互いにシールドが五枚置かれ、五枚ドローする。
先生が引いたのは堕呪 ゴンパドゥが二枚、堕呪 ゾメンザン、堕呪バレッドゥ、ガル・ラガンザーク。
先生はそのカードに見覚えがあった。
(これモモイが使っていたのか……もしかしてこれを使っていたのか?)
「先行はあげましょう」
「ああ」
目の前の敵に集中しなくてはならないと先生は首を振り、カードを使う。
「俺は堕呪 ゴンパドゥをマナに埋めてターンエンド」
次の引き次第では相当苦しいのを要求されるかもしれない。今のところ月下旋壊 ド・リュミーズもなければ、あったとしてもガル・ラガンザーク以外出せない。
「私のターン、ドロー……ふむ、そうですね。ハンプティ・ルピアをマナに埋めてエンドで」
マナには、少しばかり明るい鳥が入っている。赤と黒と白、最初は動かないからこそ先にマナの色を集めているようだ。
「俺のターン!」
次に引いたのは卍 新世壊 卍。
(よし、いいタイミングで来てくれた!)
「俺は堕呪 バレッドゥを埋めて《卍 新世壊 卍》を発動!」
先生のフィールドには、無月フィールドなるものが設置された。D2フィールドの親戚みたいなものだが、特に今は効果はない。
「ターンエンドだ」
「じゃあ、私のターンですね」
ハナコの二ターン目。
「私はルピア&ガ:ナテハをマナに入れ《マジシャンズ・ルピア》を召喚!効果で一枚を墓地に捨ててドロー、それがファイアー・バードだった場合もう一枚ドローする!」
捨てたのは二枚目のルピア&ガ:ナテハ。
二枚ドローしたが、それ以降は動きがないのでターンエンド。
「じゃあ俺のターンだ。ドロー!」
先生が引いたのは二枚目の卍 新世壊 卍。
「新世壊をマナに埋め1コス払い《堕呪 ゾメンザン》を発動!こいつ自体に効果はないが、発動後に新世壊を発動する!」
新世壊の効果の一つ。
いわゆる堕呪と名のつくカードは魔道具と呼ばれるカード群になる。新世壊というのはそれらのカードを詠唱後墓地に行くときにそのカードを代わりに自分の下に入れ、1ドローできるというものだ。
その効果で引いたのは凶器98号 ガシャコン/堕呪 ブラッドゥ。
「さらに俺は《堕呪 ゴンパドゥ》を発動!山札の上から三枚見て、一枚を回収し他のカードを好きな順番で山札の下に置く!」
上から三枚のカードはそれぞれ堕呪 ボックドゥ、堕呪 カージクリ、堕呪 ドゥポイズ。
カージクリを回収し、先生は残りのカードを山札の下に戻した。ボックドゥが上だ。
新世壊の効果でボックドゥを引き、手札に加える。
「ターンエンドだ」
「そろそろキツイの行きますよ!」
高らかに宣言して、ここからはハナコのターン。
「私はポッピ・
ハイパーモード。
自分の場のアンタップしてるクリーチャーをタップして、カードを強化できる能力。ハッター・ルピアはこれでスピードアタッカーを獲得。
「ハッター・ルピアで一番左のカードをブレイク!そしてこの段階でファイアー・バード・メクレイド5を発動します!」
今度はメクレイド。山札の上を三枚見て、指定されたコスト以下で、指定された種族のカードを出す能力だ。
「私は《龍后凰翔クイーン・ルピア》を場に出します!」
「まずい!」
完全なるファイアー・バードの十八番。そのまま一番左のカードをブレイクされた先生は、その破片で肩を切る。
「あぁ!?」
急いでしゃがんで残りのものを回避すると、バリアはそのまま消え去った。手に入ったカードは堕呪 ゾメンザン。
「なるほど、これは怪我をするわけだ!」
「まだ終わっていませんよ、残り二枚を山札の下に戻して私はクイーン・ルピアで攻撃!このタイミングでクイーンの効果で場のタップしたマジシャンズ・ルピアを破壊、ファイアー・バード・メクレイド8を使います!」
「まだ来るか!」
もう一度メクレイドを使うハナコ。
だが、幸運は続かないらしい。カードゲームというのは、あまりに残酷だ。
「ふむ、どうやらついてないですねえ。まあ、最適なムーブができなくても構いません。私は二枚目のクイーン・ルピアを場に出します。
さあ、二枚同時に砕けて傷ついてください!」
「チィッ!」
二枚同時に割れる。
「あった!シールドトリガー発動!
