異世界予言システム。勇者に迫る死亡ルートを回避せよ!   作:黒月天星

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燃え滓の男 バイマンに調査内容を説明される

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

「諸君っ! 冒険者達の調査により、森でゴブリンが大量発生している事が判明した。そしてその原因を考えるに、上位種が発生していると思われる」

 

 昨日森へ調査に出かけた冒険者が帰還し、バイマンさんに報告をした翌日の事。

 

 急遽バイマンさんの屋敷の大広間に村の有力者が集められたかと思うと、調査内容を説明される。俺も何故か同席させられたのだが、上位種と言う言葉を聞くなり周囲のざわつきが酷くなった。

 

「ヒヨリ。上位種と言うのは?」

『まあワタクシも概要しか知らないんですが、簡単に言うと時々その種族内に発生する統率個体ですね。普通の個体より数段強いのは当然として、居るだけで同種の攻撃性とか諸々が跳ね上がって危ないんですよ』

 

 なるほど。それなら村人達の反応も頷ける。このままでは森に迂闊に近寄れず、そこから生活の糧を得ている人達からすれば大打撃だろう。

 

 そのまま少しざわめきが収まるのを待ち、バイマンさんは更に話を続ける。

 

「以前の間引きからさほど経っていないが、上位種が居るとなっては看過できない。よって急ぎ討伐隊を編成し、2日後の早朝を目途に森へと突入。ゴブリン達を減らしつつ上位種を討つ。ここまでで何か質問があれば受け付けよう」

 

 その後は村人達からの質問に対し、バイマンさんは一つ一つしっかりと答えていった。

 

「その上位種の居場所は掴めているのですか?」

「調査隊の報告から、以前ゴブリン達が拠点としていた場所のどれかに居ると判断している。まずは最も近場の場所を当たり、そこから順々にゴブリンの間引きをしつつ巡っていく予定だ」

「何故早朝から突入を?」

「相手が待ち構えている事も想定し、少しでも森に光が差す間に決着をつける為だ。通常の間引きと違い、今回は上位種の討伐が第一目的となる。ならば夜目の利く奴らと夜戦うのは悪手だからな」

「となると、討伐隊の帰還は夕方頃に?」

「何事もなく予定通り進めばそうなる。だが、上位種が発見できない場合でも一度日没前には帰還する予定だ。その場合丸一日の休息の後再び討伐隊を編成、突入する」

 

 どれも理路整然としていて、村人達も少しずつ納得していく。そんな中、ある村人の討伐隊はどのくらいの規模を予定しているのですかという質問に対し、

 

「ゴブリン達の数や上位種の事を考えると、万全を期して150名……と言いたい所だが、万が一討ち漏らしが村に押し寄せる可能性を想定し、討伐隊は兵の中でも精兵100名と一部の冒険者のみとする。残りの兵は村の防衛に当て、村の三つの入口と中央にそれぞれ配置する予定だ。これなら例えどこからゴブリンが押し寄せたとしても、十数体程度なら問題なく仕留められる」

「100名……しかし上位種は手強いと聞きます。あまり人数を絞り過ぎて逃げられでもしたら」

「問題ない。人数を少なくしたのは、そもそも森の中で大人数の行軍は難易度が上がるという事もあっての事だ。それに……()()()()()()()()()()()()()。何か問題があるのかね?」

 

 それを聞いて俺は驚いた。まさかトップが直接前線に出向く気かと。現代社会ではやったらマズい類の事なのだが、

 

「バイマン男爵が自ら……なら安心だ!」

「そうとも! 相手が上位種だろうが何だろうが、ウチの村長が出るなら一発だな!」

 

 何故か一気に村人達は楽観ムードに。

 

 これは後で知ったのだが、元々バイマンさんは生まれながらの貴族ではなく、武功で身を立てて男爵位に成った人だという。

 

 つまり個人の武力や指揮官としての実力は折り紙付きであり、有事の際には自分で兵を率いる事は普通なのだとか。

 

「諸君らにはこの内容を村の者達に伝えつつ、過度に不安を煽らぬよう周囲の引き締め、そして当日いざという時の速やかな避難誘導に協力してもらいたい。説明は以上だ。諸君らの働きに期待する」

 

 こうして説明会は終わり、村人達も各々で解散していく。そんな中、

 

「カイト殿。少し良いだろうか?」

 

 突然バイマンさんが話しかけてきた。説明会に俺も呼ばれていたから用が有るなとは思っていたが、気になる事でもあったのだろうか?

 

「今回の件。まだ予言が正しいかは不明だが、それがきっかけとなって判明したのは間違いない。おかげで上位種相手に早い段階で手を打つ事が出来た。感謝する」

「いえ。急に言ったゴブリンが攻めてくるなんて言葉を、少しでも信じて調査隊を送ってくれたバイマンさんあっての事です。俺はそこまでの事はしていませんよ」

「謙遜する事はない。それ以外にもきちんと息子達の面倒を見てくれているではないか。この件が片付いたら、改めて礼をさせてくれ」

 

 そう言ってバイマンさんは、明後日の準備のため大広間を後にする。

 

『いや~開斗様。男爵様の覚えもめでたく地盤固めも上々。これは中々良い感じじゃないです?』

「どうかな? ……これを見てみろよ」

 

 肩に留まったままのヒヨリが快活に笑う中、俺は予言板を出現させて内容を確認する。

 

「ここまでバイマンさんが動いてくれているのに内容は変わっていない。つまり直接的な行動を起こさない限り予言は覆らないって事だ」

『そうですねぇ。この場合、男爵様が兵を率いて森に乗り込む事でやっと“行動を起こした”扱いですかねぇ。まあそこまで行ったらワタクシ達に出来る事はほぼないですし、男爵様のお手並み拝見といった具合でしょうか』

「……そうだな」

 

 実際ヒヨリの言う通りだ。例えば俺も討伐隊に入れてほしいなどと言っても、バイマンさんは普通に断るだろう。それに戦いもまともに知らない俺が行った所で役に立つとも思えない。

 

 今出来る事と言えば、精々がライ達に寄り添い軽く指導をするくらい。間違いなく出来る事をやっているのに、それがなんとも……歯がゆいな。

 

 

 

 ゴブリンの軍勢による村の襲撃まで……あと2日。

 




 少し先のネタバレになりますが……こういうのはガチガチに固めた備えこそ突破されるのが一種のお約束でして。
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