はい!アリスは戦い方を学びます!ゲームから!   作:らんかん

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回転ハイドロポンプをするアリス

 ここは公園。

 

 目の前にはローラーブレードをたくさん付けたボリュクスがいる。

 

 竜ではない、人間態のボリュクス。つまり妹である。

 

「一発芸をやっても良いかな?」

「いいけどまずこの状況を説明してほしい」

 

 死人なら来てもいいというルールは無かったはずだが、最近は賑やかになりつつあるシャーレにはタナトス姉妹がよくやってくる。

 

「一発芸やるね」

「うん」

 

 強行する彼女に先生は押されてる。

 

 四つん這いになったボリュクスはドヤ顔で彼を見た。

 

「ボリュクスワーゲン」

「あひゃひゃひゃ!あひゃおっひょお!ぶふぁ!」

 

 先生は近くにあったテーブルを叩きながら笑っている。かなりツボに入ったのか芝生に笑い転げてうるさい。

 

 そんな彼もひとしきり笑ったら真顔になり、ボリュクスに話を聞いた。

 

「なんでローラーハゲになってるの」

「冥界の花園には苦行でくたびれた人もやって来るから……ね?お姉ちゃん」

「はい」

「嫌過ぎるでしょ」

「たまに綺麗な景色を見ただけで死ぬような人も来ますから……」

「死因風景パズルって一体前世で何をやらかしたらそうなるんだ」

 

 なんて話をしていると、アリスが走ってきた。

 

「先生!」

「アリス〜、どうしたの?」

「また襲ってくる人が!」

「えぇー!?」

 

 アリスの話が全部終わる前に、ヘルメット団が突撃してきた。

 

 複数人が飛び掛かってくるが、先生は身体を捻ってステップをついでに踏む事で全部回避。

 

「げえ!?なんで避けんだよ!」

「銃弾じゃないからだよ。あと先生もね、鍛えてるから少しだけ」

「くそが!」

 

 しかし、囲まれているのには違いない。

 

「よし!アリス、戦闘準備だ!」

「分かりました!とりあえず法器持ちますね!」

「なんで?」

 

 なんか杖みたいなのを持っている。

 

 だがこれは使わない。

 

「見ていてください!アリスが何をするのか!」

「よし、伏せよう!」

 

 先生は何かを察したのか、地面に伏せた。さっきまで話していた姉妹はすでに離れている。

 

 何されるか分からない不良は仕掛けるが、その時にはすでに遅し。

 

「シャアアアアアア!」

 

 なんて叫びながら……

 

 アリスはハイドロポンプを手のひらから放ちぐるぐる回っている。

 

「ぎゃああああー!」

「あばばばば!」

「うぐえっ」

 

 みんな吹っ飛んでいく。それだけの水圧が出せるのはなぜかは分からないが、アリスはそれで蹴散らしているのだ。

 

「なんでアリスそれをやろうとうわっ!」

 

 当然とんでもない水量なので先生は水浸し。感電したらまず助からないだろう。

 

 ヘルメット団もへんてこな事するアリスには慣れているのだろうけど、それにしたって急激な回転と周りの破壊は凄まじく反撃の隙も与えない。

 

「ぬゔぉおおお!」

「やばいなんか後ろのジ・O爆発してる!」

「ええ!?」

「そんなもの用意しないで!」

 

 アリスは回転を止める。

 

 周りには水浸しで呼吸が浅いやつや、水圧でぶっ飛ばされてブロリーと化したヘルメットの少女、そして何故か余所見もしていなかったはずなのに破壊されているジ・Oが居た。

 

「これで撃退完了です!」

「お疲れ様アリス……なんでヌヴィレットになったの?」

「それはその……やってみたかったからです!」

「確かに水だから人にあんまり怪我させないかもしれないけど……いや無理だよこれ怪我するから禁止だよ!」

 

 先生は立ち上がる。

 

 水で透けたシャツの向こう側にある薄い筋肉が見えるだろう。それは生徒が惚れる要素であったはずなのだが、まずもってこのキヴォトスはそんなギャルゲー要素は少ないし、その素質のある生徒が何故かあまり出てこない。

 

「これ大変ですね」

「192ダメージもらって爆散したジ・Oをリアルで見れるとは思わなかったよ……でもやっぱりこのヌヴィレット反則級だよな」

「事実上マップ兵器ですからね。これを修正されて怒るのも納得というか」

「ただまあその修正自体も本来意図していないかつデバイス格差だからってので一応理由づけはされていたけれど……」

「でも批判多すぎて戻ってきましたよね」

「『キャラ修正は旅人を傷つける』って言う文言でね。だからなんかスタレみたいな調整こないかもって騒いでる人も居たりとか」

「まあアリスには関係無いんですけどね……基本全盛期で真似するので」

 

 話していると緊張感こそ和らぐが、やはり水浸しの服の不快感は半端ないし微風で寒い。

 

「とりあえず帰るか、このまま外に居ると春とはいえ風邪を引くし」

「そうですね」

 

 ピクニックにはまた夜くらいに来よう、と2人は歩き出す。

 

 少し歩くとスマホが鳴る。

 

「もしもし?」

『ああ、もしもし。プレナパテスです』

「プレ先。どうしたの?」

『今結構な集団がそっちへ向かったと聞いたので大丈夫かとお聞きしたのですが』

「今処理し終わった所」

『そうですか……いえ、大変な状態になるだろうって情報が入ったので』

「どう言う事?」

 

