あまりにもあんまりな転生先で青春を。 作:Tkmraeua2341
俺の名前は間野 雄司(まの ゆうじ)、転生者だ。
死ぬ前は28歳のこどおじ社会人で、死因は機械の点検中に起きた事故。
誤作動か俺の確認不足かで起きちまったが、唯一良かったのは始末書を書かなくて済んだことくらいか。
転生した自覚を得たのは10歳の頃、それまでかかってなかったインフルで高熱を出してからだった。
これまでもビルや車、町の景色になんとも言えないデジャブを感じていたが、これではっきりした。
俺は、現代日本から暫定現代日本に転生したのだ。
それから急に変わった俺を変わらず愛してくれた両親には感謝しかねぇ、本当にありがてぇ事だ。
だが、どうしても認めたくない事がある。
中学2年まで成長した俺の体を洗面所の鏡で見る。
何故か生まれつき浅黒い肌、親父のじいさんがそうだったらしいので隔世遺伝って奴だろう。
手入れが足りないボサボサの金色の癖毛、お袋のばあさんはアメリカ人らしい。
整ってはいるが、何処か軽薄そうな顔。
太くはないが引き締まった体、前の癖で毎日10回はしている腕立てとスクワットの成果だろう。
俺…ビジュアル的に間男じゃね?
もしくはNTR物の竿役じゃね?
一度抱いた疑念は消えず、不安と溢れる性欲を自己研鑽(筋トレ)と自己研鑽(意味深)で押し潰す。
悶々とした思いをどうにかしようと足掻いて終わった中学生。
そうして迎えた2度目の高校生活。
「ねぇねぇゆー君、いつになったらキスしてくれるのさー」
「も、もうちょっと待ってよ優里ちゃん…僕だって心の準備があるんだよ」
「そればっかじゃーん!中学卒業の時の告白した勇気はどこいったんだーい、つんつん」
「ちょっ脇腹突かないでよ優里ちゃん!」
会話から察するに同じ中学からの新入生カップルが教室でイチャイチャしやがる。
ゆー君と呼ばれてた男子は印象に残りにくい、なよっとした黒髪男子。
優里ちゃんと呼ばれてた女子は黒髪ロングのかわいい系、その身体は同年代とは比べ物にならないほどグラマー。
…この一年で険しくなった眉間をさらに寄せる。
まさか、俺の転生先って、やっぱりそういう系だったりするか?
睨んでると思われないように目線を外にやりながら思考する。
もしや本当に、俺はそういう奴の作品に生まれたのか?
あの「絵は良いのに、むっちゃ抜けるのに」とか「純愛で出して欲しかった」とか「これじゃないともう抜けない」とか言われてるメジャーっちゃメジャーなジャンルの奴に、俺は居るのか?
…頭が痛い。
確かに俺は見た目だけならそうだろう。
少しとはいえ着崩している制服、その隙間から覗く浅黒い肌と筋肉、邪魔にならない程度に伸ばされた金髪、右耳には黒いトカゲの耳ピアス。
しかし、軽薄そうな顔はもうない。
あるのはしかめっ面な怒り顔。
顔は、もし訪れた運命からどうにか外れようと足掻いた結果だった。
俺の、そういう竿役に対する印象は、とにかく軽薄なクソ野郎だった。
だから顔をしかめる。
普段から油断はしない、つい笑っちまう時もあるが出来るだけあの軽薄そうな面は無くそうとした。
…客観視すればただのチンピラに成り下がっただけだが問題ない。
ピアスに関しては、ちょっとした憧れだった。
前の生にて世話になった上司が同じようなピアスを付けていて、俺もいつかはやってみたいと常々思っていた。
二度目とはいえ花の高校生、思い切ってやってみたのだ。
脱線しすぎたが、詰まるところ俺は、竿役なんぞになりたくなかったのだ。
だからつい、近くに「そういう」奴に食い物にされそうなカップルや女子がいたら過敏に意識してしまうのだ。
早くこの癖を矯正しなければ、露骨過ぎた中学時代のように渾名が「リア充絶コロマン」や「非リアの筋肉代表」になっちまう。
俺はそんな妬んでた訳じゃねえよ!!
