ミレニアムのゲーム開発部にやってきた二人。
「先生!」
「先生」
「先生……」
「せんせー!」
可愛い子たちにもみくちゃにされる先生。
「あはは、おいおいほんとに転んじゃうって!」
「しばらくアリス以外かまってくれなかったから!」
「こっちもこっちで治安維持と通常業務に奔走してたから……ごめんよ」
「そうですよ先生、私たちのことも構って」
「ミドリまで____まあ、そうだな」
後ろで微笑ましく思っているプレナパテスは、自分がいた世界のゲーム開発部を思い出しながら懐かしんでいた。
(そうでしたね、自分の世界のゲーム開発部もこんな感じでした)
机があってゲーム機もあって、ユズのPCがあって、全体的にのんびり出来る場所。
そして机にある二つのカードの束。
「……ん?」
カードゲームなんてやってた覚えはないが、アリスが広めたのだろうが。
しかし裏面は青を基調としたもの。
デュエマのカードである。
「あれ____?」
「ん?ああ!」
モモイはそのまま机に来て二つのデッキを見せる。
「なんか最近始めようと思って始めたんだ!デュエマ!」
「デュエマを?まあでもカードゲーム作るんだったら遊戯王よりかはいいと思うけど」
「先生!やろう!」
そんな彼女の無邪気な誘い。
プレナパテスは一瞬だけ疑問に思うも、この段階では怪しいところはない。ゲームカードに興じることもあるかもしれない、と思いながら誘いに乗る先生を見た。
「デュエマやったことないからなあ。まあ、でもこのデッキかな」
一つのデッキを取って、先生は対面に立つ。
互いに5枚シールドを置いて、5枚手札をとる。
「先生が先行でいいよ!」
「そうか。じゃありがたく」
二人は、同時に叫ぶ。
「デュエル!」
先生のターン。
先生の手札にはボルシャック・ドラゴ大王、爆殺!!
(2マナでデカッチの下が使えるか)
「自分はボルシャック・ドラゴ大王をマナに埋めてターンエンド!」
「私のターン!」
後攻なので一枚ドロー。
モモイの手札は卍月 ガ・リュザーク/卍・獄・殺、堕呪 ボックドゥ2枚、そして堕呪 ゴンパドゥが3枚。
「私は堕呪 ボックドゥをマナに入れてターンエンド!」
初手はお互い動かない。デュエマの1ターン目から動く物騒なデッキはそうはない。
「自分のターン」
先生はドローした。
引いたのはボルシャック・バクテラス2枚目。
「爆殺!!
ツインパクトカードの下の呪文を発動。
(おそらく、低コストで出せるカードか踏み倒しカードがあるはずだ。デュエマってそうだからな)
先生は山札上4枚を確認。
龍世界〜龍の降臨する地〜が2枚、レーボウ・衛・デカッチ/「暴竜爵様のお出ましだッチ!」、ボルシャック・ガラワルドの4枚。
(もしかしてこのデッキ龍世界で踏み倒すのがコンセプトか?でもバクテラスはどう考えてもアーマードから革命チェンジして踏み倒す効果だしな。モモイは青魔道具だが2ターン目に例のフィールド貼られなければ外しても耐えれるか)
「自分は《龍世界〜龍の降臨する地〜》を回収!」
「おお〜」
モモイは楽しそうだ。
そのまま先生は山札下に好きな順番で戻し、ターンエンドした。
「私のターン!」
彼女が引いたのは
先生には猶予ができた、まだ例のフィールドは来ない。
「私はボックドゥ2枚目を埋めて、《堕呪 ゴンパドゥ》を発動!このカードは3枚山札上を見て手札に加えて、残りを好きな順番で山札下に戻す!」
