「アリス!」
「はい!」
「何それ」
先生とアリスがそこにいる。
アリスの後ろには大きな主砲があって、彼女は何かの砲弾を抱えているようだ。
「これは試製46cm連装砲です!」
「あのこれ艦これじゃなくてね」
「零式水上観測機もあります!」
「なんでご丁寧に持っているの?」
「そして持っているのは」
「九一式徹甲弾です!」
「それは捨てた方がいい」
先生は少しばかり落ち込んでる。
「え?でもこれ重巡級以上の人に火力が出るって」
「うちの鎮守府でその徹甲弾を持った戦艦はみんな駆逐艦を狙っておねロリするようになるという呪われた装備なんだよ」
彼の鎮守府では徹甲弾を持った大和が駆逐いなければ軽巡しか狙わず、武蔵も金剛も徹甲弾を持つとそういうムーブになってしまうという呪いがある。持たせないと戦艦を狙うようになるが、戦艦を狙うときには徹甲弾がないと話にならない。
「だから、その、できれば普通に剣を持って戦って欲しいなあと」
「あっもう来ましたよ!」
ところで今いるのはどこかというと、オデュッセイアのクルーズ。
マコトたちとはしゃいで遭難した後の話だが、どうやら帰ってる途中に敵がやって来てしまった。深海棲艦がいるのは別に不思議なことでもないが、そのタイミングで海に遊びに来てたアリスたちが来たようだ。
「駆逐が二匹、軽巡一匹、重巡一匹、戦艦が二匹です!重巡以上は全部flagshipです!」
「わ、war...!」
「先生!仕方ありません、みんなで戦いましょう!」
こちらには戦艦アリス、駆逐ケイ、駆逐モモイ、駆逐ユズ、駆逐ミドリ、軽空母シロコ*テラーがいる。
「わあ、みんなすごいことになってる!」
「頑張ります!」
「いや待ってなんでアリスだけ戦艦なんだ。駆逐じゃないのか」
「なんですか先生、アリスに文句あるんですか」
「いや、その、ないけど……あの頑張ってね!」
深海棲艦との交戦を開始、ブルアカと違い彼女達が自力で頑張るしかないので見守るしかない。
「マジで動かせないのが焦ったいけど頑張ってねみんな!倒したらこっちに戻っておいで!」
「オヨヨヨヨ」
「んなんかいるぞ」
見守ろうとした手前、なぜか泣く声がした。
入って来たのかと思ったところ、見ていると和服で泣いてる女性がいた。
「あ、あのー」
「可愛い子に徹甲弾をぶち込みたくなって近づいたら装備全部奪われて船に放り込まれたデース……オヨヨ」
「金剛さん?」
「うう〜、私は聖園ミカデース」
「声と胸以外共通点ないじゃないか」
「ヘンタイ!」
「ぎゃー!」
全力ビンタを喰らって、トリプルスピンを披露した後にデッキへと落ちる先生。
立ち上がると多少元気になっている金剛がいた。
「ど、どうりで装備があると思った。いやでも他の子達は?」
「それは分かりまセーン」
「そっか……」
戦闘を見てみる。
簡単にレベルを上げられるブルアカなのが幸いしたのか、駆逐と軽巡を攻撃を受けずに撃破していた。流石ゲームを作る以外は最高峰のゲーム開発部といったところだが、さてまだ大物は残る。
「他にやって来たのはいないってことは金剛もまたシャーレファミリー入りか……」
「どっかの生徒を名乗ることって出来マスか?」
「いや無理だろ。どう足掻いてもギリ大学生だよ」
「金剛は年増じゃありまセーン!」
「あああああああああああ痛い痛い悪かった悪かったから!」
喧嘩しているが戦闘は止まらない。
「きゃあっ!?」
「いやっ!」
ケイとモモイが中破した。主砲の砲撃があまりにも痛かったらしい。
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよっ!」
「だいじょうぶですっ!有明の女王がそう簡単には沈みません!」
(じゃあなんで軽巡じゃなかったんだろう)
不思議なことだが、ともかく相手も重巡が撃沈。残るは戦艦だけだが、少なくともこちらも無傷というわけには行かないらしい。
「ん」
クロコがボーキサイトを使い頑張ってアヤネの使ってたドローンを作って飛ばすと、片方の戦艦にクリティカルヒット!200ダメージを出して、そのまま撃沈させた。
「ナイス!」
「先生、私結構転職しても……」
なにか言いかけた瞬間に、砲弾がクロコに直撃。
「んー!生意気なやつ!」
「クロコ!下がって!」
彼女は大破して黒い部分がおおよそ8割減になってしまった。
着実に戦力が削られていく中で、戦艦同士の一騎打ちとなる。
「なんかこれを夢見てた貴族が居たなー、なんとか男爵みたいなの」
「アリスー!」
「なんですかー!」
この中で一番の有効打を持っているアリスに、船の上から装備を追い剥ぎされた金剛が声をかける!
