「そう言えば一つ、耳寄りな情報あるんですよ」
「なんだプレ先」
「もうそろそろでペルリ候補生来るじゃないですか」
「その呼び方やめない?」
「サイレント耐性3を付けたら桃鍋のサイレント2秒で終わるんですよ」
「______なんて?」
先生は聞き返す。
「待って、オバロコラボの時桃鍋にサイレントメダルちょっとでも効いたのがあれだから効かないように調整してたはずなんだ。あれ、間違いだったかな」
「でも実際2秒ちょっとでサイレント終わってるし何も不具合っぽくなかったので多分7秒近くあのバフ持ったまま動けるのは事実ですよ」
「わたしは悪い魔女なので、桃鍋のサイレントを短くしながら動くことも可能なのです」
「今ペリル……ペリ……ペルエリ……ペルリエ……ペルニ……んんん言いにくい!」
「おまえは人の名前も言えないのですね」
「ペルリニエ!」
「よく出来ました」
「でもお前のせいで環境終わると思うよ。少なくとも知り合いのコクリコ使いは発狂してたし」
「では、おまえの知り合いの物真似をしましょうか?」
「おうどんな感じだよ」
「おまえ!おまえ!おまえ〜!」
「間違ってはないと思うけどなんでシャニになった?」
黒い魔女と道端で正座をしながら話し合う男二人。周囲にはユスティナ聖徒会のミメシス。
「いやあ、困った」
「困りましたねえ」
「困ったのです」
生徒が誰もいない状態でアリウス墓地の元気なガスコイン神父に会いに行き、その帰りでこれである。
「私のカードって余ってますか」
「全然使ってないけど余ってるって言い方はやめないか」
「いや、まさか残してくれるとは思わなかったので。大体砕いて石にして、歴史の糧になってるものだと」
「でもこれで使うのもったいなくない?」
「勿体無いってなんですか勿体無いって。ホシノも私のシロコも自力で手に入れてくれたでしょう、ならお年玉として使うべきです」
「いやあでも……ねえペルリちゃんなんとかならない?」
「ブルアカには実装されてないのでどうにも出来ないのです」
「うーんどうしましょ」
「せんせー!」
アリスの声がした。
「アリス!」
「今からアリスが対処します!」
「助かるのです」
彼女は思いっきり飛んで下にやってくる。
だが、その手にはいつもの光の剣はない。
その代わりだが、白く美しい、鋸のように動く青い色の刃を持った武器があった。
「ん?待って、アリス何それ」
「これはアーチだ」
「いやプレ先には聞いてないけどまあそうかいやアーチ!?」
神の爪楊枝、アーチである。
「いったいどこからそんなものを持ち出してきたの!?」
「拾ってきました!」
「今からでも神に返してきた方がいいような気がする!」
「でも今先生を助けるためには必要です!」
そう言って、彼女は交戦を開始。
相手はユスティナ聖徒会の複製だ。神の爪楊枝、アーチの相手には相応しいものだろう。相手がガトリングやサブマシンガンを撃ってくるのを前ジャンプで避けてから大太刀ほどもあるリーチを活用して切り伏せる。
悲鳴をあげるほどの人間性を持っていないため、相手も斬られたら何も言わずに消えていく。
「すごい!本当にイーノックみたい!」
「がんばってくださいアリス!私たちは応援していますよ!」
「大の大人二人がそれとは恥ずかしくないのですか?」
「あのねペルちゃん、その言葉は刺さっちゃう」
ただ、褒めて興奮するだけの動きをアリスはしていた。
何しろユスティナの連中とは太古の精鋭部隊。銃器が古くても、それ以外は現代に勝ってる部分がある。不便な時代だったが故の体力もそうだ。
だから本来は生徒がまとまっててもそこで不利が付くものでもあるが、アリスは別だ。生まれが特別であるのだが、それに加えて邪教徒に落ちてしまった者達に対する特攻武器を持っている。それも神直々に手がけたものを。