3枚は堕呪 ボックドゥ、堕呪 バレッドゥ、そして卍
モモイは卍新世壊卍を手札に加え、好きな順番で山札の下に戻す。
「終わり!先生の番だよ!」
「わかった」
先生が引いたのはボルシャック・ガラワルド。
「よし、いける。自分はボルシャック・ガラワルドをマナに埋めて、3マナで《龍世界〜龍の降臨する地〜》をフィールドに置く!」
フィールドカードだが、この時点では何も効果はない。
このカードは真価を発揮するのは次のターンだ。
「ターン終了だ」
「私のターン!」
手札に来たのは飛翔龍 5000VT。
「5000VTをマナに入れて、私は2マナで《卍新世壊卍》を発動!」
また、フィールドに置かれる。
しかし、この時点ではまだ効果はない。
「動けないからターンエンド!」
「自分のターン!」
ドローの前に、龍世界の効果を発動。
「龍世界の効果で、一枚山札の上から墓地に送る。それが進化でないドラゴンならこのカードを破壊可能、破壊したらそのドラゴンが出てくる!」
山札の上から落ちたのは、龍世界。
「おい嘘だろ!」
召喚も何もできないでドローすると、出てきたのはボルシャック・ヴォルジャアク。
「どうもパッとしないな」
手札のバクテラス2枚は抱えておきたい、そう考えたら。
「自分はボルシャック・フレアを一枚マナに埋めてターンエンド」
「行くよー!」
モモイのターン。
ドローしたのは新世壊。
「私はクロカミをマナに埋め、2マナでゴンパドゥを発動!」
山札3枚はゴンパドゥ、堕呪 エアヴォ、クロカミ。
「うーん、じゃあこれ」
ゴンパドゥ4枚目を回収して残りを山札の下へ。新世壊の効果を使って、その下に青魔道具の呪文であるゴンパドゥを送り込んだ。
「さらに2マナ使ってゴンパドゥ発動!」
次は堕呪 ゾメンザン、堕呪 キャプドゥ、そして「無月」の頂き$スザーク$。
「じゃあこれ!」
と、モモイは$スザーク$を手札に加えて、残りを山札の下に戻す。
もう一つ必要なパーツがあるが、それはまだ引けてない。
「うーん、たりないなあ。ターンエンド」
彼女はターンエンドした。
「自分のターン!」
龍世界の効果を発動。
山札から墓地に行ったのは龍騎旋竜 ボルシャック・バルガ。
「先生は龍世界の効果を発動!このカードを破壊して、ボルシャック・バルガを墓地から召喚する!」
出てきたのは19コスのボルシャック・バルガ。
「うわあ!」
そしてドローしたのは禁断竜王 Vol-Val-8。
「このままバルガで攻撃する!そして、革命チェンジ!」
革命チェンジ。
条件を満たした時に、手札と場のクリーチャーを攻撃を引き継いだ状態で入れ替える技。
「現れろ!《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》!」
大きいドラゴンの連続だ。
デュエマはアクティブプレイヤー→非アクティブプレイヤーという順序さえ守れば好きにチェーンを組める。
今はバルガの攻撃時効果と、バクテラスの登場時効果の二つ。先生は後者から解決することにした。
「バクテラスの効果によって山札上4枚を確認し、そのうち
4枚確認。
爆殺!! 覇悪怒楽苦2枚、革命の絆、そして龍世界。
「うわ」
つまり出せるカードは何もない。
「あはは!先生、全部外してるじゃん!」
「まだだ!バルガの攻撃時効果を発動し、カードを一枚ドローしてから手札のドラゴン一枚を召喚する!