「お〜い間野、またカップル睨んでたの〜?」
「いや睨んでないが?少し目線をやっただけだが?」
「顔すげ〜ことになってたぞ〜」
話しかけてきたのは隣の席の睦月 マユミ(むつき まゆみ)、褐色に金髪の黒ギャルだ、田舎生まれだったせいで現実に存在するとは思って無かったあの黒ギャルだ。
始めは衝撃でドギマギしていたが、今はある程度は話せる仲になれた。
因みに言えばこっちもグラマーである。
「間野〜コンビニ寄って帰ろ〜ファミチキ奢って〜」
「ファミチキ?もしかして今晩それだけで済ますつもりか?」
「イエース、ガッツきたいけど体重計が怖い年頃でして〜」
「ならサラダとおにぎりも奢るからちゃんと食え」
「え〜」
「本気で痩せたいならミルクティーを2日に1回に抑えろよ、お茶飲めお茶」
「ぶーぶー、間野ママのイジワルー」
「はいはい分かったから行くぞ、後ママじゃねぇ」
「あいさ〜」
ちょっおま、腕に抱き着くんじゃねぇ!!
入学式を終えた翌日、はじめましての人が多く居る中で私はクラス全員を軽く観察していた。
気が合いそうな女子グループには昨日のうちに入れたし、ほかの人たちがどんなグループを作ってるのか気になったから。
イケイケな男子グループ、大人しめな女子グループ、オタク系の距離を取りたいグループ。
そんな中、少数や1人で居ることにこだわってるのも居る。
あれはカップル、あれもカップル、あれは多分ボッチ、隣の奴もそうだろう。
何気なしに目線を左にやる。
髪や肌の色が一番似てるクラスメイト、小さめの黒いトカゲがよく見える。
間野 雄司、顔は怖いが身体付きが凄くて昨日の話題の一つになった奴。
今そいつはスマホ片手になんかの記事を読んでいた。
長くも短くもない朝の時間、暇だったし隣の席だから、大した興味もなしに話しかけてみた。
「おはよー、何読んでんの?」
「…おはよう、朝食を抜いた生活のメリットとデメリットって奴」
「ほぇー、なんか真面目そうなの読んでんねー」
朝食を食べるのは当たり前、小学生所か保育園の頃からある私の常識。
それが崩れるのか強固になるのか、興味が湧いてきた。
「デメリットは何となくイメージつくけど、メリットって何あるの?」
「読んだ感じだと…食べ過ぎてることで起きてた問題が減る」
何となく分かるような、分からないような。
「例えば〜?」
「健康的に体重が減る」
「ナニ!?」
もしや、ユーヨーな情報って奴では!?
「急に食いついたな…どんな物も過ぎれば毒って奴だろ、後は朝食を抜くことで昼飯までは腸や胃とかの消化器官を休ませる事が出来るから調子が良くなって…入れる分が減る訳だから便秘解消にも繋がるってよ」
「ほぉ〜」
聞いてる限りでは良いことづくしでは無いだろうか。
面白い、いい話を聞いた。
「まぁネットに落ちてた信憑性も分からん話だ、体も個人で違うんだから自分が一番調子いい生活スタイルでいいだろうよ」
「ま、参考にさせて貰うよ〜、因みに…えー」
「間野だ、間野雄司」
「ありがと間野くん、私は睦月 マユミだよーよろしく〜」
「よろしく、んでなんだ?」
「間野くんは朝食食べる派〜?食べない派〜?」
「食べない派」
これをきっかけに間野くん…間野と話すようになった。
間野は見た目と違って授業は真面目に受けていた。
先生に当てられても間違えてたりはしないしノートも取る、宿題も貰ったその日にやり終えてた。
それからはよく私の宿題もお世話になったものだ、写させてくれてありがたい限りである。
そうやって交流を続けてれば相手の好物や本人が直したがっている癖、無意識にしてるだろう癖も分かってきた。
間野の好物は梅のおにぎりとしょっぱめの卵焼き、必ずお弁当に入ってるし好きだと言ってたから。
癖は、ついカップルを睨んじゃうことと、嬉しい事や恥ずかしい事があると耳が赤くなりクイックイッと動くこと。
私と同じ肌色でも分かるくらいには赤くなる間野の耳、近付いてるからトカゲの動きもよく分かる。
あらら顔まで真っ赤じゃん、何人も女食い散らかしてそうなのに。
間野、そんなに私に抱き着かれるの恥ずかしいの?
それとも嬉しいの?
ふふ…かーわいぃ。
これを「雨で仕事出来ないから」と会社で書き出し投稿するという暴挙、せめて帰ってからしろ私。