 プレナパテスは説明をする。

 

『最近またヘルメット団や元カイザーのメンバーが暴れてるではありませんか。そのうちにシャーレへの不信感を高めるような発言や思想が不良の間で広まっていると聞きました』

「誰から?」

『RR使いの不良から』

「あの子か」

『特に外の世界の技術や大人と積極的に関わっているため相当に警戒し、最悪殺すなどをして政権を奪取すべしって言う論調が強まってるみたいですよ』

「ふーん」

『特に興味無さそうですね』

「先生だからってこの世界を愛する必要も無いからね」

 

 実はここの先生はだいぶ淡白な方である。

 

 問題解決をしたり、困難には立ち向かったりはするのだがそこに生徒への愛があまりない。

 

「生徒達がそう言う政治を望むのであればそうなるだろうし、それが社会の摂理だから先生は何もできる事はない」

『今は先生が望まれているから貴方がいる。そう、言いたいのですか?』

「正直それも不健全極まりないけどね」

 

 愛がないのはあくまでそう言うふうに立ち回ろうとしているからだが、その理由には日本人として確固たる理由があった。

 

「大日本帝国時代の昭和天皇、ナチス・ドイツのヒトラー、民間とはいえ絶大な支持を得て兵士を連れながら危険なことをしていた麻原彰晃……1人に絶対的な力を持たせることは相当危険な行為だ。例えそれがどんなに公益を求める善人であってもだ。だから生徒主体の社会であるべきだし、それが不健全であればその結果を受け入れるのも彼女達である。ただそれは、先生という絶対的な独裁者がいる事よりもマシなことだ」

『先生……』

「だから正直私を慕う生徒も、恋しようとする生徒も居ないほうがいい。だが、思春期というのはめんどくさいものだ。そう言ったぶっきらぼうな面しか見せてないだけで恋する奴もいる。だから_____」

 

 先生は急に声色を変える。

 

「プレっちに飯作って欲しいかなっ!」

『急に変わらないでください怖いから!』

「鶏肉ってあったっけ?」

『ええっと……ない、ですね』

「業スーで買ってくる」

『よろしくお願いします』

「じゃ」

 

 電話は切れた。

 

 アリスは少しだけ、そのタイミングで先生の腕に抱きつく。

 

「……先生」

「どうしたのアリス」

「先生は、この世界のこと……嫌いですか?」

「そもそも生きてる事がめんどい事に溢れているからね。今自分の家に相当する場所に帰れば、何故か自分の好きなキャラがいるという点だけは、本来自分が居た世界の人間の誰よりも恵まれてる点だ。だから自死する権利はない、ってだけ」

 

 どう答えようか迷った先生は、少しだけ悩んだ顔をして彼女に答える。

 

「先生は魔王になりたくない。だが、人々が魔王を作り出す土台にどうしてもなってしまう。人々が他責思考で在ることを許された時、その悪意は一点に向く。それはどんな時代であれ、本来は許されるべきではない。宗教はその一点を“架空の存在”に委ねたし、それが政治に食い込んでいたから昔は人民の質の低さも相まって王政でも許されてたが今はもう違う。そう言う政治をするのは悪手なんだよ」

「質問に答えてください」

「そりゃあまあ……うーん、好きでも嫌いでもない、かな」

 

 先生は、失敗した末の結果をずっと見ている。そうならないようにしなければ、と言うのでプレナパテスと対峙した時にはほぼ二つ返事で答えた。

 

 だが、その時点で既に『失敗したらいけない』と暗に言われてる気がして嫌気がさしていた。そして、自分が望まない状態、つまりシャーレの先生が連邦生徒会よりも信奉されているのを見ると本当に鬱になりそうだ。

 

「生徒主体の世界にならなければいずれ世界は滅ぶだろうが、それならそれで良いんだ。人の命は永遠ではない、だから改革しようと思わない人間に付き合う義理もない。でもまあ、それはそれとして_____」

 

 先生はアリスの方を向く。

 

「死線を潜り抜けた仲間達のことは大好きだ」

「先生」

「だってそうだろ?自分の命を預けて、相手の命を預かる。お互いが持っているスキルを活かして支え合わないと死ぬ!だけどそんな状態を一緒に潜り抜けた爽やかな戦友!それがどれだけ尊いことか!そういった仲は基本は得られないものだから、そう言う意味では生徒達のことは大好きだ。つまり、先生じゃない個人としてはめちゃくちゃ愛着あるよ」

 

 彼は笑顔で答えた。

 

 なんと言うか、このキヴォトスにしてこの先生あり、と言う状態。

 

「だから本当に、この世界は退屈はしないよ。願わくばこの世界がVRなら文句はなかったんだけどね!」

「先生……」

 

 アリスも彼の子供っぽいところを見て少しばかり呆れてる。この面倒見の良さに少しばかり大人な面を感じた先生は、そのままガキのようにはしゃいで彼女をせかした。

 

「ほら、さっさと買い出し行くよ!プレ先が作ってくれるから!」

「そうですね……行きましょう!」

 

 2人は駆け出す。

 

 そろそろゴールデンウィークがやってくる。

 

 その際何をしようか、なんて2人は考えているのであった。

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