現れろ、2枚目のバクテラス!」
バクテラス2対目。
「不動遊星並みの引きで来てくれよ!山札を確認!」
出てきたのは革命の絆、禁断竜王 Vol-Val-8、ボルシャック・ガラワルド、そしてバクテラス3枚目。
バクテラス自身の効果でバクテラスは出せないので、Vol-Val-8とガラワルドが出せる。
「よし!出てこい!《禁断竜王 Vol-Val-8》!《ボルシャック・ガラワルド》!」
でかいクリーチャーが並ぶ。
「EXライフの効果でVol-Val-8の下に山札から一枚置く。そして……」
ようやくやってきた攻撃の時。
「シールドをトリプルブレイク!右から3枚だ!」
「わーっ!」
シールドチェック。
破られたシールドの中身は堕呪 バレッドゥ、der'Zen Mondo/♪必殺で つわものどもが 夢の跡、凶鬼98号 ガシャゴン/堕呪 ブラッドゥ。
「そしてもう一枚のバクテラスで攻撃!」
2枚しかないシールドもこれで粉砕。
中身は堕呪 ブラッドゥと____
「シールドトリガー発動!《堕呪 ボックドゥ》!」
「何っ!?」
「私はボルシャック・ガラワルドを指定して攻撃とブロックを封じ、さらにシールドトリガープラスの効果を発動!Vol-Val-8を選んで_____」
「ジャストダイバーの効果で
「ええっ!?」
ジャストダイバーは、シャドバの潜伏とほぼ同じ。
場に出てから自分のターン開始時まで、相手の効果で選ぶことができず、攻撃されない。
「よってVol-Val-8はシールドトリガープラスの効果を受けない!」
「そんなあ!」
「いけ!Vol-Val-8!プレイヤーにダイレクトアタック!スターダスト・ミラージュ!」
「それシューティングスタードラゴンの!うわああああああああ!」
勝負がつくと同時に、アニメのように吹き飛ぶモモイ。
「モモイ!」
「モモイちゃん!」
プレナパテスが急いで飛び込んでキャッチした。
「うぅ、すぅ……」
モモイはそのまま気を失って寝息を立て始めたが、いきなりの状況に混乱に陥る。
「モモイ!」
「お姉ちゃん!」
「モモイ____」
三人の不安な表情が伝わってくる。
当たり前だ、急にこんな闇のゲームみたいなことが起これば戸惑うのも当然。
だが、宥める暇もない。
二人、ある声が聞こえる。
『ヒヒ、この段階ではやはり_____』
「誰だ!」
「俺は聞いたことある!」
笑い方にしろ、喋り方にしろ、聞き覚えがあるその男。
先生は叫んだ。
「地下生活者か!」
『覚えてもらってて光栄だぞ、先生よ。ヒヒ』
「今度は何を仕掛けた!」
『なんということはない、ゲームの時間だ_____お前が行く予定の場所の生徒一人に、同様の罠を仕掛けた。全部攻略すれば小生の元に辿り着く』
「ふざけんじゃねえ!」
先生は声を荒げるが、相手は冷静。
『卑劣な真似ばかりしてはアレだから、該当の生徒には負けたら気絶してもらうだけだ。しかし先生、貴様が負ければ体の一部分を硬直させる。最初から心臓を固めたりはしない』
「なんの目的ですか!」
『改めて、チャレンジャーとして貴様らを攻略する。嘘をつかずに正面から殴り合い、決着をつけるだけだ。無論放棄して画策しても構わないが______小生もゲマトリアであったことを忘れるな。では』
「おい待てもっと詳細に話せ!」
「ダメです先生」
この時点ですでに相手の気配も声もない。
「せ、先生?」
「三人はそのままモモイの面倒を見てくれ、状況説明は一旦後回しだ。自分はこのまま別の学園に向かう!」
「ちょっと!」
「このままだったらもっとやばいことが起こるかもしれないんだぞ!時間はない!」
先生は飛び出していってしまった。
自分が苦戦した相手のことはよく覚えているものだ。
このキヴォトスの先生は19歳、まだ大人になりきれていない。
「待つのです!ああもう、三人とも。モモイの様子を見ながら今起こったことをユウカに伝えてください。嫌でしょうけど急を要します、よろしくお願いします」
「待ってください!プレナパテス!」
そうして男二人は、慌ただしく去っていった。
「アリスが伝えてきます!ユズとミドリはモモイの面倒を見ててください!」
「う、うん」
「お姉ちゃん!」
混乱は始まった。
もう一回、生き返った外道と生徒を巻き込んだゲーム。正々堂々を謳うからこそ、外道な手を取ればどうなるかわからない、というステージへ引き摺り込む悪意。
先生は急いで電車に飛び乗り、急ぎ向かった先は。
ヒナ達のいるゲヘナだ。