故にアリスは負けることはない。
「はぁ!」
何度か空中で浮いたまま殴ってから、回転斬りして弾き飛ばす。
相手は隊列を組み直そうとするため、アリスはその隙を利用して武器を浄化。
「えっアリス浄化も使えるの!?」
「金髪のお兄さんから習いました!」
そう、神の武器は穢れなきゆえに強力。
人間界にあるだけでも朽ちるという穢れもあるのだが、それに加えて使う存在が汚い欲望があったりした場合はそれだけ汚れるスピードが早くなってしまう。
イーノックという敬虔な信徒で、神に認められ天界で書記官を務める人間ですら人間界で神の知恵を振り回せば穢れるから浄化して、また使えるようにする必要がある。アリスのような純粋無垢でも、人間と関わって色々な感情を持った少女が使うと当然"イーノックよりも穢れが溜まるスピードが速い"のだ。
戦闘開始して信徒を浄化すればするだけその汚れを引き受けることになる。アーチを浄化して綺麗にしたら、アリスは隊列を組んだ残りの聖徒達を倒すべく力を解放する。
「力を貸そう」
「はい!」
アリスは天使の力を借りた。
ミカエルとも仲良くなっているのも驚きもの、彼女はやっぱり純粋な勇者であるから皆も可愛がって力を貸すのだろうか。
ただ、数も少ないためここは早めにブーストスキルを使ってしまうのがいいだろう。アリスはもう一段階力を解放してから、アーチを振る。
相手が固まっているところに斬撃の形をした炎のような光を何度も飛ばして相手を散り散り、もしくはその攻撃で浄化させていく。
悲鳴をあげることはない相手は、それでも抵抗しようと生き残った奴らで集まってくるもののこの時のアリスを相手するには何もかも行動が遅すぎた。
「これで終わりです!」
アリスが叫ぶと、アーチを横にして構える。
瞬間、魔法陣のようなものが一瞬で展開、そのまま極太のビームが放たれた。
その一撃はあまりに重く、また、信徒達には救いであったのかもしれない。
神の御使というわけではないが、神の知恵を扱って現世にとどまってしまった亡霊達をそのままアリスは成仏させた。
「すごい___!」
「やっぱ神の知恵ってすごいんですね……」
「やりました!先生!」
綺麗さっぱりして、輝きすら取り戻した道でアリスは3人に駆け寄る。
「どうでしたか!?」
「いやあかっこよかった。というか、まさか神の知恵を使えるとは」
「シスターフッドのところに用事があって、モモイたちと一緒に行ってたんです。そしたらなんか金髪の男の人がいて、その人から神のことについて教えてもらっていました」
「その人からアーチを?」
「はい。何しろ『色彩という神の力を持ったものがいるなら元来の神の知恵がいつか役に立つ時が来るかもしれない』と、これを」
慈悲深く、世界の危機を見据えてそれに対抗できる力を渡す。
星神も関わってきている世界でどれだけ頼りになるか分からないが、少なくとも人間の力ではどうしようもないものも、乗り越えられるようにするのが知恵なのだろう。
「という感じでもらったのを、どこかで使ってみようと思ってここまで歩いてきたんです。アリスだけはテストプレイまで暇なので自由に空き地を見つけるべく散策していたら先生を見つけました!」
「その結果、勇者らしく自分たちを助けてくれたんだね」
「やっぱりアリスは勇者です!疑ったことないですけど!」
「よくがんばりました、えらいえらい」
先生はアリスを撫でてから、立ち上がる。
「んじゃ、そろそろいくか」
「どこに?」
「今から帰るところだったんだ、アリスもおいでよ」
「行きます!」
「わたしもお供するのです」
「ペルちゃんもおいで」
今日は四人で帰るらしい、割と騒がしく感じるがそういう日があってもいいだろう。
晴れた日の光を縫うようにして進むのは、存外に楽しいものだ。
こと、梅雨がそろそろくる季節ならば、楽しむのが吉。