよ。しかし先生、あなただけ先に頂いてしまったのですか?」
「アリスがその機械で試しに作ったのを頂いたのさ」
「ずるいな」
「まあまあ。お詫びにアリスと二人でなんか作ってあげよう、手作りでね。何が残ってるかな〜」
先生は冷蔵庫を開けた。
中には海鮮類がいっぱい詰まっている。これらは冬にも海に行き、正式な許可を取って漁をしていたSRTのメンバーからのお裾分けでいただいたものだ。
「料理って言えるほどではないけど、今から煮込んで海鮮鍋とかどう?」
「いいですね、ご飯も当然炊きますよね?」
「もちろん。ほら、二人とも行った行った。今からアリスと頑張って仕込むから」
「わーい」
入り口で覗き込んでいた男二人をリビングの方へ戻して、アリスと先生は取り出した魚介の下処理を始めた。
「ところで先生、クラフトチェンバーで他に何か作ったりしました?」
「ああ、作ったよ」
____紅い流星が、リビングの方からパチンコ玉の音と共に流れてくる。
「クラフトチェンバー製CR 天下一閃 4500」
「……パチンコを仕事場に置くのってどうなんですか?」
真っ当な疑問に対し、先生は黙る。その沈黙を破るように彼は急かした。
「さ、さあ!下準備をしようじゃないか!アサリだけは下処理しっかりしたからとりあえずエビの腸抜きだ!」
「先生……」
アリスは呆れた顔で、一緒に下準備をする。
だけどそんな会話内容はともかく、後ろから見た姿は親子であった。
彼女には、いや、生徒には親という概念がない。故に、母を失っても進む父子の姿とも取れるだろう。
幸せなことには変わりない。