――上空では悪天でもなく一見穏やかに見える快晴だった。
だが、その一方での地と海も穏やかではなかった。
――ある海辺には異様な緊張感が漂っていた。
地には多くの人々、それもただの人間ではない、おそらく兵士―軍団が立っていて――海には見渡す限りでのかなり多くの船―艦隊が浮かんでいた。
そして――それらが対峙していた……
「ギャハハハハ!!「四皇」〝ビッグ・マム〟の首を取り、更なる高みに登ってやる!!」
「その為に我がブモ海賊団とブサ海賊団は同盟を組んだぞ!!」
――どっちも名と力のある海賊団だが、格上の海賊団を討ち取る為に同盟を組んだのだ。
自身達の力に自信を置いている上に同じような力を持っていると認めてやっているライバルと組んだ今、「四皇」の首を取るのも間違いはない!――と海賊同盟の海賊達は今の情勢にほくそ笑む。それに対して――
「マ〜〜マママハハハハ…!!」
高らかに宣言する海賊同盟に高笑いを上げた圧倒的にデカい老婆が1人。
名は「シャーロット・リンリン」。
彼女は海賊である。
それもただの海賊ではない。
海賊達の頂点に君臨する4人しかいない大海賊――「四皇」の一人なのだ。
海の皇帝として威風堂々と立つリンリンは不敵に笑った。その笑みにつれて彼女が率いるビッグ・マム海賊団の海賊達も獰猛な笑みを浮かべる。
「いい度胸じゃないか〜…!」
「お前達!ビッグ・マム海賊団にケンカ売った事後悔させてやれ!!」
「「「おぉ〜〜〜っ!!」」」
リンリンの激励にビッグ・マム海賊団が雄叫びを上げ、海賊同盟への攻撃を開始した。
それを受けた海賊同盟も攻撃を開始した。
――そうして戦いが勃発した。
――長年海賊達の頂点に君臨し続けてきた為に自信満々なビッグ・マム海賊団だが、この時点で彼女達にも思い浮かばなかった。
――実はビッグ・マム海賊団崩壊の大危機であったと。
「〝ビッグ・マム〟と多くの幹部共がブモ海賊団とブサ海賊団の同盟を相手取る今――ビッグ・マム海賊団の背後を攻撃し壊滅させるチャンスだ!!」
「この――コザ海賊団がな!!」
海賊同盟を相手取るビッグ・マム海賊団のいる地とは逆方向の片地に向かって海を進める艦隊があった。それも名と力のある海賊団であった。
そのコザ海賊団は海賊同盟のビッグ・マム海賊団への討ち入りの情報を掴んだ時、絶好の機会だとみてて、それに参加を決めたのだ。
「ギャハハハ!!てめぇら!かかれ〜〜!!今こそビッグ・マム海賊団を終わらせろ!!」
「「「オオ〜〜〜ッ!!」」」
船長の雄叫びに海賊達も雄叫びを上げながら駆け出した。
――ブモ海賊団。ブサ海賊団。そして……コザ海賊団。3海賊団によるビッグ・マム海賊団に対する挟み撃ち!
