シャーレの前には男が二人いる。先生とプレナパテスだ。
「やってきてしまったな、この日が」
「そうですね。やってきてしまいました」
「今のキヴォトス横断ツアー、というやつ」
このキヴォトスは本当に特殊だ。
それこそ他作品要素ありというタグに全ての責任を投げ打って無茶苦茶をやっているほどには。
「ところで先生」
「どうしたんだいプレ先」
「この作品で出てきたブルアカじゃないキャラを思いつく限り言ってみてください」
「えっと。シャーレにいるのがアベンチュリンとロビン、ケビン・カスラナとデュランダル、キラ・ヤマトとラクス・ヤマトでしょ。あとなんか取っ替え引っ替えで来てる黄金裔の色々。でもファイノンとアナイクスとモーディス、あとトリスビアスはトリアンしか見てない」
「他には?」
「アビドスにラインハルト・フォン・ローエングラムがいて、トリニティのカタコンベにはガスコイン神父がいる」
「これ本当にキヴォトスなんですか?」
「いやあ、キヴォトスだよ」
今回はそんなキヴォトスを紹介して歩き回ろうというらしい。
何せいろんな活動をしていた結果、キヴォトスそのものがブルアカの形を保てなくなるくらいには穴が空きまくった。そのせいで楽しくなったのはあるんだが、水面下でやばいことになってないとも限らない。
そのために二人で歩き回ろうと言うのだ。
「で、今回はこんなキヴォトスを観光して回ろうって話ですね」
「うん。というわけでまずシャーレから」
「おーい!プレちゃーんー!」
やってきたのはトリアンだ。
「ボクが教えた呪文を覚えているかテストしに来たぞっ!」
「ああ、あれですね?ものを元に戻す技」
「そうだ!あそこに壊れたベンチがあるじゃん!言ってみて!」
彼女の煌めく目に気押され、やれやれと言いながらもプレナパテスは言う。
彼はそのまま、ベンチに向かって唱え始めた。
「滲み出す混濁の紋章」
「違う!」
膨れっ面の相手にすみません、と言いながら彼はまた唱え始める。
「えっと……ヤーヌスの無数の道を数え、我ら敬虔なる末裔は神の前に立ち、天秤の審判を受ける。無私なる裁決者タレンタム、法の名のもとに我らの無罪を宣言したまえ。そして、現世の果実を天秤にかけ、過去に残された甘美を引き換えよ。我の呼びかけに答えよオロニクス、記憶の幕を取り払い、過去のさざ波を呼び起こせ」
元通りになろうとするベンチがカタカタ動いているのを見るに興奮するトリアンだが、ここで彼は無駄な一言を言ってしまう。
「破道の九十・黒棺」
するとプレナパテスの一言で5m四方の黒い長方形が形成され、その中のやつは無茶苦茶になって、完全に潰れてしまった。
「なんで最後余計なもの入れたの!」
「あ、あのすみません。つい癖で黒棺を言う癖が」
「わかる〜先生もああ言う口上の後エクシーズ召喚!って言いたくなる」
「なんで!プレちゃんのバカ!」
「本当すいません声が速水奨になったの嬉しくて」
「てかプレ先めちゃくちゃ威力高いけど黒棺が出来たの?」
「どうやら関係ない呪文の後に繋げたら詠唱破棄扱いで使えるらしいですね」
「いやあのまず詠唱できることが驚きなんだけど」
「そりゃ色彩の使徒でしたからね」
プレナパテスは腕を組み頷きながら答える。
「何せあの機械の中にはいろいろ入ってましたから。ただ、切り離すだけではすぐに衰弱するため肉体に色々、色彩のものを搭載したんです。そのおかげで俗称を魔力、神秘と言えるものを使えるようになりました。ま、他のキヴォトスではそういう戦闘能力を持つ先生もいる、というか作られてるらしいですし、私一人がただ黒棺を使えてもそう変わることもないですね」
「4m四方の黒棺、か。すごいな」
「藍染惣右介なら、きっと詠唱破棄で3倍以上の火力と範囲を誇るでしょう。遠いですが、まあ、人間には過ぎたる力です」
ふ、とカッコつけた彼の頬を飛び乗って引っ張る少女が一人。
「カッコつけるな!プレちゃんにめちゃくちゃ叩き込んだのに、もう知らない!ファイちゃんのところ行く!」
「ファイちゃんじゃないけど、飯出来たよ〜」
入り口から顔を出す男が一人。
「ケビン」