「小癪なことを!」
メクレイドで出た二枚目のクイーン・ルピアは戻っていき、ハナコの攻勢は奇しくも止まった。
「はあ、はあ……」
先生はこの時点で相当な怪我を負っていた。
シールド三枚が実体化してガラス片となって襲いかかってくるのだから、全部避けられるわけではない。しかもそれが複数にもなって襲いかかってくるのは避ける避けないどころの話ではなかった。
しかし、それでも彼は立ち上がっている。
「随分いい攻撃してくれるじゃないか、おかげで本当に死にかけだ」
「あら〜、このままでは決着よりも先に殺せてしまいますね」
「だが先生はタフだからな、負けるつもりは毛頭ない!」
先生は改めて手札に加えたシールドを確認する。
(ガリュディアス・モモミーズか……次のターンで勝ち負けが決まるな)
お目当てのクリーチャーは、ある呪文がないとまともに召喚できない。
相手はシールドが割れておらず、しかもマナ以上のコストのカードを召喚すれば破壊するハッター・ルピア付き。
「先生、今ここで降参してもいいんですよ?私は何も咎めはしません、大人になることは悪いことではないですから。そうでしょう?」
「諦めることは大人の特権じゃないさ、本当の大人の特権ってのは……」
「金も使って夢に邁進出来ることだッ!」
はっきり言い切る彼の姿に、ハナコは予想だにしない感動を抱いている。
聖人君子が過ぎれば気持ち悪いかもしれないし、その裏にある性欲や願望が見え透いてしまうような気がして先生のことをずっと心底信用しきれてないように見えた彼女は彼を追い詰めているが、追い詰めた人間は尚のこと輝いている。不貞腐れてもいない。
「俺もハナコも自由に戦っている今こそ、素晴らしい!ちょっとしたことでも話し合うだけで解決出来ないならぶつかり合うしかないが、それを躊躇しないことが人を自由にするんだ!殺し合いだけは頂けないが、ゲームで決着をつけようとギリギリまで悩んだハナコを俺は尊敬してる!」
「先生……!」
「だが俺は、先生は絶対に負けない!負けられないでも、負けたくないでもない!負けないんだ!心の中でそう叫べ、その気概が全てを明るい方向に変えるんだ!」
心臓に親指を当て、真っ直ぐ、明るい目で見てる先生。
ギャラリーも何もかも、誰しもが先生の気概に盛り上がる。だけれども、誰もハナコを悪として見ていない。自分一番で、挑み続けるハナコにも”先生に勝負を挑める気概と知能がある実力者”として応援しているから。
「最後のドロー、最後のワンプレイまで投げ出しはしないさ!」
先生はデッキの一番上に指をつける。
「俺のターンだ!ここで確実に、お前と決着をつける!」
「ドロー!」
そうして引いたカードは、新世壊。
それでも彼は諦めない。
「俺は新世壊をマナに埋める!」
「今引いたカードではないですか!手札がいかに潤沢でも、フィニッシャーはそうそう多くも積まなければ、引ける確率だってない!」
「言ったはずだ、俺は最後まで諦めないと!3マナを支払って《堕呪 カージクリ》を発動!コスト7以下のクリーチャーを一体、持ち主の手札に戻す!さあ戻れ、ハッター・ルピア!」
鳥にされた補修授業部の面々が慌てるほどに、ハナコの周りが吹き荒れる。
「この時のために3コスのカージクリを持っていた!そしてこれを新世壊の下に入れ、ドロー!」
シールドからやってきた堕呪 ゾメンザンも含めてあと2ドロー。先生が引いたのは______
月下旋壊 ガ・リュミーズ!
「よし、さらに俺は二枚目の堕呪 ゾメンザンを発動!こいつの効果は無いままにこれを新世壊の下に入れて、もう一枚ドローする!」
ここで引いたのは、卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺。
役者は揃った!先生は、満を辞して《卍 新世壊 卍》
「ターン終了時、《卍 新世壊 卍》の効果を発動!このカードの下に四枚以上のカードが揃った時、ゲーム中一回これを起動してコスト99以下の呪文を一枚、手札か墓地から発動する!」
手を掲げ、彼は高らかに叫ぶ。
「俺は《《月下旋壊 ガ・リュミーズ 卍》の効果を発動!ドルスザク・クリーチャーを4体までコストを支払わずに召喚する!」
三体、手札から溢れ出るクリーチャー達。
「表れれろ!《《卍月 ガ・リュザーク 卍》!《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》!そして《ガル・ラガンザーク》!」
ハナコの場にはタップしてるクイーン・ルピア、そして先生にはドルスザクが三体!
「モモミーズは召喚された時にEXライフで一枚カードを下に入れる!そして、ガ・リュミーズの効果で追加ターンを獲得しているぞ!ドロー!」
追加ターン。引いたのは堕呪 カージクリ。
「今引いたカージクリをマナに入れ、バトルだ!まずはガリュディアス・モモミーズで左から三枚をブレイク!」
「くっ!」
ハナコがシールドから咥えたのは凰翔竜機マーチ・ルピアと
「こいつで割り切りだ!いけ、ガ・リュザーク!残りの二枚をダブルブレイクだ!」
そしてもう二枚ブレイク。
「なっ……!?」
ハナコは目を見開いて、先生の血の匂いさえ忘れるほどの衝撃に惑わされた。
残りの二枚は奇石 ミクセル/ジャミング・チャフと、三枚目のクイーン・ルピア。
「シールドに、ない!?」
「どうやらGストライクもないと見た!さあ、大人しくこれでとどめだ!いけ、ガル・ラガンザーク!ハナコにダイレクトアタックだ!」
彼女のシールドには、ハンプティルピアも突撃インタビューもなかった。インタビューは手札にあったし、ハンプティ・ルピアはデッキの奥深くで眠っている。
「そ、んな!?」
「今回は俺の勝ちだ」
ガラスにさえ傷つかない彼女は、そのまま吹っ飛んで校舎にぶつかり倒れ伏す。
鳥になっていた生徒達は元に戻ったが、そんなことさえ気にせずにハナコに駆け寄った。
「よし、これで一勝だ……がふ」
三枚もシールドが実体化して、ブレイクした破片が刺さっているのか少しフラフラしている。
「先生!」
プレナパテスもが駆け寄るが、間に合わない。
彼はそのまま倒れ伏す。目は幸いに閉じていて、息もあった。