――もしかしたら本当にビッグ・マム海賊団が壊滅されたかもしれない。そうでなくても存続にも響く程の深刻なダメージを与えられたかもしれない……
――そう……
――〝彼〟がいなかったらの話だが……
「……!?」
「何だ……?」
勢いよく駆け出したコザ海賊団だが、突如その足を止めた。
何せ彼らの前に1人の男が歩いてきたからだ。
「…」
彼はコザ海賊団を凝視しながら――それでも涼しい表情を浮かべながら足を進めていった。
名は「シャーロット・ファースト」。
彼もまた海賊である。
もちろんただの海賊ではない。
リンリンの部下――それも腹心。そして――リンリンの息子なのだ。
彼の姿に目を鋭くした船長。
「……チッ、オレ達の襲撃等ビッグ・マム海賊団には見通しか」
ビッグ・マム海賊団崩壊のチャンスを踏まれたと悟り機嫌が悪くなった船長にファーストは冷静に答えた。
「いや――お前達の来訪を母も弟妹達も知られてはおらぬよ……オレだけだ。知ってるのは」
「――あ゛?」
ファーストのその答えに船長――コザ海賊団は顔に青筋を走らせた。
「――つまりアレか?オレ達の攻撃をビッグ・マム海賊団が知らないまま――てめぇが対応するってか?」
船長の唸りながらの問いかけにファーストは――肯定した。
「母と弟妹達には海賊同盟に集中してもらうんでな」
なんと、彼はコザ海賊団の襲撃をビッグ・マム海賊団の誰かにも知らせずにたった1人で対応しようというのだ。
彼の言葉にコザ海賊団はますます顔に青筋を走らせた。
「……まさかと思うが、てめぇ……たった1人でオレ達を相手取るつもりなのか?」
「そうだ」
彼の即答にコザ海賊団はついに怒りを爆発させた。
「……てめぇ〜随分オレ達を舐めてるようだなぁ……」
「てめぇら!!このお調子者にオレ達の力を思い知らせてやれぇ!!」
「「「ウオオォ〜〜〜ッ!!」」」
怒りに身を任せて襲いかかってくるコザ海賊団にファーストは威厳に呟く。
「我が名は――シャーロット・ファースト」
「お菓子の国のジェネラルにして副王なり」
「シャーロット家を守護する鉄壁の盾なり」
そう呟いたファーストは二叉槍を掲げ――
「…〜♪」
鼻歌を歌いながら――足を進めていった。まるで散歩に出かけるように……
――そうして襲いかかってくるコザ海賊団に彼はたった1人で立ち向かっていった……
●
時は遡る――
ある海上を航海している帆船が1隻…だがその帆には二角帽を被った強いパーマの掛かったような髑髏のバックに銃と片方が渦巻き片方が酌のようになった棒のようなものが交差しており、棒の酌のようになっている方の先には木が1本描かれているマークが描かれており、海賊船だというのが示されていた。
そして……その船内のある部屋には数人いて、その中心には船長を務めているリンリンもいるが……何やら慌だしい雰囲気が漂っていた。
「ぬ〜〜〜」
「ほら!出てきましたよ!」
「うが〜〜〜」
「ほら!頑張って下さい!」
――どうやらリンリンが出産に励んでいる最中らしい。
少しずつ事態が進んでいるが、その遅さにリンリンはどうやらイラついているようだ。やがて――
「――さっさと出てこい!!おれのガキ!!」
リンリンがそう怒鳴りつけた。それからしばらくして――
――オギャアアアアアアア!!!
「――マ〜〜マママハハハハ…!!」
その声にリンリンも晴れやかな笑みを浮かべた。
「ハ〜ハハママママ……よく来てくれたよ…おれのガキ」
抱かせてもらった我が子の姿にリンリンもつい穏やかな笑みを浮かべる。
「――お前にはおれの〝力〟になり、おれの夢を手伝ってもらうつもりなんだが……」
新たな〝生命〟を証明するかのように泣き続けた赤ん坊にリンリンは微笑み続ける。
「――お前を大切にしてやるよ!そんで――……世界を見せてやるよ!」
リンリンが口を開けて笑うのがきっかけになったのか、泣くのを止めた赤ん坊は彼女を見て――笑った。
「……ハ〜ハハママママ」
我が子の笑顔にリンリンが癒やされている中、1人の助産師がリンリンに声を掛けた。
「船長――この子の名はどうしますか?」
その問いかけにリンリンもニャリとする。
「あぁ!それはもう決まっている!」
リンリンは我が子に目を向ける。
「お前の名は――」
「「ファースト」!「シャーロット・ファースト」だ!」
「ハ〜ハハママママ……お前はいずれ生まれてくる弟妹達を率いる男になるのだからなぁ……!」
獰猛な笑みを浮かべるリンリンに赤ん坊――ファーストは笑っていた。
――菓子の為に〝国〟さえ攻め落とす怪物の息子として、そして世にも恐ろしき大家族の長子として「シャーロット・ファースト」が生まれた。