「トリアン、出来たよ昼ごはん。先生達は食べていくかい?」
「いや、すぐに出ないとな。立ちっぱなしで談義してたから……」
「そうか。気をつけて、三日後に帰ってくるんだったね」
「うん」
「三日後の夜までには帰ってきてほしい。ほら、アベンチュリンとロビンも帰ってくる」
「気をつけて行ってくる」
「行ってらっしゃい。ほら、トリアンも」
「行ってらっしゃい!今度はちゃんと詠唱できるようにするんだぞっ!」
「気をつけます。では」
そうして二人は歩き出した。
「そう言えば先生」
「なんだい?」
男達は晴れている道を歩きながら、雑談をする。
「今回のシーズン回りました?コンパス」
「ペルリニエは使えなかったけど上条使えたからそれで回ってたよ。楽しかったね、自傷フルーク貫通で振れるの」
「そうでしたか……そろそろ調整来るそうですけど、上条って下方されますかね?」
「うーんどうなんだろうね。勝率と使用率が高かったからやっぱり下方されるんじゃないかなっては思う。体力1.25から1.15くらいにして防御そのままだったら流石に弱体化と言えるんじゃないかな。そうでなくても、カード調整でよく使われてた玉座の下方くるでしょ?玉座使われていたからそれの下方内容次第ではナーフ回避もあり得ると思うけどねえ上条。ペルリニエはまあ下方されるでしょ」
「そうですか」
「いやあアッパー調整の方が多いと面白いから良いんだけどねえ」
「カード調整は?」
「帯電下方必要ないと思ってたんだけどねえ初期からだいぶ下方されたし。四課は下方くるだろうなとは思ってたんだけど」
ゲームの話をしな方歩く二人は、キヴォトスに馴染み、挨拶はすれどさして足を止められることはなく歩き続けた。
「ところで最初はどこいくか決まってるんですか?」
「どこでも良いなとは思ったけど、まあ、三大校はもちろん百鬼夜行とアビドスかな。山海経も一応行ってみようか。行って痛い目あったけど」
「シュンさんと誤認していたものがカフカだったりしたそうですね。アリウスは?」
「もちろんいくよ。トリニティ行ってそっち行かないはないでしょ。彼女達以外にも傀儡となった生徒はいる、ベアトリーチェを捕縛している以上は彼女の金である程度支援してあげないと。筋ってもんだし」
「先生は、ベアトリーチェをあんな状態にしたことをお悔やみになっているのですか?」
「いいや、大人としては自分を犠牲にしてまでも立ち向かったことは尊敬に値する。19歳の男からすれば、それこそ見た目に違わず、強く、眩しい女性だった……あの女が自分の生き方を決めたことにも」
この時の彼の表情は悍ましい、とも言えるだろう。微笑みであったが、そこに悪意はない純粋な敬意があった。
故に凡人として死したプレナパテスは恐怖で少しだけ足を止めたが、また歩き出す。相手の機微を理解しながらも突っ込むと危ないだろうと話を続ける。
「故に彼女は統治者の一人だった。それが悪政であったとしてもアリウスの混乱を鎮め、統治してあそこの生徒達が生きる為の土台を作ったのも、行動をしっかり固定したのも彼女だ。それを奪ったのみならず、生き返ったことを彼女の同意とはいえ隠匿した。アリウススクワッドこそ自分の威光で救われたけど、他の生徒は違う。彼女達の指針を壊した罪は計り知れない、故の償いだ」
「先生_____」
「自分は他の"先生"から見れば悪だろう、生徒に愛情を持っていないという定性的なものではない物差しで測られれば分かりきったことだ。だが、この世界に青春を感じたことはない。ここも結局ゲームの世界だ、救いたい見た目の人間は、救いたい声をしている。それをなぞれば同じ結果に辿り着く。
自分はそれを幸せとは思わない、それだけだ」
今先生であるものと、かつて先生であったものは歩き続ける。
二人は、ただ静かに、今ここにある世界を踏んで目的地へと進む。
最初の目的地はもちろん______
ミレニアムだ。
どうも、らんかんです。
流石に長々描いてきてネタがねえ!って思ったのですが、せっかくの機会なので改めて変わってしまったキヴォトスを散策して先生とプレナパテスで真面目っぽい話を書こうと思います。そんなに話数は膨らみません