「地球は丸いので頑張って計算してもそう簡単には当たるものではありまセーン!観測機を飛ばしてくだサイ!」
「観測射撃か!言うとおりにしてアリス、プロを信じよう!」
「は、はい!」
零式艦上戦闘機がアリスの手から飛び立ち、相手の上空へと向かっていく。
「残ってるみんなで戦艦に砲撃!副砲を撃たせないようにして!」
「ん」
「わかった!」
残りのメンバーで敵戦艦ル級を砲撃。本来こういった戦い方に慣れていないメンバーが、慣れてないなりに本命を通そうとする動きに相手は翻弄される。幼稚さによる射撃の誤差は防ぐ意味をなくして隙を晒し、そのまま別角度からの攻撃に崩されていく。
相手の砲撃も猛攻の勢いに押され、狂い、これ以上の被害が出しようもない場所へと着弾し続ける。
そうして二分、観測機からの合図が出た!
「今デース!」
「アリス!」
「はい!最大限ぶっ飛ばします!」
試製46cm連装砲から、九一式徹甲弾を吐き出すように発射。
アリス自体の経験値の高さは、偏差射撃の精密さを上げ、その上で観測機の援護もあって数発撃ったのが全弾命中。
戦艦ル級は、大きな声や何かにすがることもなく、ただ潔く海に還った。
「やったデース!大勝利!」
「よくやったぞみんな!」
クルーズにみんなが引き上げられる。
服が破けてエッチな感じになっているが、それらは替えを用意すればいい。ともかく危機は去ったといっていいだろう。
「よし、みんな無事だね!」
「どうなることかと思いましタ……」
「でもどうする?このまま傷だらけで放置するのも」
「いいものがありマス」
金剛はバケツを六個取り出した。
「艦娘式治療術デース」
「いやでもドッグな」
「そぉい!」
大破したクロコにバケツがかぶせられる。
唐突かつ力強い一撃が脳震盪を起こし、回復もするものの彼女は気絶してしまった。
「ちょ金剛=サン!?」
「今から全員捕まえてバケツ浴びせて回復させマース!」
「その子たちは普通にしてれば平気ですぐ回復するから!」
「夏休みならスプラッシュに行かないとネ!」
「金剛さーん!!!」
「わ、わあ!なんかこっちきてるー!」
「たのしそー!このまま一気に逃げ切っちゃうから!」
「待てー!」
こうして、艦娘VS生徒の追いかけっこが始まった。
とんでもない身体能力を持った少女たちの大はしゃぎにつきあった先生は、このおいかけっこが終わると疲労困憊でビーチベッドで気絶。生徒たちも帰航するまでは疲れて眠ることになったのだった。
結果だけ言えば、無傷で済んでいたユズと緑以外はちょっとの間頭がバケツになったのであったが、それで全員が無事に帰ってこれたというわけである。
夏はまだある、八月はいろいろなゲームの本番だ。そうでなくても蝉も蜂も踊る季節で、誰一人として休む暇なく盛り上がる。
なら、本番に備えて少しばかり始めは暑さとやるべきことに精を出して疲れ切るのも悪くないだろう。
日差しが生み出す汗に風が当たれば、それが何よりの涼風となる。